【保存版】消費税の軽減税率制度とは?消費税軽減税率制度についてわかりやすく解説します

消費税が平成31年10月1日から10%になるということは知っていらっしゃる方も多いと思います。

でも、食料品は8%のままという認識の方も多いかと思います。

ですが、現状、平成31年10月1日から平成35年9月30日までと、平成35年10月1日以降ではそれぞれ請求書の形式が変更になるということは知らない方が多いのではないでしょうか?

また、消費税を納めている業者の方は原則として平成35年3月31日までに届出を税務署に提出しないといけないということも知らない方が多いかと思います。

この記事では消費税軽減税率制度について、皆様が何となく知っていること、知らないこと、どちらもわかりやすく解説していきます。

消費税軽減税率制度の概要

消費税及び地方消費税の税率は、平成31年10月1日に、現行の8%(うち地方消費税率は1.7%)から10%(うち地方消費税率は2.2%)に変更になります。

これと同時に低所得者に配慮するため、「酒類・外食を除く飲食料品」と「定期購読が締結された週2回以上発行される新聞」については、8%(うち消費税は1.76%)に据え置きとなります。

軽減税率の対象品目

軽減税率は、次の飲食料品及び新聞の品目の譲渡を対象としています。

飲食料品の具体的な内容は以下のとおりです。

軽減税率の対象となる飲食料品とは、食品表示法に規定する食品(種類を除く。)をいい、一定の一体資産を含みます。なお、外食やケータリング等は対象に含まれません。

ここで、「一体資産」とは、例えば、ハンバーガーを買ったときにおもちゃがついてくるといったように、次の2つのいずれにも該当するものをいいます。

  • 食品と食品以外の資産があらかじめ一の資産を形成し、又は構成しているもの
  • 一の資産の価格のみが提示されているもの

この上記で定義される「一体資産」のうち、次のいずれの要件も満たす場合は、「一定の一体資産」になります。

  • 一体資産の譲渡の対価の額(価額が1万円以下であること
  • 一体資産の価額のうちに当該一体資産に含まれる食品に係る部分の価額の占める割合として合理的な方法により計算した割合が3分の2以上であること

新聞については、以下のような内容になります。

軽減税率の対象となる新聞とは、一定の題号を用い、政治、経済、社会、文化等に関する一般社会的事実を掲載する週2回以上発行されるもの(定期購読契約に基づくもの)をいいます。

請求書の内容が変わる

納税消費税計算に使用する費用のことは、消費税法上の用語で仕入税額控除と言います。

この仕入税額控除制度については、現行、請求書等保存方式となっていますが、軽減税率制度の実施に伴い、平成31年(2019年)10月1日から平成35年(2023年)9月30日までの間は、区分記載請求書等保存方式となり、平成35年10月1日からは、適格請求書等保存方式となります。

まずは、区分記載請求書等保存方式から説明します。

区分記載請求書等保存方式

現状では、仕入税額控除の適用を受けるためには、法定事項が記載された帳簿及び請求書等の保存が要件とされています。

平成31年10月1日から平成35年9月30日までの間は、この要件について、現行方式を基本的に維持しつつ、その仕入れが軽減税率の対象となる資産の譲渡等に係るものか、それ以外のものかの区分を明確にするための記載事項が追加された帳簿及び請求書等の保存が要件とされます。

具体的に総勘定元帳の仕入は以下のようにする必要があります。

月 日 摘要① 摘要② 税区分 借方 (円)
12月31日 ○○物産㈱ 12月分 日用品 10% 99,000
12月31日 ○○物産㈱ 12月分 食料品 8% 54,000

①課税仕入れの相手方の氏名又は名称

②課税仕入れを行った年月日

③課税仕入れに係る資産又は役務の内容

(軽減対象資産の譲渡等に係るものである旨)

④課税仕入れに係る支払い対価の額

適格請求書等保存方式

平成35年10月1日から複数税率に対応した仕入税額控除の方式として導入されます。

適格請求書等保存方式の下では、「帳簿」及び税務署長に申請して登録を受けた課税事業者である「適格請求書発行事業者」が交付する「適格請求書」などの請求書の保存が仕入税額控除の要件となります。

詳しくは次の章に記載しますが、ここで出てきた「適格請求書発行事業者」というのは自然に誰にでもなることができるものではなく、税務署に届け出て認可された会社や個人事業主のみが名乗ることができるものです。

売手側の留意点

売り手である適格請求書発行事業者には、適格請求書を交付することが困難な一定の場合を除き、取引の相手方(課税事業者のみ)の求めに応じて適格請求書を交付する義務及び交付した適格請求書の写しを保存する義務の2つの義務が課されます。

適格請求書及び適格簡易請求書の記載事項

適格請求書の記載事項は、以下のとおりです。

  • 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  • 税率ごとに合計した対価の額及び適用税率
  • 消費税額等(端数処理は一請求書当たり、税率ごとに1回ずつ)
  • 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

不特定多数の客に対して販売等を行う小売業、飲食店業、タクシー業等が交付することができる適格簡易請求書の記載事項は、以下のとおりです。

  • 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  • 税率ごとに合計した対価の額
  • 消費税額等(端数処理は一請求書当たり、税率ごとに1回ずつ)又は適用税率
適格請求書に記載する消費税額等の端数処理

適格請求書の記載事項である消費税額等については、1枚の適格請求書につき、税率ごとに1回の端数処理を行います。

なお、1円未満の端数の切上げ、切捨て、四捨五入などの端数処理の方法については、任意の方法とすることができます。

逆に、1枚の適格請求書に記載されている個々の商品ごとに消費税額等を計算し、1円未満の端数処理を行い、その合計額を消費税額等として記載することは認められません。

上記の内容の具体例は以下です。

認められた方法 一枚の適格請求書につき、税率ごとに1回の端数処理を行う場合

品名 税込金額 消費税額
片栗粉 4,000円
豚肉 6,000円
ゴミ袋 3,000円
トイレットペーパー 2,000円
合計 15,000円 1,194円
10%対象 5,000円 454円
8%対象 11,000円 740円

ゴミ袋とトイレットペーパーは消費税10%対象です。

10%対象の消費税は以下のように計算しています。

5,000円× 10/110 ≒ 454円

片栗粉と豚肉は消費税8%対象です。

8%対象の消費税は以下のように計算しています。

11,000円× 8/108 ≒ 740円

認められない方法 個々の商品ごとに端数処理しているもの

品名 税込金額 消費税額
片栗粉 4,000円 296円
豚肉 6,000円 444円
ゴミ袋 3,000円 272円
トイレットペーパー 2,000円 181円
合計 15,000円 1,193円
10%対象 5,000円 453円
8%対象 11,000円 740円

10%対象の消費税は以下のように計算しています。

3,000円× 10/110 ≒ 272円

2,000円× 10/110 ≒ 181円

272円+181円 = 453円

8%対象の消費税は以下のように計算しています。

4,000円× 8/108 ≒ 296円

6,000円× 10/110 ≒ 444円

296円+444円 = 740円

現在の多くの企業が採用している消費税額を計算するシステムは、個々の商品毎に消費税額の端数処理を行う仕組みです。

つまり、上記の「認められない方法」になります。

買い手側の留意点

一定の例外(細かい話となりますので、この記事では省略します。)を除き一定の事項を記載した帳簿及び請求書等の保存が仕入税額控除の要件となります。

帳簿の記載事項

区分請求書等保存方式の記載事項と同様で、現行の記載事項に加え、以下の記載が必要です。

  • 課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合にはその旨
  • 軽減税率と標準税率との税率の異なるごとに区分して合計した課税資産の譲渡等の対価の額(税込み)
請求書等の範囲

保存が必要となる請求書等には、以下のものが含まれます。

  • 適格請求書又は簡易請求書
  • 仕入明細書等(買手側が作成する書類で適格請求書の記載事項が記載されており、相手方の確認を受けたもの)
  • 卸売市場において委託を受けて卸売の業務として行われる生鮮食料品等の譲渡及び農業協同組合等が委託を受けて行う農産物の譲渡について、受託者から交付を受ける一定の書類
  • 上記の書類に係る電磁的記録
帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合

請求書等の交付を受けることが困難な以下の取引は、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。

  • 適格請求書の交付義務が免除される取引
  • 適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)を満たす入場券等が、使用の際に回収される取引
  • 古物営業、質屋又は宅地建物取引業を営む事業者が適格請求書発行事業者でない者から、古物、質物又は建物を当該事業者の棚卸資産として取得する取引
  • 適格請求書発行事業者でない者から再生資源又は再生部品を棚卸資産として購入する取引
  • 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当等に係る課税仕入れ

上記の交付義務が免除される取引とは、以下を指します。

  • 公共交通機関である船舶、バス又は鉄道による旅客の運送(3万円未満のものに限ります。)
  • 自動販売機・自動サービス機により行われる課税資産の譲渡等(3万円未満のものに限ります。)
  • 郵便切手を対価とする郵便サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)

軽減税率制度導入に伴い事業者がやるべきこと

適格請求書発行事業者に登録する必要がある

前の章で説明しましたが、平成35年10月1日以降は適格請求書発行事業者が発行した請求書でなければ仕入税額控除ができなくなります。

皆様の会社がこの適格請求書発行事業者に登録しなれば、得意先は皆様の会社に商品や役務提供の対価を支払ってくれたとしても仕入税額控除ができないわけです。

このようなことになれば、得意先は皆様の会社との取引関係を再考するということになりかねません。

登録の流れは次のようになります。

まず、税務署長に「適格請求書発行事業者の登録申請書」(以下「登録申請書」といいます。)を提出します。

税務署では提出された登録申請書の審査をします。審査が通ると、登録及び公表・登録簿への登載となり、税務署から登録番号の通知があります。

通知される登録番号の構成は、以下のとおりです。

  • 法人番号を有する課税事業者 T+法人番号(13桁)
  • 上記以外の課税事業者(個人事業者、人格のない社団等) T+数字(13桁)

また、登録した事業者は以下の事項をインターネットを通じて確認できます。

  • 適格請求書発行事業者の氏名又は名称
  • 登録番号、登録年月日(取消、失効年月日)
  • 法人の場合、本店又は主たる事務所の所在地

なお、登録申請書は、平成33年10月1日から提出可能です。

そして、適格請求書等保存方式が導入される平成35年10月1日から登録を受けるためには、原則として、平成35年3月31日までに登録申請書を提出する必要があります。

適格請求書等保存方式に対応したシステム改修が必要

前の章で述べましたが、消費税の端数処理について、現状の多くの会社では適格請求書等保存方式で認められない方法をとっているシステムを使用しています。

そのため、一般的にすぐに思いつく複数税率対応ということだけではなく、消費税の端数処理に関しても、多くの会社ではシステム改修が必要です。

パッケージ製品であれば、事業主が何も言わなくても、そのパッケージ製品を作っている会社が対応してくれると思いますが、独自のシステムを使用している場合は、事業主が指示しないと、意図通りの改修にならない可能性がありますので、ご留意ください。

なお、適格請求書等保存方式に対応したシステム改修をすれば、平成31年10月1日から平成35年9月30日の仕入税額控除の要件である区分請求書等保存方式の要件も満たします。

そのため、区分請求書等保存方式に対応したシステム改修をした後に、適格請求書等保存方式に対応したシステム改修をするといった2度手間、2重コストにならないようにご留意ください。

軽減税率に対応する事業者には補助金が出る

消費税軽減税率制度の実施に伴い対応が必要となる中小企業・小規模事業者等に対して、複数税率対応レジの導入や、受発注システムの改修等に要する経費の一部を補助することにより、導入等の準備が円滑に進むよう支援する制度です。

以下の2つの申請類型があります。

1つは、A型 複数税率対応レジの導入等支援 です。

複数税率に対応できるレジを新しく導入したり、対応できるように既存のレジを改修したりするときに使える補助金です。

※レジを使用して日頃から軽減税率対象商品を販売しており、将来にわたり継続的に販売を行うために複数税率対応レジを導入又は改修する事業者を支援します。

もう一つは、B型 受発注システムの改修等支援 です。

電子的な受発注システム(EDI/EOS等)を利用する事業者のうち、複数税率に対応するために必要となる機能について、改修・入替を行う場合に使える補助金になります。

※電子的受発注システムを使用して日頃から軽減税率対象商品を取引しており、将来にわたり継続的に取引を行うために受発注システムを改修・入替する事業者を支援するものです。

 

軽減税率導入後の価格表示

軽減税率導入前の現在も、軽減税率導入後も、課税事業者が消費者に対して商品等の価格をあらかじめ表示する場合は、税込価格を表示すること(総額表示)が義務付けられています。

軽減税率制度実施後は、例えばイートインスペースがある小売店等の事業者は、同じ飲食料品の販売につき適用される消費税等が異なる場合が想定されます。

このような場合の価格表示の方法は3つあります。

1つは 「持ち帰りと店内飲食の両方の税込価格を表示」する方法です。

ここに1個550円の幕の内弁当があったとします。その場合の価格の表示方法は以下のようになります。

幕の内弁当 持ち帰り 540円 (店内飲食 550円)

また別の方法に、「店内掲示等を行うことを前提にどちらか一方のみの税込価格を表示」する方法があります。

幕の内弁当 540円

また、店内掲示等に以下のように記載します。

「店内飲食される場合、税率が異なりますので、別価格となります。」

3つ目の方法として、「持ち帰りと店内飲食を同一の税込価格で表示」する方法があります。

幕の内弁当 550円

※持ち帰りの場合の550円、店内飲食の場合の550円になります。

個人的には3番目の方法を取るのがいいのではないかと思います。

同じ商品に2つの対価を消費者に示すのは混乱を引き起こすだけだと考えるからです。

ファーストフード店の場合は、持ち帰りか店内飲食かを必ず聞くので、1番目の方法でいいのではないかと思います。

まとめ

最後まで記事をお読み頂きましてありがとうございました。

現状、平成31年10月1日から平成35年9月30日、平成35年10月1日以降では請求書の様式がそれぞれ違い、変更に対応する必要がある旨を解説させて頂きました。

また上記で解説させていただきましたように、変更に対応するシステム改修には国から補助金が出ますので、その活用もご検討ください。

そして消費税を現状申告納税されている事業主様については、適格請求書発行事業者として届出を原則として平成35年3月31日までに出す必要がある旨も解説させて頂きました。

この記事が皆様のお役にたつと幸いです。

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