株の税金と特定口座・NISAを理解しよう!

今回は株の税金についてご説明させていただきます。株の税金には、売却益にかかる「キャピタルゲイン課税」、配当金にかかる「インカムゲイン課税」があります。それぞれの仕組みや違いを見ていきます。また、株の税金は確定申告が必要ですが、確定申告が不要になる「特定口座」、そして株の売買益や配当金が非課税になる、お得な「NISA口座」についてもご説明させて頂きます。それでは、株の税金の仕組みから見ていきましょう。

株の税金は申告分離課税

まずは、所得税に関してご説明していきます。

所得税が対象にする所得は、給与所得、事業所得、雑所得など10種類に分類されています。区分の異なる所得を合計し、基礎控除や配偶者控除、医療費控除などの所得控除を行い、残った金額に累進税率をかけて所得税額を求める方法が総合課税です。所得税の税率は以下のようになっています。

出典:国税庁

例えば、課税される所得金額が800万円の場合、税額は次のようになります。

800万円 × 0.23 - 63万6千円 = 120万4千円

一方、申告分離課税は給与所得など他の所得金額と合計せずに、その所得区分だけで単独に所得額を計算し、定められた税率で税額を計算します。申告分離課税制度のある所得は、土地建物等の譲渡による譲渡所得、山林所得、株式等の譲渡所得等が挙げられます。

株式にかかる税金は主に二つあります。一つは、株を売却して得られた値上がり益にかかる「譲渡益課税」、もう一つは配当金に係る「配当課税」です。前者をキャピタルゲイン課税、後者をインカムゲイン課税といいます。この二つの課税に関しては、後ほど詳しくご説明させていただきます。

譲渡益課税と配当課税、どちらも税率は20.315%(所得税15.315%+住民税5%★所得税に復興特別税を含む)です。どの投資家でも一律になっています。総合課税のように利益が多ければ税率が高くなるといったことはありません。

それでは、キャピタルゲイン課税とインカムゲイン課税を詳しく見ていきましょう。

株のキャピタルゲイン課税

まずは、キャピタルゲインの 定義について見ていきましょう。 キャピタルゲインとは、保有している株式を売却することによって得られる売買差益のことです。例えば、株価1,000円で買った株が1,500円になった時に売却した場合、差額の500円ぶんがキャピタルゲインになります。

信用取引のウリで利益が出た場合も、キャピタルゲインとなります。株価1,500円の株を売り、1,000円で買い戻したら500円ぶんの利益がでます。これもキャピタルゲインです。

キャピタルゲイン課税(譲渡益課税)は、基本的に申告分離課税で、確定申告が必要になります。分離課税とは、給与所得などと分離した計算で税額を決めるものです。ですから、給料や他の所得がいくら高くても、キャピタルゲイン課税は一律で決まっています。

税率は、1月1日から12月31日までの受け渡し日ベースで計算され、その年間の譲渡益の20.315%(所得税15.315%、地方税5%)となっています。

キャピタルゲイン課税の算出式は以下のようになります。

上場株式等に係る譲渡所得等の金額 = 総収入金額  ー (取得費 + 委託手数料等)

総収入金額   売却時の委託手数料等を引く前の金額

取得費     株式の購入にかかった手数料込みの金額

委託手数料   売却時の委託手数料等

含み益と含み損

キャピタルゲイン課税は、決済をした時にかかります。例えば、株式を保有していて値上がりしている状態を「含み益」といいます。一方、株価が値下がりしている状態を「含み損」といいます。含み益と含み損の状態では税金はかかりません。 株式が値上がりして、利益確定売りをしたら「実現益」となります。値下がりして売却した場合は、「実現損」となります。キャピタルゲイン課税は、この「実現益」にかかるのです。

株のインカムゲイン課税

インカムゲインとは、株式を保有することにより得られる利益のことです。配当金がインカムゲインにあたり、保有し続けることで、継続的な収入を期待することができます。

配当金に対する課税の方法として、以下の三つがあります。

  • 総合課税
  • 申告分離課税
  • 申告不要制度(源泉徴収)

それぞれ詳しく見ていきましょう。

配当金の総合課税

総合課税は、給与所得など他の所得と配当所得を合計して、所得税を算出するというものです。所得税は超過累進税率となっているので、所得が高ければ高いほど税率は上がっていきます。所得が低い場合には、総合課税を選択すると少ない税率ですみます。また、総合課税は配当控除を受けることができるので、その点でも有利です。ただし、配当所得額があることで、税率の区分が上がる場合には、損をするので注意しましょう。

配当金の申告分離課税

申告分離課税はキャピタルゲイン課税同様、確定申告するものの、他の所得とは合算せずに所得税15.315%、住民税5%で完結する方法です。税率自体は源泉徴収と変わりませんが、株式の譲渡損失と損益通算できる点が異なります。株式で損失を出していた時などは、配当額から課税対象額をマイナスすることができるので税金が少なくなります。

配当金の申告不要制度(源泉徴収)

配当課税は本来、確定申告をおこなう総合課税ですが、上場株式は現在、源泉徴収課税になっていて、確定申告を行う必要はありません。上場株式の配当金にかかる税金は、20.315パーセント(所得税+復興特別所得税15.315%+住民税5%)の税率になっています。 多くの投資家は源泉徴収課税で、何もせずに配当の税金は終了しています。

確定申告とは

確定申告は、税金を納める必要があるかどうかに関わらず、一年間の所得額を求めて納税額を明らかにする手続きのことです。納税する必用がない人もいれば、源泉徴収で納めすぎた税金が還付される人もいます。還付される場合は「還付申告」となります。確定申告の手続きは、所得のあった翌年の2月16日から3月15日の間に行います。本来なら、収入がある人は全て確定申告をする必要がありますが、給与所得だけの人、例えば会社員や契約社員、パート、アルバイト等は給料から税金が天引きされているので、確定申告の必要はありません。

上場株式等の譲渡所得に関しては、他の所得と切り離して計算をする申告分離課税です。これも確定申告が原則必要となりますが、「特定口座の源泉徴収」を利用すれば、確定申告が不要になります。それでは、特定口座とはどういうものなのかを詳しくご説明させていただきます。

株の特定口座とは

株式投資を始める際は、まず証券会社に口座を開く必要があります。そして、口座を作る時には口座の種類を選びます。

具体的には

  • 特定口座(源泉徴収あり)
  • 特定口座(源泉徴収なし)
  • 一般口座

の三つです。

特定口座とは、証券会社が顧客の株式などの一年間の取引の結果を、「年間取引報告書」にまとめてくれる損益計算サービスです。

特定口座(源泉徴収あり)は、その年の初めから通算した損益を証券会社が計算して、株式を売却するたびに通算した利益に対して課税を行い、売却代金から税金を引いていきます。 売買のたびに課税が終了しているので確定申告の必要はありません。

特定口座(源泉徴収なし)は、証券会社が年間取引報告書を準備してくれますが、自分で確定申告する必要があります。

一般口座では、損益の計算から確定申告まで、全て自分でやらなくてはいけません。図で示すと以下のようになります。

出典:ダイヤモンドザイ

他の投資家がどの口座を開いているのかが気になりますよね。楽天証券が2015年に調査したところ、特定口座(源泉徴収あり)が82%と圧倒的であることがわかりました 。損益を計算する必要がないことと、確定申告が不要という点が大きな理由であると考えられます。

出典:楽天証券

株の損益通算とは

特定口座でも損益通算を行うことができます。損益通算とは、2種類以上の所得のうち、黒字と赤字があった場合に差引計算を行うことです。例えば、特定口座利用者の年間損益がA証券では黒字、B証券では赤字だった場合、確定申告をすればA証券とB証券の損益通算が出来、税金を少なくすることができます。

一つの証券口座を利用している場合、特定口座で国内株式・海外株式・公募株式投信・債券等の売却をした時の譲渡損益は、特定口座内で自動的に損益通算されます(源泉徴収ありを選択した場合)。二つ以上の証券会社を利用している場合は、源泉徴収ありの場合でも確定申告をすれば損益通算ができます。ただし、確定申告が必要です。

譲渡損失の繰越控除

また、上場株式等の譲渡で生じた損失額のうち、その年に控除しきれない金額を、翌年以降3年間にわたり繰越控除できます。今年度赤字になっていて税金を払う必要がない場合でも、確定申告をしておけば、翌年以降利益が出た場合に赤字額を計上できるので、支払う税金を少なくすることができます。

繰越控除の計算例を見てみましょう。

本年1年目2年目3年目
売買損益ー50万円20万円10万円30万円
繰越損失―50万円―30万円―20万円
繰越控除額(課税対象)―30万円―20万円10万円

今年50万円の損失が出ても確定申告をしておけば、翌年(1年目)で20万円の利益が出ても50万円を控除できるので、税金を支払う必要はありません。さらに、2年目で10万円の利益が出た場合も30万円が控除されるので、税金を支払う必要がありません。3年目に30万円の利益が出た場合でも20万円を控除できるので、10万円ぶんの税金を支払うだけで済みます。このように損失が出た場合でも、3年間繰越控除できるので、特定口座源泉徴収ありを選択していても、必ず確定申告をしておくようにしましょう。

NISAとは

特定口座源泉徴収ありを選択すれば確定申告をする必要がありませんでしたが、NISA口座を使えば、年間120万円(最大600万円)までの新規投資額に対して、5年間の配当金と5年以内に売却した譲渡益が非課税になります。

NISAとは少額投資非課税制度のことで、対象は上場株式、ETF、 JREIT、公募株式投資信託です。取扱商品は各金融機関によって異なるため確認が必要ですが、株式はどの金融機関でもNISA口座を使用することができます。概要を見ていきましょう。

  • 利用できる人

日本に在住の20歳以上(口座を開設する年の1月1日現在)

  • 非課税対象

株式・投資信託等への投資から得られる譲渡益や配当金・分配金

  • 口座開設可能数

一人一口座

  • 非課税投資枠

新規投資額で毎年120万円(非課税投資枠は最大600万円)

  • 非課税期間

最長5年間

  • 投資可能期間

2014年~2023年

具体例を見ていきましょう

出典:金融庁

1年目にNISA口座で株式を買い付けた場合、5年間は売却益に対して税金がかかりません。例えば、1年目に50万円で買い付けた株式が80万円になっていたので売却した場合、通常は30万円に対して20%(復興特別所得税を含めると20.315%)の税金がかかりますが、NISA口座で購入していた場合は非課税になります。

出典:金融庁

配当金に関しても同様の考え方ができます。1年目に購入した株式に対して毎年配当金が出ている場合、2年目から5年目までの配当金に対して、通常は20%(復興特別所得税を含めると20.15%)かかりますが、NISA口座を使うと非課税になります。

最長5年間の非課税期間が終了した場合

5年間の非課税期間が終了する場合には次の三つの選択肢があります

  • 非課税期間が終了する前に売却する
  • 翌年の非課税投資枠に移すロールオーバー
  • 課税口座に移管する

NISAで購入した株式は、購入した直後から非課税期間が終了するまで、いつでも売却することができます。売却価格が購入価格より高ければ利益が発生しているので、NISA口座の非課税枠を使用することができます。一方、 売却益が購入価格より低かった場合にはNISA口座で売却するメリットはありません。それは、NISA口座で発生した損失は、特定口座などの株式と損益通算をすることができないからです。

保有している株式を翌年の非課税投資枠に移すことをロールオーバーといいます。ロールオーバー可能な金額に上限はなく、時価が120万円を超過している場合でも、その全てを翌年の非課税投資枠に移すことができます。ただし、NISAは2023年までの制度とされていますので、株式の購入を行うことができるのは2023年までです。2023年度中に購入した株式については5年間(2027年まで)非課税で保有することができます。

出典:金融庁

3番目の選択肢は、課税期間が終了する際に、課税口座に移管することです。課税口座とは、利益が出た場合に、税金が発生する口座のことです。非課税期間内に売却せず、ロールオーバーできる非課税投資枠もない場合は、自動的に課税口座に移管されます。例えば100万円の株式が課税口座に移管するときに値上がりしていて150万円になっていたとします。この場合、課税口座では、150万円で購入したとみなされます。 課税口座に移管後、200万円でこの株式を売却した場合、150万円との差額50万円に対して課税されます。本来は100万円で買っているので、実際は100万円ぶんの利益が出ていますが、50万円にしか課税されないことになります。

株式数比例配分方式

株式数比例配分方式とは、株式の配当金を証券口座で受け取る方法のことで、各証券会社に預けている株式の数量に応じて、配当金や分配金を各証券口座で受け取ることができます。NISA(少額投資非課税制度)で配当金非課税の適用を受けるには、この方式を申し込んでおく必要があります。従来の配当金領収証方式は、株主の住所に郵便振替支払通知書が送付され、所定の欄に住所・氏名を記入・捺印し、郵便局またはゆうちょ銀行で配当金を受け取っていました。これですとNISA口座で非課税にならないので注意しましょう。株式数比例配分方式を利用すると、配当金が支払開始日に自動的に入金されるので、確実に受け取ることができます。なお、同一銘柄を他の証券会社で保有している場合は、その証券会社の口座で保有している株数に応じて別々に配当金が入金されます。

まとめ

今回は株の税金についてみてきました。株の税金には売却益にかかるキャピタルゲイン課税、配当に係るインカムゲイン課税の2種類がありました。 配当に関しては源泉徴収され、基本的に確定申告の必要はありませんが、 確定申告で総合課税や申告分離課税にすることにより、損益通算でき税金の支払いが少なくなる場合があります。

また、キャピタルゲイン課税に関しても、特定口座を使えば面倒な確定申告の手間を省くことができます。さらに、2014年から始まったNISA口座を利用すると、年間120万円まで新規買い付けに対して税金がかかりません。このように制度を上手く利用すれば、面倒な手続きや余分な税金を支払わずに済みます。また、万が一損失を出していても確定申告をしておけば翌年以降の税金が少なくなる可能性もあります。税金の仕組みを知って、賢く節税するようにしましょう。

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一橋大学経済学部卒業。証券会社でマーケットアナリスト、デリバティブディーラーを経て、個人投資家に転身。投資歴は20年以上。現在は、日経225先物を中心に現物株・FX・CFDなど幅広い商品に投資しています。保有資格:証券外務員1種

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