遺族年金を徹底解説。仕組みを理解し、最大限活用するために必要なこととは?

遺族年金は、国民年金や厚生年金保険の被保険者等が死亡したことで、その遺族の従前の生活をある程度、維持し保障することを目的として支給される年金です。

国民年金と厚生年金保険の遺族年金は仕組みは、それぞれの年金制度が全く異なる性格的な制度となているため、受給できるのに申請しなかったためにもらえなかったといったことがないようにするために、それぞれの遺族年金制度の仕組みについて解説をしていきます。

1.遺族年金制度の概要

遺族年金は、国民年金の被保険者が死亡した場合は遺族基礎年金が、厚生年金保険の被保険者等が死亡した場合は遺族厚生年金が支給されます。遺族年金の受給要件は、遺族基礎年金の場合と遺族厚生年金の場合とでは、大きく異なります。そして、受給できる人についても大きな違いがあります。

(1)遺族基礎年金の支給要件

【遺族基礎年金の支給要件】:国民年金法37条

国民年金の被保険者又は被保険者であった者が以下のいずれかに該当する場合に、「配偶者」と「子」に対して支給されます。ただし、死亡日の前日において「死亡日の属する月の前々月までに被保険者であった期間があり、かつ、その被保険者であった期間の内、「保険料納付済み期間と保険料免除期間の合計が全体の3分の2以上」でなければ、遺族基礎年金は支給されません。

ただし、特例として平成38年4月1日前に死亡した場合については、死亡日の前日において、その死亡日の属する月の前々月までの1年間において保険料未納期間がなければ、要件を満たすことになっています。(遺族厚生年金についても同じです)

  1. 被保険者が死亡した場合
  2. 被保険者であった者で、日本国内に住所を有する60~65歳の者が死亡したとき
  3. 老齢基礎年金の受給権者が死亡したとき
  4. 老齢基礎年金の受給資格期間(現在は「10年」)を満たしている者が死亡したとき2.遺族基礎年金の仕組み

(2)遺族厚生年金の支給要件

【遺族厚生年金の支給要件】:厚生年金保険法58条1項

厚生年金保険の被保険者又は被保険者であった者が以下のいずれかに該当する場合に、その者の遺族(配偶者・子・父母・孫・祖父母)に支給されます。

なお、1.~3.までは短期要件、4.は長期要件となり、遺族厚生年金の年金額の計算の方法が異なります。

  1. 被保険者(失踪宣告を受けた被保険者であって、行方不明となった当時、被保険者であった者を含む)が死亡した場合
  2. 被保険者であった者が、被保険者資格を喪失した後に、被保険者であった間に初診日がある傷病により当該初診日から5年を経過する日前に死亡したとき
  3. 障害等級1級又は2級に該当する障害の状態にある障害厚生年金の受給権者が、死亡したとき
  4. 老齢厚生年金の受給権者又は老齢厚生年金の受給資格期間(被保険者期間が1月以上)を満たしている者が死亡したとき

(1)遺族の範囲

遺族基礎年金を受給することが出来る遺族は、配偶者と子のみです。具体的には、被保険者又は被保険者であった者の配偶者又は子であって、被保険者又は被保険者であった者の死亡当時、その者よって生計を維持し、かつ、以下の要件に該当している必要があります。

  • 配偶者については、被保険者又は被保険者であった者の死亡当時、その者によって生計を維持し、かつ、2.の要件に該当する子と生計を同じくしていること
  • 子については、18歳に達する日後最初の3月31日までにあるか、または、障害等級に該当する障害状態にあり、現に婚姻をしていない20歳未満の子であること

【子の範囲について】:補足

遺族基礎年金の受給要件を満たす「子」の中には、実子や養子、胎児などが該当します(遺族同士の血縁関係は問われないため、養子であっても遺族基礎年金は受給することが出来る)が、離婚をして別居している子などについては該当するか同課が問題になってきます。結論から言えば、離婚等をした場合であっても、遺族基礎年金の受給要件を満たす子として取り扱われます。

この場合は養育費などの仕送りが継続されていることにより、生計維持関係が認められることが必要とされ、また、遺族基礎年金の受給権を取得したとしても、離婚した配偶者と生計を同一にしている間は、支給停止とされてしまいます。

つまり、離婚し別居している父と生計維持関係が認められるためには、養育費などの仕送りが継続されていることを証明する必要があります。その受胎の中で、もし、別居している父が死亡した場合には、その子は遺族基礎年金の受給資格は取得できるが、離婚した母と同居しているため、遺族基礎年金は母が受給することになり、支給が停止されてしまうということです。(遺族基礎年金の受給資格の優先順位は配偶者(母)が先になるため)

(2)遺族基礎年金の年金額

遺族基礎年金の年金額は原則としては、「780,900円×改定率+子の加算額」となります。これは、配偶者が受給する要件として、子がいることが前提とされているためです。

なお、子の加算額については、2人目までは「224,700円×改定率」、3人目以降については「74,900円×改定率」とされています。なお、複数の子が遺族基礎年金を受給する場合については、この数で除して得た額とされます。

(3)遺族基礎年金の受給手続き

遺族基礎年金の受給を受けるためには、「年金請求者(国民年金遺族基礎年金)」に次の書類を添付して、日本年金機構に提出しなければなりません。

【遺族基礎年金を受給するために必要な添付書類】

  1. 死亡した被保険者等の国民年金手帳等、基礎年金番号を明らかにできる書類
  2. 受給権者の国民年金手帳等、基礎年金番号を明らかにできる書類(国民年金手帳等の交付を受けている者のみ)
  3. 受給権者の生年月日に関する市町村長の証明書又は戸籍抄本
  4. 死亡した者である被保険者等が共済組合期間、合算対象期間等を有するときは、この期間を明らかにできる書類等
  5. 死亡診断書等の記載事項についての市町村長の証明書等。(「死亡の推定」がかかる場合は、被保険者等の行方不明または死亡の事実を明らかにできる書類)
  6. 受給権者と死亡した被保険者等との身分関係を明らかにできる戸籍の謄本(抄本)又は住民票の写し
  7. 受給権者が死亡した被保険者等によって生計を維持していたことを明らかにできる書類
  8. 子のある配偶者である場合は、加算額対象者(子)と生計を同一にすることを明らかにできる書類
  9. 加算額対象者(子)が障害の状態である場合は、その障害の状態に関する医師又は歯科医師の診断書、一定の傷病による障害の場合はレントゲンフィルム
  10. 公的年金給付の受給権者は、最低通知書等

なお、被保険者等の死亡当時胎児であった子が出生したことで受給権が発生した場合は、連名で裁定請求を行うこととされています

3.遺族厚生年金の仕組み

(1)遺族の範囲

遺族厚生年金の遺族の範囲は、被保険者によって生計を維持されていた「配偶者・子・父母・孫・祖父母」となっており、遺族基礎年金の遺族の範囲に比べると広くなっています。

ポイントとしては、は年齢要件等無く受給権を取得するが、兄弟姉妹は受給権は発生しないということです。

【子・孫について】

子・孫は他の制度における子・孫の定義と同じことが多く、遺族厚生年金の受給要件となる子・孫についても同様に以下のいずれかに該当することが受給要件とされています。

  1. 18歳に達する日以後最初の3月31日までにある者であること
  2. 障害等級1級・2級の障害状態にある20歳未満の者であること

【夫・父母・祖父母について】

原則として55歳以上の者であれば受給権が発生しますが、支給が開始されるのは60歳になってからとなりますが、夫については、受給権が発生した時点において、遺族基礎年金を受給している場合は、55歳未満であっても、遺族基礎年金を受給している場合については、遺族厚生年金についても受給されます。

(2)遺族厚生年金の年金額

①原則の遺族厚生年金の年金額

遺族厚生年金は、以下の方法で算定されます。なお、被保険者期間が300月未満である場合については300月と読み替えて計算されます。(長期要件に該当する場合は、読み替えは行われず、実期間をもって年金額が計算されます。

【遺族厚生年金の年金額の計算式】

{(平均標準報酬月額×7.125/1,000×平成15年3月までの被保険者加入期間)+(平均標準報酬月額×5.481/1,000×平成15年4月以降の被保険者加入期間)}×3/4

②老齢厚生年金等の受給権者である65歳以上の配偶者に係る遺族厚生年金の年金額

老齢厚生年金等の受給権者である65歳以上の配偶者とは、被保険者が死亡した当時65歳以上で、すでに、老齢厚生年金等の受給を開始している配偶者のことを言います。この者については、特例措置として、以下の額のうちいずれか高い金額をもって遺族厚生年金の年金額とすることが出来ます。

  1. 原則の方法で計算した金額
  2. 原則額×2/3+(遺族厚生年金の受給権者の老齢厚生年金等の年金額(加給年金額を除く)-政令で定める額)×1/2

【具体例】死亡した夫の老齢厚生年金が120万円、妻(65歳以上)の老齢厚生年金が80万円の場合

1.の金額:120万円×3/4=90万円

2.の金額:90万円(遺族厚生年金の原則額)×2/3+80万円(妻の老齢厚生年金の年金額)×1/2=100万円

1.と2.のうち多い金額 100万円

この場合、妻が受給することが出来る遺族厚生年金の年金額は原則額である90万円ではなく、100万円となります。

(3)中高齢寡婦加算と経過的寡婦加算

①中高齢寡婦寡婦加算

中高齢寡婦加算とは、遺族基礎年金が子のある妻に身に支給されるため、子のない妻の方が遺族基礎年金をもらえない分だけ所得補償が手薄になることを避けるために行われる加算額のことです。

【支給要件】:妻が次のいずれかの要件を満たしている必要があります。
  1. 夫の死亡当時、40歳以上65歳未満であること
  2. 40歳に達した当時、夫の死亡当時、その夫によって生計を維持されており、かつ、18歳に達する日後最初の3月31日までにある子、または、障害等級1級・2級の状態にあり、かつ、婚姻をしていない20歳未満の子と生計を同じくしていたこと

1.の場合は、夫の死亡当時、40歳以上65歳未満の子のない妻であれば、中高齢寡婦加算が加算される要件を満たすことになりますが、2.の場合は、現時点では遺族基礎年金が支給されるため、その期間中については、中高齢寡婦加算が行われませんが、遺族基礎年金の受給権が失権したら、その失権をした月の翌月から中高齢寡婦加算が行われることになります。

②経過的寡婦加算

経過的寡婦加算は、妻が65歳になり老齢基礎年金の受給が開始されても、保険料納付済み期間が短いと「老齢基礎年金<中高齢寡婦加算額」となる恐れがあるため、その年金額が低下することを防ぐために加算される加算額です。

【支給要件】
  1. 昭和31年4月1日以前に生まれた者が65歳に達したとき
  2. 遺族厚生年金の受給権者であって、昭和31年4月1日以前に生まれたものが、その権利を取得した当時65歳以上である時

ただし、以下のいずれかに該当する場合については、経過的寡婦加算の支給が停止されます。

  • 国民年金による障害基礎年金、又は、旧国民年金法による障害年金の受給権を有するとき(その受給権が支給停止しているときを除く)
  • 同一の支給事由に基づき、遺族基礎年金の受給をすることが出来るとき

4.その他の遺族年金について

(1)寡婦年金

寡婦年金とは、老齢基礎年金の受給資格期間を第1号被保険者のみで満たした夫が、老齢基礎年金を受給する前に死亡した場合に、その夫が支払ってきた保険料の掛け捨て防止するために、その遺族である妻に支払われる年金です。そのため、寡婦年金の受給できる期間は、妻が「60歳に達した日の属する月の翌月から老齢基礎年金を受給できる65歳に達する日の属する月」までの期間に限定されています。

なお、寡婦年金を受給している妻が老齢基礎年金の繰上支給をした場合は、寡婦年金の受給権が消滅します。

【支給要件】:次の1.~6.の要件を満たしたときに、死亡した夫の妻に対して支給されます。

  1. 死亡日の前日において、死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者としての保険料納付済み期間と保険料免除期間の合計が25年以上ある夫が死亡したこと
  2. 夫の死亡当時、夫によって生計を維持されていたこと
  3. 夫の死亡当時、夫との婚姻関係が10年以上継続していたこと
  4. 65歳未満の妻であること
  5. 夫が障害基礎年金(旧法の障害年金を含む)の受給権者であったことがないこと
  6. 夫が老齢基礎年金の受給を受けていないこと

【寡婦年金の年金額】

死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者としての被保険者期間に係る死亡日の前日における保険料納付済み期間および保険料免除期間につき、老齢基礎年金の計算の例によって計算した額の3/4相当額。

➡つまり、夫が死亡した日の属する月の前月までの、第1号被保険者としての被保険者期間のうち、保険料納付済み期間と保険料免除期間の合計期間で老齢基礎年金を計算したときの年金額の3/4相当額となります。

2)死亡一時金

死亡一時金とは、第1号被保険者として、一定の期間、保険料を納付した者が死亡した場合において、その遺族が遺族基礎年金を受給することが出来ない場合において、保険料の掛け捨てを防止するための給付です。

【支給要件】

以下の全ての要件を満たした場合に、死亡した者の遺族に対して支給されます。

  1. 死亡日の前日において死亡日の属する月の前月までの、第1号被保険者としての被保険者に係る保険料納付済み期間の月数、保険料1/4免除期間の3/4相当期間、保険料半額免除期間の1/2相当期間、保険料3/4免除期間の1/4相当期間の合計が36月以上である者が死亡したこと➡つまり、「保険料納付済期間+保険料1/4免除期間×3/4+保険料半額免除期間×1/2+保険料3/4免除期間×1/4≧36月」であればよいということで
  2. 死亡した者が、老齢基礎年金又は障害基礎年金の支給を受けたことがないこと

【死亡一時金の額】

死亡一時金の額は、死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者としての期間に係る死亡日の前日における「保険料納付済期間+保険1/4免除期間×3/4+保険料半額免除期間×1/2+保険料3/4免除期間×1/4」の合計月数に応じて以下の金額とされます。

また、死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者としての期間の中で、付加保険料納付済期間が3年以上ある場合は、死亡一時金の金額に8,500円が加算されます。

  • 36月以上180月未満:120,000円
  • 180月以上240月未満:145,000円
  • 240月以上300月未満:170,000円
  • 300月以上360月未満:220,000円
  • 360月以上420月未満:270,000円
  • 420月以上:320,000円

5.まとめ

遺族年金は、被保険者が死亡した時点の世帯構成や年齢によってもらえる年金の種類や年金額などが異なるため、将来的に起こりうるであろう相続関連の問題にもすぐに対応するためにも、ライフステージごとにもらうことが出来る年金の種類や年金額、他の法令によってもらうことが出来る給付などを確認することが大切になります。

遺族年金は老齢年金や障害年金と年金額の計算方法が同じ部分も多いため、招待的にもらうことが出来るであろう遺族年金の額についても、ある程度予測をしたうえで、セカンドライフをどのように過ごしていきたいのかについても、ライフプランの見直しを含めて考えるきっかけにしていただければ幸いです。

岡崎 隆宏
SRFP隆宏
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社会保険労務士・CFP認定者・1級FP技能士

外資系生保会社で6年くらい営業として実績を積み、その中でFP資格を取得し、その時の経験を活かし、お金に関する執筆を始める。

日本FP協会愛知支部の役員幹事として6年、FPとして一般消費者向けのセミナーの講師や個別相談会の相談員などを担当。得意分野は「公的年金・個人年金」「社会保険制度」「出産・育児関係」等。

現在は、社労士・FPとして、労働や年金等のお金についての記事の執筆や資格試験の講師、セミナー講師等を行っている。

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