FX初心者のための通貨別の傾向と対策

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通貨によって動きには特徴がある

為替相場は様々な要因で変動していますが、通貨の動きには通貨ごとにそれぞれ特徴があります。当然、その特徴的な動きも市場環境次第で必ずしも当てはまらないこともありますが、基本的な通貨の特徴を押さえておくことは、相場に参加する際に役に立つことでしょう。それを今回は紹介いたします。

まずは世界の基軸通貨である米ドルからです。

米ドル

米ドルは世界の基軸通貨として扱われています。では、基軸通貨とはそもそも何なのでしょうか。

  1. 国際的な金融取引における決済通貨に使われていること・・・実際に、原油や金など多くの商品市場の取引では、価格が米ドルで表示されており、米ドルで資金決済されています。為替市場で最も多く取引されており、流動性も最も高いのも米ドルです。
  2. 外貨準備に使われている・・・現在世界の外貨準備の6〜7割程度を米ドルが占めています。一時期ユーロの外貨準備が増加しましたが、2009年頃の欧州債務問題やEU離脱などの問題を受け、ユーロの信用が低下し、その比率は下がりました。

有事のドル買い

米ドルは基軸通貨であるだけに、他の通貨と違った値動きの特徴があります。代表的な例に有事のドル買い、と言うものがあります。米ドルは世界中で決済通貨として利用されているために、戦争やテロリズムなどの混乱が生じるととりあえず資金の流動性を確保するために、多くの金融機関などがドル買いに走ります。その結果、有事に際にはドルの価格が高騰するという現象が起こるのです。

もちろん為替はその時々の様々な要因で変動しますし、9,11米国同士多発テロのように米国が被害の当事者となった時は、ドル安が進みましたから、最近では必ずしも有事の際にドルが上がることは減ってきました。しかし、金融ショックなどにより信用不安が起こると、やはり米ドルが買われる傾向に未だあります。信用不安とは、銀行の信用力が低下し、銀行同士で資金を融通しなくなる状態を言います。銀行は通常、銀行間市場で資金のやり取りをしています。

特に基軸通貨である米ドルは手元に置いておきたいので出し手が減っていき、資金調達側はより高い金利でないとドルを調達できない様になってしまうこともあります。このため信用不安が起こると、銀行間市場の金利が上昇するといった現象が起こるのです。

例えば、リーマンショックの直後、流動性が低い通貨は、対円で急落しました。オーストラリアドルなどは対円で45%も急落したのに対し、米ドルは対円で20%の下落幅にとどまっています。米ドルが他の通貨に比べて安定していることがわかります。金融ショックや地政学的リスクによる、通貨暴落リスクをヘッジするためには、流動性が高く、対円で安定していて、なおかつ有事のドル買いも期待されている米ドルを資産の一部で保有しておくのも戦略の一つと言えるでしょう。

ユーロ

単一通貨ユーロの発足は、半世紀に及ぶ欧州統合の歴史の延長線上にあります。第二次世界大戦が終結すると、戦争によって弱体化したヨーロッパ経済の立て直しと、欧州全体の平和維持、安全保障の目的から欧州統合の機運が高まり、統合に取り組む国際機関として1949年に欧州評議会が発足しました。1951年には欧州石炭鉄鋼共同体が、ベルギー、オランダ、旧西ドイツ、フランス、イタリア、ルクセンブルクの6カ国で発足します。

1957年には欧州石炭鉄鋼共同体の加盟国によって、欧州原子力共同体、欧州経済共同体などが次々と発足し、経済統合を目指して各共同体が同時に稼働し始め、1967年のブリュッセル条約によって、これらの共同体が欧州連合の前身である欧州諸共同体に統合されました。これに伴い、それぞれの共同体を共通の予算で運営する機関として、欧州委員会と欧州共同体理事会が発足しました。

次の年の1968年には関税同盟により関税が撤廃され、加盟国間の自由貿易が実現しました。欧州諸共同体の加盟国は徐々に増え、1992年には、加盟国間でマーストリヒト条約、すなわち欧州条約が締結されました。翌年11月には欧州連合が発足し、人、もの、サービスの移動の自由化が実現しました。

欧州通貨制度(EMS)は、ヨーロッパ通貨制度とも呼ばれ、1979年から1999年まで使われました。欧州統合の進展に際し、金融通貨面での安定を図るための枠組みのことをいいます。これは、1976年の欧州通貨危機や1979年の第二次石油ショックなどの影響で欧州経済が停滞したことを契機に、欧州連合の前身である欧州共同体(EC)が、域内の為替安定化などを目的として1979年に導入したものです。(英国を除く、ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、デンマーク、アイルランドの8カ国によって設立されました。)

一般に欧州通貨制度は、為替変動幅を調整する仕組みである「ERM(欧州為替相場メカニズム)」、欧州通貨単位の「ECU」、欧州通貨協力基金(EMCF)の貸付制度の拡充などからなり、約20年間、ユーロ導入までの移行期間的システムとして機能しました。

ユーロ導入後の経済の動き

導入後のユーロは、加盟国の経済に左右されてきました。1999年にユーロが導入されてからすでに16年経ちました。

ITバブルが崩壊した2001年以降、ユーロ圏も景気が悪化し、ポルトガルを初めに財政赤字がGDP比で3%を超える国が出てきました。フランスは2001年にGDP比3.1%、ドイツも2002年にGDP比3.7%まで財政赤字が拡大しています。ギリシャショック以降深刻化した欧州債務ショックの根は深く、ユーロ圏共同債券の発行や、国家予算の一部共同管理といった構造改革が進むまでは、今後もしばしば各国の財政問題が市場で材料視され、ユーロの値動きを不安定にする場面も出てくるでしょう。

財政ショックを経て、ユーロという通貨の信用は失墜しましたが、経済規模を見るとユーロ圏のGDPは1兆2600億ユーロを誇り、米国のGDPにも接近しています。また、人口は4億人を突破し、米国を上回っています。通貨の流動性も米ドルに次いで高いため、世界の外貨準備では、ユーロの割合が徐々にましてきています。2001年の米国同時多発テロ以来、中東の国々が外貨準備でユーロを買うようになり、ドルからユーロへ資金が流れているとの見方が広がり、長期にわたるユーロ高・ドル安トレンドの材料となりました。

このようにユーロとドルは、表裏一体。コインの裏と表のような関係性になっています。ドルが弱いドル安相場の時は、ユーロが上昇し、逆にユーロが弱い時は、ドル高になる傾向が見られるのです。

イギリスポンド

イギリスポンドは、英国の通貨ですが、呼び方がいくつもあるのが特徴的です。まず、スターリング、これは銀の価値を示します。これは英国で銀貨を発行していた時の名残です。次に、ケーブル。これは昔、海底電線を使って為替レートをやりとりしたことが由来と言われています。それと、クイッド。ただ、これは米ドルをバックと呼ぶのに似たイメージで、口語でややくだけた言い方のようです。

さらに特徴的なのは、英ポンドはきわめて流動性の高い通貨、ということです。GBP/USDは外為市場の中で最も流動性の高い4つの通貨ペア(USD/EUR、GBP/USD、USD/JPY、USD/CHF)のひとつです。英国はヨーロッパの金融センターとしての顔を持ち、英国の都市であるシティーは欧州金融市場の重要な拠点となっています。戦前は基軸通貨でしたが、ユーロの登場により国際的な地位は低下しています。

その高度に発達した資本市場が英ポンドの流動性の高さの要因です。米国以外でトレード機会を求めている海外の投資家は、資金を英国へ送ります。そのために海外投資家は現地通貨を売り、英ポンドを買うことが必要となります。

イギリスは、世界第4位の経済大国です。世界有数の中央銀行を持つイギリス経済は長年にわたる力強い成長、低い失業率、生産高の増加、回復力に富む消費によって恩恵を受けているのが特徴です。さらには、2012年のオリンピック開催を先取るように経済は力強い発展を続けている。世界最先端の資本市場システムを有し、金融と銀行がGDPに大きく貢献しています。

石炭や油田を中心にした石油などのエネルギー産業も経済を支え、EU最大級の天然ガスの生産国であり輸出国であることを覚えておく必要があるでしょう。エネルギー価格の上昇が多数のイギリスの石油業者に大きな利益をもたらし、株価を押し上げています。

しかしながら、流動性の高い通貨であり、取引量は米ドル、ユーロ、日本円に次ぐ位置にあります。ポンド円は動きが激しくボラティリティの高い通貨として短期投資家や短期の期間トレーダーから人気が高い反面、ポンドボラリティが高く危険だから取引をしない、という個人投資家もいるようです。短期的な利益が期待できますが、損失が大きくなる可能性が高くなります。

中華人民元

中国の通貨人民元を理解するためには、まずは性質の異なる2つのが存在することから説明していきましょう。

まず本来の通貨コードはCNYで表されますが、こちらはオンショア人民元といい、中国国内で通常使われている通貨となります。
オンショア人民元(CNY)は現在、通貨バスケット制を参考にした管理フロート制が導入されています。 わかりやすく言うと、米ドルなど主要通貨の値動きを参考にしながら為替レートを操作する、という制度です。

FXで使われるオフショア人民元(CNH)は主に、香港を中心とした中国本土外で売買されている通貨です。
中国国内での売買に限定されているオンショア人民元に対して、金融緩和によってオフショア人民元(CNH)は香港など、海外の金融機関が取引できるマーケットであることから、FXで自由に売買ができる仕組みなのです。

このような理由により、中国国内向けと海外向けで異なる、2つのマーケットが存在するという訳です。

通貨の動きの特徴

中国の輸出先第一位はアメリカであり、アメリカの輸入は中国が第一位です。しかし、近年貿易赤字となっているアメリカが、中国に対して人民元の切り上げを要求していることからも、経済力の割には通貨の価値が低いとする見方もできます。そのため、人民元は今後の規制緩和とともに、長期間にかけて緩やかに上昇するだろうと期待されている通貨です。

それでは人民元/円の値動き傾向を見ていきましょう。

三大マーケットの一つ、東京市場と中国の香港は地理的にも近いため、日中に活発に動いたりすることもあります。この日中の時間帯でもっとも注目すべきは、中国人民元の基準値公表中国・株式市場のオープン時間です。中国人民銀行は10時15分に、人民元の取引レートの基準値を公表しています。
この時間は中国経済の先行きに不安が見られているときに注目されやすく、値動きに大きく影響することもあります。

その後の10時30分には、上海株式市場がオープンします。
こちらも同様に不安要素があるときに動向が見られやすく、このようなときは上海総合指数の値動きに注目が集まります。この時間帯はCNH/JPYのみならず、中国の経済動向は金融市場全体に対する影響度が増加傾向にありますので、慎重に取引を行いましょう。

資源国通貨

資源国通貨とは、原油などのエネルギー資源、鉄鉱石などの鉱物資源などの資源の豊富に産出し、資源を他の国に輸出している資源国の通貨を意味します。資源国通貨は、商品市況の影響を受けやすいことが特徴で、商品市況が上昇するときは資源国通貨高となりやすく、商品市況が下落するときは資源国通貨安となりやすい傾向があります。

また、資源国通貨の動向は資源の輸出先の国(輸出相手国)の景気動向に影響を受けやすいことも特徴です。輸出先の国の景気が悪化すれば、生産活動も停滞するため、資源の需要が低迷してしまうため、資源国通貨安となります。逆に輸出先の国が好景気であれば、資源の需要も高まり、資源の輸出が増大するため、資源国通貨高となります。

資源国通貨として有名なものには次のようなものがあります。ただし、何を資源国通貨とするかは人によって異なります。オーストラリアドル(豪ドル)やカナダドル、南アフリカランドなどは資源国通貨として特に有名です。

オーストラリアドル

オーストラリアは豊かな天然資源があり、資源国の代表格として有名です。農業においては、小麦が中心になります。他には羊毛などが有名です。鉱物資源では、鉄鉱石が中心で、他にも石炭やウラン、金などもあります。そういった背景もあり、オーストラリアは長い期間に渡って経済成長を続けているのです。安定して+2%以上の経済成長を続けているのです。

ただし懸念材料がないわけではありません。それは輸出先の主要国として大きなカギを握っている中国の存在です。オーストラリアにおける輸出全体の30%以上を中国が占めているのです。そのため、中国経済の影響を受けやすい状況になっています。2015年に中国株価が大暴落した際には、豪ドルも巻き込まれる形で下落しています。

南アフリカランド

南アフリカはアフリカ大陸最南端に位置する国で、主要新興国のBRICSの一員でもあります。金やダイヤモンドをはじめ、鉱物資源が豊富な国です。

最近の失業率は万年20パーセント超えで経済は少々苦しく、政情不安があったりと、正直、ちょっと不安要素が多い国でもあります。ですがそれを補って余りある要素、高金利が特徴的な通貨です。政策金利は6.5%(2018年10月現在)という世界的に見ると非常に高い設定がされています。ただ、この高金利は過熱した経済を抑える目的ではなく、資金の流出を防ぐ目的で設定されている点は注意が必要です。

南アフリカランド通貨トレードの最大のメリットは、高金利通貨なのでスワップポイントが高いことでしょう。具体的なイメージは、南アフリカランド/円を1万通貨購入すれば、1日あたり15円ぐらいのスワップが発生してきます。1年持っていたら、それだけで5000円以上もスワップ利益が出るということになりますね。

資源国通貨の動向

資源国通貨の動向は資源の輸出先の国の景気動向に影響を受けやすいことも特徴です。輸出先の国の景気が悪化すれば、生産活動も停滞するため、資源の需要が低迷してしまうため、資源国通貨安となるという流れです。逆に輸出先の国が好景気であれば、資源の需要も高まり、資源の輸出が増大するため、資源国通貨高となります。

また、景気後退時には注意が必要です。資源国通貨は世界的な景気後退時に弱い動きとなる傾向があります。世界的な景気後退時には、世界各国で生産活動などが停滞することから資源に対する需要が落ち込むため、資源の輸出が減少し、資源国通貨は売られやすくなります。資源国通貨は総じてボラリティが高めなので、リスクをよく考えて取引をするようにしましょう。

 

 

 

 

 

 

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