生前贈与をうまく活用して相続対策をしよう!

皆さん、贈与についてどのくらいご存知でしょうか?

小学館発行の大辞泉によると、「当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受託することによって成立する契約」だそうです。

死亡する前にこの贈与を行うことにより、自分の財産を引き継ぐ相続人である配偶者や子供が負担する相続税を軽減することができるのをご存知でしょうか?

しかし、贈与税はとても税率の高い税金なので、何も考えずに贈与してしまうとたくさんの税金を取られてしまい、贈与税・相続税の合計が何もしなかった場合の相続税よりも高かったということになりかねません。

以下では上手に贈与をしていく方法を記事にしましたので、読んでいただけると幸いです。

生前贈与とは

死亡する前に自分の財産を人に分けることです。

生前贈与できる資産には以下のようなものがあります。

  • 現金や預貯金
  • 自宅、賃貸マンション、土地などの不動産
  • 上場有価証券、自社株
  • ゴルフ会員権

上記のような資産を個人から個人に移した時に贈与税という税金がかかります。

では、以下では生前贈与の方法として2つある、暦年課税制度と相続時精算課税制度を見ていきましょう。

生前贈与方法①-暦年課税制度

暦年課税制度とは、1年間に110万円の基礎控除がある制度になります。

暦年贈与の110万円を上手に利用するポイントがいくつかあります。

贈与税の基礎控除110万円の活用

 

毎年110万円の基礎控除が使えます。

たとえば、2人に毎年110万円ずつ、10年間贈与した場合の贈与税は0円です。

これで、10年間で2,200万円の増族財産を減らすことになり、財産が減った分、相続税が少なくなります。

また、暦年贈与では、「本当に贈与がありました」という1つの証拠として、申告して実績を作ることができます。

贈与期間を長く、贈与する人を多くする

贈与では、法定相続人である配偶者・子供以外の人にも財産をあげることができます。

子供の配偶者や孫に贈与することも可能です。

たとえば、7人に毎年110万円ずつ贈与すれば、1年間で770万円贈与することになります。

これが10年続けば、7,700万円の贈与ができます。

相続税の対象となる課税資産を減少させることができます。

ここで、同じ金額を贈与するのに、贈与期間が短い場合と贈与期間が長い場合でかかってくる贈与税の金額が違うことに留意しましょう。

たとえば、1,000万円を一度に贈与すると、贈与税は231万円かかってきます。

しかし、5年間に分けて1,000万円贈与すれば、1年あたり200万円の贈与になるので、贈与税は9万円×5回の45万円で済みます。

贈与する人数を多くし、長期間に分けて実行することで、非常に負担が軽くなります。

相続開始前3年以内の生前贈与加算

相続税の計算の規定の中で、相続開始前3年以内に実行された贈与については、贈与は成立していても相続税の計算上は相続財産に加算して相続税を計算します。

ということは、相続開始前3年以前の贈与財産については加算する必要はありません。

ですので、贈与は早く実行する方が間違いございません。

 

生前贈与方法②-相続時精算課税制度

相続時精算課税制度について説明します。

贈与者は、満60歳以上で、受贈者は、満20歳以上である推定相続人(代襲相続人を含む)及び孫です。

この場合の年齢は「贈与する年の1月1日」が基準日となります。

2,500万円までの贈与なら、何年に分けても生涯枠が同じです。

贈与財産の種類や金額、贈与の回数にも制限はありません。

ここで、子どもが2人以上いる場合は、1人ひとりが対象になります。

また子供は父親と母親、それぞれ2,500万円ずつまでの贈与なら贈与税はかかりません。

2,500万円を超える分については、一律20%の贈与税がかかります。

相続財産に加算される贈与財産の価額は贈与時の評価です。

財産の評価は、土地は通常は路線価、建物は固定資産税評価価額になります。

たとえば、相続の時に2,000万円の土地でも、贈与を受けた時に4,000万円の評価であれば、相続税を計算するときは4,000万円として評価されるということです。

そのため、何を贈与するのかが重要になります。

  • 将来、値上がりが見込める財産を贈与する

将来、市街化区域に編入される調整区域内の土地や収容予定地、あるいは、現在は利用制限を受けて価値が低い土地でも、将来的にその利用価値が上がる可能性の高い土地であれば、評価の低いうちに贈与することで、将来の値上がり分の相続税を少なくすることができます。

  • 評価を引き下げてから贈与する

たとえば、現金で賃貸アパート・賃貸マンションといった収益物件を建設し、それを贈与することで、現金に比べて約40%程度に評価を下げることができます。

  • 収益を生む財産を贈与する

中古の賃貸アパート・賃貸マンションなど、建物の評価がすでに低くなり、家賃収入が確実に入ってくる物件を贈与する方法もあります。

低い評価で贈与でき、さらに安定収入をそのままもらった人に移転できます。

相続時精算課税制度を受けるには、贈与を受けた年の翌年3月15日までに税務署へ「相続時精算課税制度」を選択する旨の届出が必要です。

最初の贈与の際に税務署へ「相続時精算課税制度」を届け出れば、相続時まで「相続時精算課税制度」の適用が継続されます。

生前贈与で生命保険を活用しよう

保険料の贈与による納税資金対策

相続発生後に最も重要となるものは、現金や預貯金などの金融資産です。

被相続人(亡くなった方)が生命保険に加入していれば、保険金としてまとまったお金が短期間に支払われることになります。

それを上手に使えば、相続税の納税資金になりますし、これから説明しますように、相続税対策にもなります。

では、以下で生前贈与と生命保険をうまく組み合わせる方法について記載します。

相続人(子)が生命保険に加入して契約者となり、被相続人(親)から受けた現金をそのまま生命保険料に充てるという方法があります。

この方法において、親を「被保険者」にしておくと、親の死亡時に生命保険としてまとまった金額が支払われます。

この方法では、親の死亡時まで子はお金をしっかり貯めておくことができます。

また、相続税の納税資金にも活用できます。

納税資金を貯めること以外にも保険料贈与には以下のようなメリットがあります。

  • 親から子に現金を贈与することによって、財産を移転することができる
  • 相続税の対象となる相続財産が減少する
  • 被保険者の死亡時に支払われる死亡保険金は、相続税の納税資金や代償分割などに利用することができる

相続税の非課税枠の利用による賢い方法

生命保険は便利に活用できる

生命保険はあらゆる相続対策で活用できる便利なものです。

よりよい相続対策になるように、以下のことに留意が必要です。

  • 今契約している生命保険が相続対策上有効な内容となっているのか
  • もっと条件のいい生命保険があるか
  • 相続対策の一環として新たに生命保険を契約したいが、どんな内容のものがいいか

受け取った生命保険には相続税や所得税や贈与税が課せられますが、それは契約形態によって決まります。

死亡保険金の取り扱い

相続税のかかる契約形態の死亡保険金は、被保険者が亡くなった時点では財産として認識されません。

しかし、相続税の計算上、死亡保険金はみなし相続財産として税金の対象となります。

ただし、法定相続人が受け取る場合には、次の金額は控除が受けられます。

非課税金額 = 500万円×法定相続人の数

なお、法定相続人の数は相続の放棄がなかったものとして計算します。

また、養子がある場合には、実子がいれば1人、実子がいなければ2人までしか法定相続人の数に加えることができません。

たとえば、妻と子供3人が相続人の場合、

非課税金額 = 500万円×4人 =2,000万円

となります。

このように、生命保険は他の金融商品や不動産に比べ、相続税評価額を引き下げる効果があり、そのうえ現金が確実に確保でき、使い勝手がよいので便利です。

保険の加入の仕方

保険は次のような形で加入します。

  • 契約者と被保険者は親
  • 受取人は子や孫

このようにしておくと、親が亡くなられたときに多額の死亡保険金が相続人に支払われ、次のようなメリットがあります。

  • 相続人が受け取る死亡保険金には、500万円×法定相続人の数の非課税限度額がある
  • 納税資金を確保することができる
  • 不動産や株式のように値下がりを心配する必要がない

現金を生前贈与するということになれば、将来相続人になる方が勝手に使うかもしれないことを心配しなくてはならないかもしれません。

ですが、生命保険ですと、自分自身が亡くなった時にお金が下りるので、納税資金として使ってもらえる可能性が高いです。

相続税対策には終身保険がおススメ

前述の「500万円×法定相続人の数の非課税限度額」を利用するには、一生涯保障が続く終身保険に加入していると確実で安心です。

養老保険や定期保険には満期があります。

終身保険の場合は、満期がありませんので、安心です。

ただし、終身保険の加入時期や保険料の支払い方法によっては、「保険金としてもらう金額よりも保険料の掛金の方が多くなる」というケースもありますので、留意が必要です。

生命保険金の死亡受取を誰にするのがよいか

生命保険金の死亡受取を誰にするかを考えていきます。

まずは配偶者を考えてみます。

配偶者については、「相続税の配偶者の税額軽減」という制度があります。

これは、被相続人の配偶者が相続、または遺贈により取得した正味の遺産額が、

  1. 1億6,000万円
  2. 配偶者の法定相続分相当額

の金額のうちいずれか多い金額に達するまでは、配偶者に相続税はかからないという制度です。

この制度を考慮に入れると、前述の法定相続人1人あたり500万円の非課税枠は、税金がほとんどかからない母親よりも、相続税がかかる子供に使う方が有利です。

 

 

贈与税の優遇措置について

教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置

非課税となる金額

父母や祖父母が子供や孫に教育資金を贈与する場合に、一定の要件を満たせば1,500万円まで非課税になります。

しかし、受贈者である子供や孫が30歳に達した時に、使われずに残ったものがあれば、受贈者が30歳になった日に贈与があったものとみなして、残額に対して贈与税が発生します。

贈与税が非課税となる期間

期間は平成31年12月31日までになります。

教育資金の贈与方法

教育資金口座を開設し、そこに拠出します。

以下の3つの方法があります。

  1. 信託銀行に信託
  2. 贈与契約書により取得した金銭を取扱銀行等に預入
  3. 贈与契約書により取得した金銭や証券会社等で有価証券を購入

口座を開設すると、口座を開設した金融機関が、「教育資金非課税申告書」を税務署に提出してくれますので、これにより同制度を使うことができるようになります。

教育資金口座からの払い出し

教育資金の支払いを行った場合、支払いの事実を証明する書類を、教育資金口座を開設した金融機関等に提出することにより、払い出しをすることができます。

結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置

贈与税が非課税となる期間

平成31年3月31日までの期間

非課税となる金額

祖父母等が、20歳以上50歳未満の子や孫等に対して、結婚・子育て資金の支払いに充てるために金銭等を贈与し、子や孫等の名義で取扱金融機関に預入等した場合には、子や孫等一人につき、最大1,000万円までの金額に相当する部分の価額について、贈与税が非課税となります。

非課税となる結婚・子育て資金の範囲

結婚に伴う婚礼、住居および引っ越しに要する費用のうち、一定のものについて1,000万円の範囲内で最大300万円まで可能です。また、妊娠・出産に要する費用・子の医療費・保育料が対象となります。

開始の手続き

本非課税措置に対応した預金等の商品を取り扱う金融機関(銀行等)で、専用口座を開設のうえ、贈与された金銭の預入等をします。

また、口座開設に先立ち、贈与者と受贈者の間で、書面により贈与契約を締結する必要があります。

専用口座

開設可能な専用口座は、受贈者1人につき1つになります。

受贈者が50歳に達した日などに専用口座は終了となり、口座は解約できます。

なお、50歳に達した時点で使い残しがあると、贈与税が課税されます。

結婚・子育て資金の払出し

専用口座から払い出した資金を結婚・子育て資金として利用したことを確認するため、領収書等を取扱金融機関に提出します。

贈与税の配偶者控除

贈与税の配偶者控除という制度があります。

夫から妻(または妻から夫)への贈与に対する非課税枠は2,000万円です。

また、この非課税枠は、通常の贈与における年間の基礎控除額である110万円も同時に適用できます。

この特例を使う年には合計で、210万円を非課税とすることができます。

適用要件

適用要件は以下のとおりです。

  • 婚姻期間が20年以上の夫婦間の贈与であること

婚姻期間は、婚姻の届出の日から起算します。

また、贈与の時点で婚姻期間が20年以上という意味になります。

  • 贈与財産は、自分の居住用不動産、または居住用不動産を取得するための金銭であること

贈与税の税金の対象となる不動産の評価は、相続税評価額となります。

なお、贈与を受けた配偶者の単独名義にする必要はなく、共有名義でも構いません。

  • 取得日の翌年3月15日までに居住し、その後も引き続きそこに居住する見込みであること

現在住んでいる住宅のすべて、または持分を贈与すれば、「翌年3月15日までに居住」という要件もすんなりとクリアできます。

新築の不動産を購入したりする場合は、翌年3月15日までに居住しなければならないことに留意する必要があります。

未完成で入れないということにはならないようにしましょう。

  • 同一夫婦間において、以前にこの配偶者控除の適用を受けていないこと

贈与税の配偶者は、同じ配偶者に対して一生に一度しか使えません。

一組の夫婦について一度だけ適用できます。

また、2,110万円までの贈与について、贈与税は課税されません。

  • 納める贈与税の税額がない場合でも、申告の必要がある

なお、贈与税の申告に必要な書類は以下の通りです。

  1. 贈与の日から10日以上経過した日以後に作成された戸籍の謄本、または抄本及び戸籍の附表の写し
  2. 居住用不動産への居住を開始した日以降に作成された住民票の写し
  3. 贈与を受けた不動産の登記簿謄本・抄本、または登記事項証明書
  4. 相続税評価額のわかる書類(家屋は固定資産税評価明細書、土地は路線価などで評価した明細表・公図・地積測量図など)

まとめ

ここまで記事をお読み頂きましてありがとうございました。

1章ではまずは生前贈与とはどういったものであるのかを説明いたしました。

2章では生前贈与方法の1つである暦年課税制度についてご説明しました。

非課税枠は毎年110万円ということを頭に入れてくださいね。

3章で解説した相続時精算課税制度については、非課税枠2,500万円は相続税課税持に精算されることを覚えておいてください。

4章で解説した保険の相続での活用は、被相続人に終身保険をかけることが相続税の軽減につながることをご説明しました。

5章では、贈与税の種々の優遇措置についてご説明しました。

この記事が皆様のお役に立てば幸いです。

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