空前の半導体ブームは続くのか?半導体スーパーサイクルと関連銘柄

2017年、半導体関連株は大幅に値上がりしました、しかし、その反動で今年はさえない展開が続いています。 2016年から始まった半導体バブルはまだ続くのか、それとも陰りが見えてきているのか。半導体業界の現状を分析し、今後の展開を予想していきます。

半導体業界の現状

半導体市場は IoT(モノのインターネット化)やビッグデータ、人工知能の普及などによって堅調に伸びることが予想されています。

2017年の世界半導体売上高は4,291億ドル、前年比21.7%の増加となりました。半導体売上高が増加したのは、メモリチップが,前年比60.8%増となったことが最も大きな要因です。

出典 東レ経営研究所

売上高世界第1位になったのはサムスン電子。2017年に前年比53.6%増と大幅に増加しました。これまで世界のトップはインテル。そのインテルを追い抜き半導体産業の新しいリーダーとなりました。

初の首位となったサムスン電子は、 DRAM・NAND 共に世界シェアトップ。両メモリ価格の高騰が同社の売上を押し上げた形になっています。

半導体メモリ市場の市場規模は前年比60.8%増 。最も伸びが大きかったDRAM で76.7%増。続いてNANDが46.6%増となりました。ともに過去10年間で最も高い成長率となりました 。2018年も伸びが期待されています。

メモリの主力は DRAMとNANDフラッシュメモリーです。DRAMはデータの呼び出し・書き換えは可能なものの、電源が切れるとデータが消えてしまうので、データの一時記憶用に使用されます。一方NANDフラッシュメモリーはデータの書き込み・呼び出しがDRAMに比べると遅いものの、電源を切ってもデータが消えないので大量情報の保有に使われます。

出典 東レ経営研究所

現在のDRAM市場のシェアはサムスン電子46%、SKハイニックス29%、マイクロン・グループ21%となっており、世界市場の95%以上を占めています。マイクロンはかつての日本企業エルピーダメモリーです。

DRAMバブルには三社による世界市場の寡占化という要因があります。かつては日本企業も含めた数十のメーカーがあり、度々供給過剰と競争を招いていました。しかし現在はほぼ三社の独占状態ですので、不毛な価格競争は必要ないのです。

出典 東レ経営研究所

2016年以降の半導体産業の盛り上がりを作ってきたのはメモリーバブルです。この2年間、異常な上昇を見せてきました。スマートフォン(スマホ)の販売増や高機能化で活況が続いたためです。

NAND価格は、2017年にピークを打っています。2016年に三次元 NAND の量産化が本格化した時は価格も高かったので、パソコンなどで普及が進みませんでした。しかし、今年に入って価格が下落してきていることから、パソコンでの NAND 搭載率が増えています。価格下落が需要を誘発したのです。

DRAM に関しても同じような事態を予想する関係者が多くいます。つまり、価格が落ち着けば今まで使われなかった製品にメモリが使われるようになり、DRAM業界 の売り上げが増え、市場規模の拡大につながるということです。

パソコンもサーバーにもNAND導入率はまだまだ拡大余地があります。メモリーメーカーは DRAMに設備投資していてNANDへの投資はまだ不十分です。DRAM投資が一服すれば、NANDへの設備投資も強化されるだろうと予測されています。 ただ足元ではメーカーの量産やスマホ需要の一服により、半導体メモリには市況の悪化が目立っています。NAND価格の大口価格は2月から下落傾向。DRAM価格も上昇が一服していて、2018年後半にも値下がりする可能性があると言われています。 メモリーカードに代わる新たな牽引役として見込まれているのが、電力の変換や制御に使う「パワー半導体」です。

パワー半導体とは

モーターを動かす製品は、冷蔵庫や洗濯機、エレベーター、電気自動車、風力発電など多数あります。パワー半導体はモーターを動かす電力を制御して回転を調整します。

特に今後の普及が見込める電気自動車 (EV)の市場拡大に合わせて需要が伸びており、東芝などメーカー各社が設備を増強しています。 DRAM やNANDのように価格の急変動が起きにくく、安定的な成長が期待されています。

IHSマークイットの調査によると、2017年のパワー半導体の世界売上高は123億4,700万ドル(約1兆3,500億円)で、前年比11.5%と2桁の成長を見せたということです。

パワー半導体の市場規模は3兆円を越えてくると言われています。長期的にも成長が見込める同分野では,日本企業が高い技術とシェアを持っています。例えば2017年パワー半導体世界ランキングの1位はドイツのインフィニオンテクノロジーズ、2位はアメリカのオンセミコンダクターですが、3位は三菱電機、4位は東芝、そして6位に富士電機が入っています。

半導体スーパーサイクルとは?

シリコンサイクル

半導体市況は4~5年周期で好不況を繰り返してきました。いわゆるシリコンサイクルです。

シリコンサイクルの流れ

①半導体市況が改善して供給不足になってくると、半導体メーカーが設備投資を行う

②設備投資後、新しいラインが稼働する頃には需要一巡で供給過剰となり半導体市況が悪化

しかし、現在半導体市況はかつて経験したことのないようなブームに沸いています。「半導体スーパーサイクル」が始まったという声も出てきました。これは、シリコンサイクルがなくなり、半導体産業が継続的に成長する時代に入ったという意味です。経験則的にはそろそろ不況期に入ってもおかしくないのですが、市場関係者の間では強気の見方も少なくありません。

強気の背景にあるのは、半導体用途の拡大です。かつてはパソコンやスマートフォンなど単一の商品が需要を牽引してきました。しかし今後は IoT (モノのインターネット)、 AI(人工知能)、電気自動車( EV) 自動運転、仮想通貨など次世代技術への用途が拡大すると見られています。これまではパソコンの買い替え、またはスマートフォンの交換などによってシリコンサイクルがあったとみられていますが、今後はこういった多様な分野で需要が期待でき、従来の市場変動を大きく上回る「スーパーサイクル」に入ったという見方がでているのです。

出典 東レ経営研究所

出典 楽天証券

過去20年間のシリコンサイクルを見てみます。1999年には ITバブルがあり、半導体も大きなブームでした。主な用途はパソコン。パソコンの買い替えサイクルがシリコンサイクルを形成していたのです。1999年頃にはインターネットの登場でパソコンの成長期待が高まり、 IT 関連やハイテク関連株は日米ともに異常な高値まで買われました。しかしそれはバブルで崩壊。2002年頃にはIT需要が大きく落ち込み、半導体市況も不況期を迎えたのです。

パソコンの成長が鈍くなったことで、半導体産業は長期停滞局面に陥りました。そして2008年にリーマンショックが起きるとさらに落ち込みは激しくなったのです。しかし、スマートフォンやクラウドコンピューティングの普及で、個人でも動画など大容量のデータを保管することができるようになったことから、データセンターでのメモリ需要が急拡大しました。今後は5G(第5世代移動体通信)などさらに次世代通信が始まるとメモリ需要は一段と拡大すると期待されています。

米中貿易摩擦の影響と今後の展望

IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、自動運転など新しい技術で期待される企業の多くはアメリカと中国にあります。まずアメリカは フェイスブック やアップル 、マイクロソフト、アマゾン、グーグルなどIT企業が需要側として成長を牽引しています。そしてパソコンに組み込まれている半導体の大手であるインテルは次世代の商品に関わっている新興企業を積極的に買収しています。

そして、中国も今後の躍進が期待されています。仮想通貨のマイニング(発掘)のために高速で計算処理するコンピューターから、テンセントやアリババが手掛ける高性能サーバーの能力拡大の支援まで、ハイテク関連の中国企業に対する需要の増大は中国国内だけを見てもかなりあります。中国は2015年に定めた「中国製造2025」で半導体チップの国産化を重点目標にあげています。 そして半導体産業育成のために今後10年間で10兆円強を投じる計画です。それは半導体 IC 集積回路の輸入超過額が、2015年時点で1,500億ドル(約16兆円)超もあったからです。中国はドルの保有において米国以外で世界トップですが、ドルの流出には極めて神経質になっているのです。さらに米中貿易摩擦も、中国が国産半導体の育成に力を入れている背景となっています。

米中貿易摩擦

米中貿易摩擦で焦点となっているのは半導体分野です。事の発端は中国の通信機器大手ZTEへの最先端半導体の禁輸措置でした。しかし、やはり根本にあるのは、中国政府が世界の製造大国となることを目指して打ち出した「中国製造2025」にあると言われています。中国の現在の半導体自給率は15%以下です。これを飛躍的に高めようという目標なのです。中国は高速ネットインフラ、人工知能、 IoT、自動運転など国家戦略上重要な分野で製造大国化を見据えています。アメリカにとってサイバー攻撃などの脅威にさらされているなど国家安全保障上の問題に加え、世界市場での半導体市場の主導権維持という側面でも中国の動きは見過ごすことができないのです。

ただし、米国の半導体メーカーにとって中国市場を無視することはできません。

米国の半導体大手の製造や販売は世界規模で運営されていて、アメリカ製という意識はないこと

これまでのパソコンやスマートフォンといった限られた分野だけではなく、半導体は電気自動車、AI、社会インフラへと拡大していて、半導体技術の影響が以前とは比較にならないほど巨大になったこと。

現在の中国市場は14億人を超える人口に支えられ、世界ダントツの購買力を持っています。巨大市場をどの企業が押さえるかということは半導体メーカー各社にとっても重要な課題なのです。

半導体関連株は2016年から顕在化した NAND フラッシュメモリー需要の伸びを受けて上昇を続けてきました。 しかし2017年末モルガンスタンレーアナリストが韓国サムスン電子の投資判断を引き下げた「サムスンショック」、続いて今年4月半導体受託生産最大手の台湾 TSMC が売上見通しを下げた「TSMCショック」。こういったショックにより半導体企業の足元の業績はいいものの、今後の伸びに対して懸念が顕在化し、関連株は売られる展開になっています。

半導体需要の拡大サイクルが長期化するスーパーサイクルは健全との見方が強いものの、短期的な波に受注がぶれています。今年8月にも米モルガン・スタンレーがアプライドマテリアルズの投資判断を引き下げました。これを受けアプライドやラムリサーチの株価が米国市場で下げ、東京市場でも東京エレクトロンやアルバックが大きく下落しました。韓国でもサムスン電子やSKハイニックスが下落しています。

メモリ最大手サムスンの18年6月期の連結純利益は前年同期比で減収減益でしたが、半導体部門の利益は45%増えています。CPU 最大手の米インテルの純利益も78%増。データセンター向けは27億ドル(約3000億円)と65%も増えています。しかし将来の収益を左右する設備投資の見通しが慎重になっているとされ、市場関係者は今後の動向に敏感になっています。国内においても東京エレクトロンの連結純利益は2年連続最高益ですが、通期予想に対する進捗率は2割強に止まっています。 半導体市場は今後も成長が見込まれているものの、株価に関しては日米ともに上値が重い展開が続く可能性があります。

半導体関連銘柄

2017年 日本の半導体企業ランキング

出典 マイナビニュース

世界半導体企業ランキングのトップ10にランキングしているのは東芝のみです。これはメモリ価格の歴史的高騰の恩恵にあずかった企業はランキング1位の東芝だけのためです。

東京エレクトロン(証券コード:8035)

半導体製造装置で業界第4位。メモリーメーカーの投資はDRAM向けが大幅増。NAND向けも高水準をキープし、連続で最高収益を更新しています。

週足チャート

出典 SBI証券

2017年の株式市場は半導体関連株さえ買っていれば勝てるという相場でした。東京エレクトロンの年間株価上昇率は85%。一社で日経平均を300円強押し上げた計算になります。ただし、今年の株価はさえません。

株価は2017年11月10日の23,875円をピークに下がってきています。リーマンショック後の安値は2,305円。そして2016年のメモリーバブルに乗って1万円を突破し、そこからさらに2万円の大台まで突破しています。足元の業績は好調なものの、株価に織り込まれていたのかもしれません。しかし,現在の PER は10倍を割り込んでできています。指標的には割安感が出てきています。

SUMCO(証券コード:3436)

半導体シリコンウエハー製造大手。シリコンウェアで世界2位。直径300 mm ウェハーは車載分野を中心に需要が強く、不足感が継続しています。

出典 SBI証券

SUMCO も株価は1月に高値をつけ、そこから約半値水準まで下落してきています。 PER は8.6倍と10倍割れていて割安感があります。昨年の上昇分をほぼ打ち消す恰好となっており1,500円の節目をキープできるかどうかが注目されます。

三菱電機(証券コード:6503)

総合電機大手で重電から白物家電まで手がけています。選択と集中で、事業範囲は他のメーカーに比べて比較的絞り込まれています。大容量のパワー半導体で世界首位。パワー半導体関連銘柄としても注目を集めています。

出典 SBI証券

三菱電機も2018年から9月期の連結営業利益が1,500億円程度で過去最高水準になりそうだと日経新聞に報じられても株価は軟調な地合いとなりました。現在の PER は13倍程度。日経平均の平均 PERと同水準なので割安感があるわけではありませんが、年初から一方向に下がってきているので、見直し買いが入る余地はありそうです。

最後に世界主要銘柄の5年チャートを見てみます。

インテル(米)

出典 Bloomberg

マイクロン(米)

出典 Bloomberg

サムスン電子(韓)

出典 Bloomberg

各社、直近高値からは下落しているものの、日本の半導体関連銘柄ほど大きく下落していないのがわかります。

まとめ

半導体市況はスーパーサイクルへの期待感もあり、今後も成長性が見込まれています。しかし足元の株価では大分織り込まれており、今年は昨年に大幅上昇した反動が来ています。足元の業績は好調なもの、再度資金が半導体関連株に回ってくるかという不透明感が残ります。

しかし、PER などの指標で見ると、日本の半導体関連株は割安も出てきています。今後業績の大幅下方修正などがない限り、見直し買いが入る可能性は高いのではないかと考えております。

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一橋大学経済学部卒業。証券会社でマーケットアナリスト、デリバティブディーラーを経て、個人投資家に転身。投資歴は20年以上。現在は、日経225先物を中心に現物株・FX・CFDなど幅広い商品に投資しています。保有資格:証券外務員1種

ブログ:先物オプション奮闘日誌 http://yanta.cocolog-nifty.com/

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