自己破産の流れを解説!弁護士への相談から裁判所での手続き期間・免責決定後の生活まで

自己破産は、裁判所を通して手続きを行い、最終的に「免責決定」という命令を出してもらうことによって、借金を原則としてすべて免除してもらうことができる方法です。

借金の返済に苦しんでおられる方にとって、自己破産は非常に大きなメリットのある方法といえますが、裁判所を通し手続きを行う分、手続きにかかる時間と労力が比較的大きいことも理解しておきましょう。

以下では、自己破産を行うことを選択した場合に、弁護士への相談から裁判所での手続き期間・免責決定後の生活まで、具体的にどのような流れで手続きが進んでいくのかについて説明します。

自己破産の流れ:まずは全体像を理解しておこう

自己破産の手続きの流れについて、まずは大まかに全体像を理解しておきましょう。

自己破産を裁判所に申し立てる場合、通常は次のような流れで手続きが進んでいきます。

 

自己破産手続きの大まかな流れ

  1. 弁護士への相談と委任契約の締結
  2. 受任通知で債権者の取り立てがストップ
  3. 裁判所への申し立て手続き
  4. 裁判所内部での手続き
  5. 免責許可の決定が出て借金がリセットされる

これら5つの手続きがすべて完了するまで、通常は半年程度の時間がかかります。

以下では、自己破産手続きのそれぞれの段階で、具体的にどのようなことを行う必要があるのか?についてくわしく見ていきましょう。

1.弁護士への相談と委任契約の締結

自己破産の手続きを行う際には、弁護士や司法書士といった法律の専門家と委任契約を締結し、手続きの代行を依頼するのが一般的です。

弁護士に依頼して自己破産の手続きを進めていく場合、まずは弁護士事務所のインターネットサイトから申し込みをして相談の日程を決める必要があります。

初回の相談は無料の場合がほとんどですから、自分が本当に自己破産を行う必要があるのかどうかを教えてほしい、という段階の人も、まずは相談してみると良いでしょう。

無料相談ではあなたの収入の状況や借金の代替の金額、どのぐらいの期間にわたって借金返済を行ってきたのかといった質問をされますから、準備をして相談に行くようにしてください。

無料相談をしてもらった結果、やはり自己破産の手続きをしたほうが良い、と判断された場合には、その場で弁護士との委任契約を結ぶことになります。

依頼するのは弁護士?司法書士?

自己破産に関する手続きを代行してくれる専門家としては、弁護士と司法書士のどちらかから選ぶことができます。

司法書士については簡易裁判所で処理される法律手続きのみ依頼することができるルールになっていますから、金額の大きい借金がある方の場合は弁護士に依頼しなくてはなりません。

具体的には、140万円を超える借金について自己破産の手続きを行う場合には、司法書士だと請け負えない業務が一部ありますから、弁護士を利用するのが良いでしょう。

弁護士に依頼せずに自己破産手続きを進めることは可能?

専門家に依頼した場合には彼らに支払う費用が発生しますから、この費用を節約したいと考える方の中には、自力で手続きを行うおうと考えている方もいらっしゃるでしょう。

結論から言うと、法律上は自己破産の手続きは弁護士などの専門家に依頼することなく、自力で行うことも法律上は可能になっていますが、実際にはほとんどの人が専門家を利用して自己破産の手続きを行っているというのが現実です。

自力で自己破産手続きを行うことが現実問題として難しい理由としては、次のようなものがあげられます。

 

自己破産手続きを自力で行うのが難しい理由

  • 申立て書類の準備に法律の専門知識が必要であること
  • 裁判所の手続きは平日の昼間に行う必要があること
  • 申立てが受理された後も、そのつど裁判所の連絡に応じて追加の書類提出を行う必要があること

自己破産を行う場合、裁判所に自己破産手続き開始を認めてもらうために申し立て書類(財産目録や債権者の一覧など)を提出する必要があるほか、家計の状況や債権者との交渉状況などについてもそのつど報告する必要があります。

こうした手続きはすべて平日の昼間に行わなくてはならないことも、日中の仕事をしている方には大きな負担となる可能性が高いでしょう。

弁護士などの専門家に依頼するとこれらの手続きはすべて代行してもらうことが可能になりますので、状況に合わせて専門家を利用するようにしましょう。

なお、専門家に対して支払う費用は後払いや分割払いが認められるケースがほとんどですよ。

2.専門家から債権者に対して受任通知が行われる

専門家と正式に委任契約を締結すると、その時点で専門家から債権者に対して「受任通知」が送られます。

受任通知とは、ごく簡単にいうと「この人は専門家を通して債務整理の手続きを開始したので、今後の連絡は専門家を通してください」という内容の連絡のことです。

受任通知による具体的なメリット

受任通知が専門家から債権者に対して行われると、受任通知が債権者に届いた時点で取り立てがストップします。

銀行や消費者金融といった金融機関が債権者である場合には、貸金業法という法律で「受任通知を受けた時点で、債務者への連絡は止めなくてはならない」というルールが定められているためです。

借金の返済が滞ってしまっている人の中には、一日中複数の債権者から携帯電話に連絡が入っていて、とても落ち着いて生活ができない…という状態の方も少なくないでしょう。

専門家に債務整理手続きを依頼した時点でこうした取り立てはストップすることになりますから、落ち着いて日常生活を送れるようになるという具体的なメリットがあることも知っておいてください。

委任契約を結んだ時点で、着手金を支払うのが一般的

自己破産手続きの場合、手続きが完了して裁判所から免責決定が出されるまでの間、かなり長い時間がかかるのが一般的です(3か月~半年程度が相場です)

そのため、委任契約を専門家と締結した時点で、専門家に対して着手金という形で報酬の一部を支払う必要があります。

着手金の金額はそれぞれの法律事務所によって異なりますが、一般的には20万円程度であることが多いでしょう。

3.裁判所への申し立て手続き

弁護士との委任契約を結び、受任通知が行われたら、いよいよ裁判所への申し立て手続きを進めていきます。

もっとも、弁護士に依頼した場合には、申し立てのために必要になる書類作成はすべて代行してもらえますから、あなたが自身がやらなくてはいけないことはそれほど多くありません。

具体的には、弁護士から指示される申し立て書類作成のための情報を、指示された時期までにそろえて渡すようにしてください。

自己破産手続きを裁判所に申し立てるために、専門家に渡す必要がある情報としては、次のようなものがあります。

 

自己破産手続きのために専門家に教える必要がある情報

  • あなたの個人情報(住所や氏名、家族の情報が記載された住民票)
  • 借金の債権者と金額(正確な金額は専門家が開示請求してくれます)
  • あなたが所有している財産の詳細(銀行通帳や不動産の情報)
  • 過去の銀行取引の明細コピーなど
  • あなたの生活費の内訳
  • あなたの収入を証明する書類(源泉徴収票や確定申告書類・納税証明など)

自己破産による免責を裁判所に認めてもらうためには、借金を負うことになった理由や経緯などもとても重要になりますから、できる限り具体的な情報を弁護士に渡すようにしなくてはなりません。

具体的には、自己破産の免責を受ける上では「免責不許可事由」というルールがあり、ギャンブルや浪費によって借金を負ってしまった場合には免責が出ない可能性があるのです。

もちろん、弁護士はあなたの立場で、あなたができる限り免責を受けられるような方向で裁判所への提出書類を作成してくれますから、正直に実際の状況をありのままに伝えるようにしてください。

必要書類はどこで受け取る?

上で紹介した、専門家に対して渡す必要がある書類は、以下のような場所で取得することができます。

 

専門家に渡す情報を取得できる場所

  • 住民票や戸籍に関する情報:市役所
  • 不動産の登記簿など:法務局
  • 収入を証明する書類:勤務先に源泉徴収票を発行してもらう
  • 納税証明など:税務署

なお、借金の正確な金額については、債権者への開示請求という手続きを弁護士が行ってくれますから、正確な金額がわからなくても「どこから借金をしているか」ということさえわかれば問題はありません。

弁護士の事務所に相談に行く際には、自宅に届いている債権者からの督促ハガキや、現金引き出しのためのキャッシュカードを持参するようにしましょう。

弁護士に裁判所での申し立てのための情報を渡すと、破産申立書や免責申立書、陳述書、債権者一覧表、財産目録、家計の状況といった必要書類を弁護士が作成してくれます。

 

弁護士が自己破産手続き開始のために作成してくれる書類

  • 破産申立書
  • 免責申立書
  • 陳述書
  • 債権者一覧表
  • 財産目録
  • 家計の状況

これらの書類提出が完了したら、裁判所に対して「自己破産手続き開始の申し立て」が行われます。

場合によっては裁判所から追加で書類提出が求められるようなケースもありますが、通常は2週間~1か月程度で受理され、次の裁判所内部での手続きに進むことになります。

4.裁判所内部での手続き

裁判所への自己破産手続き開始の申し立て無事に認められると、続いて裁判所内部での手続きが始まります。

最初に行われるのは申し立てから2週間~1か月が経過した後の「破産審尋」です。

破産審尋は、ごく簡単にいうと裁判官との面接です。

自己破産の免責を受けるためには免責不許可事由に該当しないことや、支払い不能になっていることが必要ですから、あなたの具体的な状況について裁判官から質問があります。

基本的には現状のありのままを正直に答えれば問題はありませんが、ギャンブルなどによって借金を負ってしまったなどの事情がある方は、事前に弁護士とよく相談して受け答えの仕方などを準備しておかなければなりません。

破産審尋が問題なく完了したら、その数日後に破産手続き開始の決定が裁判所から出されます。

破産手続き開始の決定が出ると、官報にあなたの情報が掲載されることになります。

同時廃止事件と管財事件で裁判所内部の手続きの進み方は異なる

上の破産手続き開始の決定が出されると、あなたに債権者に分配することができる財産があるか、ないかによって手続きの進み方が2種類に分かれます。

これといった財産がない場合の自己破産手続きのことを「同時廃止事件」、財産がある場合の自己破産手続きのことを「管財事件」と呼びます。

同時廃止事件の場合には、自己破産手続き開始の決定があった後、すぐに免責許可手続きに進みますが、管財事件の場合には、債権者集会や財産の配当手続きが行われます。

自己破産手続きのほとんどが同時廃止事件ですのでこれらの説明は省きますが、財産を所有している状態で自己破産手続きを行いたい方は、管財事件の場合の手続きの進み方について弁護士とよく相談するようにしておいてください。

管財事件の場合、債権者集会や財産の配当手続きが行われる

自己破産手続きを行うあなた自身にマイホームその他の財産がある場合には、これらの財産を換金して(つまり売却して)その代金を債権者に引き渡すという手続きを行う必要があります。

まずは債権者がだれで、どれだけの金額の借金があるのかを確定する手続きとして債権者集会が行われます。

担保権のある借金を有している債権者(住宅ローンを組んでいる銀行など)をのぞいて、債権者は自己破産による免責を受ける人の財産から平等に分配を受ける権利があります。

金融機関が債権者である場合には債権者一覧表に彼らを含めておけば自動的に手続きが進むことになりますが、知人や親族が債権者に含まれている場合には、彼らに債権者集会の手続きに参加するように伝えておくのが親切でしょう。

5.免責許可の決定が出て借金がリセットされる

ここまでくると、基本的には裁判所によって免責許可の決定が出るのを待つだけです。

多くのケース(同時廃止事件)では、申立てをしてから3か月~半年以内には免責許可の決定が出されるはずです。

ただし、裁判所内部での手続きの進行中、裁判所から追加で新人のための出頭を求められたり、追加の書類提出を求められたりするケースがまれにありますので、弁護士と相談しながら対応するようにしましょう。

なお、裁判所からの連絡についてはすべて弁護士に対して行われますから、必要な指示に従うようにしてください。

自己破産後の生活と準備しておくべきこと

自己破産によって裁判所による免責を受けた場合、原則としてすべての借金が免除されることになります。

借金の返済を長期間にわたって行ってきた人にとっては非常に生活をしていくうえでの負担が軽減されることになりますが、一方で、免責を受けた後の生活についても準備をしておく必要があることも知っておいてください。

というのも、自己破産による免責を受けた後には、10年間は金融機関のブラックリストに登録されてしまいますから、この期間中は新たにカードローンを利用したり、クレジットカードを作ったりといったことができなくなるからです。

自己破産により免責を受けた後には、毎月の収入の範囲内で生活をしていくということが絶対に必要になりますから、家計の状況を見直すとともに必要であれば家族などの支援を受けられるようにしておかなくてはなりません。

保証人との関係が悪くならないように注意

また、自己破産によって免責を受けた借金の中に、保証人についてもらっている借金がある場合にも注意が必要です。

あなたが自己破産免責によって借金の支払い義務をまぬがれたことによって、保証人となってもらっている人には一括払いのかたちで借金の請求がいくことになります。

保証人となってもらっているのは親しい知人や親戚である場合がほとんどでしょうから、事前に自己破産手続きを行うことになったことを知らせておくとともに、迷惑をかけてしまうことについてきちんと説明しなくてはなりません。

保証人となってもらっている借金の金額が高額である場合には、保証人も一緒に債務整理の手続きを行うことを検討しなくてはなりませんから、事前に弁護士ともよく相談しておくようにしましょう。

まとめ

今回は、自己破産を行う場合の具体的な手続きの流れについて説明しました。

本文でも説明した通り、自己破産の手続きは借金を負っている方本人が行うことも法律上は可能ですが、法律的な知識や実務経験がないと実際は非常に難しいというのが現実です。

実際にはほとんどの人が弁護士や司法書士といった専門家に依頼して自己破産の手続きを行っていることは理解しておく必要があるでしょう。

手続きを進める上で不明な点や不安なことがある場合には、専門家の事務所が行っている無料相談を活用してみてくださいね。

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