元保険会社社員が教える「手数料から見る正しい生命保険の選び方」

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保険と聞いて皆さん、どんなイメージを持たれるでしょうか。何かあった時のために必要なもの。お守りのようなものと思っている人もいるかもしれません。

日本人の8割が入っている保険。なぜ皆さんは保険に入っているのでしょう。みんな入っているからという人も多いでしょう。新入社員の時に、生命保険会社のセールスレディから言われるがまま入った保険がそのままになっている人も、多いはずです。

ここではそもそも保険ってどういうものなのかということから保険会社や販売会社が受け取る手数料について詳しく説明し、正しい保険の選び方について説明していきたいと思います。

そもそも保険ってどんなもの?

日本人の8割が加入していると言われている保険ですが、正しく理解している人はどのくらいいるのでしょうか。まずは保険商品の選び方の前に、保険とはどんなものなのかの説明をしたいと思います。

保険とよく比べられるのは、貯蓄です。貯蓄と、保険の違いとは何でしょうか。まず貯蓄は、解約すれば、その時貯めた金額だけが戻ってきます。(当たり前ですいません。)

一方保険は、万が一の時には、その時までに払い込んだ保険料に関係なく一定の保険金を受け取ることが出来るものです。

例えば、1,000万円の保険金の生命保険に加入してる場合、保険料を支払ったのが1回でも、100回でも関係なく万が一のことがあったら1,000万円の保険金を受け取れるのです。

保険とは、少ない掛け金で大きな保障を得られるものなのです。保険の基本的な考え方はこれにつきます。小難しく色々書いてあることもありますが、少ない掛け金で大きな保障を得られるものと覚えておけば問題ありません。

保険には、死亡保険、医療保険、個人年金保険、子供保険などがあります。

次の章から各商品について保険会社の手数料の観点も交えながら説明していきます。

死亡保障とは

死亡保障とは、保険の対象者に万が一のことがあった時に、保険金が下りるもののことを言います。死亡保障は、保険の中で一番大切なものになります。家族の大黒柱に万が一のことがあったら生活は一気に崩れます。死亡保障は、それを補うものになるので非常に大切です。

しかし、保険会社にとっては最も収益が取れるものになるので商品選びには注意が必要です。

終身保険と定期保険

死亡保障には、終身保険と定期保険というものがあります。皆さんも名前を聞いたことはあるかもしれませんが、頭の整理の意味でも説明していきます。

終身保険

  • 満期は一生涯(終身)なので、一生涯にわたる死亡保障の準備が可能
  • 保険料は一定
  • 保険料は定期保険に比べると割高
  • 万が一の時にはまとまった資金(保険金)を一括して受け取れる
  • 解約返戻金が少しづつ増えていくので、貯蓄性も備えている

定期保険(全期型)

  • 一定期間(10年満期や20年満期が一般的です。)の死亡保障の準備が可能
  • 保険料は一定
  • 保険料は終身保険に比べると割安
  • 解約返戻金は、保険期間満了時にはゼロになってしまう

定期保険(更新型)

  • 一定期間の死亡保障の準備が可能
  • 10年などの保険期間で保険料を更新していくタイプの保険
  • 保険の更新時には、更新時の年齢・保険料率で保険料が再計算される
  • 更新ごとに保険料は高くなる
  • 保険料は終身保険に比べると割安
  • 解約返戻金は、保険期間満了時にはゼロになってしまう

一見すると終身保険が良いように見えますが保険料は、定期保険に比べると割高です。定期保険は終身保険に比べると割安なので、手厚い保証が必要な時期などは終身保険と定期保険を組み合わせてプランを組むことが必要です。

しかし定期保険は、保険会社にとっては最も儲かる保険です。何故なら日本人の平均寿命はどんどん延びており、なかなか死なないのです。働き盛りの50代でさえ 死亡率は5%を切ります。

定期保険は、被保険者(保険の対象者)が亡くならない限り、保険会社はお金を出さなくていいので保険料は丸々もうけになります。しかも定期保険は解約返戻金がほとんどないので保険会社にとってはもっともおいしい商品なのです。

極力、終身保険中心にプランをたてて、保障が足りない部分だけ定期保険を使うというスタンスが一番良いと思います。

死亡保障選びのポイント

では一体いくらくらいの保障が必要になるのでしょうか。これは各自によって全然違うので、ここでは死亡保障を決める際のポイントについて説明します。

生命保険を選ぶ際に重要なのが目的・金額・期間です。目的、金額、期間の観点から死亡保険について考えてみるのが、良いと思います。

目的(何のために)

  • 遺された家族の毎月の生活費
  • 子供の教育費
  • 被保険者の葬儀費用やお墓代など

金額

  • 遺された家族の生活費から遺族年金(のちほど説明します)などを差し引いて必要な保険額を決定する

期間(いつまで)

  • 子供が自立するまでなど、家族構成や生活設計に合わせていつまで保障が必要か、一定の期間は特に手厚い保障が必要なのかということを考える

以上のように、目的、金額、期間を中心に死亡保険を考えていくのが良いかと思います。しかしなんの指針もないと考えづらいと思いますのでいくつか参考になるであろうものを提示していきます。

遺族年金

世帯主に、万が一のことがあった場合に遺族年金を遺された家族は受け取れます。遺族年金の金額は会社員・公務員と自営業で違うのでよく知っておいてください。

  1. 会社員・公務員世帯(遺族基礎年金+遺族厚生年金)
  • 18歳未満の子が3人の期間 15.5万円
  • 18歳未満の子が2人の期間 14.9万円
  • 18歳未満の子が1人の期間 13.0万円

18歳未満の子がいないとき

  • 妻が40歳までの間     4.6万円
  • 妻が65歳までの間     9.5万円
  • 妻が65歳以後       11.1万円

2.自営業世帯

  • 18歳未満の子が3人の期間 10.8万円
  • 18歳未満の子が2人の期間 10.2万円
  • 18歳未満の子が1人の期間   8.3万円

18歳未満の子がいないとき

  • 妻が40歳までの間       なし
  • 妻が65歳までの間       なし
  • 妻が65歳以後        6.5万円

葬儀にかかる費用

被保険者が亡くなった時の、葬儀費用ですが葬儀一式の費用や寺院の費用、通夜からの飲食費などすべて込みこみで約196万円にも上るようです。

子供の教育費にかかる費用

教育費ですが、後の章で子供保険の項目があるのでそこで詳しく説明しますが、公立、私立で大きく金額は変わってきます。

幼稚園から大学まですべて公立の場合は約1,000万円の学費になります。一方、幼稚園から、大学まですべて私立だった場合、学費は約2,500万円になります。

生命保険を組む際は、教育費も考慮することが大切です。

以上のように生命保険を組む際は、遺族年金、葬儀費用、子供の教育費を考慮することが非常に大切になります。

また定期保険の保険料の6割~7割は保険会社や販売会社の銀行などの手数料になるので極力貯蓄性の高い終身保険を中心にプランを組みましょう。

しかし子供の成長によって手厚い保証が必要な時期もあります。そのような時期は定期保険で補うプランが良いかと思います。

医療保障

次に、最近の保険の中心に位置づけられている医療保障について詳しく説明します。

まず医療保障ですが世間では過剰なまでに医療保険の必要性が叫ばれています。しかし本当に必要なのは先ほど説明した死亡保障です。まずは死亡保障をしっかり準備したうえで医療保障を検討しましょう。

医療保険は大きく「医療保険」と「がん保険」に分けることが出来ます。それぞれの保険の特徴を簡単に説明します。

医療保険は、原則すべての病気、けがで入院した場合、保険金が出ます。よくテレビでやっている1日の入院当たり1万円出ます。といった感じです。その他、手術をした場合にも保険金が出るタイプの医療保険は多いです。しかし実際に、医療保険を請求している人は2割から3割くらいなので医療保険は、保険会社が儲かる保険になっています。

がん保険は、がんと診断され入院した場合でないと保険金は支給されません。医療保険に比べて、病気の範囲ががんのみと狭いので、保険料対比保険金はたくさん出る商品が多いです。またがんと診断されたら保険金が出るものやがんの手術をしたときにも保険金が下りるのが一般的になっています。

それでは、医療保険、がん保険に入るかどうかの説明をするにあたって非常に重要なのが公的医療制度がどうなっているかしっかり知ることです。ここで公的医療制度の代表格である高額療養費制度について説明していきます。

高額療養費制度とは

高額療養費制度とは、1か月(同一月内)に一定額以上の自己負担額が発生した場合は、高額療養費として国から給付を受けることが出来ます。

つまり一定額の以上の負担は、国がしっかりカバーしてくれる制度になります。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html

では、高額療養費制度でカバーされないものはどんなものでしょうか。

  • 差額ベッド代(希望して個室等に入院した場合)
  • 入院時の食事代等の一部負担
  • 先進医療の技術料
  • 交通費や入院に際しての日用品代

などが高額療養費制度の対象外になっています。

つまり一定額以上の治療費は、差額ベッド代などを除いて国が補填してくれます。もし医療保険を加入するならこのことをよく把握してから加入しましょう。

また国以外にも、お勤めの会社も一般的には社員が入院した場合、なんかしらの福利厚生があると思うのでこちらも良く確認しましょう。

差額ベッド代などがなければ極端な話、医療保険に入らなくてもいいのではないかという方がいると思います。私もそう思います。しかし私は最低限の保険料を支払って医療保険に入っています。理由は、次の項目でお話する先進医療のためです。

先進医療について

先進医療とは、公的医療保険適用前の最新の診断・治療のことを言います。要は公的保険が使えない最先端の治療のことを言います。重粒子線や陽粒子線治療など、一般の保険診療レベルを超える最新の医療技術のうち、厚生労働大臣が定める治療法です。

技術ごとに定められた適応症(がんや白内障など)に対し施設基準に適合する医療機関にて行われるものに限られます。先進医療の治療は、今までの技術に比べて体の負担が少なく完治する可能性も高い優れものです。しかし費用がすごく高いのです。

例えばがんの治療で使われる先進医療の重粒子線治療は、放射線の一種である重粒子線を体外から照射する治療法で、重粒子線は通常の放射線と比べがんを殺傷する力が2~3倍強く、がん細胞を狙いうちで照射出来る治療方法です。いいことづくめの治療法ですが費用は300万円を超えます。

先進医療は、効果が高いですが費用が高いことが問題です。しかし医療保険の特約に先進医療を保障するものがあり、毎月100円以下の保険料で1,000万円から2,000万円の先進医療保障が付いていることが一般的です。

先進医療目的で、最低限の医療保険に入っておく意味はあると思います。以上のように高額療養費制度や先進医療のことを考えると最低限の医療保険で十分なのではないかと個人的には思います。

老後保障

老後保障を保険で補うときに保険で中心になるのが「個人年金保険」です。個人年金とは、保険料を一括で払うものと毎月や年間など分割して支払うものがあります。公的年金があてにならない状況なので、老後のために自分で資金を用意しておく必要があります。では具体的に、公的年金で補えない分はいくらくらいなのでしょうか?

65歳から受け取れる公的年金ですが会社員と専業主婦の夫婦の場合、65歳から毎月約22.1万円受け取れます。しかし夫婦でゆとりある老後に必要と考える生活費は、月額34.9万円というデータがあります。(公共財団法人 生命保険文化センター「平成28年度 生活保障に関する調査」)

ゆとりある生活に必要な34.9万円から公的年金の22.1万円を差し引くと不足額は毎月12.8万円になります。この金額を若い内から用意しておく必要があるのです。

個人年金保険

ゆとりある老後を送るために、現役世代からしっかり準備することが大切です。老後保障というと個人年金保険を思い浮かべる人が多いと思います。しかし結論から言うと、円建ての商品は「現在の」の金利情勢ではおすすめできません。30年前くらいは固定金利で年間4~5%ついたものがあったので個人年金保険に加入する意味はありました。

しかし現在の円建ての個人年金保険の金利は0.5%もつかない水準です。この金利では、個人年金保険に入る意味は薄くなってしまいます。もちろん預金金利よりはメリットはあります。しかし金利が低すぎるのです。保険会社にとっても、円建ての個人年金は儲からない商品なのであまり勧めてくることはないと思います。では老後資金はどのように準備するのが良いのでしょうか?

おすすめの老後資金準備方法

おすすめの老後資金準備方法は、先ほどまとめた貯蓄型の終身保険を利用する方法です。貯蓄型の終身保険は、万が一のことがあった時にしっかり備えることが出来ます。そして一定期間保有すれば解約返戻金が増えて戻ってくるので、この解約返戻金を老後資金に充てることをおすすめします。

一般的に、生命保険は現役世代の時は大きな保障が必要ですが、老後になれば生命保険の金額は、少額で問題ありません。葬式代があれば十分です。終身保険の解約返戻金を老後資金に充てる方法は非常に、理にかなっている方法になります。

子供の保障

子供の教育費の準備のためにおすすめなのが、学資保険です。まず子供の教育費ですが、幼稚園から大学まですべて国公立でも1,007万円、幼稚園から大学まですべて私立の場合は、2.465万円かかります。(大学は文系として仮定。私立大学(文系)695万円、私立大学(理系)879万円)

教育費をしっかり準備するために、学資保険を利用することはおすすめです。しかし学資保険をチョイスするにあたってもいくつか注意点があります。

学資保険の注意点

  • 満期金が、保険料の100%を割ってしまう商品があること。
  • 学資保険を「エサ」に他の商品の契約を勧めてくるケースがあること。

保険料の100%を下回ってしまう商品は入らないほうがいいです。学資保険は契約者の被保険者(両親)に万が一のことがあってもレバレッジの効いた保険金は出ません。保険料の支払いを免除されるだけです。保険料の支払いの免除は確かに保険の機能ですが、大したメリットもありません。満期金が100%を超えるものをしっかり選びましょう。

学資保険の商品性はすごくいいものも多いです。満期金の返戻率が120%を越えるものもあります。このような商品性のいい商品は、保険会社にとってほとんど利益になりません。よって保険会社は学資保険を「エサ」に顧客との商談に持ち込み利益率の高い商品をセットで進めてくることがありますので注意してください。

生命保険料控除

生命保険料控除とは、所得控除の1つです。保険料に応じて、一定の金額が契約者の、その年の所得から引かれる制度になります。税率を掛ける前の所得が低くなることにより、所得税と住民税の負担が軽減されます。

生命保険料控除の種類

生命保険料控除には3種類の控除があります。

一般生命保険料控除

生存や死亡に基因して、一定額の保険金等が支払われる保険に適用される控除。

【所得控除限度額】所得税:4万円/住民税:2.8万円

介護医療保険料控除

入院・通院等にともない、給付金出るタイプの保険に適用される控除。

【所得控除限度額】所得税:4万円/住民税:2.8万円

 個人年金保険料控除

個人年金保険料税制適格特約に付加されたもの

【所得控除限度額】所得税:4万円/住民税:2.8万円

生命保険料控除は、会社員の方は年末調整の時に、保険会社から発行される控除証明書を添えて申告するだけです。自営業の方は、確定申告が必要になります。手続き自体は非常に簡単ですし、毎年お金が戻ってくるのでしっかり手続きや申告をしましょう。

まとめ

生命保険の仕組みや、保険の種類についてまとめていきました。保険には、様々な種類がありメリットもデメリットもあります。この記事を是非参考にして頂き、現在加入している保険の見直しや、今後保険に入るときの参考にしてみてください。

 

 

 

 

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