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消費税10%への引き上げの実施に合わせて、特定の飲食物に対して軽減税率が適用されることは、小売り・飲食関係の経営者の皆さまもすでにご存じだと思います。
軽減税率に効率よく対応できるPOSレジ導入に対して、補助金が支給されることも何となく知っている経営者は多いでしょう。
これからPOSレジの導入を検討するのであれば、合わせて考えておきたいのはキャッシュレス決済の導入です。POSレジにはキャッシュレス決済機能がついているものもあり、ついていなくとも簡単に接続することができます。
また、POSレジを仮に導入しない経営者でも、消費税引き上げ対策としてキャッシュレス決済を検討してみるいい機会ではないかと思います。
キャッシュレス決済とはそもそも何なのでしょうか。今回は、キャッシュレス決済についてわかりやすく解説していきます。
キャッシュレス決済とは
小売り・飲食関係の店舗では、飲食や商品と引き換えにお金を受け取ります。お客さんが支払いをする方法には、現金、キャッシュカード、スマホ決済が主な決済方法になります。
近年では、オンラインサービスやスマホの普及とともに、現金以外で金銭のやり取りをする機会が増えてきました。
このように、現金を直接渡さずに、キャッシュカードやスマホ決済によって支払う方法をキャッシュレス決済と言います。
キャッシュレス決済という言葉を耳にする機会も増えて、うちにも必要なのだろうかと疑問に思う経営者もいることでしょう。
キャシュレス決済の仕組み
まずは、キャッシュレス決済はどのような仕組みになっているのかを改めてご説明しておきたいと思います。
キャッシュレス決済は大きく2種類に分かれます。
- カード決済
- スマホ決済
それぞれの仕組みは・・・
カード決済
カード決済は、VISA、Master Cardなどのクレジットカード、nanacoやSUGOCAなどの特定の場所で使えるプリペイドカード、楽天pay、LINEpayなど加盟店で使える電子マネーカードなどを使って支払い行います。
清算方法としてカード決済を利用した場合には以下の流れでお金が動いていきます。
- お客さんがカード決済をする
- カード決済会社が金額を保証する
- カード決済会社が数日後に代金を振り込む
- お店は銀行口座にて代金を受け取る
- カード決済会社はお客さんに請求する
※プリペイドの場合はすでに現金がカード決済会社に支払われていますので、後日請求する必要はありません。
以上のような流れで、お店はカード決済会社を通して、お客さんのお金を受け取ることができます。
スマホ決済
スマホ決済は、モバイル決済とも呼ばれるもので、携帯電話の料金とまとめて決済する方法と、スマホ端末上でアプリなどを通して決済する方法の2種類になります。
どちらの場合も基本的には、クレジットカードに連結して支払いが行われるので、お金が流れる仕組みはほぼカード決済と同じようなものになります。
また、スマホでプリペイドカードのアプリを利用して、スマホをかざすだけで決済できるものも増えてきています。
以上、ご説明した内容がキャッシュレス決済の仕組みになりますが、ほとんどのキャッシュレス決済では、決済代行会社を通して清算が行われることになります。お店、お客さん、決済代行会社の3者にてキャッシュレス決済のシステムが成り立つ仕組みになっているので、キャッシュレス決済の導入にあたっては決済代行会社の存在は必要不可欠であると言えるのです。
では、次に決済代行会社とは一体どのようなものなのかを解説したいと思います。
決済代行会社
決済代行会社とは、お客さんがクレジットカード、決済アプリなどを利用しする歳にお店とクレジットカード会社の間に入る会社になります。
決済代行会社は、カードリーダーなど決済に必要な機器の販売やレンタルなども同時に行っています。
決済代行会社の役割
決済代行会社の役割とは、複数のクレジットカード会社、コンビニエンスストア、楽天pay、LINEpayなどのサービスを同時に提供することができることや、お店やお客さんの個人情報の流出を防ぐ役割をしています。
お客さんの銀行口座からお金を引き出すのは決済代行会社、お店にお金を振り込むのは決済代行会社、つまり、お店もお客さんもお互いに、個人情報のやり取りをすることなく決済が行われていくのです。
もし、お店が直接クレジットカード会社や各種電子マネーなどの会社と契約しようとするならば、初期費用だけでも1,000万はかかると言われています。ましてや、個々に契約を結んでいくには時間や手間がかかります。
そんな決済の過程を簡単に1社との契約だけで、すぐに利用できるようになるのが決済代行会社を利用することなのです。
決済代行会社の種類
決済代行会社には
企業間取引向けBtoB、個人向け販売BtoCがあります。小売り・飲食関連で利用する決済代行はBtoC向けの決済方法になります。例えば、取引先とのお金のやり取り等にも決済代行会社を使いたい場合には、両方に対応できる会社と契約しておくと便利でしょう。
どんな種類の決済代行会社があるのかをご紹介致します。
- ペイジェント 参考URL
クレジットカード、電子マネー、多彩な決済に対応できて、最短5営業日で入金できます。三菱UFJ系列だということも安心できる要素になるでしょう。
- スクエア 参考URL
手数料が低価格なのが魅力です。最短で翌営業日の入金も可能、POSレジと一緒に購入することができます。端末に直接接続できる小さなカードリーダーなので持ち運びが便利なのが魅力です。
- ソフトバンクペイメントサービス 参考URL
世界大手6社のクレジットカードの利用が可能で、さらに携帯電話決済3社が使えるのが嬉しいですね。中国の決済サービス、海外で利用者の多いPayPalが使えるので外国人の多いお店にもおすすめです。
- IPS 参考URL
中国系の決済サービスに力を入れたいなら、IPSが充実しています。越境EC、外貨建て決済、分割決済などができるのも嬉しいですね。
- 24カード決済JP 参考URL
シンプルにクレジットカード決済だけできればいいという方におすすめです。クレジットカード8社の利用が可能で、アプリにして端末上で使えるシステムも提供しています。
キャッシュレス決済の現状
現金を使わずに、クレジットカードや電子マネー、スマホ決済などで支払いができるのはとても便利ではありますが、実際に自分のお店では必要なのだろうかと疑問に思う経営者もいると思います。
そこで、キャッシュレス決済の現状はどうなのかを、国内と海外を比較して見ていきたいと思います。
海外でのキャッシュレス決済の現状は
※各国のキャッシュレス決済比率の状況
上記のグラフは、各国のキャッシュレス決済の比率を表したもので、2015年の時点で50%以上をキャッシュレス決済が占める国は、多い順に、
-
- 韓国 89.1%
- 中国 60.0%
- カナダ 55.4%
- イギリス 54.9%
- オーストラリア 51.0%
となっています。おそらく、当時から考えると2018年現在ではさらに増加している可能性は高いと言えるでしょう。
日本、ドイツは現金決済が80%以上を占めており、キャッシュレス決済に抵抗がある感が伺えます。単純に現金のやり取りが好きなのかもしれませんが、やはりオンラインサービスの普及拡大とともに、今後はもっと増加していくだろうと見ることができます。
※各国のキャッシュレス決済の手段の割合
上のグラフはキャッシュレス決済に使われる手段の比率をグラフ化したもので、クレジットカード、デビットカードが大半を占めています。
クレジットカードもデビットカードも結局はVISAなどのクレジットカード会社と連結しているため、カード決済とひとまとめに見てもいいでしょう。
以上のように、日本ではまだ比率の少ないカード決済、キャッシュレス決済ではありますが、今後、国内ではどのような動きが期待できるのかを検証していきたいと思います。
国内のニーズ
日本政府は、2020年の東京オリンピックを迎えるにあたり、海外でのキャッシュレス化の比率を考慮した上で、国内でのキャッシュレス化を強く推進していく計画であります。
フィンテックなどのオンラインサービスの推進と共に、電子決済の比率を増やしていく政策を構えており、2027年度までにはキャシュレス比率を40%まで高めていく方針だとのことです。
なぜキャッシュレスが必要なのか
なぜ国政がキャッシュレス決済を推奨しているのか、それにはいくつかの理由があります。
- 少子高齢化などの労働人口の減少に伴って、無人店舗、無人サービスなどの経営スタイルが需要を高めていくと予想されているため
- 現金資産の見える化、透明化、データ管理の効率化を図るため
- スマホアプリ決済などの需要が高まると思われるため
- キャシュレス決済を好む海外勢に対応していくため
などの理由から「キャッシュレス・ビジョン」という政策が進められています。
詳しくは・・・
キャッシュレス決済のメリット
軽減税率対策補助金の対象になる
2019年10月から消費税が10%への引き上げが実施されることが決定しました。同時に、特定の飲食物に対しては消費税8%になる、軽減税率が適用されることになります。
複数税率によっての混乱を防ぐために、自動税率計算ができるPOSレジを国からの補助金を得て導入ができるようになっています。POSレジにはキャッシュレス決済機能が備わったものもあり、追加でカードリーダーなどの機器を付けることも可能です。POSレジの導入と同時にキャッシュレス決済に必要な機器も合わせて補助金を申請することができるのです。
もし、お店にとって必要だと判断した場合は、POSレジ、そしてキャッシュレス決済と補助金を得て低コストでの導入が実現できるからお得なのです。
国の支援を得て消費の促進が可能
さらに消費税10%の引き上げ時から、消費意欲が低下することを避けるため、またはキャッシュレスビジョンを推進していくために、キャッシュレス決済を行った消費者には国から2%のポイントが還元されることが検討されています。
もし、消費税が10%に引き上げられたとしても、消費額の2%をポイントで受け取れるのであれば、現金で払うよりも、キャッシュレス決済が利用できるお店での買い物を選ぶ消費者が増えることが予想されます。
また、現金派が現金を好む理由の1つとしては、手持ちのお金しか使わないように消費を制限できるからだととも言われていますが、キャッシュレス決済によって浪費を促してしまう可能性が高くなります。
1000円札を一枚しか持っていない人が現金で買い物をすれば、必然的に1000円以上の買い物は不可能です。ところが、キャッシュレスであれば後々クレジットカード会社からの請求によって支払うことになり、100円200円、時には予定の倍以上の金額を使ったとしても清算上は全く問題ないわけです。
ついつい、予定以上の買い物をしてしまう人も少なくないでしょう。
キャッシュレス決済でお店を選ぶ人がいる
すでに述べたように、韓国、中国などはキャッシュレス決済の比率が非常に高い国になります。韓国、中国はごく近隣の国でもあることから、訪日外国人の中でも高い比率を占めています。
そのように、キャッシュレス決済の方を好む人達にとっては、キャッシュレス決済ができることがお店を選ぶ上で重要な要素となる場合があります。海外だけに限らす、国内でもあえてキャッシュレス決済を好む人達にとっては同様のことが言えます。
また、今後訪日外国人の数はますます増加していくと予想されており、さらには東京オリンピックが待ち構えています。小売り・飲食関連の店舗で、外国人のお客さんが期待できる場合はキャッシュレス決済にしておくことで、集客率を向上にもつながります。
日経新聞によると、オンライン以外でもコンビニや小売店、飲食店などでキャッシュレス決済の導入が多く見られているとのことです。
キャッシュレス決済のデメリット
導入コスト、手数料がかかる
キャッシュレス決済を利用していく最大のデメリットは、導入コストや清算する度に手数料がかかるということでしょう。
まず、QRコード、クレジットカード等を読み取るリーダーを購入し、それに対応できるレジシステムも必要になります。今は端末に簡単に接続できるものもありますが、もともと通信回線の利用がないのであればコストも高くなってしまいます。
そして、前述のようにキャッシュレス決済には決済代行会社との契約が欠かせません。キャッシュレスで清算する度に手数料が発生することになります。
通信回線の不具合で利用できない
キャッシュレス決済を導入しておいて、いざ電気回線や通信回線に不具合が生じた時に、利用できなくなるということです。
災害や事故などの影響で、実質お店に被害がなくとも、回線に不具合が起こることも考えられます。そんな際には、やはり現金でのやり取りが必要となり、キャッシュレス決済やPOSレジのみで統一している場合は支障をきたしてしまいます。
リアルタイムで現金が入手できない
取り急ぎ、現金が必要な時にはキャッシュレス決済の場合、困ってしまうこともあるでしょう。決済代行会社にもよりますが、数日かかる場合がほとんどです。
中には一週間以上かかる場合もあり、緊急の入り用があった際には不便なシステムとなってしまいます。
まとめ
以上のようにキャッシュレス決済の導入にはメリット、デメリットがあり、自分のお店ではどうなのかを十分に検討してみることが大切でしょう。
判断の目安としては・・・
- 外国人のお客さんの比率(今後の予想)
- お客さんの年齢層(スマホ世代が多いか)
- 客層(クレジットカードを利用する確率)
- 客単価(客単価は高いほど利用率も高い)
などが大まかなポイントになると思います。
スマホやクレジットカードを利用しないお客さんが多いお店であれば、逆に導入することで、不便だと感じるお客さんが増える可能性もあります。また単価や、1日の売上げ額によっては、決済にかかる手数料の比率がかなり大きくなってしまう場合も考慮する必要があります。
反面、2020年の東京オリンピックや、訪日外国人の増加が売り上げに影響を与えるようなお店であれば、キャッシュレス決済の導入は必須だと言えるでしょう。
遅かれ早かれ導入を検討するのであれば、POSレジの導入も検討して、補助金を申請した方がお得だと言えます。この機会に、キャッシュレス決済を導入するべきかどうかじっくり考えてみることをおすすめします。