ニューヨーク市場でのFX攻略法。荒波は伊達に起こるものじゃない!

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FXで発生する値動きの波は、時として想像もつかないほど大きく押し寄せてくるものです。また、単に巨大な姿で現れるのみならず、明白な方向性を示さないまま、実体を掴まれまいと私たち参加者を魅惑や恐怖で揺さぶるような得体のしれない存在でもあります。

 

しかし、そのような相場の有様に立ち尽くし、やり方に手をこまねいてばかりでは勝つことはできません。そこで今回はニューヨーク市場を例に、なぜ激しく、また理解し難い値動きが起こるのかについてご紹介していきます。

 

ニューヨーク市場は、FXによる取引が日々行われている中で、最もトレードが活発な市場です。ここには世界中から多くのトレーダーが集結し、様々な思惑を交差させながら激しいトレードバトルを展開しています。

 

従ってただやみくもに安易なトレードはせず、相場の性質を分析・理解し、継続的に勝つやり方を模索することが取引を行う上で大切です。またそういった行動習慣がしっかりと身に付けば、様々な市場や相場状況にも応用することができます。

 

 

NY市場は大きなトレンドが発生しやすい

ニューヨーク市場(以降「NY市場」と表記します)は日本時間の22:00から(11月から3月の冬時間は23:00から)開始される市場です。

 

まず先にこの開始時間についてですが、アメリカではサマータイム制(夏時間)により市場開始時刻が3月の第2日曜から11月の第1日曜までは22:00、それ以外の時期(冬時間)は23:00と異なっております。

 

また、それによって各種イベント等の発生時刻にも1時間のズレが生じますが、混乱を避けるため本項では各種時間の表示は夏時間に統一することとします。

 

本題に入りますが、NY市場は株と並び取引量が世界で一番多く、1日の中で最も大きな値動きが起こりやすいのが最大の特徴です。

 

大きなトレンドの発生はもちろん、膠着中のレンジ相場においてもスキャルピングに最適な値幅が出やすい時間帯です。

 

ここでうまくトレードが決まれば十分な日当にもあやかれるのですが、失敗トレードとなった時は素早い判断と対処能力が求められるシビアな時間帯でもあります。

 

 

市場開始から3時間前後までが勝負

NY時間は日本の朝方まで開かれていますが、実は最も取引が活発なのは「市場開始から約3時間経過後くらいまで」なのです。よって、それまでにいかに戦略を立て勝負に出るかが勝利のポイントとなります。

 

ただ、それ以降でもチャンスがないわけではありませんが、主にニューヨークダウや米10年債金利、場合によってはヨーロッパの株価指数などの動向が、時間帯を問わず刻一刻と変化し理解するのにややこしく、トレードを難しいものにさせています。

 

これらの動きはFX業者提供の経済ニュースにより随時知ることができるのですが、ニュースで知った時点ではすでに時遅しという場合や、内容が難解でただちにトレードに活かせるものではないことも多いです。

 

従って、FXのやり方をハッキリさせたい場合やまだ初心者の方は、まずは市場開始後3時間までを分析対象にし、トレードの中心に据えるのが賢明です。

 

その中で、FXで有名なチャートパターンやおなじみのテクニカルサイン、相場格言などの出現の兆候があれば、普段は半信半疑であったそれらの兆候も、参加者が多いNY市場においては、多くのトレーダーの注目が同じ対象に集まっている可能性が高まります。

 

そしてその兆候は勝ちやすい大変貴重なものとなり、結果としてそのやり方が自然と決定されていくようになります。

 

 

米国10年債金利とNYダウ

米国10年国債について

NY市場の分析で切り離すことのできないものとして、アメリカ政府発行の国債があります。国債には2年や5年など償還期間の異なる数種類の国債がありますが、その中でFXにおいては10年ものの国債が市場に大きな影響を与えています。

 

この10年債は、世界一の経済大国アメリカの長期的な経済動向を判断するための一材料として、世界中の投資家から注目され、売買も盛んに行われています。

 

ここで簡単な説明ですが、国債価格と金利との関係についてお話ししますと、国債価格が上昇すると金利が下がり、逆に価格が下がると金利が上昇するという関係になっています。

 

また、投資ムードが強い状況(リスクオン)においては、安全な国債よりも株や通貨などが投資対象となりやすく、価格の下落と金利の上昇が起こる傾向となります。

 

逆に投資に控えめな状況(リスクオフ)であれば、株や通貨などが手放され国債への需要が高まり、価格上昇・金利低下という流れが一般的です。

 

そしてFXでは特に「金利」の方の動きに普段からトレーダーたちの注目が集まっています。

 

10年債は金利動向に注意

金利が上昇しますと国債価格が下がりますが、これは相場が先ほどのリスクオンの状態だと判断され、FXでは買いポジションをメインにするのが妥当な戦略ということになります。

 

また、金利が下がり価格が上昇した場合はリスクオフとみなされ、買いポジションは控えるか売りポジションで攻めるのが得策ということになります。

 

ただし、いつもこのような関係になるわけではなく、2018年8月1日には米財務省が国債の発行額を増やしたことで金利が上昇しましたが、ユーロ/円や豪ドル/円を中心とした通貨やニューヨークダウの方は下落しました。

 

これは、投資家から国債発行額の増額の背景が支持されなかったことや、その日昼間の日本の債券状況がネガティブに捉えられたことなどが重なった結果ですが、その時にどこまで正確に情勢を判断し的確な行動がとれるかは非常に難しいものです。

 

その場合は、含み損が発生していたら相場に対して不確定さが働いたと認識し直ちに損切りを行うことや、次のチャンスを探すこと、素早く頭の中の切り替えを行うことが最善の策となります。

 

NYダウについて

米国10年債金利とともにFXに大きな影響を与えるのが「ダウ平均株価」(以降「NYダウ」と表記します)です。これは日本における日経平均のような存在で、アメリカにおける代表的な30種類の株価の平均を表す指数です。

 

世界第一の経済大国であるアメリカの経済状況を把握する指針であり、FXのみならず株や商品、先物、また他の国や地域を問わず多くのものに対して経済的に甚大な影響力をもっています。

 

このNYダウとFXとのかかわりについてですが、一番シンプルなやり方としましては、NYダウが上昇すればFXも買い、下落すれば売り、というものです。特に短期的な動きは随時伝えられる経済ニュースとともに投資家たちを頻繁に刺激しています。

 

史上最高値を更新し続けるが

NYダウはその誕生以来、時折試練に遭遇しながらも常に上昇をし続け、2017年には史上最高値26,600ドルにまで上りつめました。

 

多大な影響をNYダウから受ける意味では、FXや他の投資も、同じく上昇をし続けるものとして、買いの姿勢を崩さないでいれば儲け続けることができるかというと、そう単純にはいきません。

 

例えば2017年はNYダウの年とも言えるほど、ダウは上昇で始まり上昇に終わる1年でしたが、米ドル/円は年間では円高(マイナス)で、その値幅も4円数十銭程度といった何とも歯切れの悪いものでした。

出典:Investing.com

 

出典:Investing.com

 

また、そうかと思えばユーロ/円はそれまでのテクニカル分析が当てにならないような、ちょっとでも下がるとすぐに買いが入る非常にやりにくかった状態で、年間では12円ほどの円安(プラス)という結果でした。

 

出典:Investing.com

 

従って、インパクトの大きいNYダウですが、FXを行うに際しては個別の通貨ペアを取り巻く状況をしっかりと分析し、総合的に判断するようにしましょう。

 

 

NYオプションカット・ロンドンフィックス

 

NYオプションカットについて

NYオプションカットは日本時間の23時(夏時間)に行われるもので、これは任意の通貨を決められた期間または期日に、予め決められた価格で買う/売る権利を売買するものです。

 

イメージがわいてこないかもしれませんが、主に証券会社や銀行、大口投資家の間で行われる取引で、リスクヘッジや鞘取りの目的があります。

 

取引も盛んに行われ、その売買額は何千億円とも何兆円とも言われ為替レートが大きく動く場合もあり、特にスキャルピングにおいては軽視することのできないイベントとなっております。

 

ここで注意すべきこととしましては、NYオプションカットはいつも大きな値動きが発生するとは限りませんが、23時が近づくに従って値動きが激しくなっていくようであれば、原因はこのNYオプションカットにあるとまずは判断することです。

 

その時、相場のトレンドがこれから大きく変化していくのではないか?と思うかもしれませんが、23時を迎えるとパタっとそれまでの激しい攻防戦が止んでしまうことも珍しくありません。

 

一方でその日の最高値/最安値を更新してしまうこともありますが、安易にそれまでのトレード方針を変えることなく、また値動きの激しさに気を取り乱さないよう冷静になってもう1度相場状況を吟味することが大切です。

 

ロンドンフィックスについて

ロンドンフィックス(ロンドンフィキシング)は日本時間0時に発生するイベントで、「仲値」というものの決定が行われます。

 

「仲値」とは銀行が発表する法人顧客向けの為替レートのことで、業務で為替交換を行う企業が日々参照しこの仲値を基準に取引を行っています。

 

NYオプションカットと同様にレートが大きく動くきっかけであり、また月初や月末においては業務の関係で取引量が増加し殊更にその動きへの注意が必要となります。

 

また、NY市場とロンドン市場が重なる時間帯に発生するイベントというだけあって、そこに通常のFXトレードも交わり、利益につながる大チャンスであると同時に大きなダメージの可能性もある大変緊張感がただようイベントです。

 

ここでは、あまり慣れていない段階ではうかつに手を出さないことがやはり大切です。スキャルピングによる逆張り手法でも大きな値幅が取れる可能性がありますが、あまりエキサイティング過ぎる相場状況は常勝を狙うという点からはオススメできません。

 

もっと落ち着いてトレードができる場面に徹することが長く勝ち続けるための秘訣でもあります。無理にトレード技術の高みを目指すことや玄人的なトレードイメージを抱くよりは、自分の実力や現実に向き合う方が、大切なお金を投じるに際しては重要なことです。

 

 

経済指標

NY市場では様々な経済指標の発表が行われます。相場が大きく変化する重要なものからそうではないものまでありますが、ここでは特に覚えておいた方がいいトレーダーの注目度が極めて高い経済指標をあげてみます。

 

米雇用統計

これは厳密にはNY時間前の21:30(夏時間)に発表されるものですが、「米雇用統計」は毎月第1金曜日に発表が行われるFXにおいては超有名な経済指標です。

 

その発表内容は失業率や非・農業部門雇用者数などアメリカの雇用情勢や景気に関するものですが、この経済指標自体は世界中のトレーダーが数多く集結し一攫千金を狙うようなお祭り的なイベントとなっているのが現状です。

 

一瞬で50pips程度動くことも珍しくなく、この値動きに熟知して1回のイベントで大きな利益を上げるトレーダーも少なからずいるようですが、やはり最初から狙うべきものではありません。

 

ここでは、毎月第1金曜日には雇用統計の発表があることを思い出し、既存のポジションは発表前に整理することや、トレードの再開は発表後に十分相場が落ち着いてから行うことがベターなやり方となります。

 

またこの姿勢は、雇用統計のみならず、その他重要な経済指標や先ほどお話ししましたNYオプションカット、ロンドンフィックス前後におきましても同様です。

 

FOMC政策金利発表

これは「米連邦準備制度理事会」(FRB)を主要メンバーとする年8回行われる会合(FOMC)において、会合後発表される「政策金利」がターゲットとなっているものです。

 

FOMCは、アメリカ中の全ての金融政策に関わる非常に重要な会合として、米雇用統計と同様に多くのトレーダーの注目を集めています。

 

また、政策金利のみならず会合の*(注)1回おきに行われるFRB議長の記者会見の内容も要注意で、相場が大いに荒れ狂うこともあり、初心者の方には厳しいイベントであります。

 

ここでもやはり米雇用統計と同様、安易にポジションを取ることはオススメしません。また、発表時間が日本の夜中の3:00~4:00ということもあり、無理してこの時間まで待機するよりも他のチャンスを探した方が現実的です。

 

また、国の中心的な金融政策ということで、定例的なイベントであってもその後の為替トレンドへの本格的な影響が無視できないものです。

 

従って、損失ポジションがすでにあり損切りをせずにいますと、ロスカットや投資活動からの退場も現実的となってきやすいので最大限の注意が必要となります。

 

*(注)2019年よりFRB議長の記者会見はFOMC後毎回行う可能性があります。

 

 

過去にあった大きな突発的なイベント

FX攻略におきましては、定例的なものは言うまでもありませんが、予測が難しい突発的な出来事の存在も無視することができません。かといってどこまで事前にキチンとした対策ができるかどうかは、どんなトレーダーにとっても悩ましいものです。

 

そこでここでは、これまでに発生したNY市場に関わるトラブルや事件などを取り上げ、こういったことが現実にあった(これからも起こるかもしれない)という、せめて認識だけでもしていただこうという意図で紹介していきます。

 

「政府機関閉鎖」

2018年1月19日までのアメリカの暫定的な予算がいよいよ終わるところで、新しい暫定予算が決まっておらず、20日から22日まで各種行政サービスが停止した問題。米ドル/円のみならずNYダウや債権まで売られました。

 

またこの問題はこれまで数年おきに何度か発生しており、今後も起こらないとは言い切れません。

 

「ロシアゲート」

2016年のアメリカ大統領選挙において、トランプ陣営に有利となるようロシアが極秘に選挙に干渉していたのではないかという疑惑が2017年5月に湧き上がりました。それによって米ドル/円は115円付近から1週間程度で4円程度下落。

 

また同年12月にはトランプ大統領の元側近が大統領から指示を受けたと言明したことで、米ドル/円が再び急落したこともありました。

 

2018年2月5日のNYダウ  史上最大の暴落

2018年1月26日まで「うなぎのぼり」のように上昇を続けていたNYダウが翌営業日から反転。そして2月5日に終日で1,000ドル、最大で1,600ドル幅もの下落を引き起こしました。

 

原因は、人工知能による機械的な株の大量売りや、恐怖指数(VIX指数)急騰に投資家たちが過剰に反応したこと、FRBの新議長に就任したJ.パウエルの金融方針を取り込んだ結果の売り払いなどあります(実はどれもいまいちハッキリしたものではありません)。

 

FXにおいては、米ドル/円は1円、ユーロ/円が2円、ポンド/円は3円程度下落しました。

 

その他

大統領選後のご祝儀的な上昇や、政府主要メンバーの発言、またトランプ大統領が米雇用統計の数値を事前にツイッターでほのめかし米ドル/円が急騰したというケースもあります。

 

 

まとめ

値動きの予想が難しいFXですが、ここまでのNY市場の例のようにしっかりと押さえ所を決め、攻める時・控える時の区別をもってトレードに臨めば、大きな一撃こそ狙えませんがリスクを大きく軽減させ、安定した収益を図ることができるようになります。

 

また、NY市場でのやり方を要約してみますと以下の通りとなります。

 

 

  • NY市場はレートが大きく動きやすい
  • 市場開始後3時間程度までがトレードに向いている
  • 10年国債の「金利」とNYダウの動向に注意
  • 「NYオプションカット」「ロンドンフィックス」は定例イベント、動揺または無理はしないこと
  • 「米雇用統計」「FOMC政策金利」はハイリスク・ハイリターン、無理はしないこと
  • 相場の急変があることを前提とする

 

 

FXにはNY市場の他にロンドン市場や東京市場、またゴトウ日や週末、月末・月初、年末年始など、トレードの場所や時間の選択が多種多様です。

 

どういったトレードを行うにしましても、上記のようなまとめや分析をもってトレードにあたることが大切です。

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