FX取引に役立つ!為替相場が動く経済指標を徹底解説!

SHARE

FX 取引が行わる為替市場は、投機的な資金が多いといわれています。 しかし、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)にも大きな影響を受けます。為替市場に影響を与える経済指標は何なのか、そして日米欧の金融政策が為替レートにどのような影響を与えるのか、ということを今回は解説していきます。

FXのファンダメンタルとは

FXとは「Foreign Exchange」の略で、日本語では「外国為替証拠金取引」のことを指します。

為替相場は、通貨同士を取引する仕組みです。その国の通貨に人気が出れば買われて上昇しますし、不人気となれば売られて下落します。例えば、雇用統計や GDP の発表でアメリカの国内景気が良ければ、米国経済が好調と考えられ、米ドルが買われる原因になります。

また、各国の中央銀行が行う金融政策を為替相場に影響を与えます。例えば、米国の FOMC(連邦公開市場委員会) 、 EU(欧州連合) のECB( 欧州中央銀行)理事会、日銀(日本銀行)による金融政策金融政策決定会合などがあります。金融政策では金利を決定しているので、米国の金利が上がれば米ドルでの高い金利が見込めるので、人気が高まることになります。

金利に関しては、金融政策だけでなく国債の利回りにも注目が集まっています。日本の金利は低金利なのであまり影響はありませんが、現在ではアメリカの10年債が3%を超えてきています。一般に米国債の利回りが上昇すれば米ドルが買われ、下落すれば売られるといった動きがあります。

政府のトップや中央銀行の幹部などの発言にも為替相場は大きな影響を受けます。為替市場は24時間取引なので、日本だけでなく、米国や欧州で発言が出ると、相場は大きく動くことがあります。特に、2016年米国大統領になったトランプ氏がツイッターでつぶやくと、為替相場が大きく動くようになりました。

為替は連想や思惑で動く

「有事のドル買い」というのがあります。世界各地で戦争やテロなどの紛争が起こると、安全資産とされる米ドルが買われる傾向があるということです。しかし、最近は「有事の円買い」の側面も強まってきました。主な原因は2つあります。

一つは、「円キャリートレード」です。金融緩和策を続ける日本は、世界でも類をみない低金利なので、低金利の日本円で資金調達して、高金利の通貨や株式を買うキャリートレードが行われています。しかし、リスクオフ(リスクを避ける動き)が起こると、キャリートレードのポジションを巻き戻す動きが活発化し、円が買われます。

二つ目は、日本の対外純資産が多いことです。対外純資産とは、政府や企業、個人が海外に保有している資産(対外資産)の残高から、海外の政府や金融機関などに対して負担する債務(対外債務)の残高を引いた差のことです。 2017年の日本の対外純資産額は328兆4,470億円。3年連続で減少したものの、27年連続で世界最大の対外債権国となっています。安全資産としての円の地位が揺らいでないのは、対外資産の大きさも原因の一つになっているのです。

ただ、こういった原因があるにしろ、実際に資金が引き上げられているかということは正確にはわかりません。しかし、市場参加者の連想や思惑が相場を動かし、時に大きく円高に進むことがあるのです。

為替は株式市場や商品市場との連動性も高い

為替市場は、他の市場にも大きな影響を与えています。日経平均株価は、円安になれば上昇し、円高になれば下落します。また、金相場は米ドルと逆相関(反対の値動き)になっていたり、原油相場が上がるとオーストラリアなどの資源国通貨が上昇したりする傾向にあります。為替市場を単独で見るのではなく、株式市場や商品市場と合わせて分析することで、より正確な見方ができるようになります。

為替相場を動かす「材料」を見極めよう

為替市を動かすテーマや材料は日々に変わっています。現在の相場を動かす材料は何なのかということを把握しておくことが重要です。例えば、1980年代から90年代は、アメリカの財政赤字と貿易赤字、いわゆる「双子の赤字」が問題視されていて、貿易収支の数値が注目されていました。しかし近年は米国や EU 日本で行われている金融政策が大きなテーマになっています。米国では、金融政策に大きな影響を与える「雇用統計」が大きな注目を集めています。

また、市場のセンチメント(市場心理)を見極めることも重要です。市場参加者が積極的にリスクをとっているのか(リスクオン)、あるいは市場参加者が弱気になっていて守りに入っているのか(リスクオフ)によって、ニュースや経済指標への反応が大きく変わってくるからです

FXでの経済指標の重要性

為替市場を動かす要因には、様々なものがあります。最近では、トランプ大統領のツイッターなどが有名ですが、個人投資家がそういった突発的な材料に反応するのは困難です。しかし、経済指標は発表スケジュールも時間もあらかじめ公表されていて、アナリストの予想数字も出ています。 為替市場を大きく動かす材料は米国の経済指標が多く、日中は仕事などで取引できない投資家でも、リアルタイムで取引することが可能です。

経済指標で FX 取引を行う場合、マーケットの事前予想と、経済指標によって為替市場が直近どの程度動いているのかということを把握することが大切です。市場参加者の注目度が高ければ高いほど、ボラティリティ(値動きの幅)は高まります。

事前の予想数値に対して、実際の数値がどの程度上振れたのか、下振れたのか。どの程度、市場に織り込まれていたのか、といった雰囲気をつかむ必要があるのです。

つまり、経済指標発表後の相場の反応は、数値が良いのか悪いのかということではなく、市場予想値との乖離で決まります。また、市場予想より良い数値がでても、すでに市場に織り込まれていれば、必ずしも買われるというわけではありません。

反応の小さな経済終了では10 ~20pips程度の値動きですが、大きな経済指標では30~100pipsを超えるような反応があります。いつも同じ方向に動くわけではありませんが、経済指標の発表時間は公開されているので、動き出すタイミングは決まっています。

★pipsとは、為替レートが動く時の最低単位のことです。ドル円での1 pipsは1銭、 100pipsは1円となります。

実際にトレードするには、1日で決済を行うデイトレードというよりも、さらに短い時間で決済する「スキャルピング」という手法が一般的です。スキャルピングとは、数秒から数時間のうちにポジションを決済する手法です。スピードが要求されることや、損切りを徹底しないと大きな損失を被る可能性もあるので、厳格な取引ルールの確立が必要になります。

リアルタイムでスキャルピングを行わない投資家でも、経済指標の発表と、その後の為替市場の反応を見て今後のトレンドを占うことができます。 それでは実際にどのような経済指標に注目していけばいいのか見ていきましょう。

FX|注目経済指標と金融政策はこれだ!

注目される経済指標は以下のようなものがあります。

 

 

  1. 雇用統計
  2. 米国 GDP
  3.  ISM 製造業景況指数

 

合わせて金融政策も見ていきます。

 

  1. FOMC(米国)
  2. 日銀金融政策決定会合(日本)
  3. ECB 理事会(欧州)

 

米国雇用統計は最も注目を集める経済指標

米国労働省が毎月発表する、米国の雇用情勢を調べた景気関連の経済指標をいいます。雇用の状況は、日本と比べてリストラしやすい米国企業の景況感を反映し、個人消費にも大きな影響を与えます。米国の金融政策にも大きな影響を及ぼします。

発表日時は、原則第一金曜日22時30分(夏時間は21時30分)です。10項目の数字が発表されますが、注目されるのは「非農業部門就業者数」「失業率」の2項目です。

「非農業部門就業者数」は、農業以外の民間企業で支払った給料を元に計算されています。経営者や自営業者は除外されます。業種別に発表されますが、特に製造業の就業者数が注目されます。雇用者数は景気が後退する時減少し、不景気の終わりから景気が上向くと、回復しやすい傾向にあります。過去1年間の予測値と結果値を見てみましょう。

出典:ヤフーファイナンス

このように、予測値と結果が乖離することが多いのが特徴です。

 

「米国失業率」は失業者の割合を示す指標です。計算式は以下のようになります。

失業率 = 失業者 ÷ 労働人口 × 100

出典:マネースクウェア

失業者や労働人口の定義は国によって異なるので、国際比較は向いていません。あくまでも過去との比較や推移をみる指標です 。失業率の推移を見てみましょう。

出典:ヤフーファイナンス

現在の米国の失業率は3.7%と、歴史的な低水準にあります。ほぼ完全雇用に近いような状態になっています。米国経済の好調さが伺える数値です。

雇用統計は多くの家投資家が注目していると同時に、サプライズが起こりやすい指標です。サプライズとは、事前の市場予想と大きく乖離した結果が起きることです。雇用統計の発表後は一瞬で100 pips 1円以上を動くこともあります。

出典:PayPay銀行

2012年4月の米雇用統計後のドル円チャートです。発表後1分ほどで、約80銭も円高に動いているのがわかります。

雇用統計の先行指標

雇用統計の先行指標として、「新規失業保険申請件数」「ADP雇用統計」があります。新規失業保険申請件数は毎週木曜日に発表されるため、速報性に優れています。翌月に発表される雇用統計の先行指標として活用されることが多いです。ADP雇用統計は、雇用統計の2営業日前に発表されます。政府機関の雇用が含まれていないものの、雇用統計非農業部門雇用者数を予想する先行指標として活用されています。

米国 GDP( 国内総生産)

GDP とは一定期間内に国内で生み出された財とサービスの付加価値の総額をいいます。景気動向や経済成長を判断でき、中長期的な景気動向を使うのに重要な経済指標です 。世界の GDP ランキング TOP 10を見てみましょう

 

出典:GLOBAL NOTE

GDPは世界各国で発表されていますが、やはりアメリカがダントツでトップとなっています。ですから、為替市場に影響を与えるのも、やはりアメリカの動向が一番注目されます。

米国商務省経済分析局からGDP速報値は1,4,7,10月下旬の22時30分(夏時間は21時30分)に発表されます。

GDP は以下の項目で構成されています。

名目 GDP

経済活動水準を市場価格で評価したものです。

実質 GDP

実質 GDP は、名目 GDP から物価変動の影響を除いたもので、一般的には名目 GDPより実質 GDP の方の注目度が高くなります。また、個人消費や付加価値の価格変動を示す GDP デフレーターにも注目が集まっています

個人消費

個人消費は、アメリカ GDP の約7割を占めます。個人が購入する財貨とサービスです。

設備投資

設備投資は、構築物と機械設備とソフトウェアに分類されます。

住宅投資

住宅投資は、単身用と家族用に分かれています。耐久消費財との相関性が高いため、景気変動要因として重要な指標です。

在庫投資

在庫循環が景気の局面を捉えるのに重要な在宅投資ですが、ブレが大きく予測が難しいという特徴があります。

GDP は毎月発表されています。最初に速報値が発表され、翌月に改定値、翌々月に確定値と3ヶ月サイクルになっています。

注目されるのは速報値が発表される1,4,7,10月です。ただし、確定値や確定値でも、大きな修正があった場合には影響力があるので、チェックする必要があります。

ISM製造業景況指数

ISM (全米供給管理協会)が算出する、製造業の景況感を示す指標の一つで、毎月第1営業日(夏時間:午後11時 冬時間:午前0時)に発表されます。 発表時期が最も早いので、注目度が高い経済指標です。当月の発表と同時に、前月の修正分も発表されます。生産・新規受注・在庫・雇用などを前月と比較して「良くなっている・同じ・悪くなっている」の三択で回答。ゼロから100%までのパーセンテージで、50%を上回ると景気拡大、50%を下回ると景気後退と判断します。

同じく第3営業日に発表される 「ISM 非製造業景況感指数」も、同様に注目度が高まっています。ISM 製造業景況指数のここ1年の推移を見てみましょう。予想値と結果値が乖離していることが多いのが分かります。

 

出典:ヤフーファイナンス

 

日米欧の金融政策

最後に、為替市場に大きな影響を与える日米欧の金融政策について見ていきます 。

 

FOMC(米国)

経済指標同様、金融政策も一番注目されるのは米国です。米国の中央銀行であるFRB(米連邦準備制度理事会)が定期的に開く会合が、 FOMC( 連邦公開市場委員会)です。FOMCは年8回開催され、現在の景気判断と、政策金利(FF金利)の誘導目標値を設定します。

FOMC では、政策金利の利上げ利下げを判断しています。経済指標と同じように、予測値と乖離があるかどうかで大きく違ってきます。例えば、0.25%の利上げ予想の時、0.5%利上げが行われると、期待以上の結果ということで、為替レートに大きな影響を与えるのです。

FOMC の議論のもとになるベージュブック

FOMC 開催の2週間前には、「地区連銀経済報告」が発表されます。これを「ベージュブック」といいます。 FOMCでは、この概況報告を元に議論がなされることから、金融政策の変更時には注目が高まります。

日銀金融政策決定会合(日本)

日本の金融政策は、日銀金融政策決定会合で決定されます。年8回開催されます。 2012年から始まったアベノミクス初期には、大胆な金融政策が第一の矢とされ、非常に注目されていました。日本の株式市場の取引時間中に発表がある(正午前後)ことから、為替市場・株式市場 ともに注目度が高かったものの、近年は影響力が低下しています。

ECB 理事会(欧州)

ユーロ圏の金融政策は、ユーロ圏全体の中央銀行である ECB(欧州中央銀行)が決定します。6週間に1度のペースで政策理事会が開催されます。その日のうちに議事要旨も発表され、ECB総裁の会見にも注目が集まります。

米国と欧州は金融引き締めに向かっています。一方、日本は金融緩和を続けています。いつまで金融緩和を継続するかということが注目されます。為替市場は、金利が高い国の通貨が買われやすい傾向にあります。日米や日欧の金利差が広がる中で、金利の面からは、円安傾向が続くと予想されています。

まとめ

今回は為替市場に影響を与える経済指標と金融政策について解説してきました。為替市場のテーマは常に変わるものの、今回ご案内した指標は非常に注目度が高いものです。大きく為替レートが動く場合もあるので、リスク管理をしながら取引をするようにしましょう。

 

コメントを残す