株のファンダメンタル分析の基礎知識を学ぼう!

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株式投資では「どの銘柄を買えばいいのか」「どのタイミングで買えばいいのか」を決める必要があります。その判断基準となるのがファンダメンタル分析とテクニカル分析です。ファンダメンタル分析は企業の価値を財務諸表などで調べ、株価が割安か、今後の業績は伸びるのかなどを分析して株を買います。テクニカル分析は過去の値動きのパターンを調べて現在の株価が割安か割高かどうかを判断します。今回はファンダメンタル分析の基礎知識をわかりやすく解説していきます。

株のファンダメンタル分析とは

 

ファンダメンタル分析とは、業績や財務状況・経営状況などの企業価値を分析して株価が割安かどうかを判断する手法です。株の種類は成長株と割安株に分類されます。

成長株

業績が良く、これからも高成長が続くことが期待される銘柄のことですグロース株とも言われています。売上と利益が毎年伸びているかを分析して今後の成長が見込めるかを判断します。

割安株

会社の売上や利益に対しての評価が株価に反映されていないので、株価が安値で放置されている株のことです。バリュー株ともいいます。

企業価値に対して株価が割安か判断します。代表的な指標としてPER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)、ROE(自己資本利益率)などがあります。これらの指標に関しては後ほど詳しく解説します。

日経平均株価が下がるなど、市場全体が値下がりしても、業績の良い銘柄は値下がりが少なく、上昇に転じるのも早い傾向にあります。

株のファンダメンタルの分析の種類

ファンダメンタル分析に使うデータは、企業の財務諸表(損益計算書・貸借対照表)が中心になります。

 

決算書

決算書とは、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書などの財務諸表のことを言います。財務諸表は企業の経営状態や財務状態を把握するために作られている資料です。利益が出ているのか、資金繰りはいいのか、潰れる心配はないのかといったことを読み取ることができます。それでは具体的にそれぞれの財務諸表を見ていきましょう。

貸借対照表

 

流動比率  

流動比率は財務の安全性を測る代表的な指標です。短期的な支払能力を表す財務指標で150%を上回るのが望ましいとされています。

流動比率 = 流動資産 ÷ 産動負債

流動資産とは1年以内に会社に現金として入る資産です。流動負債は1年以内に会社から現金で支払う負債です。ですから、流動資産の方が流動負債より大きければ短期的な会社の支払い能力に問題はないだろうという判断ができます。

自己資本比率

自己資本比率は総資本(総資産)のうちどの程度が自己資本でまかなわれているかを示します。総資産というのは自己資産と他人資本(負債)を合わせたものです。ですから、自己資本の割合が高ければ高いほど安全と判断できます。自己資本比率の目安としては40%以上だと安全だとされています。

自己資金が足りない場合は銀行などから融資を受け、資金援助に頼らなければなりません。自己資金が十分にあれば積極的に事業の拡大ができる資金があることを意味しています。

損益計算書

 

損益計算書とは一定期間の経営成績を表す報告書です。経営成績とはその会社の利益の大きさと利益の発生過程をいいます。損益計算書ではその企業の活動による利益や損失を把握することができるのです。

収益 ー 費用 = 利益(当期純利益)

損益計算書において以下の三つをまずチェックしましょう。

 

  1. 売上高営業利益率
  2. 売上高経常利益率
  3. 売上高販売管理費率

 

 

それぞれ見ていきましょう。

 

売上高営業利益率

 

売上高営業利益率からはその企業に稼ぐ力があるか分かります。営業利益は本業でいくら稼いだか表しています。営業利益の計算式は次のようになります。

売上高 ー 売上原価 = 売上総利益

売上総利益 ー 販売費及び一般管理費 = 営業利益

つまり

売上高営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上高 × 100 となります。

営業利益が前年に比べて増えていても、売上高営業利益率がマイナスであれば、経営は順調にいっているとは言えません。通常は1~3%程度。5%あれば優良と判断します。

売上高経常利益率

経常利益の計算は次のようになります。

営業利益+営業外収益 – 営業外費用 = 経常利益

営業外収益は本業の営業活動以外から発生した収益をいいます。例えば、受取利息・受取配当金などがあります。

営業外費用は本業の営業活動以外に要した費用です。 支払利息、雑支出等があります。

売上高経常利益率 = 経常利益 ÷ 売上高 × 100

営業利益率が良くても借入金による負担から経常利益率が低くなる場合や、逆に営業利益率が低いのに受取利息などで経常利益が高くなる場合もあります。そのため、この比率が高いほど資金調達力や金融収支も考慮した総合的な収益率があると判断できます。

売上高経常利益率も通常は1から3パーセント。5%あれば優良と判断します。

売上高販管費率

販管費は「販売費及び一般管理費」のことです。売上高販売販管費率では売上高に対してどのくらいコストがかかっているのかを表し、会社運営における効率性を見ることができます。

売上高販管費率 = 販管費 ÷ 売上高 × 100

平均は15%程度ですが、業種によって異なるので比率が高いか安いかを判断する際は、同業種の他企業と比較するのがおすすめです。

 

キャッシュフロー計算書

 

キャッシュフロー計算書では、決算の初めにいくらの現金があって、決算の終わりにいくら残っているかという現金の流れを把握することができます。キャッシュフローには以下の三つがあります。

営業キャッシュフロー

 

会社の本業の営業活動によって増減した現金のことです。営業キャッシュフローがマイナスということは営業活動による現金収入がないので、資金繰りが苦しいと判断されます。

 

投資キャッシュフロー

 

事業への投資や設備投資といった投資活動による現金の流れです。 投資キャッシュフローがマイナスであっても、今後の成長を見越して設備投資にお金を使ったということなので、プラスの判断になります

 

財務キャッシュフロー

 

借金の借入、返済、株の発行など資金調達により増減した現金のことです。財務キャッシュフローがプラスだと銀行から借金をしている状態になるので、資金繰りが苦しいと判断します。

四季報

株式投資をする上で四季報を読むことは非常に大切なことです。多くの投資家が四季報を参考にしていて、その内容によって株価が上下するからです。業界担当記者が独自取材を行っており独自の分析で業績変化を先取りしています。東洋経済新報社が年4回(3、6、9、12月)発行しています。四季報を使ってファンダメンタル分析をすることもおすすめです。

四季報の読み方

財務状況

まずは業績欄を見て財務状況を確認しましょう。過去5年間の実績と予想(会社予想1年、四季報予想2年)が掲載されています。

企業概要

企業概要に関してはまず特色が書かれ、会社のプロフィールがありますそして担当記者のコメントが書かれているのでそれをじっくり読むようにしましょう。どんな事業に注力しているのか新規事業は何なのかを把握するようにしましょう。

 

実際に分析を行うための指標

主な指標は次の4つです。

 

  • PER(株価収益率)
  • PBR(株価純資産倍率)
  • 配当利回り
  • ROE(自己資本利益率)

 

それぞれ詳しく見ていきます。

PER

PERとはPrice Earnings Ratioの略で、株価収益率のことです。株価が割安か割高かを判断する最も有名な指標です。株価が一株当たりの当期純利益の何倍になっているかを示します。計算式は以下のようになります。

PER(株価収益率) = 株価 ÷ 一株当たり当期純利益(EPS)

当期純利益とは税引前当期純利益から法人税などの利益にかかる税金(20~40%程度)を差し引いたものになります。つまり、企業が1年間でどれだけ稼いだかが分かる利益です。

例えば株価が500円で一株当たり当期純利益が100円だった場合

PER = 500円 ÷ 100円 = 5倍

PERは5倍になります。

業種や銘柄によって適正な PER は異なりますが、現在の日経平均は大体13倍から14倍程度となっています。ですから10倍以下だったら割安と判断します。

ただし PER が低いからといって必ずしも買いというわけではありません。業績は伸びているのか、将来性はあるのか、チャート上の株価水準はどの位置なのか、そういったことを合わせて判断するようにしましょう。

低PERランキング(2018年10月現在)

 

出典 ヤフーファイナンス

 

PBR

 

PBRとはPrice Book-value Ratioの略で、株価が一株当たり純資産 BPS( Book value Per Share)の何倍まで買われているのかを測る指標です。計算式は以下のようになります。

PBR(株価純資産倍率) = 株価 ÷ 一株当たり純資産(BPS)

一株当たりの純資産とは,会社の全資産を売却した場合に株主が1株につき手にすることができる金額で、 PBR が1倍ということは、株価が一株当たり純資産と同じということになります。ですからPBRが1倍を下回るということは会社の資産価値を下回っているということですから、割安と判断されます。

例えば株価が3,000円,一株当たり純資産が2,000円だった場合

3,000円 ÷ 2,000円 = 1.5倍 となります。

PBR には二つの使い方があります。一つはPBR一倍を大きく割れている時、割安と判断して買い付ける手法です。これは他の手法、例えば PER 、売上など他の指標から見ても割安と思われる株を買っておけば下値不安が少ないので、いずれは PBR 1倍前後まで戻るのではないかと判断します。

もう一つは PBR 1倍を上回っている銘柄の株価が下がってきた場合、買付けのチャンスとみて買いを入れます。 PBR 1倍というのは多くの投資家が見ているので、株価が下がってきた場合、底値の目処として機能します。特に個別企業の材料ではなく、NY市場が下がったり日経平均が下がったりするなど株価指数が大きく下落した時に割安となる判断の目処になるのでおすすめの手法です。

 

低PBRランキング(2018年10月現在)

 

出典 ヤフーファイナンス

 

配当利回り

 

配当利回りとは、購入した株価に対して年間でどれだけの配当があるかを示す指標です。

計算式は以下のようになります。

配当利回り(%) = 配当(円) ÷ 株価(円)

例えば配当が20円で株価が1000円だった場合

20円 ÷ 1,000円 = 0.02  となり、配当利回りは2%になります。

配当金が同じでも株価が高いと配当利回りは下がり、株価が低いと配当利回りは上がります。ですから、単純に配当利回りが高いからといって購入してもいいわけではありません。なぜ株価が下がっているのか、業績や利益に対して配当がどの程度出ているのか、そういったことをトータルで考えて投資するようにしましょう。

 

一般に3パーセント以上配当利回りがあれば高配当銘柄と言われています。ランキング表があるので参考にしてみてください

配当利回りランキング(2018年10月現在)

 

出典 ヤフーファイナンス

 

また、配当金を表す指標として配当性向があります。配当性向とは会社が得た利益(当期純利益)に対してどの程度株主に配当金を出すかというものです。計算式は以下のようになります。

 

配当性向 (%)= 配当金支払額 ÷ 当期純利益 × 100

 

配当性向は稼いだ利益からどの程度株主に配当金として支払っているかを表すので、配当性向が高いほど株主重視の姿勢を示していると言えます。通常、配当性向は20~30%程度です。ただし、配当を多くしてしまうと外部に資金が流出し内部留保(会社に残る資金)は少なくなります。ですから、あまりにも高い配当性向(80%超)など、ましてや100%を超えていると利益を超えた額を配当で出してしまっているので、そういった場合はあまり望ましくないと考えるべきです。

 

ROE

 

ROEとはReturn on Equity の略で、自己資本利益率と訳されます。当期純利益を株主資本(自己資本)で割った値です。ですから、会社が自己資本をどれだけ有効に活用して利益を上げているかを表す指標です。計算式は以下のようになります。

ROE(自己資本利益率) = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100

例えば10億円の自己資本があり当期純利益が2億円だった場合

2億円 ÷ 10億円 × 100 = 20%

となります。ROE は10%以上だと収益性が高いと判断します。

ROE は特に外国人投資家が重視する指標です。日本ではPERやPBR、配当利回りを投資判断の材料にするのが一般的でした。しかし、株主重視のアメリカでは自己資本でどのくらいの利益を上げているかといったことを重視します。例えば企業が配当を出して配当利回りを上げていても、その部分を他の事業に投資してさらに企業の成長を促すのをすすめる投資家もいるのです。現在東証一部の売買代金では6割以上外国人投資家が占めていて、その最大の投資家が注目している指標が ROE なのです。

 

ファンダメンタル分析のメリット・デメリット

ファンダメンタル分析のメリット

 

長期投資に有効

株価というのは短期的には日本経済の動向や海外の株価指数(NYダウ等)などによって上下しますが、中長期的にはその企業の本来の価値(売上や利益)を織り込んで動きます。短期的な上下の動きはともかく、長期的にはその企業の価値が株価に反映されるので、ファンダメンタル分析は有効です。

リスクを回避できる

その企業のファンダメンタル分析をすると、売上が落ちているとか、決算で利益が赤字になりそうだといったことを予測することが可能になり、不用意に株価の値動きだけで買い付けるリスクは低くなります。中長期でポジションを持ち越す時は、株価が上昇していてもファンダメンタルを調べるようにしましょう。

 

ファンダメンタル分析のデメリット

 

理解するのが難しい

 

ファンダメンタル分析をマスターするのは比較的敷居が高いです。貸借対照表、損益計算書などの財務諸表を理解しなければいけませんし、その他にもチェックする項目が多いので最初はなかなか理解することは難しいでしょう。しかし、慣れてくれば決算書のチェックすべき項目は絞られてきますし、 PER や PBR なども素早く比較することができるようになります。時間はかかりますが、有効な分析手法なのでファンダメンタル分析はしっかり勉強するようにしましょう。

 

まとめ

 

銘柄の分析にはファンダメンタル分析とテクニカル分析があります。今回はファンダメンタル分析に焦点を当てて解説していきました 。多くの項目があるように見えますが、財務諸表では①貸借対照表②損益計算書③キャッシュフロー計算書の三つ。分析手法では① PER② PBR ③配当利回り④POEこの四つで基本は抑えたことになります。それぞれ詳しく説明しているので、これらの数字を把握できるようにして株式投資にお役立てください。

 

 

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