外国人観光客が減っている?インバウンド関連株に暗雲?これからのインバウンド事情予測

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日本に来る観光客が減っている?

インバウンドとは、外国人が日本に来て旅行する事を指しており、東アジアを中心的に近年インバウンドは増加の傾向にあります。また、中国からの観光客は購買意欲が高いことが特徴的で、日本の家電製品・化粧品・医薬品などを大量に購入する姿は「爆買い」という言葉を生みました。

このようなインバウンドの増加は、様々な業界で良い影響をもたらしており、インバウンドの増加・減少によって影響されるような株式をインバウンド関連株と表記する事もあります。政府も、積極的にインバウンド推進を行っており、一例として外国人向けのTax Free(免税店)が日々増えている事を、大阪や東京にいると実感する事が可能です。

しかし、インバウンドの増加に若干の暗雲が発生しているという見方もあり、インバウンド関連株が大きく下落するという現象も見られるようになってきました。

なので、この記事では「インバウンドと関連株」という点をご紹介させて頂き、「これまでのインバウンド・これからのインバウンド」などについて予想していきたいと思います。

インバウンドの基本的な事について押さえる

この記事では、インバウンドの関連株・ビジネス・将来的なインバウンド予想などについてご紹介させて頂きますが、しっかりと理解するためにも、インバウンドの基本的なことについて押さえておきましょう。

これまでのインバウンドについては、後にもっと詳しく触れますが、日本の観光事情について少しご紹介しておきたいと思います。この点について抑えておくことで、なぜインバウンドが話題になっているのか?注目されているのか?が理解出来ます。

もともと、日本のインバウンドはそれほど多くありませんでした。

インバウンドとは訪日外国人観光客の事を指しており、インバウンドと言えば「外国人」を想像します。しかし、インバウンドの逆である「アウトバウンド」という言葉についてご存知ですか?アウトバウンドというのは、インバウンドの逆で「外国に行く日本人」を指しています。

これまで日本では「インバウンド」の割合よりも「アウトバウンド」の方が多く、日本人が海外で消費するため海外にお金が出ていってしまっている状況だったのです。(旅行業において)

理由としては様々な要因が考えられますが、日本がそれほど注目される存在ではなかったという意見もあります。しかし、侍や忍者という日本特有のイメージは昔から海外に存在しますし、その中で日本の文化に興味が湧いたという人も少なくなかったはずです。

しかし、日本はこれまで「観光しにくい国」と認識されていた事が、これまでインバウンドの数が増えなかった大きな要因と言われています。例えば「英語が通じない」「物価が高い」「外国人に排他的」というイメージが強かったのです。

ヨーロッパには昔ながらの建造物がたくさん存在しており、フランスやイタリアなどの昔ながらの風景が観光地になっているというケースは少なくありません。そのため、パリは世界でも代表的な観光地になっており、たくさんのインバウンドを抱え込む事に成功しています。

ただ、そのような建造物・観光地が存在し、京都・奈良にある寺・神社などの昔からの建造物を拝見出来るのは、日本も同様であり上記したような「観光しにくい国」というイメージを払拭できれば、日本も大きなインバウンドが見込めると考えられていました。

そこで、2008年に発足されたのが「観光庁」です。観光庁が発足されて以来、訪日に際しての規制緩和や免税店の導入などを進め、積極的にインバウンドの抱え込みを行いました。その効果があってか日本のインバウンドは2013々~2014年あたりから大きな上昇を見せ始め、現在でも成長分野として注目されています。

現在のインバウンド事情

直近2018年6月は「約270万人」の外国人が日本訪れたというデータが出ているようです。

インバウンドの増加が目立ち始めた2014年では、多い月でも「120万人」程度だったので、着実に成長しているのは確かです。しかし、2018年4月のインバウンドは「約290万人」だったので、6月と4月と比べると20万人ほど減少したと言えます。

もちろん、一過性のものという見方はありますが、減少していることは確かであり、インバウンド向けビジネスや関連株は敏感に影響を受けてしまっているようです。

インバウンド株は下落を続けている

先程、インバウンドの数が一時的ではありますが、減少している事をご紹介させて頂きました。この現象に反応しインバウンド関連株は下落をしています。これから、インバウンドとインバウンドビジネス・関連株の相関性についてご紹介していきます。

インバウンド関連株の下落

直近のデータでご紹介した通り、日本のインバウンドは一時的に減少しています。

要因はいくつか考えられますが、大阪北部地震があった事で取り敢えず様子を見ようという外国人観光客が増えた事や豪雨などが影響しているようです。

もちろん、インバウンドが減少してしまうと、それに関連する事業や株は大きな影響を受けてしまうと言えるでしょう。インバウンドに大きく影響される業種・業界は以下のものが挙げられます。

  • 旅行代理店などの旅行業
  • 百貨店などの小売業
  • 家電・化粧品等メーカー
  • ホテル等の宿泊業
  • 飛行機・バス・タクシー・電車などの交通系

上記のような業種にインバウンドの増減は影響を与えます。また、最も影響を受けやすく・最も目に見て分かりやすいのは「株価」だと言えるでしょう。インバウンドに関連するような事業を行っている企業の株価は、インバウンドの増減によって大きく上下します。

今回、インバウンドが減少した事によって、インバウンド関連の小売・化粧品メーカー等は「1%~10%」程度下落しました。暴落とは言えませんが、決して小さな下落とも言えない数字だと思います。

株式は基本的に業績が良い所や、今現在業績が悪くても将来性のあるような企業の株価が上がる傾向にあります。インバウンドに関しても、成長分野である事から注目されており、関連株の株価がインバウンド増加以前と比較した際に、インバウンドの影響で大きく上昇したケースも少なくありません。

ただ、注目度が高い分ネガティブな情報が流れると影響されやすいようで、今回の下落もインバウンドの減少という情報に対して市場がネガティブに反応したものと見られています。今回の下落は一時的なものと見られていますが、インバウンドの減少が続くようなら、これから大きな下落も考えられるでしょう

これまでのインバウンド

先程、インバウンド関連株の下落やその要因などについてご紹介させて頂きました。今回の下落は一時的なものだと見られていますが、気になるのは「インバウンド関連株は買いなのか?」「インバウンドビジネスはこれからも成長するのか?」という点だと思います。

なので、この記事ではこれからのインバウンド予想についてご紹介させて頂きます。しかし、これからの予想をするにはこれまでの経緯について理解する事が不可欠なので、これから日本とインバウンドのこれまでについて詳しく解説していきます。

東アジアの成長が大きい?

日本に観光しに来た観光客で、最も多くの人が訪れている国ランキングは以下の3つです。

  • 1位 中国
  • 2位 韓国
  • 3位 台湾

上記のランキングで既にお気づきかもしれませんが、すべて東アジアの国だと言うと事が分かります。中国や韓国、台湾と言った国が先進国・発展途上国のどちらなのか?という点については、たくさんの意見や議論がありますが、少なくとも大きな経済力を持っている国であるのには変わりないでしょう(特に中国・韓国)。

ここで考えられるのは、これまでのインバウンドの増加は周辺国の経済力が大きくなったから、という点が考えられると思います。流行語大賞にノミネートされた「爆買い」という言葉は、中国人観光客が大量の日本製の製品を購入している様子を表した言葉であり、中国人の経済力を表していると言えます。

また、近年アジアで最も大きなGDPを誇っている中国で、中流層が増えていると言われています。以前までは、中国は貧富の差が激しく、格差の大きな社会だと思われていました。もちろん、今現在でもそのような状況は存在しますが、以前と比べて中流層が増えた事も事実です。

そのため、そのような中流層が安定した経済力を背景に、日本に観光に来ているという影響も大きいという見方もあります。このような経済的な部分がインバウンド増加に影響した事も事実ですが、それをすべて要因にするのは少し早計だと思います。

渡航しやすい国になった日本

周辺国の経済力が挙がった事がインバウンド増加の要因の一つであったとご紹介させて頂きましたが、もう一つインバウンド増加を誘発したのが「ビザの緩和」です。

インバウンドが増加し始めた2013年~2015年に、これまでビザの条件が厳しかったような国の積極的な緩和が行われました。具体的には、日本に観光客として来日し大きな経済的な効果をもたらす可能性のある国が対象であり、以下のような国が挙げられます。

  • タイ
  • フィリピン
  • マレーシア
  • ベトナム
  • カンボジア
  • ラオス
  • インドネシア
  • 中国
  • モンゴル
  • カタール
  • ロシア

上記のような国が対象でビザの緩和が行われ、主に東南アジア・東アジアなどを対象に行われている事が分かります。やはり、この中でも最も大きな効果を与えたのが、中国人へのビザ緩和だと思います。

現在でも、中国人観光客の数はインバウンドの大きな割合を占めますし、大きな買い物をしていく事も多いのでいかに日本に大きな経済的な効果をもたらしているのか?は一目瞭然です。

これからのインバウンド

先程、これまでのインバウンド事情についてご紹介させて頂きました。これまでは中国からのインバウンドが大きくなりがちでしたが、徐々に経済発展続ける新興国からのインバウンドや外国人観光客がどこにお金を使うのか?についても変化が見られるようです。

なので、これからのインバウンドを現状から予想し、日本経済の1つの節目だと考えられている「2020年東京オリピック」以降のインバウンド事情などを予測していきたいと思います。

飲食・娯楽が伸びる?変化が現れている消費傾向

インバウンドの増減によって株価が左右される銘柄は「小売」「交通」「宿泊」「旅行業」「メーカー」などの事業を行っている企業の株価でした。しかし、近年外国人観光客の消費傾向に変化が見られ、それに伴ってインバウンド事情によって株価が上下する銘柄が変化する可能性があります。

これまでのインバウンドでは中国を中心とした外国人観光客が、日本の化粧品、家電製品を大量に購入していくというイメージが強い方が多いと思います。もちろん、現在もそのような状況が変化している訳ではありませんが、徐々に「飲食・娯楽」などに消費傾向が向き始めています。

経済産業省が発表したデータによると

経済産業省

上記が2018年上半期に外国人観光客が消費した分野に関するデータです。上記のデータを見ると、買い物代(メーカー、小売)・交通費・宿泊料金(宿泊業)などこれまで、日本に来ていた外国人観光客が消費していた対象が減少している事が分かります。

一方で、対照的に消費額を順調に伸ばしているのは「飲食」と「娯楽」という分野なのです。ここから見えてくるのは「外国人観光客の楽しみ方が変わった」という点です。これまで、日本の品質のよい電化製品や薬品、化粧品などを、大量に購入して帰国するというのが主な楽しみ方でした。

買い物代は依然として最も大きな消費対象ではありますが、よく見ると「飲食」と「買い物」の消費の差が小さくなっている事が分かります。日本に来る目的が「買い物ツアー」だったのに対して、徐々に「娯楽」「食事」などの「文化を楽しむための旅行」に変化していると言えるのでは無いでしょうか?

ここから考察できるのは、これから外国人観光客が魅力的に感じる「飲食業界」「エンタメ系」の業界が伸びる可能性があると言えるでしょう。

2020年以降は新興国に注目?

様々なメディアで、日本の経済は「2020年オリンピック」が節目になるという意見を目にする機会が多いと思います。この点はインバウンド関連の業界にも同じような事が言え、オリンピックからインバウンド事情が大きく変化する可能性は高いでしょう。

シドニーオリンピック(200年)、アテネオリンピック(2004)、ロンドンオリピック(2012)など、過去のオリンピックの事例を見るとオリンピック後に外国人観光客の数が増えたという現象が発生しています。

日本のインバウンドはリピート率が高ので、一度オリンピックをきっかけに日本を訪れて貰えると、リピーターによって2020年以降もインバウンドが増えていく可能性が高いでしょう。また、インバウンドの数が増えると同時に「インバウンドの客層」についても、変化が訪れる可能性があります。

オリンピックをきっかけに日本という国に対して理解が広まる事で、これまで遠い・物価が高いなどの理由でインバウンドの数が少なかった欧米からのインバウンドが増える事はもちろんですが、経済発展によりアジアの「新興国」からのインバウンドが期待できると思います。

事実、TripAdvisorという旅行の口コミを書き込める・閲覧できるサイトで、日本に関連する情報にアクセスした国で、ビザ緩和後に上昇が見られたのは「フィリピン」「ベトナム」「ベトナム」などの国で、新興国からの日本の注目度が高くなっている事が分かります

新興国には「スーパーリッチ(超富裕層)」と言われる大金持ちが、ITなどの発展・格差の大きさから沢山発生していくと見られています。しかし、現在日本には「一泊・数百万円」のような超富裕層向けのホテルや施設が少なく、超富裕層にとっては旅行しにくい国になっていると言えるでしょう。

IR開発などに伴ったカジノに関しても、大金持ちに大きなお金を落としてもらうというビジネスモデルなので、どうやって「大金持ちに日本を楽しんでもらうのか?」かが、日本のインバウンド事情をこれから左右する要素かもしれません。

何れにせよ、日本のインバウンド事情はこれからも成長していく可能性が高く、自然災害が多い日本なので一時的な減少などは度々起こるかもしれませんが、これからもインバウンドというのが日本経済の重要な柱の1つになる可能性は高いと言えるでしょう。

まとめ

日本に来る観光客は減っているのか?

  • 日本は観光しにくいイメージがあった
  • 現状は一時期的に減少

インバウンド株は下落を続けている

  • インバウンド減少にともなって、関連株も減少
  • インバウンドに関連する銘柄は影響を受けやすい

これまでのインバウンド

  • インバウンドの増加は東アジアが大きな存在だった
  • 渡航しやすい国になった事も理由の1つ

これからのインバウンド

  • 買い物から文化に移る消費傾向
  • 新興国を抱え込めるかが鍵

この記事では、現状のインバウンド減少やそれにも伴うインバウンド関連株の下落、インバウンド予想などについてご紹介させて頂きました。様々なデータや予測などを元にインバウンドについて解説させて頂きましたが、インバウンド成長への本質的な課題は「日本という国のファン」を作り出す事だと思います。

日本のアニメや漫画、古くからの文化・建造物には既に沢山のファンが存在しており、海外に行けば「Sushi Restaurant」という飲食店はどこでも拝見する事が可能です。既に日本は魅力的な国だと思うので、日本の魅力的な文化・伝統を守り、広げていくことがインバウンド成長にも繋がると思います。

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