おそらく大抵の人が、戸建であれ、マンションであれマイホームを購入する時には住宅ローンを契約します。多額の住宅ローンを組んで、毎月、長年にわたり返済していかなければなりません。
一刻も早く住宅ローンを完済するために、少しでも住宅ローンを減らしたいと思いませんか?
実は、住宅ローンを契約すると、「住宅ローン控除」という制度を受ける事ができます。住宅ローン控除とはどういう制度なのかを今回は皆さんに分かりやすく説明していきます。
1.住宅ローンとは
まずはじめに、住宅ローンについてお話します。
住宅ローンって何?
住宅ローンという言葉を耳にされた事がある人は、多いと思われます。戸建やマンションを購入するとなると、何百万円~高いものでは億越えのものまで、とにかく大きな資金が必要となってきます。
戸建やマンションを現金一括で購入できる人は非常に少ないでしょう。現金一括で購入できない場合には、金融機関等からお金を借り入れて戸建やマンションを購入し、借り入れたお金を長年かけて返済していきます。このように、戸建やマンションを購入するために金融機関等から借り入れるお金を住宅ローンといいます。
住宅ローンには色んな種類がある
住宅ローンには、変動金利や固定金利など金利パターンが選べる住宅ローンや、財形貯蓄を採用している企業で勤めている人が利用可能な財形住宅融資など色んな種類があります。
金利パターンが選べる住宅ローン
お金を借り入れる時には、利息がかかってきます。利息がいくらかかるのかは、金利によって大きく異なり、金利が低ければ低いほど、利息は少なくなります。次に金利パターンが選べる住宅ローンを見ていきましょう。
変動金利型の住宅ローン
住宅ローンの契約で1番多いのが、変動金利型となっています。変動金利型とは、借入期間中に金利が変動するタイプです。借入当初の金利が1%で設定されていても、10年後には2%に上がる可能性もあるし、0.5%に下がる場合もあります。
しかし、毎月金利が変動して返済額がコロコロ変わってしまうと、毎月の支出が安定せず返済プランもなかなか立てづらくなってしまいます。
変動金利型は、返済者が混乱しないように金利の見直しを年2回、返済額の見直しを5年に1度としています。年に金利が2回見直された場合でも、返済額の見直しは5年に1度なので、2018年に返済額が見直されると、5年後の2023年までは返済額は変わりません。
さらに、契約当初の金利が1%だったのに、金利の見直しでいきなり10%に上がってしまうと、毎月の返済額が大きく変わってしまいます。家計が圧迫されるでしょう。こういた事態を防ぐために、金利の上昇率は、最大1.25倍までと設定されています。契約当初の金利が1%の場合は、最大1.25%までしか金利は上がらないという事になります。
固定金利型の住宅ローン
固定金利型は、借入期間中、金利が一律の住宅ローンとなります。金利が一律なので、毎月の返済額が変わらず返済プランはもちろん、毎月の支出も把握しやすいのが特徴です。
しかし、固定金利型の弱点は、現在低金利が続いており、変動金利型の金利は0.6%など1%を切っている状態ですが、固定金利型の金利は、1%前後と変動金利型よりも高く設定されています。
このまま、金利が低く推移すると、固定金利型よりも変動金利型の方が、総返済額は少なくなります。
財形住宅融資
財形貯蓄を取り扱っている企業に勤めている人が利用できるのが、財形住宅融資です。財形住宅融資は、通常金融機関等で住宅ローンを契約すると発生する、融資事務手数料や保証料が0円となり、契約料を節約できます。
しかし、財形住宅融資を受けるのはいくつか条件を満たす必要があります。
- 財形貯蓄を1年以上続けていること
- 申込日前2年以内に財形貯蓄の預入れを行っていること
- 申込み時点で残高が50万円以上あること
この上記3つの条件をクリアする事により、財形住宅融資を利用することが可能です。
財形住宅融資には上限額があり、一般財形貯蓄・財形年金貯蓄・財形住宅貯蓄の合計残高の10倍、最高4,000万円となっています。一般財形貯蓄・財形年金貯蓄・財形住宅貯蓄の合計が100万円の場合、100万円×10倍の1,000万円まで融資を受けることが可能となります。
2. 住宅ローン控除とは
ここからは、住宅ローン控除についてどれぐらいお得になるのか、住宅ローン控除の概要を説明します。
住宅ローン控除ってどんな制度?
住宅ローン控除とは、戸建やマンションを購入するために住宅ローンを契約すると、10年間、年末の住宅ローンの残高の1%分を所得税や住民税から控除してくれる制度となります。
住んでいる住宅の種類によって限度額や控除額が異なる
控除期間(10年間)や控除率(1%)は変わりませんが、住宅ローンの年末残高の限度額、そして1年間の控除限度額は、住んでいる住宅の種類によって異なります。
一般住宅の場合
住宅ローンの年末残高の限度額は4,000万円、1年間の控除限度額は40万円、10年間の最高合計控除額は400万円となります。
1年間の控除限度額の計算方法は、4000万円(住宅ローンの年末残高の限度額)×1%(控除率)となります。40万円の控除を10年間受けることができるので、40万円×10年間で最高限度額が400万円となります。
認定住宅(※)の場合
住宅ローンの年末残高の限度額は5,000万円、1年間の控除限度額は50万円、10年間の最高合計控除額は500万円となります。それぞれの計算方法は、一般住宅と同様となります。
※認定住宅→認定住宅とは、認定長期優良住宅や認定低炭素住宅の総称です。
住宅ローン控除は、どのように所得税や住民税から控除されるのか
住宅ローン控除はいくら控除されるのか理解した上で、次に住宅ローン控除は、どのようにして所得税や住民税から控除されるのかを説明します。
住宅ローン控除は、まず所得税から控除される
住宅ローン控除は、まず所得税から控除されます。年末の住宅ローンの残高が3,000万円だった場合は、その年の控除額は、3000万円×1%で30万円となります。所得税として35万円支払っている場合は、30万円控除として還付されるので実質所得税は5万円の支払いとなります。
所得税から控除できなかった住宅ローン控除は、住民税から控除される
年末の住宅ローンの残高に対して、所得税から控除しても控除しきれなかった場合は、控除しきれなかった住宅ローン控除は、住民税から控除されます。
年末の住宅ローンの残高が3,000万円だった場合、その年の控除額は30万円です。所得税として20万円支払っている場合は、まず所得税から20万円を控除します。しかし、住宅ローン控除は30万円受けられるので、残り10万円の控除を受けることが可能です。この残り10万円は、翌年の住民税から控除されます。
住宅ローン控除を受けるためには、一定の条件をクリアしなければならない
住宅ローン控除は、住宅ローンを契約した全ての人が受けられるとは限りません。実は、住宅ローン控除を受けるには、一定の条件をクリアしなければなりません。次に、住宅ローン控除を受けるための条件について見ていきましょう。
住宅ローンの返済期間が10年以上で設定されていること
住宅ローンを契約するとなると、ほとんどの人が20年、30年と長期間で返済期間を設定します。しかし、資金に余裕がある場合で、短期間で返済しようとし、10年未満で住宅ローンを契約すると、住宅ローン控除を受けることができなくなってしまうので注意しましょう。
住宅の床面積が50㎡以上かつ、床面積の半分以上が居住用として使用すること
住宅ローン控除を受けるためには、まず購入した戸建やマンションの床面積50㎡以上なければなりません。床面積は、登記簿謄本に記載されているので、確認しましょう。
床面積の半分以上が居住用として使用されなければなりません。すなわち、店舗用として戸建やマンションを使用するのであれば、住宅ローン控除を受ける事ができないという訳です。
しかし、店舗兼居住用として使用する場合は、居住用の床面積が半分以上あれば、住宅ローン控除を受ける事ができますので注意しましょう。
住宅ローン控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以内であること
住宅ローン控除を受ける条件として、所得金額が設定されています。住宅ローン控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以内というのは、サラリーマンの人で条件に引っかかる可能性は、かなり低いです。要するに、所得金額の条件に引っかかる人は、お医者さんや会社の社長などお金持ちの人になります。
戸建てやマンションを購入してから6ヶ月以内に入居して、住宅ローン控除を受ける年の12月31日まで住んでいること
住宅ローン控除を受けるためには、戸建やマンションを購入してから6ヶ月以内に入居しなければならないという条件があります。そして、住宅ローン控除を受ける年の12月31日まで住み続けるという条件も加わります。
2018年4月1日に戸建やマンションを購入した場合は、2018年8月31日までに入居をし、2018年12月31日まで住み続ける必要があります。
中古物件を購入した場合には、新築物件より満たさないといけない条件が多い!
中古物件を購入した場合には、上記4つの条件に築年数や耐火建築物などの条件が加わります。
戸建やマンションが耐火建築物の場合
戸建やマンションが耐火建築物の場合は、購入日時点の築年数が築25年以内ではないと、住宅ローン控除を受けることができません。
戸建やマンションが耐火建築物以外の場合
戸建やマンションが耐火建築物の場合は、購入日時点の築年数が築20年以内という条件が加わります。
耐火建築物で築25年以上、耐火建築物以外で築20年以上の場合
耐火建築物で築25年以上、耐火建築物以外で築20年以上の場合は、一定の耐震基準を満たさないと住宅ローン控除を受けられません。
3.住宅ローン控除を最大限に活かす方法とは
せっかく住宅ローン控除で節税できるのであれば、最大限に活かしたいですよね?次に、住宅ローン控除を最大限に活かす方法についてお話します。
住宅ローン控除を受けられる10年間は、繰上げ返済はしない
住宅ローン控除は、住宅ローンを契約した年から10年間受けることができます。そして、12月31日時点での住宅ローンの残高に対して1%分、所得税や住民性から控除されます。すなわち、住宅ローンの残高が多いほど、控除される金額が大きくなるという事になります。
もし、少しでも早く返済したい、利息を減らしたいと繰り上げ返済をすると、もちろん住宅ローンの返済額は減りますが、12月31日時点での住宅ローンの残高も減ってしまうので、控除される金額が少なくなってしまいます。
例えば、2018年4月1日に3,000万円の住宅ローンを契約したとしましょう。4月~12月の9ヶ月、繰上げ返済せず毎月10万円返済した場合、12月31日時点の住宅ローンの残高は、3,000万円-90万円で2,910万円ですよね?この住宅ローンの残高2,910万円の1%分が控除されるので、控除額は29万1,000円となります。
一方、7月に50万円を繰り上げ返済すると、12月31日時点の住宅ローンの残高は、3000万円-90万円-50万円(繰上げ返済分)で2,860万円となります。この住宅ローンの残高2,860万円の1%分が控除されるので、控除額は28万6,000円となります。
50万円繰上げ返済するだけで、控除額は29万1,000円-28万6,000円で、5,000円の差額となります。繰上げ返済をすればするほど、繰上げ返済をしない場合との差額が大きくなります。
住宅ローン控除を最大限に活かすには、住宅ローン控除を受けられる10年間は繰上げ返済をせず、住宅ローン控除を受けられなくなる11年目以降に繰上げ返済をしたり、一括で残りの住宅ローンを返済するようにしましょう。
契約した住宅ローンに諸費用分も含まれている場合は、諸費用分は早めに返済しよう!
戸建やマンションを購入すると、土地や建物以外に所有権や抵当権を設定する登記費用や印紙税、仲介手数料など様々な諸費用が発生します。意外と諸費用だけでも100~200万円ぐらいかかってしまうため、諸費用分もまとめて住宅ローンとして契約する人も少なくはありません。
しかし、住宅ローン控除はあくまでも住宅を取得するために契約した住宅ローンが対象となるため、諸費用分は住宅ローン控除対象外となってしまいます。
もし、諸費用分もまとめて住宅ローンとして契約した場合は、先に諸費用分だけ返済して、毎月の住宅ローンの返済を減らすことができます。
4.住宅ローン控除を受けるための手続きとは
最後に、住宅ローン控除を受けるための手続きについてお話します。
住宅ローン控除の手続きを初めて行う場合は、確定申告をしなければならない
初めて住宅ローン控除を受けようとする場合は、必ず確定申告を行わなければなりません。確定申告できる期間は決められていて、毎年2月16日~3月15日となっています。初めて住宅ローン控除を受ける際には、2月16日~3月15日の間に、必要書類を住んでいる近くの税務署に提出しなければなりません。
住宅ローン控除を受けるための必要書類はいくつかあります。
- 確定申告書
- (特定増改築等)住宅借入金等特別控除の計算明細書→税務署や国税庁のHPからダウンロード可能
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書→住宅ローンを契約した金融機関等から送られてくる書類
- 登記事項証明書
- 売買契約書
これらの書類を準備して、2月16日~3月15日の間に必ず確定申告を行いましょう。還付される場合は、翌月の4月末頃に指定した口座に還付金が振り込まれる形となります。
2回目以降は、年末調整で住宅ローン控除の手続きができる
確定申告を行わなければならないのは1回目のみで、2回目以降は年末調整で住宅ローン控除の手続きができます。年末調整で必要な書類は以下のとおりです。
- 年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書
- 給与取得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
もし、年末調整に必要書類が揃わなかったり、紛失してしまった場合には、必要書類を取り寄せる必要があるので年末調整に間に合わない恐れがあります。万が一、年末調整に間に合わなかった場合には、確定申告をしなければならなくなるので注意しましょう。
5.まとめ
住宅ローン控除は、所得税や住民税の節税になるため、最大限に活かすべき制度です。住宅ローンを契約する際には、住宅ローン控除を受けることができる条件を満たしているかを確認しましょう。そして、住宅ローン控除を受けるにあたり、確定申告に必要な書類が揃っているのかなど手続き漏れがないように、しっかりご自身で管理しましょう。