元債務整理事務所従業員が教える「個人再生のメリットデメリットと注意点」

債務整理を考えている際に、自己破産・任意整理とともに個人再生というメニューが並んでいますね。

債務整理を人生で何度も経験するような事はないので世間一般に知られたものではないですし、債務整理手続きの中でも利用する人が多い手続きではないので、どのような手続きなのかわからず怖い…と思う方もいらっしゃるかもしれません。

Expert
債務整理の中でも、自己破産を利用できない人にとっては借金額を大幅に圧縮できる便利な手続きになっているので、実は使い勝手の良い手続きなんですよ。

このページでは、個人再生という手続きとはどのようなものなのかについてお伝えします。

個人再生とは

個人再生とは、債務整理の手続きの中の1つの種類で、民事再生法という法律に基づいて借金の返済をケアしていく手続きをいいます。

後述しますが、裁判所に申し立てをして許可が下りると、債務額を約1/5に減らして分割して返済をしていく手続きになります。

どのくらい債務が圧縮されるかというと、

債務の総額圧縮後の金額
100万円未満その金額
100万円以上~500万円未満100万円に圧縮
500万円以上~1,500万円未満1/5に圧縮
1,500万円以上~3,000万円未満500万円に圧縮
3,000万円以上~5,000万円未満1/10に圧縮

という形で債務を圧縮することになります。

Expert
民事再生法は、アメリカの連邦倒産法第11章の規定を参考にして、日本では使われていなかった和議法という法律を改良して新しく作られた法律です。経済ニュースなどに普段から触れていらっしゃる方なら、企業の倒産に関して「民事再生法の適用の申請を…」というニュースを見られる方もいらっしゃるかもしれませんね。

この民事再生法の適用がある中でも、小規模個人再生か給与所得者個人再生という規定の適用を受けて民事再生手続きを利用するのが個人再生であると考えてください。

個人再生のメリット・デメリット

では、どうして自己破産・任意整理とは別に個人再生という手続きが存在するのでしょうか。

それは、個人再生には自己破産・任意整理にはない大きなメリットがあるからです。

個人再生のメリット

個人再生のメリットを理解する上で、債務整理の基本的な考え方を知ってください。

債務整理の考え方

そもそも債務整理とは、借金などの債務の返済に困った人が、経済的再生を目指すために、弁護士・司法書士に依頼をして借金の返済のケアをしていく手続きの総称をいいます。

その種類には

  • 自己破産
  • 任意整理
  • 個人再生

と主に3つに分けられます。

そしてこの債務整理は、まず借金の返済が可能なのか・不可能なのかで分類をします。

Expert
支払いが可能かどうかは、弁護士・司法書士の判断にもよりますが、残った債務元本額を3年で支払えるかどうかで検討する事務所が多いと思います。なぜなら、任意整理をするにあたって3年を超えるような返済はあまり貸金業者も飲むことがなく、せいぜい5年が限度だからです。

総債務額が300万円ある方については、月々85,000円くらいの支払いを継続してできるようでなければ、それは支払いはできない状態であると判断します。

支払いができない場合は自己破産を、支払いができるのであれば任意整理を選ぶのが基本となり、これが債務整理の基本的な考え方です。

債務整理の手続きの考え方は、総債務額を払えないならば自己破産・払えるならば任意整理が基本
しかし、以下の2つのケースにあてはまると、自己破産をすると不都合が生じるので、メリットになるのです。

自己破産が利用できないケース1:資格制限

しかし、何らかの原因で自己破産ができない・利用しづらい場合があります。

たとえば、本人が警備会社で警備員として働いている場合には、自己破産をするにあたっては、申立が終わってから、手続きが終了するまでの間は「破産者」という状態になることになります。

警備業法は3条は破産者で復権をしていない者については、警備業につくことができない事を規定しています。

そのため、警備会社に勤務していても、総務や経理などの事務職に回してもらったりする必要があります。

Expert
お金に困っている人が警備をすると、建物の中に入れてしまったり、それこそ現金を輸送するような業務では危険が及ぶと考えたため、このような法律がおかれています。弁護士や司法書士、税理士といった国家資格をもっている人はもちろん、不動産会社にお勤めで宅建士の資格で仕事をしていらっしゃる方も該当します。

このような、お金にまつわる資格に基づいて仕事をしているような人たちは、欠格事由といわれる規定のために仕事ができなくなることになってしまいます。

Woman
そうすると債務整理ができなくなってしまうか、仕事をやめるかどちらかなのか…しかないのでしょうか?
Expert
そんなことはありません。このような場合に個人再生手続きを利用して、借金から早期に開放されるようにしましょう。

個人再生手続きは、自己破産と同じく裁判所に申し立てをして行うものですが、この手続きを利用しても破産者になるわけではないので、資格の制限を受けません。

ですので、自己破産を利用すると資格に制限があるような場合に、個人再生手続きを利用することで、圧縮された債務額を支払う必要がありますが、早期に借金から自由になることが可能となります。

自己破産の資格制限がある場合でも、個人再生は利用できる。

自己破産が利用できないケース2:住宅を手放したくない

住宅ローンを利用して住宅を保有している場合に、自己破産をするとどうなるでしょうか。

自己破産手続きは、債務の全部について免除してもらう手続きです。

そして、住宅ローンは借り入れなので、当然にこの債務に含まれる事になります。

Expert
住宅ローンの債務整理をすると、金融機関は抵当権という担保を自宅に設定しているため、自宅を競売にかけて代金を回収することができますので、競売で落札した人に家を明け渡さなくてはならないのです。

そのため、債務整理はしたいけど、住宅はそのまま住みたいと考えた場合には、自己破産は利用できない状態になります。

しかし、個人再生手続きには、住宅ローン特約という特殊な手続きがあります。

これは住宅ローンはそのまま支払っていきながら、他の債務は圧縮してもらって、圧縮したものを支払っていくという手続きです。

これによって、住宅ローン債権者は住宅を競売にかけなくてもよくなるので、従来通り住宅に住み続けながら、任意整理では支払いきれない借金を圧縮してもらうことが可能なのです。

個人再生手続きは住宅ローンを除外して手続きの申請ができる。

個人再生のデメリット

個人再生手続きは使い勝手の良い債務整理のメニューですが、デメリットもあります。

一つは、自己破産のように原則として債務を全額免除される手続きではないので、圧縮されたものとはいえ、借金を支払わなければなりませんので、そもそも借金の支払いができなくなってしまっている場合には利用ができないという事です。

また、自己破産と同様裁判所を利用してする手続きですので、任意整理のように貸金業者と個別に交渉するだけではなく、裁判所の審理を経る必要があるため、手続き的な負担(申立書類作成・証拠書類を集める作業・裁判所に出向く)が発生します。

Man
私は平日仕事をしています。最近では借金の相談も土・日・夜間でもできるようなので、出向く用事がある場合でも土・日・夜間に対応してくれますよね?
Expert
いいえ、裁判所から選任される弁護士との打ち合わせ、公的な機関である裁判所に出向くことになるので、平日の昼間に休みをとってもらう必要があります。といっても突然「明日休んで集合してください」というものではなく、一ヶ月前くらいには前もって期日を調整できます。

もう一つは、信用情報機関に掲載される年数が、自己破産と同様で任意整理を行うよりも長い7年~10年程度となっているということです(任意整理は5年程度)。

個人再生には、圧縮されたとはいえ返済をする必要がある、平日に弁護士事務所・裁判所に出向く必要がある、任意整理よりも信用情報に掲載される期間が長い、といったデメリットもあることに注意

個人再生をするためには

個人再生を利用するためにはどのような条件が必要なのでしょうか。

個人再生を利用するためには、次の2つの条件を満たすことが必要です。

支払いが不能になるおそれがあること

一つは、支払いが不能になるおそれがあることです。

仮に借金が100万円あっても、たとえば300万円のロレックスを持っているなどで、資産を清算すれば借金が払えるような場合に、借金だけを圧縮できるというのは筋が通らないのは想像できますね。

ですので、自分の持っている資産を使って、収入で毎月支払っていくことが難しくなるような場合(このような状態を支払い不能と呼んでいます)でなければなりません。

毎月の弁済ができること

個人再生は自己破産と異なり圧縮した借金を支払っていかなければなりません。

ですので、職を失って収入の見込みがないような場合には、個人再生手続きの利用はできないことになります。

毎月の弁済が継続できることが個人再生を使うための条件であることに注意をしてください。

Expert
なお、生活保護を受けて収入があるものについては、生活保護費から借金の返済は禁止されることになるので、自己破産をせざるをえません。

住宅ローン特約を使う場合には6ヶ月以上の延滞がないこと

個人再生の使い方として、住宅ローンは支払い続けて住宅を維持するという方法をお伝えしました。

しかしこの方法住宅ローンに長期の延滞があるような場合には利用できないことになっています。

具体的には6ヶ月以上の延滞があるような場合には、個人再生手続きは利用できなくなるので注意をしましょう。

個人再生の流れ

では、実際に個人再生を利用するためには、どのようにしていけば良いのでしょうか。

弁護士・司法書士に相談をする

個人再生は裁判所に申し立てをすることによって行います。

これは法律上は個人でも可能といえば可能なのですが、弁護士や司法書士を利用するのが一般的です。

なぜなら、弁護士・司法書士に依頼をすると、依頼をした段階で借金の返済を一時的にしなくてよいという事になっているからです。

そこで、弁護士・司法書士に依頼をするためには、まず弁護士・司法書士を探すところから始まります。

Expert
債務整理という手続きは、弁護士・司法書士の側からするとそんなに難易度の高い手続きではありませんので、一生懸命取り組んでいるところはきちんと事務所一眼となって債務整理を受け入れる体制が整っています。インターネットで広告を出しているような弁護士・司法書士はきちんと手続きを受け入れる体制が整っている事務所なので積極的に利用して大丈夫です。

まずは、広告などに掲載されている電話に相談の予約を取ることになります。

突然出向いて行っても、弁護士・司法書士が不在にしている可能性があるので、相談ができなくなってしまうため、必ず予約をして指定された日時に訪問するようにしましょう。

Expert
弁護士・司法書士などの有資格者は、普段は裁判所やクライアントのところで出向いていったりしていて、事務所に居ないこともあるので注意をしてください。

相談の予約を入れたら、指定された日時に弁護士・司法書士の事務所に出向いて相談をします。

Man
相談当日には準備するものはありますか?
Expert
手ぶらできていただいても結構ですが、相談では、個人再生の利用ができるかどうかも踏まえて、適切な債務整理手続きが何かを判断するために、借金に関する情報、収入に関する情報などをお聞きしますので、事前に準備しておいてくれると、手続きがスムーズにすすみます。

個人再生に限らず、債務整理全般の相談をするにあたって持っていくものとしては次のようなものを持って行ってください。

  • 契約書や支払い明細など、借金の総額がわかるような資料
  • カードなど借り入れ先が分かるもの
  • 収入・支出などの家計の状況を簡単にでもいいのでまとめたもの

依頼をするかどうかを決めかねている場合でも、こういった情報がなければ弁護士・司法書士も判断することができなくなります。

もし依頼をすることが確実な場合には、運転免許証・健康保険証などの公的な身分証明をしてくれるものと印鑑を持っていくようにしましょう。

弁護士・司法書士に報酬を分轄して払う

依頼をすると申立までの間に報酬を分轄して支払うことになります。

この間は弁護士・司法書士の側からは、特別なことが無い限り連絡が来ないことが多いです。

Expert
この間、弁護士・司法書士は債務の額についての正確な調査をするために、債権者に通知を送って債権の届出をしてもらっています。また、債権者は会社によりますが2週間に1度くらいの割合で、進捗を聞いてくるような電話をしています。中には早々に裁判をしてきて給与を差押にくるような会社もあるので、もし弁護士・司法書士からの連絡があった場合には、電話に出るか、折り返しの電話をしてあげてください。

申立書類の作成の準備

費用の支払いが終わると申立書類の作成の準備をします。

申立書類は弁護士・司法書士に任せていれば作ってもらえると思っている方も多いのですが、申立にあたっては、本人の預金額や資産(車・保険・住宅)などの申告とともに、申告した内容を裏付ける証拠書類の提出も必要になります。

どのような書類が必要なのかは担当する裁判所によって異なるので、弁護士・司法書士が必要だというものに関しては作成・提出に協力するようにしてください。

申立書類を弁護士・司法書士が作成すると、いったん本人に申立予定の書類を作成した上で本人にこの書類で提出をしてよいか確認をとることが通常です。

不自然な点がなければそのまま提出して、裁判所での審査がはじまります。

個人再生の申立から返済開始までの流れ

個人再生の申立がされると、裁判所によっては再生委員という人(裁判所から指定される弁護士)が選ばれます。

まずは、その再生委員と打ち合わせをすることになります。

事前に弁護士・司法書士に連絡が来るので、その日付に合わせて休みを調整することになります。

個人再生手続きは最長で3年程度にわたって支払っていく手続きになるので、きちんと支払いをできるかどうかのテストをすることがあります(東京地裁などではこのような運用をしています)。

再生委員との打ち合わせ、履行テストに問題がなければ、裁判所は債務の圧縮と残った額の返済を続けていくことを認める決定を出すことになります。

まとめ

このページでは、債務整理の一方法としての個人再生についてお伝えしてきました。

どのような場合に使うのが効果的なのかを把握していただいた上で、自分が使えるかどうかは実際には債務総額と支払い能力等によるので、専門家に相談してみるとよいでしょう。

つの
つの
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法律・マーケティング・マネー系の記事の執筆をしているライターです
【経歴】
・司法試験受験生
・法律事務所・司法書士事務所パラリーガル
・行政書士・FP資格取得
・WEBマーケティング(リスティング広告・SEO)
などを経験

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