CFDとは
差金決済取引
CFDとはContract for Differenceの頭文字をとった略語で、日本語では差金決済取引と訳されます。差金決済取引とは、有価証券の受け渡しを行わずに、売買価格差に相当する金銭の受け渡しにより差金決済する取引です。
つまり、利益がでたら利益分だけ受け取り、損失がでたら損失分のみを支払う形で取引するのです。
株式投資の現物取引においては、有価証券の受け渡しを行うので「同じ銘柄」を「同じ日」に「同じ資金」で売買すると差金決済取引とみなされ取引できません。しかし、CFDなら同じ日に何度でも同じ銘柄を取引することができます。
CFDは世界中の株式市場や個別銘柄、原油や金などの商品まで幅広い資産に投資することができます。
日本ではまだメジャーではありませんが、イギリスでは1990年代前半に、アメリカでは1997年にスタートしていて、イギリスでは全金融市場のシェア30%を占め非常にメジャーな金融商品になっています。
証拠金取引
CFD取引では、レバレッジを効かせて取引することができます。そのため、少ない資金で大きな額を取引することができます。
レバレッジ規制
以前は50倍、100倍までレバレッジをかけて取引することができましたが、2011年1月1日以降は下記の通りにレバレッジが規制されました。
- 個別株CFD5倍
- 株価指数CFD 10倍
- 商品CFD20倍
取引所CFDと店頭CFD
取引所CFD(くりっく株365)
くりっく株365は日本で初めての取引所における株価指数証拠金取引(CFD)です。東京金融取引所に上場されています。
取引所CFDのくりっく株365には流動性をあげるためにマーケットメイカーが入っています。
複数の金融機関が価格を提示し、取引所が最も投資家にとって有利な価格を提示する「完全マーケットメイク方式」を採用しています。ですから、透明性の高い価格での取引が可能になっています。
証拠金は全額金融取引所に直接預託することになっています。ですから金融取引所により安全に分別管理(取引所の財産とは別に管理すること)されていて、万一取扱い業者が破綻した場合でも1,000万円を上限として証拠金は保護されています。
店頭CFD
店頭CFDの場合、取引所CFDや先物取引とは異なり、取引所を介して行われるのではなく、証券会社との相対取引となります。証券会社ごとに銘柄や約定時間、流動性が違うので注意が必要です。
CFDの税金
CFDの税金は申告分離課税です。2037年12月31日まで復興特別所得税がかかるので、所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%の合計20.315%が利益に対し税金がかかります。
FX・先物取引などと損益通算が可能
CFDで発生した損益はFXや日経225先物などの有価証券先物取引、金先物などの商品先物取引で発生した損益と、損益通算することが可能です。
例えば、CFDで100万円の利益がでていて、FXで30万円の損失が出ていた場合、損益通算した70万円に対し、20.315%の税金がかかることになります。
3年間の繰り越し損失控除が可能
CFDで損失がでた場合は、確定申告で損失の計上を行えば、翌年から3年間損失を繰越しでき課税所得から控除することができます。
CFDのメリット
少ない資金で取引できる
CFDでは銘柄にもよりますが、数倍~数十倍のレバレッジをかけて取引することができます。証拠金取引なので小額の資金で大きな取引ができます。ただ、大きな利益を狙うことができる反面、大きな損失を被る可能性があるので、損切り注文を必ず入れるなど徹底したリスク管理が必要になります。
豊富な銘柄
店頭CFD
世界中の株価指数・商品・個別株・債券など、最も取扱い銘柄が多いIG証券では10,000銘柄以上取引することができます。証券会社ごとに取扱い銘柄は異なるので、自分の取引したい金融商品があるのか確認する必要があります。ただ、個人投資家に人気の日経平均株価、NYダウ、原油、金などはほとんどの証券会社で取扱いがあります。
取引所CFD(くりっく株365)
取引所CFDである「くりっく株365」では、日経225、NYダウ、DAX(ドイツ)、FTSE(イギリス)の4銘柄が取引できる。取扱い銘柄は少ないものの、取引所商品である安心感からか、口座数、証拠金残高は順調にふえています。
出典 くりっく株365
いつでも取引できる(ほぼ24時間取引可能)
日本で株式投資をする場合、ほとんど証券取引所が開いている時間しか取引をすることができません。しかし、世界中の商品に投資することができるCFDなら、ほぼ24時間取引することができます。日本時間の夕方からは欧州市場がオープンしますし、22時ごろからはアメリカ市場がオープンします。日中仕事をしている人でも、夕方や夜に帰宅してからトレードできるのです。
売りから入ることができる
CFDは買い(ロング)だけなく売り(ショート)から入ることもできます。株式投資の場合、買ってから売ることしかできませんが、CFDでは売ってから買い戻すことで利益を出すことができるのです。信用取引や先物取引でも同じことができますが、一つの口座で個別株や株価指数、商品など様々な金融商品で売り(ショート)をすることができる利便性があります。
リスクヘッジの売り
現物を保有している投資家は、ヘッジ(リスク回避)としてCFDを利用することができます。株主優待や配当目的で長期投資している銘柄でも、短期的に株価が下落しそうな場面が想定されたとします。そうした場合はCFDで売りをいれておけば、現物株を手放すことなく下落リスクを回避することができます。
代表的な銘柄
個人投資家に人気がある代表的な銘柄を取り上げてみます。国内店頭CFDで圧倒的シェアを持つクリック証券を例にして解説していきます。
日経225
日経225先物を原資産としたCFDです。店頭CFDで人気のあるクリック証券でも一番売買代金が多くなっています。
クリック証券ではシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)、シンガポール証券取引所(SGX)に上場された株価指数先物を原資産としています。
大阪取引所に上場している日経225先物は取引時間が8:45~15:15 16:30~翌5:30となっています。取引時間はかなり長くなっているものの、クリック証券では 8:30~翌7:00(米国夏時間 翌6:00)とほぼ24時間取引が可能となっています。
また、呼値も1円と日経225先物ミニ(5円)よりも狭くなっているので、取引しやすくなっています。
NYダウ
日経225に続いて人気があるのがNYダウです。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)に上場されているダウ先物ミニが原資産になっています。NYダウは世界一の経済大国であるアメリカを代表する30社から構成されていて、世界中の投資家からも注目を集めています。クリック証券では8:00~翌6:15(米国夏時間 翌5:15)取引することができ、日経225同様、ほぼ24時間取引することができます。
原油
原油も個人投資家に人気がある商品です。クリック証券では国際原油指標であるWTI原油先物を原資産としています。原油先物では概ね証拠金が高くなりますが、クリックCFDなら小口から取引することができます。
出典 クリック証券
CFDのリスク
レバレッジ取引による損失
レバレッジをかけて大きな金額が取引できるCFDですが、利益が大きい反面、大きな損失が出る可能性もあります。
例えば約定価格10万円の商品で100単位と取引した場合は取引額1,000万円となります。レバレッジ10倍だと証拠金は100万円となります。
商品価格が8.5万円に下がったとすると、15%程度の損失ですが、10倍のレバレッジをかけているので損失額は150万円と、証拠金の100万円を上回ってしまいます。損失が証拠金を上回るため、50万円を支払う必要があるのです。
証拠金以上の損失を被る可能性があるので、リスク管理が重要となってきます。
出典 日本証券業協会
ロスカットに伴うリスク
証券会社は証拠金が必要証拠金の一定金額を下回った場合、取引を強制的に決済(ロスカット)することができます。しかし、ロスカットは必要証拠金の一定額を保証するものではなく、相場変動が激しい時は損失が拡大するリスクもあるので注意が必要です。
信用リスク
証券会社およびカバー先金融機関の業務や財産悪化により、証拠金の一部が変換されず、損失を生じるリスクがあります。取引所CFD(くりっく株365)では東京金融取引所により分別管理がなされていて投資家保護(1,000万円上限)もあるので安心感があります。店頭CFDも分別管理が義務付けられていますが、投資家保護はないので注意しましょう。
流動性リスク
ほぼ24時間取引できるのが魅力のCFDですが、原資産の流動性が低くなった場合は、CFDのスプレッド(売りと買いの差額)が広まったり、取引できなくなったりするリスクがあります。
相対取引のリスク
店頭CFDは証券会社との相対取引になります。証券会社が提示する価格は、原資産の価格を参考に証券会社が独自に提示するもので、原資産の価格で約定することを保証するものではありません。
金利変動のリスク
CFD取引で発生する金利は買いでは支払い、売りでは受取りとなります。円金利の状況によっては支払額の増加および受取り額の減少が発生する場合があります。
CFDと他の金融商品との違い(株式・FX・先物)
CFDと株式との違い
特に国内の個別株CFDと信用取引を比べてみましょう。ここではIG証券を参考にしました。
信用取引 | 個別株CFD(IG証券) | |
レバレッジ | 3.3倍 | 5倍 |
手数料 | 証券会社ごと | 0.054%(最低110円) |
市場 | 全市場 | 東証のみ |
銘柄数 | 3572銘柄 | 250銘柄以上 |
単位 | 100株 | 1株 |
レバレッジは信用取引3.3倍に対し5倍なので個別株CFDの方が高レバレッジとなります。
手数料に関しては信用取引は証券会社ごとに決められています。株価指数CFDなどは手数料無料ですが、個別株CFDは手数料がかかります。
信用取引は東証1部、東証2部、マザーズ、ジャスダックとすべての市場で取引できますが、個別株CFDは東京証券取引所に上場している250銘柄以上となっています。海外の株式を合わせると8,000銘柄以上になりますが、国内株式だと信用取引の方が圧倒的に多くなります。
信用取引は100株単位ですが、個別株CFDは1株単位で取引することができます。約定代金が高くて手が出せなかった銘柄でもCFDなら買い付けることができます。
CFDとFXとの違い
CFDは株価指数、商品、個別株など様々な銘柄を取引することができます。FXはCFDの為替のみを扱った商品なので、多くの共通点があります。CFDとFXの共通点と相違点を見ていきます。
共通点
24時間取引できる
買いのみでなく売りからでも取引できる
証拠金取引
税金で損益通算が可能
相違点
CFDとFXでは金利の考え方が逆になります
FXのスワップ金利は買いで受取り、売りで支払いとなりますが、CFDのオーバーナイト金利は買いで支払い、売りで受取りとなります。
買い | 売り | |
FX | 受取り | 支払い |
CFD | 支払い | 受取り |
となります。
レバレッジ
FXのレバレッジは最大25倍、CFDのレバレッジは5倍~25倍になっています。
FX レバレッジ25倍
個別株CFD レバレッジ5倍
株価指数CFD レバレッジ10倍
商品CFD レバレッジ20倍
倍率だけ見るとFXの方がリスクを取れそうですが、ボラティリティ(変動率)を考えるとCFDの方が大きく動く銘柄が多いので、レバレッジが低いからといってリスクが低いわけではないことに注意しましょう。
CFDと先物との違い
最後に株価指数CFDで代表的な銘柄の日経225証拠金取引(店頭CFD)と日経225先物ミニを比較してみます。
日経225証拠金取引(店頭CFD) | 日経225先物ミニ | |
取引期限 | なし | 3ヶ月ごとにSQ決済 |
取引時間 | 8:30~翌6:00 | 日中取引 8:45~15:15 |
(米国夏時間 ~翌5時) | 夜間取引 16:30~翌5:30 | |
取引方法 | 相対取引 | オークション方式 |
呼値単位 | 1円 | 5円 |
店頭CFDの日経225証拠金取引は、取引期限がないというのが大きな特徴です。先物では、3ヶ月ごとにポジションを決済しなければなりません(3,6,9,12月第二金曜日)。ポジションを持ち続けるためには、新たにポジションを建てなくてはいけません。取引時間も店頭CFDの方がほぼ24時間取引できるので長くなっています。呼値の単位も店頭CFDの方が1円と小さくなっています。ただし、スプレッド(買値と売値の差)は常に1円と決まっているわけでなく、日経225先物ミニの5円より広がることもあります。
CFD取り扱い証券会社
取引所CFD(クリック株365)
クリック株365取扱会社一覧
出典 くりっく365株
ここでは最大手のSBI証券を見てみます。
取扱い銘柄 株価指数で日経225、NYダウ、DAX(ドイツ)、FTSE100(ロンドン)の4銘柄
手数料 153円(税込)
呼値単位 1円
ロスカット 必要証拠金維持率100%未満
1注文当たり上限 日経225 500枚 NYダウ、DAX,FT100 200枚
取引成立方法 マーケットメイク方式
建玉制限 なし
店頭CFD
取引所CFDは取扱い銘柄や取引方法で違いはありませんが、店頭CFDは取扱い会社ごとに、銘柄数などが大きく異なります。
IG証券
10,000銘柄以上のCFDを提供しています。株価指数CFD,株式CFD、商品CFDのほか、債券CFDも取引できます。取扱い銘柄数では断トツの証券会社です。CFDの収益で世界一となっています。CFDを本格的に取引したい、幅広い銘柄を分析したという投資家には必須の証券会社といえるでしょう。
出典 IG証券
クリック証券
国内CFD取扱いで一番となっています。
株価指数CFD10銘柄の他に株価指数連動型ETFを原資産としたCFDもあります。またハイレバレッジ型(原油ブル2倍、金ブル3倍など)ユニークな銘柄も取引できます。
出典 クリック証券
まとめ
CFDは小額の資金で取引できる、ほぼ24時間取引できる、買いだけなく売りからも取引できる、世界中の株価指数、株式、商品が取引できるなど、他の金融商品にはない魅力が多くあります。現在の市場は、様々な市場が相互に影響を与えています。実際に取引するだけでなく、CFD口座を開いて海外市場をチェックするだけでも、現在の投資にプラスの効果を得ることができます。まずは口座を開いて、世界の金融市場を見ることから始めてみてはいかがでしょうか。