目次
外貨預金を始めるなら、円高の時がいいのは何となく知っていても、どの通貨を選べばいいのか悩んでしまうものです。ここ数カ月はアメリカドルが勢力を増して、円安傾向にあります。
アメリカドルでの預金はしばらくは様子を見た方がよさそうです。
円高傾向にある通貨で預金をするのが、外貨預金で利益を得るためには重要となります。現在、円高傾向にある通貨はいくつかあり、最近、これまで比較的に安値圏にあったいくつかの外貨が、新しい動きを見せ始めています。
その1つがブラジルレアルです。
今回は、今注目すべき通貨の1つ、ブラジルレアルの現状と今後の見込みについて検証していきたいと思います。これからの外貨預金の参考にしてみて下さい。
日経通貨インデックス情報
例えば・・・
1ドルは日本円にすると現在111円くらいです。
でも、それを香港ドルやユーロに換算した場合はまた違う価値になっています。
そこで、世界中にある通貨に対して全体的にはどうなのかという数字を出したものが、日経通貨インデックスなのです。
数ある通貨の中でも、両替率の高い通貨、25通貨を対象としたものです。
2018年7月27日/日経通貨インデックス
7月27日の日経新聞によると、
アメリカの金利上昇に対して、トランプ政権によるドル高進行をけん制する動きが強まっていることから、特に新興国の高金利通貨への買戻しが目立っているとのことです。
なかでも、プラジルレアルやメキシコペソなどの1週間間の騰落率は2%を超えるという、大きな動きが見られています。
上位10位は以下のように・・・
最近の通貨で最も低下しているのは、中国人民元、アメリカドル、ユーロになります。アメリカドル、ユーロに関しては半年でみると上昇、人民元と対バーツが全体的に下がってきているようです。
現在のブラジル価格
それでは、各通貨は相対する通貨によってその価値が上がったり下がったりしてしまうわけですが、ブラジル通貨と日本円の関係を見てみたいと思います。
現在のブラジルレアルは対日本円でどのような位置にあるのでしょうか。
ブラジルレアル/日本円
ここ3か月のブラジルレアルの動きは・・・
3か月(日足チャート)
3か月でみると、1レアルの価格は
安値が約28円/高値が約31円、2カ月に渡って28円から30円の間で動いています。
6月8日に28円から30円へと一気に急上昇しています。それから下降基調となり約1か月で28円までまた下がっているようです。
そして、7月6日に再び29円へ急上昇し、その後は軽やかなリズムで上昇を見せています。
次に、1年間ではどうなのかを見てみましょう。
1年間(週足チャート)
1年でみると、1レアルの価格は
2018年の6月が底値/28円となり、約1年間に渡って下降し続けているのがわかります。この週足のチャートで見れば、ここ4週間は明らかに、確実な上昇のサインをみせていることがわかります。
では、もっと長期でみてみましょう。
5年(月足チャート)
5年でみると、1レアルの価格は
2014年に42円~47円で推移した後、2016年2月には28円の底値まで下がっています。
そして、2018年6月に再度28円の底値をつけた後、上昇しようとしていくかのようです。現在のブラジルレアルの価格は、今ちょうど底値から値上がりし始めたところなのです。
さらに、今度はもっと過去にさかのぼって価格を見てみたいと思います。
20年(月足チャート)
このチャートは1998年から現在にかけての、1レアルの価格を表したものです。驚くべきことに約20年でブラジルレアルは3分の1以下の価格に下がってしまっているのです。
1998年9月には1レアルが115円でした。この価格は今のアメリカドルが111円だということを考えれば、ブラジルレアルが非常に強い通貨だったことがわかります。
そして、2000年までの2年間の間に半額近く下がり、2006年には一旦60円以上の値をつけますが、2015年の後半以降は40円以下をキープしてしまうという結果となっています。
何と、今現在のブラジルレアルの価格は20年という長い年月の中でも、最も安い価格帯にあるのです!
その他の安値にある通貨はどうなのが、見てみましょう。
最近のその他の通貨の動きは?
現在、円高傾向にあり、外貨預金の対象としておすすめな通貨の中には、他にも、気になる動きを見せている通貨がいくつかあります。
これからの外貨預金の選択肢の1つとして参考にして頂ければと思います。
メキシコペソ
2018年8月2日 現在:5.9516円
メキシコペソ/日本円 為替チャート(1年)
1年でみると、メキシコペソは2018年の6月に底値をつけてから、今かなり順調に上昇中であります。
4月の高値の位置を現在かすかに超えたところなので、チャート分析からいけば今後上昇していく確立は高いといえます。7月31日に発表された4-6月期のGDP成長率は前期比の+0.6%、前年同期比の+1.8%となっています。
今回の経済成長率に対し、期待はずれだという声もありましたが、トランプ政権の通商政策への懸念を背景にしながらも、利上げなどの金融政策にてここまでメキシコペソが好感の持てる動きを見せていることに対し、投資アナリストたちからは高い評価を受けています。
5年、10年と長期でみた場合にはブラジルレアル同様に最安値圏にあります。
また、メキシコペソの価格変動の主な要因として無視できないのが、NAFTA(ナフタ:北米自由貿易協定)と呼ばれるものです。
アメリカと中国の貿易摩擦の余波も当然ながら、このNAFTAの進展具合によってメキシコペソは大きく左右されてしまいます。
NAFTAのもう1つの協定国、カナダも同様です。そこで、カナダドルの動きも確認しておきたいと思います。
カナダドル
2018年8月2日 現在:85.5ドル
カナダドル/日本円 為替チャート(1年)
カナダドルは2018年3月に底値を記録した後、現在にかけて上昇基調にあるといえます。6月に一旦下降した時には3月の底値よりも高い位置で、上昇へと切り替わっていることがこの通貨の安心できる部分でもあります。
本格的な上昇基調へと転換していく期待は大きいでしょう。
また、カナダは原油の主要生産国でもありますので、原油価格の情勢に影響を受けやすいというデメリットもあります。その他NAFTAの進展がどうなるのかも重要視する必要があります。
その他の通貨
その他の通貨の中でも目が離せないのは、
やはり中国人民元でしょう。対ドルと比較すると、対日本円ではそこまで価格が下がりきっているわけではありませんが、やはり比較的に安い値段でお買い得だといえます。
アメリカとの貿易摩擦が思った以上に長引きそうですが、世界でも1、2を争う巨大なマーケットを有する中国の存在なしには、例えアメリカであろうとも経済は成り立ちません。
いずれは、双方に納得のいく形で交渉していく以外に、世界経済の健康を保つ方法はないといえます。そうだとすれば、タイミング次第で、人民元も避けがたい選択肢であります。
ユーロ、ニュージーランドドル、オーストラリアドル、ロシアンルーブル、なども円高傾向にありますので、検討してみてもいいかもしれません。
それでは、その他の通貨も検討しながら、値下がりナンバーワンのブラジルレアルのことをもっと徹底的に調査してみたいと思います。
ブラジルについて学ぶ
北米→カナダ、アメリカ、メキシコ
南米→ブラジル、チリ、コロンビア、アルゼンチンなど
出典:ウィキペディア
※ブラジルの国土の面積は日本の約22倍。人口は約2憶人となり、世界で5位の人口規模を有しています。(1位:中国、2位インド、3位:アメリカ、4位:インドネシア)
ブラジルはどんな国?
アメリカやヨーロッパ、アジアでいえばシンガポールやタイ、ご近所でいえば中国や韓国に比べるとブラジルは日本人にとっては、あまり馴染みのない国の1つでもあります。
日本人にとってブラジルといえば、サッカーやリオのカーニバルの印象が強くなります。ジャングルの代名詞でもあるアマゾン川とアマゾン熱帯雨林地帯はブラジルにあるのです。
また、意外と身近なところにあるのが
- コーヒ―好きで知らない人はいない、コーヒー豆「ブラジル」
- 砂糖、オレンジジュース
- 食肉
- アマゾンフルーツの「アサイー」
など・・・
ブラジルの大まかな歴史と経済
15世紀以前のブラジル
ブラジルの歴史は紀元前にまでさかのぼり、おそらく最初に住民が暮らし始めたのは紀元前11,000年くらいだといわれています。
その先住民の多くはアジア大陸から渡ってきたグアラニー族、アラワク族と呼ばれています。ヨーロッパ人によってアメリカ大陸が発見されるまでは、100万~200万くらいの規模で原始的な農耕生活を営んでいたと推定されています。
15世紀~
1492年にクリストファー・コロンブスによってアメリカ大陸(ポルトガル発見/ペドロ・アルヴァレス・カブラル)が発見されたことで、ブラジルは新たな新大陸としての歴史が始まります。
その後1500年代にポルトガルの植民地として、ヨーロッパのさまざまな権力争いや宗教の対立に巻き込まれながらも独自の文化を築きあげていきます。
18世紀~
ブラジルで金鉱山が発見され、世界的な規模でのゴールドラッシュが起こり、リオデジャネイロがブラジルの都市として、一躍有名になります。
1822年にブラジルはポルトガルから独立。
1891年、共和政を柱に憲法が制定され、ブラジル連邦共和国が成立します。ちょうど、この辺りから自動車の普及が始まり、車のタイヤに使うゴムの需要が高くなっていきます。と同時に、17世紀以降にヨーロッパにたどり着いたコーヒーが広く普及し始めます。
ゴムとコーヒー
ゴム→アマゾンの熱帯雨林で至るところに育成している「ゴムの木」からは、ゴムの材料となる樹液(ラテックス)が豊富に摂れるのです。車が発達していくとともに、ゴムの新しい技術も開発され、大手自動車メーカーはブラジルのゴムを大量に必要としました。
コーヒー→コーヒーの木もゴムの木のように熱帯雨林が生み出したブラジルの産物です。温暖な気候と十分な降雨量を必要とするコーヒーは、他の地域での栽培が難しく、それがブラジルの資産となっていきます。
産業の確立
ゴムの需要は時代とともに増加していく傾向にありましたが、ゴムの種子を持ち帰ったヨーロッパ・アメリカ勢やマレーシアのゴム産業の進出、さらには多大な摂取によるゴムの木の減少により、ブラジルのゴム産業は一旦衰退の道を辿ります。
と、入れ替わりに進展したのが、小工場から規模が増幅していった、自動車、石油化学、鉄鋼などの基幹産業が1950年代~1970年代にかけて確立されていきます。
戦後から1974年にかけてのブラジルのGDP成長率は平均して7.4%という高い数字を見せていくのです。
1980年代に至っては国民の平均所得は約10年間で4倍、1990年代後半には南米南部共同市場(メルコスル)との貿易額は271%増、他の諸国との貿易額も73%増、と著しく成長していきます。
2000年以降のブラジルレアル
1997年にタイ、マレーシアなどの東・東南アジアで始まった金融危機は、その近辺の国々だけでなく世界中に急激に波及していきました。
インフレや輸出入のバランスを調整するために繰り返される通貨のデバリュエーション
さらに国政な過剰な消費、世界的な規模で行われる過度な利上げなど、様々な局面が重なりブラジルレアルの価格はみるみるうちに半額近くの価値に下がっていくのです。
そして、21世紀に入ってから約20年間という長い間、ブラジルレアルは下がり続けてきたのです。
今後のブラジルレアルの展開は?
現在のブラジルレアルの金利は過去最安値の6.75%。金融緩和を目的に2月から実施され今後2018年末までは継続される予定です。
5月、6月あたりに追加値下げが予想されましたが、現状維持となったことが「買い」を促した要因ともみられています。
近年において、ブラジルが解決せねばならない課題は多く、いかにその解決の道を示していくかで今度の展開が変わってしまいます。
国内で懸念されている景気後退、インフレ率、経常赤字、財政赤字、政治危機が主な下落と原因になっているといえます。これらのマイナス要因の中でも特に国政、財政的な部分に改革が必要だと見られています。
現在のテメル大統領の汚職疑惑から、10月には大統領選の実施がすでに決定しており、その結果が市場では判断材料の焦点となっています。ブラジル国内では政治不信、先行きの不透明感が強まっており、選挙の結果次第で改善が見られていくと予想されています。
同時に、ブラジルは多数の人口を有しており、その数は年々増え続けています。産業・工業的な意味でもまだ成長の過程段階にあり、今後、大きな経済成長が期待されている国でもあります。
GDP成長率は以前に比べ緩慢になったとはいえ、2017年のGDPは世界で8位、成長率は1%増といまだに増加傾向にあります。
今後の大統領選の展開、国民の意識や投資家たちの予想・期待が改善されていけば、ブラジルレアルは現在のチャートが見せる上昇傾向を維持していくといえます。
そして、もちろん米中貿易戦争の経過も関与してしまうことは、いうまでもありません。
ブラジルの輸出入品目
2017年のブラジルの輸出入品目は
輸出
- オイルシード(油の原料となる野菜や果実の種)
- 鉱石、スラグ、灰(アルミニウムなどの鉄鋼、マグネシウム、石灰など)
- ミネラルオイル(天然鉱物性の燃料、天然ガス、原油)
- 輸送機(自動車、産業機器、航空機)
- 食肉(牛肉、鶏肉)
など・・・
※原油やガスの新鉱脈の開拓などにより、ミネラルオイルの輸出額は急激に増加。オイルシード、鉄鉱石類も増加傾向にあります。
輸入
- ミネラルオイル(天然鉱物性の燃料、天然ガス、原油)
- 電気機器、電気設備
- 機械(コンピューターを含む)
- 輸送機器(自動車、産業機器、航空機)
- 有機化学品(原油・ガスを原料とした化学薬品)
など・・・
※ミネラルオイルの輸出量が増加傾向にあると同時に、他国から得なければならないミネラルオイルの輸入額も増加。コンピューター機器を含む機械類は逆に減少。
エネルギーに強いブラジル
21世紀に入ってから、天然ガスや原油の開拓が進み、今後の展開が期待されています。2006年以降ブラジルはエネルギー消費量の45.1%を水力やバイオマスなどの自然エネルギーでまかなっています。
赤道近辺に位置する国であることから、国内の政治的な情勢が安定すれば、他国企業による融資や提携から太陽光などの新エネルギー開拓が進むことも期待できるでしょう。
ブラジルレアルで外貨預金をする
それでは、最後にブラジルレアルで外貨預金ができる金融機関をご紹介したいと思います。実はブラジルレアルはドルやユーロに比べて、取り扱っている金融機関は少なくなります。
また、しばらくドル高が進行していることもあり、近い将来にドル預金から別の通貨へ換金することを考えている人もいるかと思います。そちらも併せてご紹介いたします。
※ドルから日本円に両替するよりも、他の通貨にした方が利益が高くなる可能性もあります。
じぶん銀行
取り扱い通貨
- アメリカドル
- ユーロ
- オーストラリアドル
- ニュージーランドドル
- 中国人民元
- 韓国ウォン
- 南アフリカランド
- ブラジルレアル
外貨受け取りサービス→他の金融機関に預金している外貨を「外貨のまま」送金することができます。
ソニー銀行
- アメリカドル
- ユーロ
- イギリスポンド
- 香港ドル
- カナダドル
- スイスフラン
- ブラジルレアル
など・・・12種類の外貨預金が可能です。
外貨受け取りサービス→海外、国内の金融機関から外貨送金が可能です。円定期預金と外貨定期預金とのセットで金利がアップするサービスもあります。
その他の金融機関
口座の種類、手数料や金利は各金融機関によって異なります。事前に確認した上で、目的にあった外貨預金を始めましょう。
まとめ
ブラジルが属する南アメリカをはじめ、中東やアフリカなどは天然資源が豊富にあるにも関わらず、政治、思想、宗教等の理由で比較的に不安定な経済事情にある国が多くなります。
EVの出現や自然エネルギー技術の発達によって、それらの国々はエネルギーという分野ではかなり優位な立場になっていくことが予想されます。
しかしながら、国内の不安定な経済事情が足かせとなり、豊富な資源の有効活用の実現が難しくもあります。
経済的にも政治的にも安定する先進国の多くは、それらのエネルギー強国からの資源輸入に頼らなければ十分な電力・燃料を確保できないのが現実です。
長期的な視点でみて、ブラジルレアルやその他の低価な通貨の購入を考えていくことが大切だと思います。