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外貨預金の最大の魅力は何と言っても高金利!低金利が続いている日本。預けているだけで、日本円より高い利息が付いていく商品はとてもありがたいものです。
2018年9月現在、日本の金融機関で取り扱っている外貨預金のほとんどが高金利です。金額と預入期間によっては、利息だけで数万円の利益が出る可能性もあります。
また、預け入れの時より、払い出しの時の方が円安になっていると、為替差益を得ることもできます。
でも単純に「利息でいっぱい儲けた~!!」「為替変動がうまいこといった!為替差益でたくさん利益が出た!」と喜んでそのままにしてはいけません。
外貨預金で得た利益には、税金がかかってきます。そのため、確定申告が必要になってきます。
預金や貯金に税金とは、あまりなじみがないかもしれませんが、これはわからないままにしておくと、税務署から申告漏れによるペナルティが課されることがあります。
今回は、そんな外貨預金の利息や利益にかかる「税金」と「確定申告」について、ご説明します。
1、預金利息にかかる税金
まず、外貨預金の利益は2種類あります。「利息」と「為替差益・為替差損」です。
預け入れ期間中にプラスされる「利息」については、預け入れ先が日本国内の金融機関であれば、利息付与を際に国税と地方税が天引きされます。
払い出し時に生じる「為替差益」については、金額によっては確定申告が必要になります。
逆に「為替差損」については、そもそも利益が発生していませんから、税金を支払う必要はありません。しかしトータルの収入で見た場合、確定申告をすると、損失が軽減される場合もありますので、これもケースバイケースで確定申告をする必要が出てきます。
- 利息:日本の金融機関に預け入れしている場合は、日本円の預金と同じように、利息付与時に税金(国税・地方税)が自動的に天引き。確定申告の必要なし。海外の金融機関に預けている場合は、確定申告の必要あり。
- 為替差益:確定申告なしで預け入れした場合、利益が20万円を超えたら確定申告が必要。
- 為替差損:そもそも税金を支払う必要なし。しかし確定申告によって損失を軽減できる場合あり。
国内の金融機関に預け入れしていた場合
さて、ここで利息の税金について、こんな疑問を持った方もいるのではないでしょうか?
日本円の普通預金や定期預金では、源泉徴収制度が適用されています。そのため別途税金なんて払うことがありませんので、利息にかかる税金と言われてもピンと来ないのではないでしょうか?
いつも使っている日本円の普通預金や定期預金ですと、原則的にその利息に対して「一律20%の税金」がかかってます。外貨預金もこの利息にかかる税金の割合は同じです。
それではわかりやすく、具体的に説明していきます。試しにお手元の普通預金の通帳を見てみましょう。
たいていの日本国内の金融機関は、毎年2月・8月の年2回、利息が付きます。
金融機関によっても違いますが、通帳の印字がこのようになっていませんでしょうか?
※その1
日付 | 預入 | 払出 | 残高 |
2018/2/20 | 5 | 税引後お利息 | 123456 |
※その2
日付 | 預入 | 払出 | 残高 |
2018/2/20 | 6 | お利息 | 123457 |
2018/2/20 | お利息税金 | 1 | 123456 |
項目は「税引後お利息」だったり、「利息」+「税金」と2行に分けられていたりとしますが、このように利息から税金が天引きされています。
上記の例では、利息が6円ついたうちから、国税(所得税)15%+地方税(住民税)5%、合計20%が差し引かれているという内容になります。
預け先が国内の金融機関であれば、外貨預金についても同じように税金が天引きされています。
このように、国内の金融機関に預け入れしている外貨預金については、利息にかかる税金は付与された時点で天引きされているため、改めて納税手続きをしなくともOKです。
海外の金融機関に預け入れしていた場合
では、預け先の金融機関が海外の場合はどうなるのでしょうか?
海外の金融機関には、日本の源泉徴収制度が適用されません。そのため、確定申告をする必要があります。その場合、利息分のみを「利子所得」として申告するか、他の収入と合わせた「雑所得」として申告するか、どちらかになります。
ここで注意したいのが、海外の金融機関に預入をしている場合は、その国でも課税されるため、日本の税金を二重に支払わないようにするということです。
金融機関のある国と日本とで、二重課税とならないようにするには、「外国税額控除」という制度を利用します。
2、利益が出た場合は?
それでは、外貨預金の為替差益が出た場合はどうでしょうか?
まず、外貨預金を解約したときにいくら利益不が出たか確認しましょう。
為替差益を含む、年間の雑所得が20万を超える場合は、確定申告が必要になります。
ここでは確定申告が必要になった場合について、説明したいと思います。
確定申告が必要な条件
たいていの方は、会社から給与をもらっており、さらに為替差益で利益が出たという方ではないでしょうか?
給与所得者でも確定申告が必要になるのは、以下の6パターンのいずれかに該当する場合になります。
- 給与収入だけで2,000万円を超えている人
- 給与収入が1か所で、それ以外の各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)の合計額が20万円を超える人
- 給与収入が2ヶ所以上で、年末調整を受けなかった給与とその他の所得の金額が20万円を超える人
- 同族会社の役員や親族で同族会社から給与をもらっていて、給与以外に賃貸料などの支払いを受けた人
- 給与について災害減免法による源泉徴収税額の徴収猶予や還付を受けた人
- 給与について源泉徴収されないことになっている人
国税庁HP:
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki2017/a/01/1_06.htm
たいていの方は会社から主に給与収入を得ているかと思います。その場合、多くの方は、「給与収入が2000万円以下で、為替差益などの雑所得の利益が20万円を超える」パターン、つまり、②か③に当てはまります。
確定申告の課税対象になる利益は?
おさらいですが、為替差益とは為替レートが預入のときよりも払出のときに、円安(例:1ドル100円→101円)になった場合に得られる利益の事です。
つまり基本的には、外貨預金を解約した時に得られる利益になりますので、解約せず翌年も預け入れ継続している場合は対象外です。
では、この為替差益で利益が出た場合、確定申告はどうしたらいいのでしょうか?
通常、為替差益は「雑所得(総合課税)」として処理します。
雑所得とは、ざっくりいうと毎年1月~12月に得られた、給与や退職金、公的年金以外の所得金額の全部の合計のことです。
例えば、下記のようなものになります。
- 外貨預金や投資信託などで得た利益
- 副業として得た原稿料や印税、講演料
- オークション、フリマなどで得た収入
- 個人年金保険の年金
国税庁HP
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1500.htm
年収2,000万円以下の給与所得者であれば、これらの合計額から経費分を差し引いた額が「年間20万円以上」になると、確定申告が必要となります。
例えば、外貨預金の為替差益が10万でも、そのほかの収入もある場合、雑所得合計は下記のようになります。
- 外貨預金の利益 100,000円
- 副業の原稿料 20,000円
- オークションの利益 55,000円(利用料など差し引いた分)
- フリマの売上 55,000円(場所代・材料費など差し引いた分)
合計 220,000円
このような場合は、外貨預金の利益が10万円でも、雑所得の合計額が20万を超えていますので、確定申告が必要になります。
そのため、外貨預金の為替差益の金額のみだけで判断せず、そのほかの収入もすべて確認しましょう。
3、損失が出た場合は?
外貨預金の為替差益を含めた雑所得が20万以上出た時は確定申告が必要です。では損失があった場合はどうでしょうか?
もちろん、収入があるわけではないので為替差損自体では確定申告の必要はありません。
ですが、このほかに収入があったりする場合、確定申告をすることでお得になることがあります。
損失が出ても確定申告をする訳
先ほど、為替差益が発生した時は他の雑所得と合計して確定申告する必要があるとご説明しました。つまり、外貨預金の利益だけでなく、副業やオークションで得た利益も、すべて合算した金額が課税対象となるのです。
これは逆に言えば、外貨預金の利益がマイナスであれば、他の雑所得の金額から差し引くことができ、課税対象の金額が少なくなると言えます。
例えば、外貨預金の為替差損が-10万で、そのほかの収入がある場合雑所得合計は下記のようになります。
- 外貨預金の利益 -100,000円
- 副業の原稿料 20,000円
- オークションの利益 55,000円(利用料など差し引いた分)
- フリーマーケットの売上 55,000円(場所代・材料費など差し引いた分)
合計 20,000円
この場合、外貨預金で出た損失分と、他の雑所得分を相殺することができますので、その分課税対象額が少なくなります。
ただし、もし為替差損がほかの収入より大きく雑所得合計がマイナスになっても、他の税金との相殺はできません。つまり、雑所得全体がマイナスとなっても、他の所得税などとは相殺できないということです。
また、マイナス分を翌年以降の雑所得として、繰り越す事も出来ません。あくまで、その年の「雑所得」内でしか相殺できませんので、注意してください。
まとめると下記のようになります。
為替差益が出た場合
為替差益のほか、副業・オークションなどの雑所得全体が20万を超える場合、確定申告が必要。
※外貨預金の為替差益が20万以下だからと言って、確定申告が不要なわけではない。
為替差損が出た場合
為替差損のほかに、副業・オークションなどの雑所得があれば、為替差損分を相殺できる。
※そのほかの雑所得合計より為替差損の額が大きくマイナスになったとしても、それは他の税金とは相殺不可。翌年にマイナス分繰り越しも不可。
4、確定申告について
それでは、確定申告をする場合は、どうしたらよいのでしょうか?
ここでは簡単に、確定申告の必要書類と手続きの流れについてご説明します。
確定申告の際に必要になるもの
外貨預金などの雑所得について、確定申告の際の必要になる書類は下記の通りです。
雑所得の他にも申告する税金がある場合は、お近くの税務局に確認しましょう。
- 確定申告書A
- 取引の明細がわかるような書類(金融機関から送られてくる取引報告書など)
- 源泉徴収票原本(会社に所属している場合、必要)
※その他控除を受けるのであれば、社会保険・生命保険料などの控除証明書
国税庁HP
https://www.nta.go.jp/about/organization/kantoshinetsu/topics/kakutei/01.htm
確定申告の進め方
①必要書類に記入する
源泉徴収票など準備しましたら、まず確定申告書Aに必要事項を記入します。確定申告書は税務署で受け取ることができますが、現在は国税庁ホームページから印刷することもできます。
初めて確定申告をする際には税務署の職員に相談して記入するのが一番間違いないかと思いますが、その時期はどうしても込み合いますので注意しましょう。
また、国税庁のホームページには確定申告初心者にもわかりやすいように、確定申告用特設ページ「確定申告書等作成コーナー」があります。システムの流れに沿って操作するだけで、書類が作成できる便利なシステムですので、慣れてきたらこちらで申告書類を準備するのも良いでしょう。
また毎年確定申告の必要があるのに、税務署へ行く時間がない・書類を郵送する手間を省きたい、という方には、「国税電子申告・納税システム(e-Tax)」があります。ネット上で簡単に確定申告ができるシステムになっておりますので、こちらも利用してみると良いでしょう。
「確定申告書等作成コーナー」
https://www.keisan.nta.go.jp/h29/ta_top.htm#bsctrl
「国税電子申告・納税システム(e-Tax)」
②確定申告書を必要書類と一緒に税務署へ提出する
確定申告書を作成したら、必要書類をそろえて税務署へ提出しましょう。必要書類とは、この場合、金融機関から送られてくる外貨預金の「取引報告書」と会社から渡される「源泉徴収票の原本」です。また、社会保険料・生命保険料などの控除も受けるのであれば、それぞれの保険会社から送られてくる「控除証明書」も一緒に添付しましょう。
提出は、税務署の窓口に持参・郵送のほか、前述のe-Taxを利用すればネットで提出することも可能です。
また、確定申告書の提出は余裕をもって行いましょう。毎年、「最終日にポストに投函しても大丈夫ですか?」という問い合わせが多いそうですが、基本的に「確定申告書の提出期限は、締切日の消印有効」です。その日のうちに、税務署の窓口へ持っていくか、郵便局に持ち込んでその日の消印をもらえば期限内に提出したとみなされます。
しかし、ぎりぎりの提出はミスも多いもの。2~3日ほど余裕をみて、前倒しで確定申告を行いましょう。
③納税額を支払う
納税の方法は主に下記の6つの方法があります。
税務署や金融機関の窓口で直接納付するほか、パソコン環境や、インターネットバンキングなど、自分に合った方法で納付が可能です。
納付手続 | 納付方法 | 便利に利用できる方 | 納付手続に必要となるもの |
ダイレクト納付 | e-Taxによる簡単な操作で預貯金口座からの振替により納付する方法 |
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インターネットバンキング等 | インターネットバンキング等から納付する方法 |
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クレジットカード納付 | 「国税クレジットカードお支払サイト」を運営する納付受託者(民間業者)に納付を委託する方法 |
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コンビニ納付 | コンビニエンスストアの窓口で納付する方法 |
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振替納税 | 預貯金口座からの振替により納付する方法 |
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窓口納付 ※金融機関や税務署の窓口 |
金融機関又は所轄の税務署の窓口で納付する方法 |
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また、税金の納付期限は毎年下記の通りになります。
ただし年度によっては、日にちが変更になる可能性もありますので、事前にきちんと確認しましょう。
- 所得税及び復興特別所得税:毎年3月15日(木)
- 消費税及び地方消費税:毎年4月2日(月)
- 贈与税:毎年3月15日(木)
国税庁HP
http://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu/01.htm