カジノ解禁でどうなる?市場規模と関連銘柄を徹底検証!

2018年7月20日にカジノを含む統合型リゾート(IR)実施法が成立しました。観光客の増加や1兆円以上の経済効果が見込まれています。しかしギャンブル依存症などの問題も残ったままです。日本でのカジノはどうなっていくのか、メリット・デメリットは何なのかを関連銘柄と合わせて解説していきます。

 

カジノの市場規模と候補地

 

カジノ事業は免許制

 

カジノの開業は2020年代前半が見込まれ、東京オリンピック・パラリンピックの後になっています。事業認定は当初2~3箇所に止まる見通しです。現在の有力候補地である大阪・横浜・北海道の3箇所に誘致した場合、その経済効果は約1兆円との試算があります。政府はインバウンド観光による経済活性化の目玉として IR を位置づけています。2018年の観光客数は3,000万人を超える見込みでここ数年順調に伸びてきていますが、中国人観光客を中心とした訪日外国人客数の伸びも足元でやや 陰りも見え始めています。2020年の東京オリンピック・パラリンピックという大きなイベント後の訪日観光の目玉としてIRカジノ法案は期待されているのです。カジノ収益の30%を国が徴収し自治体と折半。競馬や競輪、宝くじのように観光振興などの財源に充てるとしています。

IR 実施法案が成立した後、IRに必要な区域整備計画を申請する方針を掲げている自治体は、北海道、大阪、和歌山、長崎の4道府県。最も積極的なのは大阪で、候補地は大阪市にある人工島・夢洲。2024年の開業を想定して準備を進めています。長崎県はテーマパーク「ハウステンボス」地域への誘致を検討。北海道内では釧路市、苫小牧市などが勧誘方針を示しています。その他の候補地としては東京都、神奈川、沖縄などがあり、まだどこに決まるかというのは予断を許しません。

海外のカジノ業界は日本に期待

 

21兆円の市場規模があると言われているパチンコ業界はラスベガス以上の規模を誇ります。さらに、競馬や競輪、競艇などの存在があります。海外のカジノ業界では日本人はギャンブル好きという認識で共通しており、大きな期待が寄せられているのです。

 

カジノの売上都市別ランキング

 

 

1位 マカオ   4兆6,104億円(452億米ドル)

2位 ラスベガス   6,330億円(65億米ドル)

3位 シンガポール  6,222億円(61億米ドル)

 

(2013年国土交通省)

日本のカジノ法案と関連規則は、シンガポールと類似したものになるといわれています。例えばシンガポールでも国民のカジノ利用を制限するために、入場料を徴収するなどの対策をしています。シンガポールでは2005年にカジノが合法化されました 。2010年に国の指導によって作られた二つの IR( 統合リゾート)の2012年の売上高は5,589億円そのうちカジノの売上高が約8割を占めています。シンガポールのカジノ産業は世界有数の規模にまで成長しているのです。

日本のカジノ産業は2兆7500億円(250億米ドル)規模になるとの見方があります。マカオに次ぎ、世界最大規模になることが見込まれているのです。

 

IR実施法案とは

IR実施法案とはカジノやホテル、レクリエーション施設などが一体となった統合型リゾート( IR) を整備するための具体的な整備設計を示す法案です。統合型リゾートとは、カジノをメインに作られるわけではなく、国際会議場や展示施設、またホテルや映画館、ショッピングモール、スポーツ施設など複数のアミューズメント施設を揃えた場所です。ただ、カジノがその中で目玉になっていることは間違いありません。目的は訪日観光客を増やして日本経済を活性化させることです。

政府は観光先進国実現を目指して推進を進めています。2020年前半にもカジノを開業させる予定です。刑法は原則として賭博を禁止してきました。例外的に競輪や競馬といった公営ギャンブルは国や自治体が関わり、公益性があるということで特別に認められてきました。そしてカジノは事業者のカジノ収入の30%を国や自治体に納付することが決まり、観光や地域経済の振興に役立つということで、公営ギャンブルと同じように合法化されました。

カジノといってもまだどんな種類が行われるかということは決まっていません。例えばルーレットやポーカー・ブラックジャック・スロットマシーンなどが考えられますが、まだ法律で決まっているわけではありません。今後カジノ管理委員会が規則で定めることとなっています。

IR実施法案・カジノ法ポイント

 

  • 設置個所は全国3ヶ所
  • 入場料は1回6,000円
  • 入場回数制限 7日間で3回、28日間で10回まで(主に日本人)
  • カジノ税 収入の30%を国や自治体に納付
  • 本人確認 マイナンバー
  • 設置個所数見直しは最初のIR認定の7年後

 

ギャンブル依存症やマネーロンダリングを防ぐために、特に日本人に関しては入場回数制限や本人確認の徹底を行う予定です。

IR実施法案・カジノ法の問題点

世界でカジノを合法化している国は100ヶ所以上ありますが、日本ほどカジノを不安視し積極的に導入を進めていない国はありません。確かにギャンブル依存症やマネーロンダリングなどを防ぐ手段を考えることは必要ですが、それよりもどうしたらカジノが盛り上がっていくのか、健全な業界としてどのように成長させていくのか、そういった視点が求められます。

納付金30%というのも高額です。 また、カジノの面積は統合型リゾート施設全体に占める割合の3%までとすることが決まりました。ですから、カジノ設備を大きくして売上を伸ばすという手法は 難しくなりました。

 

 

カジノのメリット

 

訪日外国人観光客の増加

2016年に2,000万人を達成した訪日外国人観光客数。ですが、政府は IR( 統合型リゾート)を作ることによって、さらに倍の4,000万人を目標としています。観光産業にとっては大きな追い風になると見込まれています。訪日客の不満としてバーやクラブなどのナイトマーケットが不足しているというのがあります。日中は観光スポットがあるものの、夜の遊び場所が少ないということです。カジノができればナイトライフも充実し、観光客の満足度向上も見込めます。

税収増加

世界最大のカジノ市場であるマカオのゲーミング(カジノ)収入は約1兆2,000億円。国の歳入に占める割合は約8割にも上っています。 日本でもカジノは世界最大規模になるといわれています。人口減少や高齢化で今後はますます税収が減少していくと見込まれ、カジノは税収増加に大きな効果があると期待されているのです。現在65歳以上の高齢者の割合は25%を超えています。将来的には40%を超える見込みです。社会保障費も現在の約110兆円が200兆円を超えるとみられています。人口減少・高齢化社会では高度成長を達成するということは難しく、税収アップは厳しそうです。 カジノ ・IR 施設で税収をあげれば社会保障費にも充当することができるのです。

 

雇用拡大

 

カジノができることにより、国内雇用が年間で約10万人増えると見込まれています。 現在は2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、好景気で人手不足になっています。しかし、その後の景気はどうなるかわかりません。 AI による失業者も増えると言われています。そうした中、カジノを含む統合型リゾートが設立された場合、新たな経済圏が生まれます。カジノを中心にホテルや飲食店、スーパーなどが建設されます。そこに訪日外国人観光客も増えれば、かなりの賑わいが期待されます。また大都市圏の候補地が多いものの、北海道や沖縄など地方都市での開業が実現すれば、地方経済の活性化にもなると期待されています。

新たに生まれる雇用はディーラーなどカジノに直接関わるものでだけでなく、セキュリティやクリーニングなど様々な雇用が創出されます。カジノだけでなく併設のホテルや商業施設などでそういったニーズが高まるのです。

 

カジノのデメリット

 

ギャンブル依存症

 

厚生労働省によると、現在ギャンブル依存症が疑われるのは約70万人。過去にギャンブル依存症が疑われる状態になった人数は320万人にもなっています。依存症対策としてカジノには日本人客は週3回、月10回のカジノ入場制限、そして6000円の入場料を設定しています。

マネーロンダリング(資金洗浄)

 

脱税や麻薬取引、粉飾決算など犯罪によって得た資金を、架空または他人名義の金融機関口座を利用して送金したり、株や債券の購入などを行ったりすることです。カジノでは犯罪で得たお金を賭けた場合、その資金はカジノ運営側に移動します。そして勝負に勝てば、またお金を手にすることができます。

さらに、カジノでは現金ではなくチップを使用することで犯行をより簡単に行うことができます。チップに変えてしまえばお金の出所はもう分かりません。そして帰りにチップを現金に交換してしまえば、何事もなかったかのように持ち帰ることができてしまうのです。

つまり、観光客に紛れて犯罪組織が合法的にマネーロンダリングをすることが可能なのです。ギャンブル依存症やマネーロンダリング対策はしっかりとやらないといけません。こうしたマイナスのイメージをいかになくすことができるのかということも今後の課題となりそうです。

 

カジノ関連銘柄

カジノ関連銘柄は、2016年のIR推進法案が秋の臨時国会で審議中と発表されたときに大きく上昇しました。しかし、2018年のIR実施法案ではあまり注目を集めませんでした。今後、候補地がしぼられてくるなど進展があれば、再び動意づく可能性があるので関連銘柄を抑えておきましょう。テーマ株では過去に大きな動きがあった時に、どの銘柄がどの程度上昇していたというのを把握しておくと良いでしょう。また登録銘柄でテーマ株をまとめておくと便利です。小さなニュースから動き出すこともあります。関連株が動いた時に素早く乗れるようにしておく準備が大切です。

 

テックファーム(証券コード:3625)

 

アプリや各種システムの受託開発を展開しています。カジノ向けのソフト開発も手がけています。また、関連会社が仮の施設向けの電子決済ソリューションを手掛けていて、世界のカジノゲーミング市場に関する調査サービスを国内企業向けに提供しています。カジノ関連銘柄として本命と言える銘柄でしょう。

出典 SBI証券

2016年にIR推進法案によりカジノ関連銘柄は大きく上昇しました。テックファームも例外ではなく発表前の700円前後から高値2700円まで4倍近く上昇しました。しかし、2017年からは横ばいの動きが続いています。現在は AI や IoT の分野が堅調に伸びていますが、再度カジノ関連銘柄として動意づくか注目されます。

 

ユニバーサル(証券コード:6425)

 

パチスロ製造大手の一角です。フィリピンのカジノリゾート「オカダ マニラ」の開発に注力しています。米ウィン・リゾーツとの共同でカジノ・ホテルを経営する取り組みについてはトラブルが発生し係争状態にありましたが、和解で営業外利益に受取利息と株式償還特別利益が計上されました。それが2018年12月の大きな当期純利益の伸びになっています。

出典 SBI証券

株価は今年前半まで順調に上昇していきましたが、直近では下落。3,500円から4,000円前後の値動きが続いています。国内のカジノ関連というよりも海外でのカジノ・ホテル事業が順調にいっていることから、海外での事業動向が注目されます。

 

ピクセルカンパニー(証券コード:2743)

カジノ向けゲームマシン開発及び産業用太陽光発電支援が主力となっています。2017年12月に発表した中期経営計画にカジノ関連事業の拡大発展を目指すことを明記。また、マカオで開催された大型国際カジノ見本市で自社開発のスロットマシンを出店するなど積極的な姿勢を見せています。

現在のところ主力の太陽光発電支援は大型案件がなく不振、またフィンテック関連も手がけていますが、マイニングは想定以下となっています。赤字を続けているので注意が必要です。

出典 SBI証券

ピクセルカンパニーも 2016年10月に大幅上昇し、200円台の低位株というのもあり、安値213円から1,083円まで5倍近く上昇しました。ただ、その後は元の株価に戻りつつあります。現在は300円前後の動きが続いています。業績は赤字なので、カジノ関連として投資するにしても短期売買がメインになりそうです。

 

杉村倉庫(証券コード:9307)

関西倉庫産業の老舗です。大阪府は夢洲地区で大型IR施設が開業した場合、開発で1兆3,300億円、開業後は毎年6,300億円の経済効果があると発表しています。周辺に土地を所有する杉村倉庫が注目を集めました。

出典 SBI証券

2017年の夏頃から2018年の初めにかけて大幅に上昇してきた杉村倉庫ですが、その後は調整局面に入り、1,000円前後のもみ合いとなっています。カジノの候補地として有力視されている大阪ですが、まだ決定したわけではありません。今後の展開が注目されます。

 

日本金銭機械(証券コード:6418)

紙幣識別機や硬貨計数機などの貨幣処理機大手。欧米市場が主力となっています。米国のカジノ向けに貨幣処理機を提供しており、大きなシェアを獲得しています。海外での実績があることから、日本でカジノ解禁が行われた際も日本金銭機械の貨幣処理機が採用される可能性が高く、政府方針や時期を睨みながら対応を準備しています。

出典 SBI証券

他の銘柄に比べると上昇率や下落率はあまりなく、安定的な値動きとなっていて、2017年夏頃から1,200円前後の揉み合いが続いています。海外での実績もあることから今後もカジノ関連銘柄として注目を集めそうですが、しばらくはもみあいが続きそうです。

 

まとめ

 

2016年のIR推進法成立時と違い、2018年7月にカジノを含む統合型リゾート(IR)実施法案成立時の関連銘柄はあまり注目を集めませんでした。しかし、東京オリンピック・パラリンピック後のインバウンド観光による目玉として IR は位置づけられています。今後はカジノが整備される地域が選ばれ、実際にどのような施設ができるのか、どの程度の経済効果があるのか改めて試算がでてくるでしょう。そうなれば関連銘柄は再び注目を集めます。ただし、まだ国内ではギャンブル依存症やマネーロンダリングに関する不安が解消されておらず、歓迎されている雰囲気ではありません。上手くいけば 地方活性化、税収増加、観光客の増加などプラスの面もあります。マイナスのイメージをどのように払拭していくのか、入場制限や本人確認の義務化など対策は盛り込まれていますが、それで十分なのか検証が必要です。

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