原油価格は今後どうなる?迫るイラン制裁

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米国がイランに経済制裁を全面復活させる11月5日が迫り、10月上旬には3年11ヶ月ぶりの高値圏まで原油価格が上昇しました。原油価格はどのような原因で動くのか、原油生産国や原油消費国はどのような国々なのか。実際に原油取引をするにはどうしたらいいのかをこの記事ではご案内していきます。

原油価格とは?

まずは原油とは何かを見ていきましょう。

原油とは

石油は、海底に堆積したプランクトンなど小さな生物の死骸が、何億年もかけてバクテリアの熱や作用によって分解されてできた、液状の物質のことを指します。一方、原油は、石油を地中から採取したままの、天然の状態を意味します。ただ、原油は不純物が多く、燃焼が安定しません。ですから、原油製油所で生成し、ガソリンや灯油など様々な石油製品を生産しているのです。

原油には算出する油田や生産方法によって成分が異なり、比重を基準にする方法で、「重質原油」「中質原油」「軽質原油」の3つに分類されています。軽質原油の方が、低い精製コストで付加価値の高い石油製品を生産出来、高い価格で取引される傾向にあります。例えば、原油価格の指標となっている WTI 原油は、ガソリンや灯油が多く含まれ、高品質の原油であることから、「高質スイート原曲」とも呼ばれています。暖房の燃料や、ジェット燃料などにも利用できるため用途が広く、 WTIの価格は先物取引の一つでありながら、原油価格全体の代名詞といわれ、世界経済の重要な経済指標になっています。

石油製品は原油を蒸留し、ガソリンや灯油・軽油などが作られます。残った成分は船舶や発電に使われる重油になります。合成洗剤や合成繊維、プラスチックにのもとになるのがナフサです

以上、原油について解説してきました。続いて原油価格がどのように決まるかを見ていきましょう。

原油価格の決まり方

原油価格は、原油取引する際の価格をいいます。価格は市場経済で需要と供給のバランスによって決まり、需要面では世界経済の景気動向や石油製品の需要。供給面では OPEC などの産出国の供給動向や政治情勢などに影響されます。また、先物などの投機的資金による影響が大きい商品です。過去にはオイルショックと呼ばれる急激な原油価格の高騰に伴う経済混乱が二度起きました。

OPECとは

OPEC とは、石油輸出機構を指します。イランやイラク・サウジアラビア・クウェートなど15ヶ国が参加しています。1970年代に石油の価格決定権を国際石油資本から奪い、2度のオイルショックを引き起こしました。1980年代から決定権は自由市場に移りましたが、今でも全世界の生産量の4割以上、埋蔵量の7割以上占めることから、原油価格に大きな影響を及ぼす存在になっています。

出典:外務省

原油といえば中東というイメージがありますが、現在世界で最も多く原油を生産しているのはアメリカです。2015年には1日あたり1,305万バレルの生産量がありました。2位のサウジアラビアで1,195万バレル。3位のロシアは1,125万バレルとなっています。サウジアラビアは2013年までトップの生産量を誇っていたものの、米国でシエールオイルの開発が進んだことで、トップの座を明け渡しました。全世界の原油生産量は9,200万バレルなので、アメリカ・サウジアラビア・ロシアの三カ国で約4割のシェアを握っていることになります。

出典:外務省

シエール革命とは

シェールガスとは、地下約2,000 M のシエール層に閉じ込められた天然ガスのことを指します。2000年代後半にアメリカで技術革新が起こったことで掘削が可能となり、世界のエネルギー情勢が一変しました。これをシエール革命といいます。シエールガスは約4割がアメリカ国土に眠っていて、採掘が本格化すれば採掘可能年数が石油の60年を抜き100年以上にもなると言われています。アメリカはこれまで中東の石油に頼っていたエネルギー政策を転換し、自前のシェールガスを輸出産業に育てようと力を入れています。シエール層にはシエールガスの他にシエルオイルが眠っています。このシエールオイルによって、米国は世界一の原油生産量の多い国となったのです 。

原油価格は世界の景気変動に影響を受ける

景気がいい時は経済活動が活発になり、原油消費量が盛んになります。一方、景気が低迷すると、原油量が少なくなるといわれています。1日あたりの石油の消費量の多い国を見てみると

 

1位アメリカ

2位中国

3位インド

4位日本

 

となっており、経済活発が盛んな国が上位を占めているのがわかります。特にアメリカと中国の消費量が群を抜いていますのでこの2か国の景気動向には注意が必要です。

出典:外務省

原油価格の国際的な指標はブレンド原油価格、アメリカの指標はWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト、 アジアの指標はドバイ原油価格で、三大指標となっています。

ブレント原油価格は、主にイギリスの北海にあるブレンド油田から採鉱される原油のことです 。ヨーロッパ市場とアジア市場における価格決定の基準になっています。 北海ブレントの指標といった場合は、「北海ブレント原油先物」のことを指します。

WTI とは、米国のテキサス州とニューメキシコ州産の原油のことです。原油には、原油の現物を売買する現物市場と、先物を売買する先物市場があります。 WTI の原油先物は、 ニューヨークマーカンタイル取引所(NYMEX)で取引されています。 WTI の生産量は少ないものの、投資家の参加者が多く取引量も多いため、その先物価格は原油価格の世界的な基準になっています。また、世界最大のエネルギー消費国である米国で使われている原油なので、米国の景気を表す指標としても注目されています。

ドバイ原油は、アラブ首長国連邦(UAE) の7首長国の一つである「ドバイ」で産出される原油のことをいいます。他の中東産原油と異なり、ほぼ全量が定期契約に基づかないスポット市場で取引されるため、価格の指標性が高くなっています。中東産原油は日本を含めたアジア向けの原油価格をドバイ原油のスポット価格の平均を基準に決めることが多いです。なお、原油は天然資源のため、ガソリンや灯油が多く抽出できる米国 WTI では高値で取引されるのに対し、重質油で硫黄分の多いドバイ原油は、 WTI より安値で取引される傾向があります。

原油価格の推移

それでは、原油価格の推移を見ていきましょう。まずは1985年から2015年までのWTI原油の約30年長期チャートを見てみましょう。

出典:クリック証券

2000年前半までは1バレルあたり20ドル前後で推移していた WTI原油先物相場ですが、 20006年頃から原油に投機マネーが大量に流入し、約7倍の水準まで上昇しました。そこからリーマンショックが起き1/3の水準になり、そこからはもみ合いをとなっています。

続いて2015年からの週足チャートを見てみましょう。

出典:SBI証券

2016年初めの30ドル割れから上昇トレンドが継続しています。特に、2017年後半からは綺麗な上昇トレンドを描いています。そして、10月に入り3年11ヶ月ぶりの高値を更新。そこからは、少し調整に入っているものの、13週移動平均線や26週移動平均線の付近で下げ止まっています。

原油価格に影響を与える2つのポイント

産油国の動向

現在はアメリカが世界最大の原油生産国となっていますが、原油価格に大きな影響を与えるのは、OPEC(石油輸出国機構)です。 OPECは、中東15カ国の集まりで、原油生産量は世界の原油生産において大きな割合を占めます。そして、戦争や紛争など地政学的なリスクがあります。OPECの増産や減産の動向は、原油価格に大きな影響を与えます。

週間原油在庫

原油取引する上で注目したい指標は、米国エネルギー情報局(EIA) が毎週水曜日に発表する、週間原油在庫があります。週間原油在庫からは世界最大の原油消費国であるアメリカの原油に対する需給を読み取ることができます。

出典:日産証券

週間原油在庫の見方は、発表された在庫が多ければ原油価格は下がり、少なければ上がります。ただし、他の経済指標と同様に、事前予想よりも高いか低いかがポイントになります

原油価格今後の展望

現在注目されているのは、11月5日に米国がイランへの経済制裁を全面復活させるということです。 イランは米国・サウジアラビア・ロシアに次ぐ世界第4位の原油生産国です。イランの原油輸出が細る懸念から、原油価格は2018年10月に、3年11ヶ月ぶりの高値に上昇しました。特に欧州市場での上昇が大きく、投機筋は需給の逼迫を見越して先物買いを強めています。トランプ米大統領は原油高を嫌っているので、 OPEC に増産を迫っているものの、市場は効果の薄さを見透かしています。原油価格の上昇は、米長期金利の上昇要因となり、企業収益を圧迫する懸念もあります。

ただ、10月上旬に1バレル75ドルを超えて高値を更新した原油先物価格ですが、直近では70ドルを割り込む水準まで落ち込んでいます。米国はもともとイランから原油を輸入していませんが、中東産原油に頼る欧州の反応は敏感になっています。ロンドン市場の北海ブレント原油先物は 80ドル前後。WTI 原油先物よりも10ドル前後高い水準で推移しています。投機筋は上げ基調が強い北海ブレンドに資金を振り向けています。日本経済新聞社によると、ヘッジファンドなど「マネージドマネー」による先物買い越し額は、9月25日までで5週連続で膨らみ50万枚に迫っています。買い建玉は売り建玉の23倍。 WTI の7倍に比べ圧倒的に買い優勢となっています。

11月5日のイランへの経済制裁まで約2週間。11月6日には米中間選挙も控えています。12月にはOPEC 総会が控えており、それまでは上昇トレンドは継続するという見方が大勢です。今後の動向に注目が集まります。

原油を取引するにはCFDとETFがおすすめ

原油を取引するには主に先物取引をする、もしくは CFD を取引する。そして、国内の株式市場でも ETF を通じて売買することができます

レバレッジ取引にはCFDがおすすめ

CFDとはContract For Differenceの頭文字をとった略語で、日本語では「差金決済取引」といいます。少ない資金でも大きな取引ができるレバレッジ取引であることや、買いだけではなく売りからもできる、そしてほぼ24時間取引できるという魅力があります 。

詳しくは以下の記事をご確認ください。

CFD(差金決済取引)とは?CFDの基礎知識とメリット・リスクをやさしく解説!

CFD を取り扱っている会社の中でおすすめは GMOクリック証券です。国内の CFD 取扱高ナンバーワンで、原油のスプレッド(売値と買値の差)も狭く、取引しやすくなっています。それでは GMOクリック証券の原油 CFD の特徴を見ていきましょう。

 

GMOクリック証券 原油CFDの特徴(メリット)

 

出典:GMOクリック証券

GMOクリック証券での手数料は無料です。取引コストを気にせず、買いからでも売りからでも取引を行うことが可能です。

 

出典:GMOクリック証券

GMOクリック証券の原油 CFD の原資産は、アメリカの WTI 先物です。これは米ドルで取引されています。しかし、GMOクリック証券の原油CFDは、日本円で取引することができます。ですから、為替レートを気にして取引する必要はありません。

レバレッジが20倍

商品先物 CFD では、レバレッジ20倍まで取引することができます。少額の資金で大きな利益を狙うことが可能です。例えば、100万円分の原油先物取引する場合、証拠金は5万円で済みます。ただし、大きな利益を狙えますが、損失もそのぶん大きくなってしまいます。過度なレバレッジをかけるのは控えましょう。

取引時間はほぼ24時間

CFD 取引は、取引時間が長いというのも魅力です。取引時間は月曜~金曜の8時から翌7時(米国夏時間は7時から翌6時)となっており、ほぼ24時間取引することが可能です。

長期現物保有ならETFがおすすめ

ETFとは、Exchange Traded Fundsの略で、上場投資信託のことです。日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)などの動きに連動する運用成績を目指し、東京証券取引所などの金融商品取引所に上場している投資信託です。

ETF の特徴として、証券取引所においてリアルタイムで売買することができ、最低投資金額も2万円以下と安く購入することができます。信用取引もでき、注文方法も指値注文(値段を指定)成行注文(値段を指定しない)など、通常の株式と同じです。

ETFに関して詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください

 2万円台で日経平均が買える!?日経225型ETFの魅力とは

原油ETFは、WTI原油ETF(証券コード:1671)とNOMURA原油インデックス連動上場投信(証券コード:1699)が代表的な銘柄です。それぞれ見ていきましょう。

WTI原油ETF(証券コード:1671)

円換算したニューヨーク商業取引所(NYMEX)におけるWTI 原油先物の直近限月の清算値との連動を目指す ETF です。純資産額は271億円と国内最大規模となっています。市場価格は3,000円前後(2018年10月現在)、一株単位で取引できるので3,000円前後で買い付けすることができます。ただ、信託報酬が0.918パーセントとやや高めなのが、長期保有には難点です 。信託報酬とは、投資信託を管理運用していくための経費として、投資信託を保有している間、毎年かかる費用のことです。通常は、0.5~2パーセント程度となっています。

NOMURA原油インデックス連動上場投信(証券コード:1699)

日本円換算した「 NOMURA原油ロングインデックス」との連動を目指す ETF です。「NOMURA 原油ロングインデックス」は、世界の原油先物取引の中から取引量が多く、流動性が十分あるものを構成銘柄として採用し、価格の値動きに連動することを目指すインデックスです。2008年12月31日を基準日として、その日の指数値を1,000として算出されています。

純資産総額は194億円。 WTI原油ETFに続く2番目の純資産額となっています。信託報酬が0.54パーセントと低いので、長期保有に向いています。

まとめ

今回は、原油価格がどのように決まるかというのを見てきました。アメリカが最大の産油国で消費国であることは間違いありませんが、価格決定には中東情勢に注意が必要です。米国と中東は、特にイランを中心に揉めており、原油価格の高止まりは継続しそうです。そして、実際に原油取引するのにオススメのCFDとETFをご紹介しました。両者とも少ない資金から投資できるので、少額から原油取引を始めてみてはいかがでしょうか。

 

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