理解が難しい公的年金の種類についてわかりやすく解説!私的年金の種類や特徴や公的年金との最適な組み合わせについても説明します。

SHARE

年金とは、老齢のため働くことが難しくなったり、傷害のため働けなくなったり、遺族のために定期的に給付されるお金のことをいいます。年金には、国民年金や厚生年金などの国から加入が義務づけられている公的年金があります。

また、国民年金基金や確定拠出年金や民間の保険会社の個人年金保険などの公的年金の上乗せ部分を保証する私的年金があるのです。人間は必ず年を取りますので、老後の収入をどのように確保して生活していくかは切実な問題です。

年金制度はその助けになる制度ですが、理解が難しく老後の計画を立てることが難しいのが現状かと思われます。ここでは、この難しい公的年金についてわかりやすく解説し、間違えのない老後の計画を手助けしていきます。

公的年金にはどういう種類があるの?

公的年金には、国民年金と厚生年金と共済年金の3種類があり、それぞれ加入する対象者に条件があります。また、どの年金も老齢や障害や遺族に対して給付することは変わりません。

公的年金の考え方は、個人の払った保険料を運用した利益とともに個人に返還する積み立て方式ではなく、現役世代が払った保険料を高齢者の給付にあてる世代間扶養です。公的年金制度は、世代間扶養の仕組みであるからこそ、賃金や物価の変動に応じて給付額をスライドスライドすることができます。

さらに、受給権者が死亡するまでずっと年金を受けとることができますし、障害年金や遺族年金の支給もできるのです。国民年金とは、日本国内に住所がある20歳以上で60歳未満のすべての人が加入の必要がある年金で、老齢や障害や死亡により基礎年金を受けとることができます。

厚生年金とは、厚生年金保険の適用事業所に勤務し、適用条件に当てはまる全ての人が加入する年金です。基礎年金に加えて厚生年金も受給できます。

共済年金とは、国家公務員や地方公務員や私立学校の教員の常時勤務している人が加入する年金です。しかし、平成27年10月に厚生年金との受給の不公平を改善するため、厚生年金に統合されています。

私的年金の種類と特徴について

私的年金とは、公的年金の上乗せ部分を保障する個人年金で任意に加入する年金のことです。また、私的年金は、強制加入の公的年金では賄えない部分を補うために加入することが多く、私的年金に加入することで少しでも豊かな老後の生活を目指すものです。

私的年金には種類があり、国民年金加入者が加入するには、国民年金基金や確定拠出年金があります。また、厚生年金加入者が加入するには、厚生年金基金や確定給付年金や確定拠出年金などがあるのです。他にも私的年金として、保険会社が提供する定額年金保険や変額年金保険などの個人年金保険や財形年金などがあります。

国民年金基金

自営業者などの国民年金の第一号被保険者と、会社員などの厚生年金の被保険者とでは将来受けとる年金の額に差がでます。自営業者などは基本的に老齢基礎年金を受け取りますが、会社員などは老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金も受けとることができるからです。

国民年金基金制度はその差を埋めるため、平成3年4月に創設されました。国民年金基金には、地域型基金と職能型基金の2種類があります。地域型基金は47の都道府県に存在し、職能型基金は25の職種別に設立されました。

国民年金基金は任意加入のため、どちらの基金に加入するかも自由ですが、どちらか一方にしか加入できません。国民年金基金の掛金は、全額所得控除の対象になりますので節税対策にもなります。

厚生年金基金

厚生年金基金の役割とは、企業が設立し厚生年金の一部を代行することです。また、集めた保険料の管理や運用を行って、厚生年金の上乗せ部分に対して独自の給付を行っています。厚生年金基金への加入の可否は、勤めている企業が厚生年金基金を行っているかどうかで決まるのです。

厚生年金基金の保険料は、厚生年金と同様に労使が半分ずつ支払います。厚生年金の上乗せ給付として期待された厚生年金基金でしたが、バブル崩壊の時期に運用が失敗して積み立て不足に陥った基金が増えました。

そして、2014年に厚生年金保険の法改正により、運営が厳しい基金は解散か他の制度への移行を促すことになりました。そのため、現在では厚生年金基金の数も少なくなり、制度自体を無くす検討もされているのです。

確定拠出年金

確定拠出年金とは、加入者が毎月の保険料を積み立てて、その資金を運用することによって将来の年金額が決まっていく年金のことです。確定拠出年金には、企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金(iDeCo)の2種類があります。

企業型確定拠出年金は、企業が退職金制度の一環として加入するもので、その企業に勤務している従業員が年金の受け取り対象になります。企業型確定拠出年金の掛金は、企業が拠出し、支払った掛金は損金として経常できるのが特徴です。また、企業が支払った掛金を運用するのは、従業員個人になりますので、個人の運用次第で年金額が変わっていきます。

一方、iDeCoは、個人で加入することができる確定拠出年金のため、掛金は加入した個人が支払うことになります。iDeCoの掛金は、全額所得控除の対象になりますので、確定申告や年末調整で税金の還付が受けられるのが特徴です。iDeCoも企業型確定拠出年金と同様に掛金の運用は加入者が行いますので、運用次第で年金額が変わってきます。

確定給付年金

確定給付年金とは、あらかじめ将来の給付額が決まっている企業年金です。企業が退職金制度の一環として導入していることが多く、決まっている給付額を補うために算出された掛金を企業が拠出していきます。

また、運用は生命保険会社や信託銀行に委託して企業が行い、運用リスクも企業が負います。そのため、積み立て不足などが発生した場合は、企業が企業が補填する義務があるのです。

確定給付年金には、規約型確定給付企業年金と基金型確定給付企業年金の2種類があります。規約型確定給付企業年金の実施主体は、厚生年金適用事業所の事業主です。企業と信託会社や生命保険会社などが契約をして、年金資金の管理や運用や年金給付を行います。

一方、基金型確定給付企業年金の実施主体は、母体企業とは別に設立された企業年金基金です。その企業年金基金によって、年金資金の管理や運用や年金の給付を行うのです。

公的年金と私的年金の最適な組み合わせについて

現在の年金制度の中で、公的年金の給付だけでは将来が不安という人も多いでしょう。公的年金に私的年金を加えて、安定した老後を送りたいと考えている人もいると思いますが、公的年金にどのような私的年金を組み合わせたら良いのでしょうか。

例えば、自営業の人であれば国民年金の被保険者ですが、将来に老齢基礎年金の受給だけでは不安な人も多いでしょう。その場合、年金の上乗せを考えると国民年金基金に加入するか、個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入するかの選択肢があります。

国民年金基金の月額の掛金の限度額は、68,000円です。また、iDeCoも自営業者の場合の月額の掛金の限度額は、68,000円です。そのため、将来に決まった年金額を受け取りたい人は、国民年金基金を選択するのが良いですし、運用によって年金額を増やしたい人は、iDeCoを選択するのが良いでしょう。

ただし、iDeCoは、運用リスクもありますので注意が必要です。さらに、国民年金基金とiDeCoの両方に加入することもできますが、両方の掛金を合わせて月額68,000円までと決まっているため、割合をどうするかは自分の状況によって決める必要があります。

公的年金の種類(国民年金)

国民年金とは原則日本に居住している20歳以上60歳未満のすべての人が被保険者となり、老齢や障害や死亡に対して給付を行っている公的年金です。国民年金設立当初は、被用者年金の被保険者以外の人を対象とする年金でしたが、1986年の年金制度の改正により、日本に居住している20歳以上60歳未満のすべての人が被保険者になりました。国民年金の給付の種類には、老齢基礎年金や障害基礎年金や遺族基礎年金がありますが、その他にも付加年金や寡婦年金や死亡一時金などがあるのです。

老齢基礎年金

老齢基礎年金とは、国民年金の加入者が所定の年齢に達した時に受給資格を満たしていた場合に支給される年金です。基本的に20歳から60歳までの40年間保険料をすべて払った人は、65歳から満額の老齢基礎年金が受け取れます。そして、現在の満額の老齢基礎年金額は、年額779,300円です。

老齢基礎年金の受給資格は、2017年8月1日までは保険料納付済期間と国民年金の保険料免除期を合算した資格期間が25年必要でした。しかし、法改正により資格期間が10年あれば、老齢基礎年金を受給できるようになったのです。そのため、今まで老齢基礎年金を受給できなかった人も、受けとれる可能性があるのです。

また、資格期間が10年未満の60歳以上の人であっても、70歳までの間であれば国民年金の任意加入制度により本人の申し出で保険料を払うことができます。そのため、任意加入により保険料を納付している間に資格期間が10年になった場合、老齢基礎年金を受給できるようになるのです。

障害基礎年金

障害基礎年金とは、一定程度の障害と判断された人に受給される国民年金です。受給要件は、国民年金に加入している人が、その加入期間中に初診日がある病気やけがなどによって障害の状態になった場合です。また、国民年金に加入したことのある人が、65歳から65歳までの間に初診日がある病気やけがなどによって障害の状態になった場合も受給要件になります。

さらに、20歳前の国民年金に未加入の時期に初診日のある病気やけがで、障害状態になった場合も対象です。そして、20歳前の障害を除き、初診日における保険料納付要件も勘案されます。そのため、保険料を一定の期間滞納している人は支給されません。

障害基礎年金は、障害認定日以降でないと請求することはできません。障害認定日とは、初診日から1年6ヵ月を経過した日、またはそれ以前に症状が確定した日のことをいいます。そして、障害認定日に1級または2級の障害状態と認定された場合に、障害基礎年金を受けとるのとができるのです。

現状の障害基礎年金の年金額は、1級が年額974,125円で、2級が779,300円です。また、障害基礎年金は、18歳到達年度末までの子か、20歳未満の障害等級1級か2級の子がいる場合に子の加算額があります。子の加算額は、2人目までは1人につき年額224,300円、3人目からは1人につき年額74,800円が加算されます。

遺族基礎年金

遺族基礎年金とは、国民年金の被保険者か、老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある人が死亡した場合に配偶者などに支給される国民年金です。ただし、死亡した人の保険料納付済期間が勘案されますので、一定期間保険料を滞納している人は支給されません。

受給対象者は、死亡した者によって生計を維持されていた子のある配偶者で、配偶者かいない場合は子です。ここでいう子の定義とは、18歳に到達する年度の3月31日を経過していないか、20歳未満で障害等級1級か2級の子になります。

現状の遺族基礎年金の年金額は、年額779,300円に子の加算額です。子の加算額は、2人目まで1人につき年額224,300円で、3人目からは1人につき年額74,800円になります。

公的年金の種類(厚生年金)

厚生年金とは、会社員や公務員を対象とした公的年金で、厚生年金に加入していれば自動的に国民年金にも加入していることになるのです。厚生年金は、国民年金の支給分に上乗せされる年金で、国民年金と同様に老齢や障害や死亡に対して給付が行われます。

厚生年金の保険料は、労使折半で給料から天引きされます。そして、厚生年金に加入して保険料を払っていれば、国民年金の保険料を別途支払う必要はありません。また、厚生年金に加入している期間も、自動的に国民年金に加入している期間となります。

老齢厚生年金

老齢厚生年金は、厚生年金の被保険者の期間がある人が老齢基礎年金の受給資格を満たした場合に、原則65歳から老齢基礎年金に上乗せされ支給されます。ただし、年齢によっては特別支給の老齢厚生年金として60歳から64歳の間に支給されるケースもあるのです。

特別支給の老齢厚生年金が対象となる年齢は、男性は1961年4月1日以前に生まれた人、女性は1966年4月1日以前に生まれた人です。それ以降に生まれた人は、特別支給の老齢厚生年金を受給することができません。

障害厚生年金

障害厚生年金は、厚生年金に加入している間に初診日がある病気やけがなどによって障害の状態になった場合に支給されます。障害厚生年金の障害認定日は、初診日から1年6ヵ月を経過した日、またはそれ以前に症状が確定した日で障害基礎年金と同様です。

障害厚生年金は、障害が1級、2級、3級の状態であれば請求することができます。障害基礎年金を請求できる障害状態は2級まででしたが、障害厚生年金は3級も請求できるのです。

遺族厚生年金

遺族厚生年金は、厚生年金の被保険者が死亡した時や、被保険者期間中の傷病が原因で初診日から5年以内に死亡したときや、老齢厚生年金を受け取っている人が死亡した時などに支給されます。受給対象者は、妻、18歳到達年度の年度末を経過していないか20歳未満で障害等級1級か2級の子や孫、55歳以上の夫、父母、祖父母です。妻が受給する遺族厚生年金は、条件によっては40歳から65歳になるまで加算される場合があります。(中高齢の加算)

公的年金の種類(共済年金)

共済年金とは、国家公務員や地方公務員や私立学校の教職員が加入する公的年金でしたが、2015年10月1日に廃止され厚生年金に一元化されたのです。共済年金には職域加算部分という厚生年金にはない上乗せ部分があり、職域年金として厚生年金よりも多い年金額が支給されていました。

さらに、保険料も厚生年金より低く設定されていたため、不公平ともいわれていました。しかし、共済年金の厚生年金への統合により、不公平は解消されたのです。

厚生年金への統合時に、退職共済年金や障害共済年金や遺族共済年金を受給している人は、受給する年金の名称や金額は変更されません。ただし、65歳未満の人で退職共済年金を受給していた人が、65歳以降からは名称が老齢厚生年金に変更されます。

そして、不公平の原因となっていた共済年金の職域加算部分における職域年金相当分は、2015年10月1日にすでに受給していた人で65歳未満だった人は、65歳以降からは旧職域加算退職給付(退職共済年金)として支給されます。また、2015年10月1日より前に1年以上の組合員期間があって2015年10月1日以降に厚生年金の受給権を得る人についても、職域年金相当分は旧職域加算退職給付(退職共済年金)として支給されるのです。

まとめ

2015年10月1日に共済年金が廃止され、現在では公的年金は国民年金と厚生年金の2種類があります。公的年金制度は、老後の生活や障害にや遺族にとってもとても重要な制度です。

しかし、公的年金だけでは老後の生活を賄えない人が多いのも現状です。そのため、場合によっては、私的年金などと組み合わせて老後を考えていかなけければいけないかもしれません。年金制度を知ることで長所や短所がわかりますし、将来に備えることもできますので、年金制度を知ることは大切なことなのです。

 

 

 

 

 

 

 

コメントを残す