【初心者】株式投資に役立つ金融の仕組み。金融行政や経済指標と株式投資の関係について

株式投資を行う上で、金融市場全体の仕組みを知っておくことは大切なことです。今回の記事では、基本的な金融の仕組みや金融行政の役割、そして株式取引に役立つ経済指標を解説していきます。まずは、金融の仕組みから見て行きましょう。

金融の仕組みを理解しよう

まずは直接金融とはどういったものかを見ていきましょう。

直接金融とは投資家から資金を直接集める仕組み

出典:man@bow

金融とはお金を融通することです。金融機関を通さずに、投資家から直接集める仕組みを「直接金融」といいます。直接金融には、企業が発行する株式や債券などがあります。発行市場では証券(株式や債券)を発行して、集めた資金は流通市場(証券取引所など)を通じて売買されます。

証券会社は証券の発行と売買の仲介を行うだけで、その資金は株式や債券の発行体である企業に届けられます。 直接金融のリスクは、投資家や債権者が負い、仲介者である証券会社は責任を負いません。投資家はリスクを負う代わりに、株式の値上がり益や配当金、債券の利子を受け取ることができるのです。

発行市場とは

発行市場とは、プライマリーマーケット(一次市場)とも呼ばれ、企業・国・地方公共団体などが直接金融の仕組みを使って、事業に必要な資金を集める場所。新たに発行される株式や債券などの有価証券を投資家が購入する市場のことをいいます。

発行市場は実在する場所ではなく、抽象的な概念です。発行体となる企業や国にとっては、必要な資金を集める重要な場であり、また投資家にとっては新たな資産運用の場となっています。

例えば、株式の発行は事業資金を広く投資家から集めるために行われます。新しく上場する会社の株式の売り出しや、既に上場している会社の公募・売り出しなどがあり、値段は発行会社と証券会社によって決められ、公募(売出)価格で証券会社から投資家へ売却されることになります。

出資したら投資家が資金を回収したい場合には、流通市場を通じて売買を行います。続いて流通市場を見ていきます。

流通市場とは

流通市場は、「セカンダリーマーケット(二次市場)」とも呼ばれ、既に発行されている株式や債券などの有価証券を、投資家同士が取引する場所です。

証券の売買を直接行うことはできず、金融商品取引所(証券取引所)で、金融商品取引業者(証券会社)に委託して取り次いでもらいます。株式はオークション方式で値段が決まっていきます。オークション方式とは、競争売買によって売買を成立させる方法のことです。時間優先・価格優先の原則に従い、投資家の受付売買を約定させていきます。

債券の取引には、証券取引所で売買の相手を探すか(取引所取引)、証券会社自らが売買の相手方になって相対取引を行うか(店頭取引)の二種類の方法があります。債券の流通市場は店頭取引が大部分を占めています。

銘柄数が数万種類以上あり、毎年のように償還や新規発行されています。株式は、東京証券取引所でも4,000銘柄程度です。そういったことから、取引所で売買するには物理的な限界があるからです。

間接金融とは金融機関を通じて資産を運用すること

続いて、間接金融について見ていきましょう。

出典:man@bow

間接金融とは、銀行などの金融機関を通じてお金が必要なとこに届く仕組みです。例えば個人や企業が銀行などに預貯金をすると、その資金は金融機関の資産として運用されます。企業に対する融資や国債での運用、株式での運用といったような形です。その運用益の中から預金者に利子が支払われます。

この場合、運用のリスクは銀行などの金融機関が負い、預金者は元本や利子が保証される仕組みとなっています。

以上、金融の仕組みとして長期金利と短期金利を見てきました。次は、金融に関わる機関や法制度である、金融行政の仕組みを見ていきましょう。

金融行政の仕組み

金融に関わる機関や仕組みを理解しておきましょう。まずは日本の中央銀行である日本銀行からです。

日本銀行(日銀)の役割

「物価の安定」と「金融システムの安定」という二つの目的を達成するために以下のような業務を行っています。

  • 日銀券を発券

日本でお札(紙幣)を発行できるのは、日本銀行だけです。100円や10円などの硬貨は国が発行しています。紙幣の発行量を調節して金利の調節器の物価の安定を図っています。

  • 銀行の銀行

日本銀行は市中銀行の預金の一部を、無利子の当座預金で預かっています。その預金は他の金融機関へのお金の貸付などに利用されています。これにより、資金不足への対応、金融システムの安定が行われています。

日銀の当座預金は、銀行や証券会社など700社の金融機関が預金しており、個人や企業への払い戻し、金融機関同士の送金などに利用されています。金融機関から預かった預金の一定割合を預けなければならない「準備預金制度」によって成り立っています。

  • 政府の資金管理

政府が国民から集めた税金や国債のお金を日銀が預かって、政府の資金の収入と支出を管理しています。これらのお金は、公共事業に使われたり、公務員会の給料などに使われたりします。

  • 金融政策の運営(日銀金融政策決定会合)

日本銀行で金融政策運営の基本方針を決定するために開かれる会合です。金融市場の調節や、政策判断の方針を討議決定します。金融政策の変更は、日経平均株価など株価にも大きな影響を与えます。金融政策が行われる日本銀行の組織図は以下のようになっています。

出典:日本経済新聞

それでは、市場に最も関係がある、日銀金融政策決定会合を詳しく見ていきましょう。

日銀金融政策決定会合とは

日本銀行(日銀)の役割は、物価の安定や金融システムの安定を維持することです。そのために金融政策があります。金融政策とは、日本の金利の方向を決めることです。例えば、政策金利の引き上げや引き下げ、市中の資金量の調節があります。

日銀の最高意思決定機関である政策委員会の会合のうち、金融市場の調節方針、経済や金融情勢に関する見解などを決めます。日銀政策委員会のメンバーは、日銀総裁、副総裁2人、審議議員6人の合計9人です。金融政策の方針は多数決で決められます 。

日銀総裁は、国会の同意を得た上で内閣が任命することになっています。任期は5年間。現在は第31代目として黒田東彦氏が再任されています。

金融政策決定会合は、月に1~2回行われ、原則二日間です。初日は、景気認識を話し合い、二日目に金融政策の変更の有無を決めます。会合が終了したらその日のうちに「金融経済月報」が公表され、議事の要旨は1ヶ月後に公表されます。ただし、発言者名は伏せられており、実名での詳細が公表されるのは、10年後となっています。

会合の終了後には日銀総裁の記者会見が行われます。金政策の決定内容や景気の現状認識などについての発言は、国内の市場関係者はもちろん、各国政府や海外機関からも大きな注目を集めています。

続いて、金融システムの安定化に重要な役割を果たす公的資金について見ていきましょう 。

金融システムの安定に使われる公的資金

金融危機の際、大手金融機関への公的資金注入の是非が議論されます。公的資金とは、国又は地方公共団体の持つ財政を企業に注入する資金のことです。

法的な定義はないものの、主に国の会計の収入は税金なので、海外などでは直接的に「公的資金 = 税金」と表現されることが多いです。しかし、他に公的年金保険料や国債発行で調達した資金も公的資金となります。

大切な公的資金を民間企業である金融機関の救済に使う点が問題視されているものの、金融システムは公共的な役割を担っているため、その安定化に必要と判断される時は公的資金が注入されるのです。

金融システムに対する不安が強まっていることが、日本の景気回復の障害になっているという見方があります。ですから、金融システムを安定させるために、公的資金の投入が議論されています。

続いて、金融庁について見ていきます。

金融庁は金融機関の検査・監督・監視などを担当する行政機関

金融庁は、金融監督庁と大蔵省金融企画局が統合し、2000年に発足しました。主に次の三つの業務があります

①金融制度について法律やルールを作ること

②銀行などの金融機関に対する検査監督

③株式などの取引についての監視

金融庁の役割は、安定した金融システムを保つこと、経済発展を支える投資資金がスムーズに流れる市場を維持することです。また預金者や保険契約者、投資家の保護も図ります。 金融機関が守らなければいけない法律やルールを定め、そのルールを守っているかどうか日々チェックしています。

また、金融市場では証券取引等監視委員会を金融庁の中に設置し、インサイダー取引や仮装売買など不公正な取引が行われていないか監視しています。

証券取引等監視委員会では、公正な証券取引が行えるようホームページ等で情報提供を呼びかけています。 インサイダー取引や有価証券報告書虚偽記載などの案件について、調査や告発を受け付けています。また、金融商品取引業者に対する立入検査、行政処分の報告などを行っています。金融庁の役割は以下の図のようになります。

出典:金融庁

経済の仕組みを詳しく知ろう

続いて、景気を示すマクロ指標についてみて見て行きましょう。株式投資に必要で、最低限知っておきたい景気指標を解説します。

GDPとは国の経済規模や景気動向を表す指標

GDPはGross Domestic Productの略で、国内総生産といいます。モノの生産やサービスの提供を通じて、国内で新たに生み出された付加価値の合計額です。つまり、日本国内で日本人が働いて稼いだぶんの総額でのことです。経済の規模を表すので、GDPの増加は経済成長を意味しています。

経済成長率が大きければ国民の所得や産業全体の利益が増えていることになります。物価の変動を考慮して調整した経済成長率を「実質経済成長率」といい、調整する前のデータを「名目経済成長率」といいます。

日本の名目GDP の内訳を見ると以下の図のようになります。

出典:日本経済新聞

GDPは物やサービスを提供する生産面だけでなく、個人消費や住宅投資、企業の設備投資や政府最終消費支出など支出面からも捉えることができます。その内訳を見てみると、個人消費が全体の5割以上を占めています。GDPは国の政策の基礎である他、国連が定めた国際基準に準拠して算出されるため、経済規模を比較するのに用いられています。

2016年の各国の名目GDPは以下の図のようになります。

出典:日本経済新聞

名目GDP第1位は18兆6,244億ドルの米国です。日本のGDPは1968年に米国に次ぐ第2位となり、1970年代までは年平均で10%前後の経済成長率がありました。1970年代半ばから経済成長率は鈍化し始め、バブル景気と呼ばれた80年代後半でも6%前後。

1990年代前半のバブル崩壊以降、日本経済は長い不況に突入 。GDPはたびたびマイナスを記録しています。そして、2010年には名目 GDP で中国に抜かれて世界第3位となりました。

次に、景気の動向を示す景気動向指数について見ていきます。

景気動向指指数は景況判断を示す指標

景気動向指数は景気全体の現状を知ったり、将来の動向を予測したりするときに使われる経済指標です。現在は、生産、雇用、販売、法人税収入、お金の流れなど、あらゆる側面を網羅した28項目が利用されています。

28項目には、景気に対して先行して動く先行指数、景気とほぼ一致して動く一致指数、景気より遅れて動く遅行指数の3種類があります。主な項目は次のようになります。

  • 先行指数  機械受注、新規求人数
  • 一致指数   企業の営業利益や生産、求人倍率
  • 遅行指数  法人税収入は消費者物価指数

景気動向指数には、コンポジット・インデックス(CI)ディフュージョン・インデックス(DI) の2種類があります。CI は構成する指標の動きを合成することで景気変動の大きさを表し、平成17年を100として前月の指数が多く増えているのであれば、景気が拡大していると判断します。

DIは上昇を示している指標の割合が数ヶ月連続して50%を上回っている時は景気拡大、50%を下回っている時は景気が後退していると判断します。続いて、日銀短観を解説します。

日銀短観

日銀短観とは、3ヶ月ごと(3、6、9、12月)に実施する民間企業の景気の現状と先行きについて直接アンケート調査をし、日本の経済を観測するものです。海外でも「TANKAN」と呼ばれ注目されています。正式には「企業短期経済観測調査」といいます。

全国の大手企業と中小企業、製造業と非製造業などに分けて、約1万社以上を対象に業績や設備投資の状況、雇用などについて実績と今後の見通しを聞きます。その中でも、大企業製造業の DI (Diffusion Index:業況判断指数)が注目されています。DIの算出方法は以下のようになっています。

DI = (良いと答えた企業の割合) ― (悪いと答えた企業の割合)

例えば良いと答えた企業が50%、悪いと答えた企業の割合が30%だったとすると

DI = 50%-30% = 20%

となります。

DIの 最高は+100%、最低は-100%となります。

日銀短観は、日本銀行という金融政策当局自身が調査していること、回収率が高く、調査対象も広いのでマーケットやエコノミストに注目されています。景気判断の重要な目安になっています。

金融政策や経済指標を株式取引にどう活かすか

金融行政である日銀による金融政策決定会合、そして経済指標であるGDP、景気動向指数、日銀短観などは株式市場や為替市場、国債市場などに大きな影響を与えます

取引においては、予測値に対して結果が上回っているのか、下回っているのかを判断基準にします。また、マーケットがどのように反応するかということに注意する必要があります。そのためには、以下のような点に注意しましょう。

①指標の重要性を測る

②指標が発表された時の変動幅を分析する

例えば、2012年の12月から始まったアベノミクス相場では、金融政策が大変注目されていました。ですから、日銀の金融政策決定会合によって、株式市場や為替相場は大きく動いていました。しかし、最近では金融政策の変更がなくなり、以前ほど注目度が高くなくなっています。

時期によって、どの経済指標が注目されるかどうかというのは変わってきますので、その指標が発表された時にマーケットがどの程度の値動き(ボラティリティ)があるのかを調べて、投資判断するようにしましょう。

まとめ

今回の記事では、株式投資を行う上で必要な金融市場全体の仕組みを解説した上で、日銀や金融庁など金融行政がどのような役割を果たしているのか。また、株式取引や為替取引において重要なGDPや日銀短観、景気動向指数など景気指標について見てきました。

株式投資では個別企業の業績が一番ですが、日本経済の動向がどうなっているのかを把握しておくことは大切なことです。「木を見て森を見ず」にならないように、日本経済全体の動向を把握しながら取引を行っていくようにしましょう。

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一橋大学経済学部卒業。証券会社でマーケットアナリスト、デリバティブディーラーを経て、個人投資家に転身。投資歴は20年以上。現在は、日経225先物を中心に現物株・FX・CFDなど幅広い商品に投資しています。保有資格:証券外務員1種

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