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不動産投資では、多くの投資家達にとって利回りが高いことは必要条件の1つだと考えられていますが、必ずしも高い利回りであれば間違えないと思い込んでしまうのは非常に危険でもあります。
高利回りの物件には、思わぬ落とし穴が潜んでいることも多く、その物件が投資物件として相応しいものかどうかを判断するには難しい場合も多々あります。
不動産投資における好物件を探すためには、利回りの他に様々な要素を考慮していく必要があります。もちろん利回りが高いことも成功する要素の1つではありますが、不動産投資の利回りは何%以上なら理想的だと言えるのでしょうか。
今回は、不動産投資で最低クリアしておきたい利回りは何%なのか、そして高利物件に潜むリスクについてわかりやすく解説していきたいと思います。
不動産の利回りとは?
まずは不動産投資における「利回りに」ついてご説明していきましょう。
不動産投資の利回りとは、投資額に対してのリターン率が年間でどれくらになるかを計算したものになります。「利回り」は投資物件を決めるにあたって重視されている項目の1つとなり、多くの投資家たちにとって重要だと考えられています。
なぜ利回りが重要なのか
不動産投資をするにあたって、「利回り〇%」を言葉を頻繁に見聞きするかと思います。そこで、なぜ利回りが重要なのかというと、
- 投資とは基本的に利益を追求するもので、投資物件から得られる収益率の目安をつける必要がある
- 数えきれない物件がある中、利回りを目安にすることで、投資物件を選びやすくなる
- 収益率が大まかに概算できることで、より確実に投資を成功させることができる
などの理由を挙げることができます。
何の目安もなしに、物件の外観の写真や詳細を見ただけでは、その物件からどれくらいの収益率が見込めるのかを判断することは非常に難しくなります。
これから詳しく解説していくように、利回りだけを基準にしてしまうと非常に危険だと言えますが、同時に物件を決める際に必要不可欠な情報だとも言えるのです。
利回りの種類
「利回り」には、
「表面利回り」と「実質利回り」の2種類があります。それぞれどのように違うのでしょうか。
表面利回り
表面利回りとは、
年間の想定家賃総額÷物件購入価格×100%
=表面利回り
で計算される利回りとなります。戸建住宅であれば、賃貸料×12カ月、集合住宅であれば全室の賃貸料×12カ月が全額入ってきたと想定して計算される数字です。
従って、あくまでも購入するかどうかを検討する上での目安となる数字だと言えます。
実質利回り
実質利回りとは、不動産経営にかかる経費等を考慮して計算した利回りになります。
年間家賃収入-年間経費=実質の年間収益
物件の購入価格+購入時の諸経費=投資総額
実質の年間収益÷投資総額×100%
=実質利回り
となり、より具体的な利益率を計算したものが実質利益となります。
表面利回りでは高い数字であっても、結局のところ管理費、修繕費、不動産仲介手数料、さらには固定資産税、都市計画税などを考慮した場合には思ったよりも利回りが低くなる場合が多くなります。
想定した家賃収入が全額必ず入手できるわけではないということです。利回りで計算する家賃収入とは、あくまで想定です。
キャッシュフロー
以上のことを考慮し、最終的に不動産投資において大切なのは、
キャッシュフロー=手取りの収入
つまりは実際に、手元にいくらの収入が残ったかが、不動産投資で得た収入とすることができるのです。
表面利回りは最初のきっかけ
しかしながら、最初の物件探しの時点では、単純に表面利回りを目安にその物件を評価していく方法を取るのが一般的です。なぜなら、実質利回りを出すためには、詳細に渡って物件をリサーチする必要があり、そこに至るまでに、まずどの物件を見るべきがを決めなければなりません。
その際に目安となるのは、やはり表面利回りの数字になります。
不動産情報に載っているすべての物件を見るわけにはいきません。まずは最初のきっかけとして表面利回りから入っていくことが無難だと言えるのです。
利回りは何%以上ならOK?
あくまでも、最初の目安として表面利回りを検討していくことが理解できましたが、そこで何%の利回りを目指して物件を探すべきなのでしょうか。
利回りの相場は、地域によって異なるので一概に何%の物件を選ぶべきかを限定するのは、難しくなります。
地域による利回りの違い
どうして地域によって、利回りの相場が異なるのかというと・・・
それは、地域によって人口の流入率、流出率が異なるからです。
人口の流入率や流出率はそのまま、不動産の価格や賃貸率に影響を与えてしまいます。例えば、東京や大阪などの都心部では、学校、就職などで人口が集中する地域であります。そのような地域では不動産も高額、賃貸率も高くなりますが、満室状態を作りやすい環境にあります。
反面、人口の流出度が高い地域であれば不動産は安価になりますが、賃貸の需要も低くなり家賃収入を得ることが難しいと言えます。
不動産投資においては、賃貸率、満室率を考慮した上で利回りを見ていくことが重要になり、まずは国内の人口から見ておきたいと思います。
※平成27年度の各地域の人口
平成27年度の国勢調査によると、人口のトップは東京都で全国の約10%以上の人口を東京都が占めています。最小人口は鳥取県です。
人口が少ない地域では、やはり賃貸率は低くなってしまうでしょう。
そして最も留意すべき点は人口の流入率です。
※都道府件別人口増減率
平成22年度から平成27年度にかけては、沖縄県が最も多く、続いて東京都。逆に人口が減少しているのは秋田県、福島県となっています。
仮に利回りが20%超える物件だったとして、この物件が秋田県にあったとすれば、どうでしょうか。空室が続く可能性が高くなってしまい、実質の収益率は全く違うものになってしまいます。
反面、東京都で利回りが5%だったとしても、満室状態が続くことで実際の収益は秋田県の利回り20%物件よりも高くなるということです。
加えて、不動産は人口が多い地域ほど高くなる傾向にあり、投資額もそれに応じて高額になってしまいます。投資額が高くなれば、必然的に利回り率は低くなっていくことになります。
従って、地域によって理想となる利回り率は異なってしまうのです。
地域別の利回り相場は
では、地域別で考えた時に利回りは何%あればいいのでしょうか。
一般社団法人、日本不動産研究所が2018年4月に公表している資料を参考にしたいと思います。
オフィスビル
※Aクラスビルの期待利回り(東京/丸の内、大手町)
- Aクラスビルとはグレードの高い高級ビル
- 期待利回りとはキャップレートとも呼ばれるもので、投資額に対して期待できる収益率を市場の動向と照らし合わせて算出される数値、利回りの相場になります。
上のグラフで見ると、オフィスビルでは最も利益が見込めそうだと思える丸の内、大手町にて利回りは3.5%となっています。
続いて各主要都市の利回りはどうでしょうか。
※オフィスビル政令指定都市の利回り
利回りが最も高いのは、札幌、仙台の5.9%で、5%以下になるのは大阪府となっています。
では、次にワンルームマンションの利回りを見ていきましょう。
ワンルームマンション
ワンルームマンションの期待利回り(東京都/城南区)
- 城南区とは品川区・目黒区・大田区・港区
東京都内でも住宅地として人気の高い城南区だと、利回りの平均は4.5%です。
※各都市の期待利回り
各都市の利回りは以上のように広島県が6.0%、あとは5%代となっており、横浜、大阪に関しては5.0%という数字を出してます。
最後に商業店舗の利回りを参考に見ておきましょう。
商業店舗
※商業店舗の利回り
東京・銀座の高級店舗で利回りは3.5%、東京都内の郊外のショッピングセンターが5.5%の利回りとなっています。
※都市型高級専門店
各都市の高級専門店では、広島が5.9%、大阪は5%以下になります。
※郊外型ショッピングセンター
各都市の郊外のショッピングセンターは東京以外は総じて6%を超える利回りとなっています。
地域性、不動産の種類によって変わる利回り
以上のように、地域によって似たような物件であったとしても利回りには差が出てしまいます。そしてさらに、店舗かオフィスかマンションかなど不動産の種類によっても利回りは異なることが分かります。
大まかな判断基準としては、
- 人気のあるエリアほど利回り率は低くなる傾向にある
- 高級物件とされるものほど利回り率は低くなる傾向にある
と、見ていくことができるでしょう。
都市部の場合の期待利回りが東京都3.5%以上、大阪で4.5%以上、その他の主要都市部に関しては5.0%~6%。
期待利回りは純収益に近い数字だと言われていますので、都市部の期待利回り率を参考に表面利回りを見ていくことができるでしょう。
例)基本的に表面利回りよりも実質利回りは低くなると考えていけば、期待利回りの数字に2、3%は上乗せした数字の表面利回りを探す必要があります。
一概には言えませんが、期待利回り→5%は最低出したいのであれば、少なくとも表面利回りが7,8%の物件を選ばなければなりません。
また、同じ世田谷区であっても駅に近い遠い、建物のグレードや築年数、様々な要素によって利回りの数値は左右されます。
いくつかの不動産情報を概ねのところでまとめると、主要都市部にて10%超える物件を探すことは難しいとのことです。
主要都市部では表面利回りが5~8%、主要都市部以外の地方では12%前後の物件が多くなり、人口・流入率が少なくなるにつれて15%、20%以上と利回りは高くなっていきます。
地域の不動産サイトで似たような物件の利回りを確認してみるのも1つの方法になるでしょう。
高利回り物件の落とし穴とは
先述のように、人口が多く流入率の高い地域では利回りは5%以下のものもあり、高利回りとは言えないのが現実です。しかし、満室度の高さ賃貸率の高さからいけば安定した家賃収入が狙えるところにあり、先々で売却もしやすいというメリットがあります。
都市部で見られる4,5%の利回り物件であっても、地方の高利回り物件よりは確実な利益につなげることも可能となるのです。
不動産投資で初心者が犯しがちな間違えとは、不動産情報の宣伝文句でもある「高利回り」に裏付けもなく飛びついてしまうところにあります。
一般的に利回り10%を超えるものは高利回り物件として認識している人は多いでしょう。そこで高利回り10%の物件だということは3,000万円の物件を購入して、年間で300万円の利益を生み出すことができると思ってしまいます。
同時に賃貸率の高い都市部においては6%、7%を超える物件は高利回りと判断することもでき、この地域で7%の利回りなら最高じゃないかと判断してしまいがちです。
常に念頭においておきたい事は、
ということです。
あくまでも建物の価値を判断していく上での1つの目安にすぎないのです。
利回りの高さに惑わされて、不動産投資で失敗する人はたくさんいます。そこで、なぜこの不動産が高利回りなのかを考えてみることが大切なのです。
では、どのような物件が高利回りの物件になりやすいのかを考えていきましょう。
高利回り物件になる理由
- 人口が少ない地域で賃貸のニーズが低い
- 不便な立地にあり賃貸のニーズが低い
- 建物の築年数がかなり古くなり購入価格が安い
- 建物に不具合が多く購入価格が安い
- 入居者間のトラブルが多く空室が多い
- 事故、災害リスクが高い物件
高利回り物件になる理由は以上のような事が考えられます。
賃貸のニーズがなければ、収入の基盤となる家賃収入を得ることができません。築年数が古い物件や、建物に不具合がある場合は、リフォームや設備投資に資金がかかってしまい、投資総額が高くなればなるほど実際の収益率も低くなってしまいます。
もし、入居者間でトラブルが多い場合は、状況によっては法的な対処も必要となり、その対処に手間も費用もかかってしまうことになります。
これらの要素を考えると、明らかに利回りだけが投資物件の判断基準ではないことが分かります。
投資物件を探す注意点
しかしながら、利回りが低いよりは高い方が実質利回りも確実に高くなり、利回り数字はやはり大切な判断材料の1つであることは事実です。
不動産の運用費、各種経費、税金や不動産会社に払う手数料などを考えれば、あまりにも低すぎる利回りだと、満室となった際にも赤字を出してしまう結果にもなりかねません。
では、利回りを気にしながらもどのように投資物件を探していけばいいのでしょうか。
賃貸ニーズを探る
同じ東京都でも、港区の住宅と青梅市の住宅では賃貸ニーズが異なります。
港区は高級住宅街でもあり、比較的治安もよく安全に暮らしていける地域です。さらに、新宿にも渋谷にも千代田区方面に行くにも便利で、交通アクセスも整っています。
反面、青梅市の場合は都心部から離れており、通勤通学に時間がかかり、交通アクセスも不便な立地にあり、借り手を探すことが難しくなります。
不便な場所へ行けばいくほど利回りは高くなっていきます。そんな中でも賃貸ニーズを獲得できる物件を探すことが出来ます。
- 近隣の空室状況はどうなのか?安全で暮らしやすい場所かどうか
- 駐車場があることを不便な立地ではメリットにできる
- 不動産情報でその地域の相場を調べてみる
- 商業施設・教育機関・医療施設など近辺にアピールできるポイントはないか
- 庭の広さや敷地の広さをメリットにできないか
リフォーム・設備のチェック
古くなれば古いほど利回りも高くなります。そんな物件の中から掘り出しものとなる物件を探すことが出来ます。
建物は基本的な建築がしっかりしているものであれば、表面的な簡単な手直しだけで、見違えるような外観、内装にリフォームすることが出来ます。
その際に、今話題のDIYリフォームにてリフォーム費用を抑えることも可能です。ただ、プロにしかできない業務もあるので、どの程度のリフォーム必要なのかをチェックすることが大切です。
同時に、空調、換気扇、エレベーター、階段、手すり、など建物の設備に高額な費用がかかるようであれば、結局高利回りの物件を選んだとしても収益率は低くなってしまいます。
必ず確認しておくことは、
電気工事、配管工事、水道工事、ガス工事、外壁、屋根
などは基本的に素人では無理です。どの程度の修復が必要なのかを確認しておきましょう。
事故・災害・法的な問題はないか
また、なぜその物件が売りに出されているのかをしっかり調査してみましょう。
- 法律的な問題で入居者や近隣の者とトラブルがないか
- 以前その建物内で殺人や自殺などの事故がなかったか
- 変質者などが出現するという噂がないか
- 耐用年数を大幅に超えていないか、またはその対策は可能か
- 建物の周囲に災害時に危険要素となるものはないk
- 近辺で大規模な工事などを行っていないか
トータルの費用を概算
利回りを気にしながらでも、以上のことに注意してリサーチすれば、高利回りの物件からも収益の見込める不動産を探しだすことが可能です。
気になる不動産が見つかった場合は、大まかな投資金額を概算で計算してみることが大切です。
投資総額
- 取得費用
不動産購入費、税金、仲介手数料、事務手数料など・・・
- 運営費用
リフォーム、設備など・・・
- 管理費用
保険、管理費、修繕費など・・・
家賃
- 建物の築年数、状態
- 立地の便宜性
- 近辺の環境、安全性
- 将来性
などを考慮した上で、改めて実質利回りを計算してみましょう。そして、実際に手元に残るキャッシュフローはどれくらいの額になるのか想定してみることで、投資物件としての価値を判断する決め手となるでしょう。
まとめ
不動産ポータルサイトでは、高利回りの物件はたくさんあります。
なぜ、その物件が高利回りなのかを考えていくことから始めてみて下さい。その理由を見つけることで、高利回りの中からも、ある程度の高い収益が見込める投資物件を探すヒントになると思います。
- 人口、流入率
- 賃貸ニーズ
- 地域性や将来性
- 建物の状態
- 投資総額
- 家賃
- 実質利回り
などを入念に時間をかけてリサーチしていくことが、高利回りの物件で不動産投資を成功させるポイントとなるでしょう。