IT企業はなぜシリコンバレーに集まるのか?シリコンバレーとIT企業の相性が良い訳

IT企業はなぜシリコンバレーに集まるのか?

IT関連株に投資を行っている方や、IT関連の業界にお勤めの方なら「シリコンバレー(Silicon Valley)」というアメリカの一地域について聞いた事があると思います。IT企業にとってのシリコンバレーというのは、金融業界に例えるなら「ウォール街」と同じ立ち位置だと言えます。

金融業界の代表的な中心地である「ウォール街(Wall Street)」にはNY証券取引所があります。その付近にはNY連邦準備銀行、フェデラル・ホールなどが存在し、政治的・金融的に代表的な建造物や企業が集まっており、そのような点から、ウォール街が金融業界の中心であると言われています。

同様に、IT企業の中心地であるシリコンバレーには、世界的に有名なIT企業が本社を置いていたり活動の中心地としており、IT業界にとって代表的な企業であり、最も価値を持った企業である「Apple」もシリコンバレー出身のIT企業です。

このような点から「シリコンバレーがIT業界の中心地」という認識が広がっていますが、その理由や経緯についてしっかりと押さえている方は少ないと思います。なので、この記事では「IT企業がシリコンバレーに集まる理由」やその経緯について触れていき、物価・不動産価格の上昇が発生しているという点についてご紹介していきます。

まず、はじめに「シリコンバレーの始まり」について触れていき、シリコンバレーの歴史について詳しくご紹介していきます。

軍事予算が作ったシリコンバレー

シリコンバレーについて一般的に知られている事は「半導体研究所・産業」がきっかけとなって、IT企業が集まったという認識が一般的だと思います。具体的には、スタンフォード大学出身のノーベル賞学者「ショックレー教授」が、半導体研究所をシリコンバレーに設立し、その影響から半導体関連企業が集まったという認識です。

そこから、当時代表的な企業だった「HP(ヒューレット・パッカード)」が生まれ、IT関連企業が集まったというのが、シリコンバレーがIT企業を集めた主な理由として認識されています。この認識は、間違いではないのですが、すごく重要な部分が省かれていると思います。

それは「軍事予算」によって、ITの開発・繁栄がもたらされたという重要な部分が省かれているからです。この部分について理解するには「世界第二次大戦」まで、時代を遡る必要性があります。

1941年に日本によって真珠湾攻撃が行われ、その数日後にドイツが「対米宣戦布告」を行いました。アメリカと他の連合国はドイツと激しい戦闘を行うのですが、ドイツ軍のレーダ網が優秀であり、連合軍は苦戦を強いられていました。

そのため、アメリカはハーバード大学の研究所にレーダーをどうにか回避する術を研究するように依頼しました。研究結果は「アルミホイルを利用する」というシンプルなものでしたが、大きな成果を挙げました。

そのハーバード大学の研究所のリーダーが後にスタンフォード大学の教授となり、そこで学んでいた学生の一人がシリコンバレーを代表する企業の1つである「HP」を立ち上げたのです。勘の良い方だと既にお察しかもしれませんが、第二次大戦時に他国をリードするためにアメリカは大きな軍事予算を組んでいました。

そして、その予算の行き先の1つとしてレーダーや半導体など、その後のIT業界を発展させる基礎的な技術を開発するために使用されました。また、軍事関連の技術を開発する大学・研究所・企業には国から大きな補助金が与えられ、それを目当てにたくさんの半導体関連企業が西海岸に集まったのです。(半導体の研究所があったため)

そのため、軍事に使うための研究されていた技術がコンピューターになったと言えます。また、現代人に欠かせない要素となったインターネットに関しても、始まりは「論文の共有」として開発されましたが、軍事技術として転用され、大きな発展を遂げた経緯があります。

このような点を考慮すると、ITと軍事というのは切っても切り離せないものであり、ITの聖地である「シリコンバレー」も元を辿れば「軍事予算」によって発展を遂げたのです。

スタートアップに適した環境

先程、シリコンバレーが発展した経緯についてご紹介させて頂きました。しかし、これだけではシリコンバレーが今日のIT業界に及ぼした影響について、押さえる事が出来たとは言えません。

シリコンバレー発展初期に軍事予算によって発展した歴史はありますが、その後の発展については軍事予算のみならずシリコンバレー独自の文化が形成された経緯があります。その1つに「チャレンジ精神」とそれを支える「エンジェル投資家」の存在があります。

シリコンバレーに限らず、IT業界全てに共通する意識は「チャレンジ精神」だと言えるでしょう。例え失敗したとしても、挑戦する事自体に意味があるという考え方です。この考え方が革新的なサービス・製品が生まれることに繋がったと言えるでしょう。

このような考え方がシリコンバレーでは特に強いという点が挙げられ、シリコンバレーからスタートアップが生まれやすい理由の1つになっています。

ただ、大きいな理由がもう1つあります。それはシリコンバレーには「IT企業を集める」という特性があります。既に存在するIT企業がシリコンバレーに集まる大きな理由は「エンジェル投資やVC」がシリコンバレーに集まっているという点が挙げられます。

エンジェル投資家やVCというのは、常に新たな可能性を生み出す投資先を探しているので、チャレンジ精神があり新たなサービス・製品が生まれやすいシリコンバレーに集まりやすいのです。そのため、同時に「既に起業されたスタートアップ」も、エンジェル投資家やVCの投資を受けるためにシリコンバレーに集まりやすいのです。

シリコンバレー出身ではなく、シリコンバレーで発展した代表的な起業に「Facebook」が挙げられます。Facebookは元々シリコンバレーが存在する西海岸の逆側「東海岸・ハーバード大学の学生」が生み出したサービスです。

しかし、Facebookを率いているマーク・ザッカーバーグは、その後「西海岸・シリコンバレー」に拠点を移しました。その大きな理由に、VCやエンジェル投資家からの投資を受けるためという理由があったようです。

また、GAFAの内「G・A・F」がシリコンバレーに本社・本拠地を構えており、このような大きなIT企業が存在している事から、GAFA出身の優秀な起業家がシリコンバレーで起業するというケースも少なくありません。

GAFAとは?

IT業界に大きな影響を与えている企業である「Google・Amazon・Facebook・Apple」の頭文字を取った総称の事です。

シリコンバレーは始まりこそ軍事予算から発展しましたが、その後独自の文化を編み出しその文化が「起業家・投資家」の関係を、循環させやすいものに発展していったと言えます。

物価・不動産価格が上昇。今のシリコンバレー

先程、シリコンバレーが発展した経緯などについてご紹介させて頂きました。シリコンバレーについて最も詳しく押さえるために「不動産」という観点から、シリコンバレーの現在の実情をご紹介していきたいと思います。

不動産価格と物価は年々上昇している

シリコンバレーは現在「不動産価格」「物価」とも大きな上昇を見せています。理由はいくつか挙げられ、

  • 平均年収の高さ
  • 人口の増加
  • 不動産開発の難しさ

という点です。シリコンバレーの不動産価格が上昇したのは、今に始まった事ではないですが、その傾向が強く見られ始めたのは「リーマン・ショック以降」のようです。場所によっては、数年で「数倍」になってしまうという事態が発生しており、異常的な不動産価格の上昇が見られます。

平均年収の高さ

まず、はじめに挙げられるのは平均年収の高さにあると言えます。以下の記事では(英文)

シリコンバレーに住んでいる年収4,000万円を超える75人が「中流よりも少し上」と答えました。一方で、年収4,000万円を高級取りと答えたのはわずか「4人」だったそうです。日本では十分に高級取りであると言えますし、アメリカの平均年収から考えても十分に高級取りであると言えます。

しかし、シリコンバレーにおいては「年収4,000万円が中流」という認識が一般的であり「年収1,000万円~2,000万円」の層は低所得者という認識のようです。では、なぜこのような認識が広まっているのでしょうか?

シリコンバレーに拠点を置くような企業に働いている人の平均的な給料の高さという点も、要素として作用しているとは思いますが「不動産価格の上昇」がやはり大きな原因のようです。Googleなどの代表的な企業が拠点を構える地域では「ワンルームで50万円」という価格が一般的です。

つまり、ワンルームで50万円なので、年収1,000万円の層は最低でも「年収の半分以上」が家賃に出費する事になります。このような点から、もしも高級取りであったとしてもシリコンバレーに住んでいると、生活が苦しいと感じてしまう人は少なくないようです。

しかし、高級取りの人口が多すぎるので、家賃が高くても入居する人がいくらでもいる状況になっており、なかなか不動産価格が下がらないことに作用しているようです。

人口が増えすぎている

近年、シリコンバレー出身の企業に限らず、シリコンバレーにアメリカや研究所の拠点を置く企業が少なくありません。というよりも、年々大きく増加しているようです。アジアからもシリコンバレーに拠点を作った企業は「サムスン」「日立」などが挙げられ、沢山の従業員がシリコンバレーに身を置くことになっています。

また、アメリカからもシリコンバレーから生まれる新たなアメリカンドリームを掴みに、シリコンバレーに住居を移す人が増えており、流動性の高くない不動産の供給が需要に追いついていない状況になっているようです。

代表的なIT企業が拠点を構えている事で、そこで働く従業員は高級取りが多く物価も高まっている地域に「人が増える」という不動産にとって、ダイレクトに需要に繋がる要素が増していっている状況です。

様々なIT企業が世界中で生まれている中で、シリコンバレーを最終的なゴールとして見据えている企業は少なくありません。IT関連事業はこれからも成長産業として注目されるものの1つですし、IT関連の成長が止まらない限りシリコンバレーの人口増加は止まらないと言えるでしょう。

不動産開発の難しさ

通常、シリコンバレーのように需要が供給を上回っており、不動産価格が上昇しているような地域は、不動産開発が進み不動産自体の絶対数が増える事で、不動産価格が落ち着く事が一般的です。しかし、シリコンバレーの不動産価格が上昇を続けているような最も大きな要因は「不動産開発が難しい」という点だと言えるでしょう。

シリコンバレーが位置している「サンフランシスコの不動産開発」には、土地が限られている・都市計画に関連する規制が厳しい・建築に関しての規制も厳しいという3点の特徴があります。そのため、シリコンバレーは「不動産開発を行いにくい」という状況にあるのです。

しかし、この点に関しては規制緩和の流れも出ているようです。というのも、昔からシリコンバレーに住んでいた住民の不満の声が高まっていること、シリコンバレーのみ異常的に不動産価格が上昇し、住民の生活が難しくなっている事が問題として取り上げられているので、規制緩和に関する情報が散見されています。

また、シリコンバレー周辺の地域での不動産開発が進んでおり、シリコンバレーで働いている層が郊外に移り住む流れも見られているようです。ただ、依然としてシリコンバレーの不動産価格は上昇を続けており、その周辺地域も上昇傾向にあります。

もしも、アメリカの不動産投資に興味のある方は、規制緩和のタイミングで投資を検討するのも良いかもしれません。

第二のシリコンバレーが日本にもできるかも?

最後に、日本の話題についてご紹介したいと思います。日本でも、シリコンバレーのような文化・スタートアップの活性化を実現するために「日本版シリコンバレーを作ろう」という動きが見られます。日本版シリコンバレーが実現する日は来るのか?という点について触れていきたいと思います。

五反田シリコンバレー

東京の五反田が、日本のシリコンバレーになるかもしれないと言われています。というのも、ここ2年間で20社以上のスタートアップが五反田に移転している事もあり、五反田のスタートアップ「Freee」「マツリカ」「ココナラ」「セーフィー」「トレタ」などの企業と品川区がユニコーン企業の創出を目的に協定を結びました。

ユニコーン企業とは?

ユニコーン企業とは、非上場企業でありながら「10億ドル」の企業価値を持つベンチャー企業の事です。

具体的な活動内容については明かされいませんが、行政の壁を乗り越える事を目的としているようです。仮想通貨・ドローンなどが規制された経緯を見ていると、新たな技術・イノベーションを発展させて行くのには行政の具体的な手助けが必要であり、成功すれば大きな可能性を秘めているかもしれません。

ただ、1つ大きく欠けている要素に「投資家の存在」という点が挙げられると思います。スタートアップがまず必要になる業務に「資金調達」が挙げられます。もしも、シリコンバレーのような環境を整えるならVCやエンジェル投資家とスタートアップのコネクトが必要不可欠だと言えるでしょう。

徐々にではありますが、日本でもVCやエンジェル投資家は出てきています。しかし、シリコンバレーの状況と比べると「まだまだ」だと言え、本当に優秀なスタートアップは、シリコンバレーまで行って効率的に資金調達を行うと言えますし、そこからシリコンバレーに拠点を置くことも考えられます。

やはり、そのような点を考えると「日本で投資を受けられる環境を整える」というのが、日本版シリコンバレーを作るには不可欠な要素です。

まとめ

IT企業はなぜシリコンバレーに集まる?

  • 軍事予算が下地を作った
  • 投資家とスタートアップを繋げるシステムが出来ている

シリコンバレーの不動産価格

  • 不動産価格と物価は年々上昇
  • 平均年収・人口・規制などが不動産価格上昇を後押ししている

日本版シリコンバレーが出来るかも?

  • 五反田でスタートアップと行政が手を組んだ協定
  • スタートアップを多く生み出すには、投資家の存在が必要不可欠

この記事ではシリコンバレーにIT企業が集まる理由・シリコンバレーの現状・日本版シリコンバレーなどについてご紹介させて頂きました。毎年発表されるForbes長者番付にはIT起業家、時価総額上位に多数のIT関連企業が見られるなど、年々IT企業の存在感強くなってきていると思います。

もちろん、このような傾向は今に始まった事ではありませんが、ドットコムバブルのような一過性のバブルではなく業界全体がインフラのような役目になってきており、IT関連の事業はまだまだ成長していく見込みがあります。

そんな中で、シリコンバレーの不動産価格上昇はIT企業の成長と共にまだまだ続いていくかもしれません。もしも、シリコンバレーへの不動産投資・IT関連企業の投資に興味があるなら、シリコンバレーの最新情報・事情というのは、意識して吸収する必要性があると思います。

senna
senna
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金融業界経験 4年 個人投資家 3年

個人投資家として「株式」「債権」「FX」「仮想通貨」などへの投資・投機を中心的に行っている。

資産運用はもちろん、ファイナンシャルプランナーの知識を活かしながら、税金やライフプランに関する情報発信を行っている。

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