目次
あのコンビニ大手のローソンが2018年10月15日に「ローソン銀行」のサービスを開始することになりました。
出典:日本経済新聞
現在、セブン-イレブン系列で運営されている「セブン銀行」の知名度と業績が顕著ですが、その後を行くかたちでこの度ローソン銀行開業へとなったものです。
また銀行としては旧来からの店舗を構えたものやネット銀行など、現在でも数多くの銀行が存在しています。また、人工知能による銀行業務の効率化や仮想通貨の登場により、銀行業そのものの在り方が見直されつつある時です。
そういった状況の中で、ローソン銀行に多くの人から支持される理由はあるのか?また、私たちがどういったメリットを得られる可能性があるのか?といった内容をご紹介していきます。
なぜローソンは銀行を立ち上げるのか?
まず、ローソンが銀行業を始めることとなった直接的なキッカケは、2014年に株式会社ローソンの会長が交代したことでした。
それまでの会長の意向としては、セブン銀行などがすでに存在している中で、コンビニの差別化をはかりたいというものであり、銀行業への参入に前向きではありませんでした。
現在、小売りが本業の銀行としては、セブン銀行、イオン銀行といった先駆者たちが存在しています。本業の性質上、地域社会との関わりが大きく、その性質を活かした事業展開が特徴です。
ローソン銀行においても、13,000以上ある既存店舗や設置されているATMの活用を通じ地域に密着したサービスや、地銀との緊密な連携に大きな狙い目があるのではとも言われています。
ローソン側のメリット
ローソンが独自に銀行業を始めるメリットとしては、他行との共同利用となっている現在のATMのシステムをローソン独自のものに切り替えられることです。
ローソンが独自にシステムを用意するようになりますと、ATM手数料の収益アップが可能となることや、現行のシステムではできないオリジナルなサービスを展開することもできるようになります。
セブン銀行の場合、その独自のATMシステムは、提携銀行から得られる手数料収入が今のローソンと比べ6~7倍高く、ローソンとしてもこれはぜひうちでもやってみたいといったところではないのでしょうか。
出典:東洋経済ONLINE
また、地域にある金融機関とのより強固なつながりを持つことで、今後ローソン銀行が独自の金融サービスを提供する際、多くの顧客の流入が見込めるといったこともメリットとして挙げられます。
「マチの健康ステーション(以前は「ほっとステーション」)」といったポリシー・戦略から、地域社会へ積極的に意識を働きかけることはローソンとしては自然な姿であり、今回同じ流れを金融の分野で果たそうということになります。
出典:ローソン
考えられる利用者のメリット
提供サービスの現状
まず、ローソンは現在店内に設置されている「Loppi」という端末を使って様々な商品の販売やサービスの提供を行っています。
この店内端末はセブン-イレブンやファミリーマートなど他のコンビニにも同じように設置されています。
Loppiで提供している商品・サービス等(一部抜粋)
- Loppi限定アイテム付映画チケット
- 限定グッズ付DVDやブルーレイ
- 特典付きゲームソフト
- CDなどの事前予約者限定特典
- スポーツくじ(toto・BIG)の購入
- ローソンで使えるクーポン券・引換券
- 中古CD/DVD/本などの買取り
- ネットオークション、フリマの商品発送
- ネットショッピングの商品代金支払い・受取り
- 航空券・高速バスチケットの支払い など
(Loppi端末)
出典:ローソン
また、ローソンはキャンペーンも盛んに行っており、独自の店内イベントはもちろん、ポンタポイントやドコモのdポイントを介したポイントサービスや期間限定イベントにも力を入れています。
出典:ローソン
考えられるサービス
例えば、ローソンでの一般商品購入の際に「ローソン銀行カード」(推測上のカード)といったものを提示の上で支払うと特典がもらえたり、同行預金者限定のレアグッズの販売やプレゼント、他の優遇イベントの提供などが考えられます。
また、フィンテック(金融とITの融合)を反映させたサービスも容易に想像されます。
楽天銀行の例を挙げますと、Rポイント(楽天ポイント)を振込の際の手数料として使うことができたり、口座への入金に対してRポイントを付与するなどのサービス(ハッピープログラム)を行っています。
PayPay銀行においてはYahoo!JAPANとの提携の中で、ヤフオクの出品者が落札代金の出金先に同行口座を指定しますと、24時間土日に関係なく出品商品1つ1つの落札代金を受け取れるといった預金者優遇サービスを行っています。
ローソン銀行の場合でも、ドコモの携帯電話料金の引き落とし口座にローソン銀行を指定することでdポイントがもらえたり、ドコモ以外の提携先が増えていけばその提携先のサービスをお得に利用できる取組みを行うことが考えられます。
サービス開始直後は特に注目!
銀行業スタートに伴い各種サービスやキャンペーンが予想される中で、特に開業直後は注目したいところです。
ローソンは他社よりも豊富なキャンペーンや希少性のある商品等を提供するLoppi端末、他社ポイントサービスを取り入れるなど、現在までに店舗での物販以外にも様々な独自サービスを展開してきました。
しかし、そういった実績があっても初めての事業や取組みに不安はつきものです。最初からコケてしまうことだけは何としても避けたいという思いが、業界に関係なく沸き起こるものです。
他には開業前からキャンペーンなどの告知を行うことも考えられます。
初めてにつきものの心配や誤算などにも期待
ローソン銀行の意気込みがあまりにも高かったり、銀行側が想定する顧客獲得数などが実際のものよりも高い場合も考えられます。
もしそうだとすれば、利用者が通常受けられるであろうレベルを超えて、私たちがお得なサービスを得られる可能性が出てきます。
これは先ほどの「サービス開始直後は特に注目!」のところでお話しした内容の延長にあたるものです。
やはり開業したての銀行側の心境は期待の反面、不安や失敗したらどうしようといった恐怖の感もあると思われます。
ローソン銀行はその元がコンビニ大手のローソンであり、知名度の高さや前評判の存在は無視できないものです。
また小売りから銀行業への進出といった異業種間のアプローチには一定以上の困難や障壁があるものと予測され、関係者がネガティブな心境に陥るのは不思議なことではありません。
さらに、開業直前になって何らかの準備不足やトラブルが発生し、急いでその対応をしなければならないといった場合、残された時間がありません。
銀行側の心理状態がさらに圧迫され、判断ミスや突貫工事的な対応を行ってくるかもしれません。
これは利用者にアピールする内容としては非常に分かりやすく、また新たにレアグッズや限定商品を準備するよりもポイント等の数字操作の方がはるかに簡単に実施できることから、つい大盤振る舞いしてしまう可能性もゼロではありません。
経営は市場の動向や世間のニーズ、他社の動きといった至極まっとうな要因によってその方針を決定していく一方、経営者のメンタルや突発的要因に起因するケースもあります。
どこまで期待できるか定かではありませんが、万が一この推測が現実となれば私たちは非常においしい恩恵にあずかれることとなります。
提携ポイント企業の考え
ローソンは現在ポンタポイントやdポイント、楽天が提供する「楽天ペイ」アプリを介した楽天ポイント等の取り扱いを行っています。
これら他社ポイントサービスの中では、比較的dポイントやドコモが提供するサービスとの連携が目立ち、ローソン銀行も始業後はこの傾向を引き継いでいくのではないかと考えられます。
では、そのドコモが現在dポイントに絡む事業等についてどういったスタンスをとっているのかを考えてみます。
ドコモにおけるdポイントの存在
2018年4月27日にドコモが発表した「中期戦略2020 beyond宣言」によると、dポイントによる会員マネジメントは今後ますます重要な位置を占めていくとのことです。
出典:ケータイWatch
このdポイントは、dアカウントを作ることで利用することができますが、dアカウントはドコモの携帯加入者だけでなくドコモ携帯を利用していない非契約者も作成が可能となっています。
dポイントはそのアカウント数が約6,400万、使用されたポイント数が2017年度は1,200億ポイントといった実績があります。
現在ドコモは自社サイトにおける「dマーケット」などのネットショッピングや、出前フードサービス、旅行チケット予約、クラウドワーキングサービス「dジョブ」など本業以外にも様々なサービスを提供しています。
それだけ多くのサービスを運営する背景には、先ほどのドコモの発表にもあるようにdポイントの普及を広範囲の分野に進めたいという狙いがハッキリと存在しています。
またドコモは「docomo Wi-Fi」設備をローソン各店に設置していたり、クレジットカード「dカード」やプリペイドカード「dカード プリペイド」のローソンでの利用において、ポイント還元率の優遇を行っています。
ローソン銀行に懸念されるもの
そもそも銀行が多い
ローソン銀行に立ちはだかる問題もあります。
まず、現状においてはメガバンク、地銀、ネット銀行など数多くの競合他社が存在しています。また銀行業はメーカーなどとは異なり、一から全く新しい商品を作り出す業種ではありません。
従って、他社との差別化・優位性を打ち立てるのがそもそも難しいのです。預金金利をちょっと高くしたりATM手数料の無料回数を増やすぐらいでは大きなインパクトにはなり得ません。
このことを問題化させないため、つまり顧客の取り込みのためにローソンID会員やポンタ・ドコモのユーザーを目当てにしていくのか?
人工知能や仮想通貨の存在
人工知能(AI)の進展ぶりが今大きな話題となっていますが、銀行業はAIに取って代わられる可能性が大きいのではないかという指摘があります(もちろん他の業種にも当てはまりますが)。
2013年にオックスフォード大学が発表した「雇用の未来」と題された論文では、今後10年か20年で消滅するのではないかとされる職業のランキングに、銀行や保険、融資、投資など金融に関わる職業が上位にあがっています。
仮想通貨に関してはまだまだ慎重な判断が必要だとは思いますが、現状では仮想通貨「リップル」(XRP)に関する技術開発や研究が、銀行業務にかなり直結した内容となっています。
2017年から2018年にかけてのXRPに関わる開発の中で、アメリカ~メキシコ間で実施された送金実験では、国際送金にかかる費用の大幅なコストダウンと送金スピードの短縮が確認されました。
出典:CoinChoice
また、リップル社とSBIホールディングス(株)が共同で「SBI Ripple Asia」を設立・運営し、東アジアでのブロックチェーン技術(仮想通貨の主要な仕組み)の開発や進展を行っています。
仮想通貨の技術開発がこのように積極的に行われ、仮想通貨が既存の銀行業務を上回るサービスを提供するのではないかと言われています。
事業内容はどうなるのか?
銀行が利益を得る手段として定番の「融資」事業ですが、ローソン銀行としては融資事業を含むその他事業内容についてどういったスタイルを採るつもりなのでしょうか?
実は、先陣を切っているセブン銀行の場合、企業への融資や国債購入による金利収入の獲得などといった銀行業本来の業務はほとんど行っていません。
そのほとんどの利益はセブン-イレブンに設置したATMからの手数料収入によるものです。
対して、イオン銀行は銀行業ならではの様々なサービスを行っています。
小売りから銀行業へ転身した例が多くないので、確率的にセブン銀行のスタイルが利益を生み出しやすい、成功しやすいかと言えば、まだまだ断言できるものではありません。
まして銀行業全体からすれば、このセブン銀行のATM戦略はかなりレアなパターンと言えます。
従って、ローソン銀行としても、イオン銀行や他の金融機関と同様の業務内容になってくると予想されます。
先行するイオン銀行の例では、イオングループ全体が2017年度途中まで小売り部門を中心とした売上不振による右肩下がりの成長だった中、金融事業はその収益増減率が各事業の中でトップクラスの成績を誇りました。
金融業務はイオングループの消滅を防いだ立役者(厳密にはドラッグストア事業を含む)といった存在であり、その期待値の高さから、ローソン銀行もセブン銀行式の運営ではなく、まずはこういった例にならうべきではないかと思います。
ただし先ほどの「そもそも銀行が多い」でお話しした通り、他行との差別化や競争には常に注意を払う必要があります。
まとめ
コンビニと銀行という私たちに身近な存在がうまく融合できれば、期待できる部分が見えてきそうです。
そういった期待の側面から今回の記事をまとめてみますと、
- Loppi端末などに代表されるローソンのこれまでのオリジナルな姿勢をローソン銀行も継承するかどうか
- ポンタポイントやdポイントにちなんだサービスを展開するかどうか
- おまけとして、開業直後の各種キャンペーンやイベントに期待
この記事掲載後もローソン銀行に関するテレビニュースやウェブページなどに接することがあるでしょう。
最終的にどんな姿でローソン銀行が世に現れてくるのか、それらの情報源を元に探っていくこととなりそうです。