元保険会社社員が教える。個人年金保険のメリットと銀行で加入するときに起こる落とし穴

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個人年金保険とは、毎月保険料を積み立てるか、一括で保険料を支払って、老後に備える保険商品です。最近は公的年金(国民年金、厚生年金、共済年金)の支給額の削減や、支給時期の繰り延べなどで、公的年金に対してイマイチ信用できないと考えている人は、とても多いと思います。

また企業年金と言われる、勤めている企業から年金を受け取れるものもあります。しかし昔は多くの企業で導入されていましたが、今は企業年金もどんどん少なくなってしまっています。

また企業年金があっても、昔は確定給付型と呼ばれる、あらかじめいくら将来受け取れるか決まっている年金でしたが、今は、確定拠出型と呼ばれる年金に変更になっており将来いくら受け取れるか決まっていないものになっています。

また世の中全体として、終身雇用が崩れてきており今は自助努力で老後に備える必要が非常に強くなってきています。自助努力として、個人年金保険で将来に備えている人は多いですし、これから個人年金保険を始めようという方も多いと思います。今回は個人年金保険に焦点を当てて説明していきたいと思います。

個人年金保険とは

個人年金保険とは、先ほども書きましたが、将来のためにお金を用意しておくための商品です。個人年金保険には、保険料の払い方に違いがあったり、あらかじめ金利の決まっている定額タイプ、金利が決まっていない変額タイプなど様々な特徴や商品があります。

この章では、個人年金の仕組みや特徴についてまとめていきたいと思います。

保険料の支払い方

まず保険料の支払い方ですが、一般的な個人年金の保険料の支払い方は、平準払いと呼ばれるものです。平準払いとは、毎月や半年ごと、毎年など定期的に保険料を支払う方法です。半年払いや毎年払いは、保険料の先払いになるので毎月の保険料よりも割引になケースが非常に多いです。

平準払い以外にも、一括で保険料を納めるタイプのものもあります。一括払いの個人年金保険は、銀行や証券会社がかなり力を入れている商品です。あとで詳しくお話しますが、全くおすすめ出来る商品ではないので注意してください。

選択出来る通貨

個人年金保険は、様々な通貨の商品を用意しています。一般的に取扱いの多い通貨は、日本円、米ドル、オーストラリアドルになります。それぞれの通貨には特徴があります。

日本円は、安定していますが、金利がものすごく低いのでほとんど殖えません。

米ドルは、為替の影響を受けますが、日本円に比べて金利が高いので、米ドルベースではしっかり増えます。しかし、米ドルを日本円に変えないと、日本で使うことが出来ないので、円に戻す時の為替レートが非常に重要になります。しかし、米ドルは今後、金利を引き上げる可能性があるので、しっかり米ドルベースでは増やすことが出来ると思います。

オ-ストラリアドルの商品も、米ドルと似ていて、金利は日本円の商品に比べると高いです。しかしやはり為替の変動があるので注意が必要です。為替の変動は、米ドルに比べて市場の流通量が少ないので動きが大きいです。オーストラリアドルも米ドル同様、今後金利が上がっていく可能性が高いのでオーストラリアドルベースではしっかり増やせると思います。

定額個人年金と変額個人年金の違い

個人年金保険の運用方法は、「定額個人年金」と、「変額個人年金」の2種類があります。

定額個人年金とは、あらかじめ金利が決まっており、将来いくらもらえるかが決まっている商品です。金利が高いときにはおすすめ出来る商品ですが、金利の低い今はあまりおすすめ出来ません。

一番安全の日本円の定額個人年金はほとんど殖えないですし、米ドルもオーストラリアドルも今後、金利を上げていく可能性が非常に高いので、今の金利で固定してしまうのはいかがなものかと思います。

金利が上がったり下がったりしたときに個人年金の金利も変えてくれる商品もありますので、そのタイプの商品であれば加入の検討をするのはいいかもしれません。

いずれにしても定額の個人年金の加入は、金利が高ぃときか金利が下がりそうな局面で加入することをおすすめします。

一方、変額個人年金保険ですが、変額個人年金とは金利が決まっていないタイプで、保険の保有期間の間、運用をします。投資信託や債券で運用しその運用成果によって受け取る金額が決まる商品です。最低限、保険料分は、運用がどんなにうまくいかなくても保証されるタイプのものが多いです。

変額タイプのものは運用成果によって大きく年金を増やすことが出来るのでアグレッシブに運用したい方にはおすすめです。

保険金の受け取り方

無事満期を迎えていざ年金をもらおうとなったときの年金の受け取り方ですが、いくつかのパターンを選ぶことが出来ます。一般的な受け取り方は、毎月受け取るタイプですが、公的年金が支給されない奇数月に個人年金を受け取る方法や年に一回受け取る方法など自身の生活スタイルに合った受け取り方法を選択してください。

また年金を原資に終身(一生涯)で年金をもらうか、決められた期間で年金を受け取りきるかも決めることが出来ます。終身受け取りだと、一回当たりの受け取れる金額が少なくなってしまうので、おすすめは期間を決めた受け取り方です。

一般的に多いのが5年確定年金, 10年確定年金, 15年確定年金になります。契約時に年金の受取方法を選択しますが、契約から受け取るまでで、ライフスタイルは様変わりしていると思います。年金支給前の4か月前くらいに受取方法を再度指定できますので安心してください。

個人年金保険のメリット

個人年金保険は、将来のために資金を用意しておく商品です。個人年金保険の主なメリットは3点あります。一つずつ詳しく説明していきます。

計画的に老後資金を貯めることが出来る

お金の管理があまりうまくない人にとっては大きなメリットになると思います。銀行の積立預金でも老後資金を貯めることは出来ますが、積立預金は、いつでも解約が出来るので、生活費が足りないと解約しがちになります。

しかし個人年金保険は解約出来ますが、途中解約だと、今まで支払った保険料を下回ってしまう可能性があります。せっかく積立てたものが減って返ってくるのは誰しも嫌なことです。個人年金保険は、積立預金に比べて解約しづらいのでしっかり将来に向けてお金を貯めやすいのです。

個人年金保険料控除が使える

生命保険には生命保険の種類によって保険料控除というものがあります。

  • 死亡保険→生命保険料控除、
  • 介護保険、医療保険→介護医療保険控除、
  • 個人年金保険→個人年金保険料控除

の対象となります。一定額を所得から控除できます。

会社員であれば年末調整で一定額の還付を受けることができます。しかしこの控除を受けるためにはいくつか注意点があります。後程の章でくわしく説明していきますが、特に銀行で個人年金保険に入るときには気を付けてください。

預金で貯めるより増える可能性が高い

個人年金保険は、 一般的に契約期間が長期に及ぶため、その分金利は、預貯金よりも良いことが多いです。

特に先ほど触れた、米ドル、オーストラリアドルで契約をすれば、円預金に比べ金利は圧倒的に高いです。金利が高い分リスクはありますが、大きく増える可能性があります。

外貨建ての個人年金保険は、為替の変動リスクがあります。しかし、個人年金は一般的には、毎月保険料を支払う契約が多いので、為替のリスクを分散することが出来ます。

具体的には、1ドル100円の時もありますし、1 ドル90円、1ドル110円の時も毎月ずっとドルに換えて保険に当て続けるので、平均購入為替レートが安定します。

しかも期間も長いのでより購入単価は安定するします。外貨建て個人年金保険は、ほとんどのケースでプラスになることが多いのです。預金で積み立てるより、個人年金での積み立てのほうが増えることが多いのは大きなメリットになると思います。

保険料の支払いにクレジットカードの利用が出来る

個人年金保険は保険料をクレジットカードで支払うことが出来る商品が多いです。クレジットカードで支払いが出来れば、みなさんご存知のようにポイントが貯まります。

還元率が1.0%のクレジットカードであれば毎月1万円、個人年金保険の保険料を支払っていたとすると年間12万円の保険料の支払いになりますので年間1,200円のポイントが付きます。

1,200円と聞くと大した金額ではないと思われるかもしれませんが、10年で12,000円になります。ちりも積もれば大きくなります。クレジットカードで保険料を支払えることも大きなメリットになります。

個人年金保険のデメリット

個人年金保険のデメリットはいくつかありますが、一番のデメリットは一括払いの個人年金に加入することです。

しかし、主な販売会社である銀行は、一括払いの個人年金保険を強烈におすすめしてきます。理由は、銀行が儲かるからです。銀行は、保険の販売を保険会社に委託されている代理店です。

保険会社の代理店にはランクがあり、銀行は最高ランクの代理店になります。代理店のランクによって保険会社が代理店に支払う手数料は変わります。一括払いの個人年金の商品にもよりますが、銀行は、保険会社から手数料が高いものだと10%近くの手数料を保険会社から受け取ります。

一般的に銀行で一時払いの個人年金保険を契約する場合、高額の保険契約が多いです。1億円の個人年金に加入する顧客もざらにいます。もし1億円の個人年金を販売した場合、銀行は手数料を最大10%もらえるので、1回の契約で1,000万円の収益になります。これだけ高額の手数料が入るので銀行は必死になって一括払いの個人年金保険を勧めてきます。

当然この手数料は顧客が負担するので、一括払いの個人年金の商品性は劣悪なものが多いです。

例えば購入時に手数料が5%かかったり、解約した時の手数料が最大10%かかるものもあります。また保険契約中のランニングコストも年間3~4%ほどかかるものも多いです。一括払いの個人年金の満期は10年間のものが多いので、10年持つと最大40%ものランニングコストがかかります。

一括払いの個人年金のデメリットはされだけではありません。

個人年金の保険料控除は、平準払いのものだと毎年使えますが、 一括払いのものだと満期が10年のものだとしても保険料を支払った最初の1年しか保険料の控除が効きません。

以上のように一括払いの個人年金保険はデメリットが多すぎるのでおすすめ出来ないです。

ここまで一括払いの個人年金をおすすめ出来ない理由を説明しました。ここからは、一般的な平準払いの個人年金保険の、デメリットについて、2点説明します。

金利が低いときに定額個人年金に加入した場合

定額個人年金は、契約した段階で受け取り金額が確定しますので、契約途中で世間の金利が上昇しても高い金利に切り替えることは出来ません。途中で解約をすると元本を下回ってしまう恐れがあるので、注意が必要です。今だと米ドル、オーストラリアドルの金利は上がりそうなので金利だけを見ると契約する時期としてはあまりよくないと思います。

途中解約した場合

契約の途中で個人年金保険を解約した場合、一般的な商品の場合、元本割れを起こすものがほとんどです。特に個人年金保険を契約した3年以内での解約は大きく元本が割れる可能性がありますので注意が必要です。解約しづらいのは老後に向けて資金を貯めるうえではメリットになりますが、どうしても解約をしなければいけない時は、大きなデメリットになってしまいます。

保険会社が破たんした場合

最近は、生命保険会社の破たんはないですが、90年代後半から00年代前半にかけて生命保険会社の破たんが相次ぎました。破たんした生命保険会社で保険契約をしていた契約者は当初の契約内容より不利な内容に変更になってしまった事例があるのです。今後も生命保険会社の破たんが絶対にないとは言い切れないのでもし個人年金保険を契約した生命保険会社が破たんしてしまった場合は大きなデメリットになってしまいます。

個人年金保険の契約形態の落とし穴

これは本当に注意が必要です。先ほどの個人年金の保険料控除を利用するには、必要な特約があります。

必要な特約は「個人年金保険料税制適格特約」というものです。この特約を付ける条件は、「年金の受取人は、被保険者と同一で、かつ、契約者またはその配偶者のいずれかであること」とあります。

分かりやすく言いかえると、契約者が夫で、被保険者も夫の場合は受取人は夫に限定されます。もう一つのパターンは、契約者が夫で被験者が妻の場合は受取人が妻に限定されます。

また、保険料の払込期間が10年以上であること、年金の支払開始は60歳以上で、かつ年金受給期間が10年以上であることも条件に含まれています。これは本当によく覚えておいてください。

特に銀行で個人年金保険を契約する際は要注意です。銀行の販売担当者の中には、どの契約形態でも個人年金の保険料控除を使えると思っている担当者がいるからです。実際に契約形態が違うために個人年金の保険料控除を受けられない人も出てきているようですのでこの知識はしっかり覚えておいてください。

おすすめの個人年金保険

ここまで個人年金についてまとめていきました、この章では実際に契約する時に、おすすめの個人年金保険を3つ紹介します。定額の外貨建てと円建ての商品、変額の個人年金保険を1つずつ紹介します。

外貨建て個人年金保険のおすすめ:マニュライフ生命:「こだわり個人年金(外貨建て)」

外貨建ての個人年金保険のおすすめは、マニュライフ生命の「こだわり個人年金(外貨建て)」です。通貨は米ドル、豪ドルの2種類から選ぶことが出来ます。

金利は毎月変動するタイプで、最低金利保証とういうものがあって、米ドル、豪ドルどちらも1.5%が最低保証になっています。2018年8月現在の金利は、米ドルで2.9%、豪ドルで2.5%となっています。

今後アメリカオーストラリアともに金利が上がっていく可能性が高いので毎月金利が変動するこの商品はおすすめです。

円建て個人年金保険のおすすめ:日本生命「未来のカタチ」

日本生命の個人年金保険「未来のカタチ」は30~60歳まで積立てた場合の解約返戻率は約106%です。決して高い利率ではないですが、今の日本の円預金の金利と比較すると検討の余地はあると思います。円建てなので為替の変動リスクがないので、円建ての個人年金保険はあまりおすすめしませんが、為替にどうしても抵抗感がある方には、おすすめです。

変額個人年金保険のおすすめ:ソニー生命「変額個人年金保険」

変額個人年金保険を平準払いで購入出来るものは少ない中、ソニー生命の変額個人年金保険はおすすめ出来ます。最低保証はないですが積極的に運用したい方向けの商品になっています。

まとめ

今回は、個人年金保険についてまとめていきました。個人年金の仕組みやメリット、デメリットを中心に説明させて頂きました。個人年金保険は、現在の公的年金制度の不安定さを考えて、ぜひ加入することをおすすめ出来る保険です。公的年金が完全になくなることはありませんがこれからは自助努力が必要な時代になっています。個人年金保険を皮切りに将来の資金設計をしっかりたてていきましょう!

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