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債務整理を考えている際に、自己破産・任意整理とともに個人再生というメニューが並んでいますね。
債務整理を人生で何度も経験するような事はないので世間一般に知られたものではないですし、債務整理手続きの中でも利用する人が多い手続きではないので、どのような手続きなのかわからず怖い…と思う方もいらっしゃるかもしれません。
このページでは、個人再生という手続きとはどのようなものなのかについてお伝えします。
個人再生とは
個人再生とは、債務整理の手続きの中の1つの種類で、民事再生法という法律に基づいて借金の返済をケアしていく手続きをいいます。
後述しますが、裁判所に申し立てをして許可が下りると、債務額を約1/5に減らして分割して返済をしていく手続きになります。
どのくらい債務が圧縮されるかというと、
債務の総額 | 圧縮後の金額 |
100万円未満 | その金額 |
100万円以上~500万円未満 | 100万円に圧縮 |
500万円以上~1,500万円未満 | 1/5に圧縮 |
1,500万円以上~3,000万円未満 | 500万円に圧縮 |
3,000万円以上~5,000万円未満 | 1/10に圧縮 |
という形で債務を圧縮することになります。
この民事再生法の適用がある中でも、小規模個人再生か給与所得者個人再生という規定の適用を受けて民事再生手続きを利用するのが個人再生であると考えてください。
個人再生のメリット・デメリット
では、どうして自己破産・任意整理とは別に個人再生という手続きが存在するのでしょうか。
それは、個人再生には自己破産・任意整理にはない大きなメリットがあるからです。
個人再生のメリット
個人再生のメリットを理解する上で、債務整理の基本的な考え方を知ってください。
債務整理の考え方
そもそも債務整理とは、借金などの債務の返済に困った人が、経済的再生を目指すために、弁護士・司法書士に依頼をして借金の返済のケアをしていく手続きの総称をいいます。
その種類には
- 自己破産
- 任意整理
- 個人再生
と主に3つに分けられます。
そしてこの債務整理は、まず借金の返済が可能なのか・不可能なのかで分類をします。
総債務額が300万円ある方については、月々85,000円くらいの支払いを継続してできるようでなければ、それは支払いはできない状態であると判断します。
支払いができない場合は自己破産を、支払いができるのであれば任意整理を選ぶのが基本となり、これが債務整理の基本的な考え方です。
自己破産が利用できないケース1:資格制限
しかし、何らかの原因で自己破産ができない・利用しづらい場合があります。
たとえば、本人が警備会社で警備員として働いている場合には、自己破産をするにあたっては、申立が終わってから、手続きが終了するまでの間は「破産者」という状態になることになります。
警備業法は3条は破産者で復権をしていない者については、警備業につくことができない事を規定しています。
そのため、警備会社に勤務していても、総務や経理などの事務職に回してもらったりする必要があります。
このような、お金にまつわる資格に基づいて仕事をしているような人たちは、欠格事由といわれる規定のために仕事ができなくなることになってしまいます。
個人再生手続きは、自己破産と同じく裁判所に申し立てをして行うものですが、この手続きを利用しても破産者になるわけではないので、資格の制限を受けません。
ですので、自己破産を利用すると資格に制限があるような場合に、個人再生手続きを利用することで、圧縮された債務額を支払う必要がありますが、早期に借金から自由になることが可能となります。
自己破産が利用できないケース2:住宅を手放したくない
住宅ローンを利用して住宅を保有している場合に、自己破産をするとどうなるでしょうか。
自己破産手続きは、債務の全部について免除してもらう手続きです。
そして、住宅ローンは借り入れなので、当然にこの債務に含まれる事になります。
そのため、債務整理はしたいけど、住宅はそのまま住みたいと考えた場合には、自己破産は利用できない状態になります。
しかし、個人再生手続きには、住宅ローン特約という特殊な手続きがあります。
これは住宅ローンはそのまま支払っていきながら、他の債務は圧縮してもらって、圧縮したものを支払っていくという手続きです。
これによって、住宅ローン債権者は住宅を競売にかけなくてもよくなるので、従来通り住宅に住み続けながら、任意整理では支払いきれない借金を圧縮してもらうことが可能なのです。
個人再生のデメリット
個人再生手続きは使い勝手の良い債務整理のメニューですが、デメリットもあります。
一つは、自己破産のように原則として債務を全額免除される手続きではないので、圧縮されたものとはいえ、借金を支払わなければなりませんので、そもそも借金の支払いができなくなってしまっている場合には利用ができないという事です。
また、自己破産と同様裁判所を利用してする手続きですので、任意整理のように貸金業者と個別に交渉するだけではなく、裁判所の審理を経る必要があるため、手続き的な負担(申立書類作成・証拠書類を集める作業・裁判所に出向く)が発生します。
もう一つは、信用情報機関に掲載される年数が、自己破産と同様で任意整理を行うよりも長い7年~10年程度となっているということです(任意整理は5年程度)。
個人再生をするためには
個人再生を利用するためにはどのような条件が必要なのでしょうか。
個人再生を利用するためには、次の2つの条件を満たすことが必要です。
支払いが不能になるおそれがあること
一つは、支払いが不能になるおそれがあることです。
仮に借金が100万円あっても、たとえば300万円のロレックスを持っているなどで、資産を清算すれば借金が払えるような場合に、借金だけを圧縮できるというのは筋が通らないのは想像できますね。
ですので、自分の持っている資産を使って、収入で毎月支払っていくことが難しくなるような場合(このような状態を支払い不能と呼んでいます)でなければなりません。
毎月の弁済ができること
個人再生は自己破産と異なり圧縮した借金を支払っていかなければなりません。
ですので、職を失って収入の見込みがないような場合には、個人再生手続きの利用はできないことになります。
毎月の弁済が継続できることが個人再生を使うための条件であることに注意をしてください。
住宅ローン特約を使う場合には6ヶ月以上の延滞がないこと
個人再生の使い方として、住宅ローンは支払い続けて住宅を維持するという方法をお伝えしました。
しかしこの方法住宅ローンに長期の延滞があるような場合には利用できないことになっています。
具体的には6ヶ月以上の延滞があるような場合には、個人再生手続きは利用できなくなるので注意をしましょう。
個人再生の流れ
では、実際に個人再生を利用するためには、どのようにしていけば良いのでしょうか。
弁護士・司法書士に相談をする
個人再生は裁判所に申し立てをすることによって行います。
これは法律上は個人でも可能といえば可能なのですが、弁護士や司法書士を利用するのが一般的です。
なぜなら、弁護士・司法書士に依頼をすると、依頼をした段階で借金の返済を一時的にしなくてよいという事になっているからです。
そこで、弁護士・司法書士に依頼をするためには、まず弁護士・司法書士を探すところから始まります。
まずは、広告などに掲載されている電話に相談の予約を取ることになります。
突然出向いて行っても、弁護士・司法書士が不在にしている可能性があるので、相談ができなくなってしまうため、必ず予約をして指定された日時に訪問するようにしましょう。
相談の予約を入れたら、指定された日時に弁護士・司法書士の事務所に出向いて相談をします。
個人再生に限らず、債務整理全般の相談をするにあたって持っていくものとしては次のようなものを持って行ってください。
- 契約書や支払い明細など、借金の総額がわかるような資料
- カードなど借り入れ先が分かるもの
- 収入・支出などの家計の状況を簡単にでもいいのでまとめたもの
依頼をするかどうかを決めかねている場合でも、こういった情報がなければ弁護士・司法書士も判断することができなくなります。
もし依頼をすることが確実な場合には、運転免許証・健康保険証などの公的な身分証明をしてくれるものと印鑑を持っていくようにしましょう。
弁護士・司法書士に報酬を分轄して払う
依頼をすると申立までの間に報酬を分轄して支払うことになります。
この間は弁護士・司法書士の側からは、特別なことが無い限り連絡が来ないことが多いです。
申立書類の作成の準備
費用の支払いが終わると申立書類の作成の準備をします。
申立書類は弁護士・司法書士に任せていれば作ってもらえると思っている方も多いのですが、申立にあたっては、本人の預金額や資産(車・保険・住宅)などの申告とともに、申告した内容を裏付ける証拠書類の提出も必要になります。
どのような書類が必要なのかは担当する裁判所によって異なるので、弁護士・司法書士が必要だというものに関しては作成・提出に協力するようにしてください。
申立書類を弁護士・司法書士が作成すると、いったん本人に申立予定の書類を作成した上で本人にこの書類で提出をしてよいか確認をとることが通常です。
不自然な点がなければそのまま提出して、裁判所での審査がはじまります。
個人再生の申立から返済開始までの流れ
個人再生の申立がされると、裁判所によっては再生委員という人(裁判所から指定される弁護士)が選ばれます。
まずは、その再生委員と打ち合わせをすることになります。
事前に弁護士・司法書士に連絡が来るので、その日付に合わせて休みを調整することになります。
個人再生手続きは最長で3年程度にわたって支払っていく手続きになるので、きちんと支払いをできるかどうかのテストをすることがあります(東京地裁などではこのような運用をしています)。
再生委員との打ち合わせ、履行テストに問題がなければ、裁判所は債務の圧縮と残った額の返済を続けていくことを認める決定を出すことになります。
まとめ
このページでは、債務整理の一方法としての個人再生についてお伝えしてきました。
どのような場合に使うのが効果的なのかを把握していただいた上で、自分が使えるかどうかは実際には債務総額と支払い能力等によるので、専門家に相談してみるとよいでしょう。