将来、年金がもらえないかもしれないと老後の資金作りを若いうちから始めている人が、ここ数年増えてきています。
老後の資金作りには、定期預金を利用したり積立型の保険に加入したりと様々な方法がありますが株式投資で資金作りをしている人もいます。株式投資は、サラリーマンや主婦の方など幅広い世代で行われています。
しかし、資金作りのために行っている株式投資ですが、株式投資で得た利益には実は税金がかかってしまうのです。
今回は、株式投資でどういった税金が発生するのか、そして税金がかからない非課税制度NISAについても説明していきます。
1.株式投資とは
まずは、株式投資とはどういったものなのかを皆さんに分かりやすく説明します。
株式投資は数ある投資方法の代表的な1つである
将来年金がもらえないかもしれないから、今から老後の資金作りでも始めてみようかなと考えている方も大勢いらっしゃるでしょう。
老後の資金作りの1つとして、投資というものがあります。投資といっても投資信託やFX、ここ数年で人気が出てきた不動産投資など様々ありますが、投資の代表的な1つとして株式投資が挙げられます。
株式投資は、証券口座と資金、パソコンやスマートフォンがあれば誰でも簡単にできる投資方法として、幅広い方達が行っています。
超短期間で株の売買を行うデイトレーダーという職が存在するぐらい株式投資はメジャーとなっています。
株式投資とは株の売買で利益を得る
株式投資と聞いて、皆さんどういったイメージを持たれるでしょうか?
株式投資は、簡単に言うと「株の売買で利益を得る」という極めてシンプルな投資方法です。購入した株の価格よりも、売却した株の価格の方が高ければ利益を得ることができます。。例えば、1株1,000円の株を100株購入(購入価格10万円)し、1株1,500円の株を100株売却(売却価格15万円)すると、5万円の利益を得るということになります。
株式投資で利益を出すためには、株の売買のタイミングが非常に重要になってきます。
株は上場している企業しか購入できない
株式投資を始めようとして、自分がよく利用する企業の株でも購入してみようかなと思っても、その企業が株式市場に上場していないと残念ながら株を購入することはできません。
株の売買を行える株式市場はいくつか存在していて、皆さんがよく耳にする「東証1部」「東証2部」、その他にも「東証マザーズ」「東証ジャスダック」があります。この4つの市場に上場している企業の株を売買します。
投資しようかなと思っている企業が、実際に株式市場に上場しているかどうかを事前に確認しておくといいでしょう。
2.株式投資で支払わなければならない税金とは
ここからは、実際に株式投資を得た利益に対して発生する税金について説明します。
株式投資で得た利益に対して一律20.315%の税金がかかる
株式投資で得た利益に対して税金が発生します。発生する税金は、利益に対して一律20.315%分となります。20.315%の税率は、所得税と住民税で割り当てられていて、所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%となっています。
10万円の利益であれば、10万円×20.315%=20,315円が税金として支払わなければならないので、実質の利益は、79,685円となります。
大きな利益が出れば出るほど、当然多く税金を徴収されます。株式投資の利益は、20.315%の税金が徴収されることを頭に入れて株式の売却を行い、利益を獲得するようにしましょう。
株式投資をするために、口座を開設しよう
株式投資を始める前に、証券会社の口座を開設しましょう。口座の開設には少し時間がかかるので、口座の開設に必要な書類を事前に調べておくと良いでしょう。
さらに、株式投資には3種類の口座があります。
- 一般口座
- 特定口座(源泉徴収なし)
- 特定口座(源泉徴収あり)
次に、それぞれの口座の特徴について見ていきましょう。
一般口座
まずは、一般口座です。一般口座は、株式投資で利益を得た場合には、確定申告の手続きをしなければなりません。さらに、確定申告で提出しないといけない「年間取引報告書」(※)をご自身で作成しなければなりません。
※年間取引報告書→年間取引報告書とは、1年間で売買した株の銘柄や取引量、そして利益・損失を計算した額が記載されている書類
一般口座を選択すると、毎年2月16日~3月15日の期間に確定申告しないといけないので、税務署から申告書類を取り寄せたり、必要書類を準備したりと何かと手間がかかる上に、さらに年間取引報告書を作成しなければならなくなるため、税金の計算をしたりとかなり手間がかかってしまいます。
特定口座(源泉徴収なし)
次は、特定口座です。特定口座には「源泉徴収なし」と「源泉徴収あり」の2パターンに分かれます。ここでは、「源泉徴収なし」パターンについてお話します。
特定口座(源泉徴収なし)を選択すると、一般口座と同様、確定申告の手続きが必要となってきます。必ず、2月16日~3月15日の期間中に確定申告を行いましょう。
確定申告をする際に必要な年間取引報告書は、証券会社や銀行が作成します。すなわち、特定口座(源泉徴収なし)は、確定申告の手続きは必要、年間取引報告書の作成は不要という事になります。
一般口座に比べると、年間取引報告書の作成のために複雑な税金の計算をしなくてよくなるので、手間は省けらる形となります。
特定口座(源泉徴収あり)
最後に、特定口座(源泉徴収あり)です。特定口座(源泉徴収あり)は、1番手間がかからない口座となります。特定口座(源泉徴収あり)は、確定申告の手続きも年間取引報告書の作成も不要です。証券会社や銀行が、年間取引報告書の作成をして、投資家に代わりに税金を納めます。
もし、どの口座にしようか迷っているのであれば、特定口座(源泉徴収あり)をおススメします!
株の取引で利益を得ても、確定申告をしなくてもいい場合がある
株の取引で利益を得ると、利益に対して20.315%の税金を納めないといけない事は前述でお話しましたね。実は、株の取引で利益を得ても、確定申告が不要になる事があります。
上記の条件に当てはまる場合には、確定申告が不要となります。年収が2,000万円以下の条件は、一般のサラリーマンの方であればほぼ該当しますので、給与以外の取得が1年間で20万円であるかどうか確認しましょう。
一般口座・特定口座を利用すれば、株での利益と損失を損益通算できる
株式投資をしている中で、利益だけではなく損失を被る可能性も十分にあります。
一般口座、もしくは特定口座を利用していれば、株での利益と損失を損益通算できるという恩恵を受けることができます。この恩恵を受けるためには、確定申告が必要となります。
2015年の1年間の株式投資で50万円の損失を出してしまいました。翌年の2016年の1年間の株式投資では、80万円の利益が出ました。
2017年の2月16日~3月15日までの間に確定申告をすれば、2015年の損失50万円と2016年の利益80万円を損益通算できるので、実質-50万円+80万円で+30万円分の利益に対して税金がかかることになります。
確定申告をしなかった場合は、80万円の利益に対して20.315%の税金が徴収されるので、実際手元に残る利益は、63万7,480円となります。
一方、確定申告をした場合には損益通算した30万円の利益に対して20.315%の税金が徴収されるので、6万405円の税金が徴収されます。実際手元に残る利益は、80万円-6万405円で73万9,595円となります。
損益通算するのとしないとでは、10万2,115円も差が出るということになります。もし、株式投資で損失が出てしまった場合には、特定口座(源泉徴収あり)を選択していても確定申告をすることをおススメします。
3.株式投資をするなら、非課税制度「NISA」を活用しよう!
皆さん、非課税制度「NISA」をご存知でしょうか?NISAは、株式投資をしている方にとって非常に有難い制度となっています。ここからはNISAについて詳しく説明していきます。
非課税制度「NISA」とは
NISAとは、2014年から2023年の10年間、株式投資や投資信託で得た利益や配当金が非課税となる制度です。別名、少額投資非課税制度とも呼ばれています。通常、20.135%も取られる税金が非課税になるのは、投資家にとって朗報ですよね。
NISAは、全ての株式投資や投資信託で得た利益や配当金が非課税になるわけではありません。1年間の投資額120万円分が非課税となります。上限額が設定されているということになりますね。
例えばA企業の株を50万円分購入したとしましょう。1ヶ月後にA企業の株を売却したら200万円になりました。すなわち、A企業の株の売買で200万円-50万円で150万円の利益が出ました。この150万円の利益に対して、税金はかかりません。
投資額120万円で150万円の利益であれば、上限額をOVERしているのではないかと思われた方もいらっしゃるでしょう。しかし、投資額120万円とは、株式投資や投資信託で得た利益や配当金の上限額ではなく、ある企業の株を購入する購入額を指します。
A企業の株を50万円分購入すると、120万円-50万円で残り70万円が非課税枠となります。もし、10万円分の株を購入して1,000万円の利益が出たとしても、1月1日~12月31日の1年間で投資額120万円に達していなければ、1,000万円の利益は非課税となります。
NISAは、確定申告が不要!
一般口座、特定口座(源泉徴収なし)の場合は、ご自身で確定申告をしなければなりませんが、NISAは株式投資や投資信託で得た利益や配当金が非課税になる+確定申告が不要となり、一石二鳥ですね。
普段会社勤めで忙しい方は、NISA枠で株を購入して、中長期で保有し運用されるのも良い方法といえるでしょう。
使いきれなかった非課税枠は翌年に繰り越せない
先ほどNISAの非課税枠は、1年間の投資額120万円とお伝えしました。もし、非課税枠が20万円分残ってしまった場合、翌年の120万円にプラスして140万円としたいところですが、使いきれなかった非課税枠は翌年に繰り越せません。
2018年1月1日~2018年12月31日の1年間の非課税枠が、20万円残ってしまうとこの20万円は0円になってしまいます。翌年2019年の非課税枠は、また新たに120万円付与されます。
NISA枠で購入した株は5年間、非課税扱いになる
NISA枠で株を購入して中長期で株を保有する場合は、非課税扱いになる期間が5年間となるので注意しましょう。
例えば、A企業の株を2017年に購入したとします。このA企業の株を非課税扱いとできるのは、5年間の2023年までとなります。
では、5年後の2023年までA企業の株を保有している場合は、一体どうなるのでしょうか。
一般口座か特定口座に移動させる
非課税期間の5年が経過した際の対応方法の1つとして、NISA口座から一般口座、または特定口座に移動させる方法があります。
5年経過時に株価が購入した当初よりも値上がりしていて、利益が見込めるのであれば、株を売却した方が非課税扱いとなるのでお得になります。
しかし、株価が購入した当初よりも値下がりしているのであれば、売却せず値上がりするまで保有しておきたいですよね?
この場合、非課税扱いにはなりませんが、NISA枠として保有している株を全て一般口座、もしくは特定口座に移動させることにより、株を保有し続けることが可能となります。
一般口座、特定口座に移動させると、利益に対して20.315%の税金が発生し、確定申告の手続きをしないといけない可能性が出てきますので注意しましょう。
ロールオーバーを利用する
非課税期間の5年が経過した際の対応方法としてもう1つ、ロールオーバーという制度があります。
ロールオーバーとは、非課税期間の5年が経過した非課税扱いの株を、翌年の非課税枠を使い、NISA口座でそのまま運用させる方法となります。5年経過しても、NISA口座で保有できるのであれば、全てロールオーバーをすればいいんじゃないのかと思ってしまう所ですが、ロールオーバーにはメリットだけではなく、デメリットあります。
2017年にA企業の株を購入するのに50万円分の非課税枠を使用し、5年後にA企業の株が200万円まで値上がりしたとしましょう。ロールオーバーで、2023年の非課税枠の120万円を使用します。A企業の株を購入するのに50万円の非課税枠を使用したので、2023年の非課税枠は、120万円ー50万円で残り70万円使用できるはずです。
しかし、実際は5年後のA企業の株200万円が2023年の非課税枠として使用されます。すなわち、ロールオーバーは投資額でなく、ロールオーバーを利用する際の保有している企業の株の時価を対象とします。今回の例でいくと、200万円が2023年の非課税枠の対象となります。
非課税枠が120万円なので200万円だと超過していますよね?この超過分は、2017年に制度が改正されて、ロールオーバーできる金額の上限が撤廃されたので200万円の株価がでも非課税になるようようになりました。
しかし、非課税枠の120万円は変更されていないので、2023年の非課税枠はロールオーバーした200万円で上限に達したと見なされ、非課税枠の残りは0円となってしまいます。
ロールオーバー分が120万円未満であれば、その残り分の投資額が非課税となりますので、注意してください。
NISAを活用すると、損益通算ができない
NISAは、確定申告が不要であったり、かかる税金がかからない非課税制度とメリットしかないように思われるかもしれませんが、NISAにもデメリットはあります。
NISAを活用すると、一般口座や特定口座を選択した際に利用できる損益通算が、できなくなってしまいます。
もし、NISAを活用して大きな損失が出てしまった場合には、損益通算ができないため、一般口座、特定口座を利用した方がお得になる可能性があります。
NISAを活用する場合は、大きな損失が出ないように、企業の情報収集をしっかり行い、投資をするようにしましょう。
4.まとめ
株式投資も、うまく口座を選択したりNISAを活用すれば、手間や時間も省けることが可能ですし、得た利益も全て手に入るので節税効果も期待できます。
しかし、余裕のない資金で株式投資をしてしまうと、急遽資金が必要となった時に損失が出ているのに株を売却する事により、結局資産がマイナスになってしまう恐れがあります。
株式投資をする際は、無理のない余剰資金で行うようにしましょう。