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FXで勝つには様々な事柄を考慮しなければなりませんが、その事柄の1つに「市場」の性質の違いがあります。
ほぼ24時間トレードができるFXは、時間帯が変わるごとに取引の中心である市場(インターバンク市場)が変化しますが、それに連れて相場状況も変わってゆくため、各市場に応じたFXのやり方を考える必要があるのです。
そこで今回は、日本のほぼ昼間の時間帯にあたる「東京時間」について、基本的な性質・特徴やFXで勝つためのやり方などをお話ししていきます。
東京時間の基本
FXにおける東京時間とは、ニューヨーク時間、ロンドン時間とならぶ世界3大市場の1つに数えられています。
*ニューヨーク時間についてはこちら:
「ニューヨーク市場でのFX攻略法。荒波は伊達に起こるものじゃない!」
*ロンドン時間についてはこちら:
「FXにおけるロンドン時間の特徴とFXで勝つやり方。巧みなやり方でロンドン時間のFXを攻略しよう!」
平日午前9:00から15:00くらいまでの間の時間帯を指し、日本の証券取引所が開かれている時間帯とも重なります。
取引の様子については、3大市場の1つと言われながら、その中で最もトレード活動が鈍い市場で、基本的にはレートの波も穏やかな傾向があります。
・各市場の取引量について
出典:上田ハーロー(株)
東京時間はそのような性質から、大きなトレンドが発生しにくい「レンジ相場」になりやすく、従って大勝ちできる可能性も少ないです。
そのような性質から、ベテランのトレーダーやFXで利益を得ようとする大口の機関投資家の参加も比較的少ない傾向があります。
逆に「実需筋」と呼ばれる為替取引を貿易などの関連業務で行っている存在が市場に多く参入してきます。
FXに関わる東京時間の主なイベント
上記のような東京時間の性質の中でも、何点かピックアップできるものがあります。やはりリスクのあるFX取引ですので、いくら東京時間とは言え知識を十分に備えしっかりとしたやり方を整えることが大事です。
仲値
金融機関や先ほどの実需筋が為替取引をする際に利用するその日の基準レートのことで、9:55に示されます。
為替レートは円安なら輸出企業、円高なら輸入業者に都合がよく、毎日仲値が発表される時間付近は、FXにおいても売り買いがやや活発となってきます。
FX会社で提供している経済ニュースにも「今日の仲値は米ドル/円で112円・・・」などといった解説がなされます。
実需筋の動き
「ゴトウ日」
これは5日、10日、15日など5で割れる日のことで、この日は貿易関係や物流などの業界で業務が忙しくなる性質から、FX相場にも少なからず影響が出てきます。
「期末」
また、週末や月末は一つの区切りにあたるものとして、それまで保有していた外貨を日本円に戻す作業が発生しやすく、ある程度円高傾向が予想されます。
特に各四半期の最終月末や年度末といった時期はFXでも大きなトレンドが発生しやすくなってきます。
東京オプションカット
値動きが活発になる要因の1つで、15時前後にFXへの影響が表れてきます。
東京オプションカットの意味と懸念することとしては、「通貨オプション」という期限を伴った性質の取引がまずあり、期限である15時付近に通貨オプションを保有する大口投資家や金融機関が、激しい攻防戦を行うことで、時には相場が大きく変化することが上げられます。
日銀金融政策決定会合
日銀により年に8回開催され毎会合ごとに2日間行われます。日本の経済指標としてはFXへの影響が非常に大きく、2日間行われた後の日銀総裁による記者発表が重要です。
毎回お昼頃以降に会合の内容が判明します。世界中のFXトレーダーに注目され相場の急変が珍しくありません。
「会合の開催日時について」
出典:日本銀行
余談ですがとある総裁の記者会見では、その発言内容がいつもネガティブな印象を与えるものだったことから、ほぼ毎回相場が下落していたことがあり、売り建てをすれば必ず勝てる会見と言われていた時期もありました。
FXにおける経済指標は数多く存在しますが、東京時間においてはその影響力の点からまずはこの決定会合に注意し、徐々にその他のものを覚えるようにすれば大丈夫です。
前日夜のニューヨークダウ
ニューヨークダウは、アメリカの株式市場における代表的な30種類の平均株価のことで、日本のみならず世界中の経済や金融に大きな影響力を持っています。
東京時間においては、前日(日本の前夜)のダウの結果が非常に意識され、ダウが大きく変化すればFX相場もそれにともなって為替レートの騰落が激しくなります。
FXをメインにやっていますと、最初のうちはFX以外の株やファンダメンタル的な海外の動向といったことまで気が回らないかもしれません。
しかしこういった要素も確実にFXに影響を及ぼすものですので、少しずつでかまいませんのでその知識を深めるようにしてください。
東京時間でのFXのやり方
あまり無理する必要はない
波の荒いニューヨーク時間やロンドン時間は初心者にとってはちょっと勝ちにくいかもしれませんが、FXで勝つには何よりも相場に動きがないと始まりません。
一方、東京時間で中途半端にエントリーしてしまっても、スプレッドは必ず背負うことになります。特別な戦略ややり方が何もありませんと、そのスプレッド分の値幅すら取れずただただ時間ばかり経過してしまう可能性も高いのです。
あえてトレードするならば・・・
主に短期チャートを利用して、トレンドライン等をエントリーポイントにした「逆張り・スキャルピング」が手堅く勝てるやり方です。
順張りを狙いますと、目の前のチャート方向がすぐに反転してしまうため失敗しやすいのです。
すぐに反転しやすいことから、大きなトレンドは望まずせいぜい7~8pips程度までの利益を狙うようにするやり方が賢明です。
日銀金融政策決定会合の前はノーポジションで
穏やかな東京市場においてはその相場への影響力の大きさから注目度が高い存在となっている金融会合ですが、安全なトレードを行うにあたっては、決定会合後の発表までにポジションを整理するか、新規ポジションを建てないことをお勧めします。
実は、経済ニュース等で経済指標内容の予想(予想数値)や前評判というものも流れるのですが、その内容に約束されたものはありません。
また経済指標は、数値的な発表内容ならまだしも、関係者による記者発表や言葉による説明は、その分野に対する深い知識も必要とされ判断が難しいです。
レートを大きく動かす機関投資家やヘッジファンドが、発表内容を受けてどういった行動をとるか、こういったことを計算するのも必要です(しかも容易ではありまあせん)。
通貨ペアに関しては、東京時間では主に米ドル/円が影響を受けやすいのですが、どんな通貨ペアであっても注意した方が賢明です。
仲値発表時にトレード
先ほどの仲値に絡んだものですが、この仲値発表後にレートが上昇することが散見されます。
これは、為替取引を控えていた実需勢がこの時間になって一斉に買い行動に走ることから起こる現象です。
従って仲値発表時付近ではロングポジションで勝利を得やすくなってきます。
しかしあくまでも実務で外国通貨を買うといった性質からそれほど大きな上昇は望めず、トレードにあたっては利益確定をしっかり行うことが大切です。
また、仲値の存在を知らずにロングポジションをずっと放置してしまうことや、ショートを検討すること、及び仲値の知識がないことでこの時間帯のレート変動を本格的な相場状態と思ってしまうこともよくありません。
前日のニューヨークダウに合わせたやり方
先ほど、ニューヨークダウの影響についてお話ししましたが、そこまで東京時間が素直に反応するのであれば、逆にこれはFXの戦略が非常に立てやすいとも言えます。
例えば、前日のニューヨークダウで株が多く売られたのであれば、翌日の東京時間も相場の先行きが懸念され、レートが大きく下落したりするのです。
従って東京時間は「売り」をメインにトレードすることが勝ちやすくなるやり方となってきます。またアメリカ経済の影響の大きさから、9時の市場開始から取引が活発となり、朝から大きなトレンドが発生することも十分ありえます。
この時のトレード方法は、トレンド狙いではありますが、短・中期足を中心とした逆張りが有効です。ニューヨークダウの状況がよほどひどい場合には、これでもかというくらい各種トレンドラインからレートが反転していく様が頻繁に見られることもあります。
ただし、初心者やまだFXのやり方が分からないうちは、前提条件であるニューヨークダウの状況判断にまで慣れていないためうまくいかない事も予想されます。ある程度FXの経験を積んでから行うのが得策です。
統計データを活用するやり方
FXには各種統計データが存在しますが、その中で「毎年8月は円高になりやすい」といったものがあります。
出典:松井証券(株)
米ドル/円やユーロ/円など様々な通貨ペアのレートが8月は下がりやすい傾向にあり、東京時間でのトレードにも生かすことができます。
例えば8月の東京時間においては、
- 8月は円高になりやすい
- 前日アメリカでショッキングな出来事があったが日本の朝方近くだったので米国相場は不明
- レートが月足チャートのレジスタンス(上値抵抗線)付近
- 本日は第三週の金曜週末で清算的な売りが出やすい など
上記のような売り注文が起こりそうな要素が複数発生していれば、東京時間においても大きく勝てる可能性が高まってきます。
日本発のFXに絡む出来事
レンジ相場になりやすい東京時間におきましても、これまでに相場を大きく揺り動かす出来事が発生していたのも事実です。
安易に手を出すのはよくはありませんが、リスク回避といった意味で参考のために3つの印象的な出来事を挙げておきます。
東日本大震災による円高
2011年3月に発生したあの地震の後のことですが、日本で災害が発生したため海外の投資家は円を手放し、その結果米ドル/円は上昇するだろうといった判断が一部の日本人トレーダーになされました。
FXとしては一見まっとうな判断に思えますが、実際には当初こそ1ドル83円程度の円安になったものの、結果的には大きく値下がりし、1週間後に77円にまで下落してG7による協調介入(為替操作)が入るまでの事態にもなりました。
出典:日本経済新聞
ではどうしてそこまで下落したのかと言いますと、日本円は震災が起こった日本の政府が発行している通貨ですが、海外投資家からは投資には向かない「安全な金融商品」といった認識が現在でもされております。
また、日本で危機が発生したものの日本国そのものはデフォルト(破たん)には至らないと判断されました。
それよりも「相場状況が危険視」されたことの方が大きく、結果的に日本円の堅実性が頼りにされ円が買われ為替レートは下落したわけです。
株の場合もそうなんですが、海外投資家の影響力は日本においてとても高く、震災直後においても海外勢の力は健在だったというわけなのです。
為替介入の手の内を明かす
2012年、民主党政権時代に安住財務大臣(当時)が具体的な為替レートを織り交ぜ政府による為替介入の実態を国会で答弁したことがありました(実際に介入が行われたのは2011年)。
これには、具体的な介入レートという大切な金融戦略を世界中に明かしてしまったということで強い非難が沸き起こりました。
戦争と同じく作戦がバレてしまっては、相手に待ち伏せされ逆に国益に反するような事態にもなりかねません。
長引く不況の中、本人は旧与党が敷いた路線からの脱却と正義感をもって答弁を行ったのかもしれませんが、為替が本格的に上昇していくのはこの後のアベノミクスからとなりました。
出典:日本経済新聞
日銀総裁発言によるFXへの影響
2013年4月4日、日銀・黒田総裁による俗に「黒田バズーカ砲」と呼ばれる「量的・質的金融緩和策」の公表により、米ドル/円のみならず他の通貨や日経平均など様々な金融商品が上昇していきました。
米ドル/円においてはリーマンショック以来となる100円台に到達。2014年10月31日の第二弾のバズーカ砲は、その後の120円台到達へのきっかけとも言えるもので、レート上昇へ非常に大きな影響力がありました(第三弾は不発)。
出典:第一商品(株)
この黒田バズーカが発せられた時は、まだアベノミクスの影響が残っていた時期でもあり、レバレッジを効かせたFX取引においても長期的な買い戦略がとれためったにないパターンでした。
なかなかその判断が難しいものですが、月足レベルの底から脱却しようとしていた米ドル/円その他通貨ペアのチャート状況ともマッチしており、あとは十分な資金と勇気が伴えば大きな利益を得られたのです。
まとめ
東京時間の基本的な性質とFXのやり方についてお話ししてきました。
以下に内容を整理してみます。
- 東京時間はFXの取引量が少なく値動きが穏やか
- それでもある程度の定期的・不定期なイベントはあり知識は必須
- 通常の取引はレンジ相場での逆張り・スキャルピング
- FXとしては積極的に打って出る時間帯ではない
- FXの経験が豊富であれば前日のニューヨークダウの結果をもとにした取引もOK
- 統計データを駆使したピンポイントなやり方もオススメ
- 東京時間での過去の大きな出来事を認識しリスク回避も考慮する
東京時間は日本では株の取引きが活発に行われている時間帯であり、FXが日経平均から影響を受けたり、逆に日経平均に影響を与えるといった場合もあります。
ニューヨークダウの状況や日経平均、経済ニュース、また既存のテクニカル分析等を駆使して臨めば取引のコツがつかめるかもしれません。
*ニューヨーク時間に関する記事は以下をご覧になってください。
*ロンドン時間についてはこちらが参考になります。