目次
日本円の預金と外貨預金の一番の違いは、為替レートが影響すること。
おそらく、外貨預金を難しいと捉えている方にとって、一番のネックはここではないでしょうか?
今回は外貨預金のポイントとなる為替レート、円高・円安の仕組み、外貨預金を運用するうえで注意するポイントを中心にご説明します。
1.外貨預金で注意しなければならない為替レートとは?
為替の基本知識
為替レートとは、為替レートとは、「日本円を1ドルに両替するときに、いくら日本円がいるか」という交換基準のことです。
毎日のニュースで「外国為替市場では・・・」「1ドル99円。昨日より1円の円高です。」など放送していますよね?あれがその日の為替レートになります。
各国の経済状況や株は毎日動いていますので、為替レートも毎日変わります。その為替レートが、昨日と比べてどう変化したのか?という指標が、「円高・円安」です。
「円高」は前日と比べて円の価値が上がること。つまり、少ない日本円で多くの外国通貨と交換できること。
「円安」は前日と比べて円の価値が下がること。つまり、より多くの日本円がないと外国通貨と交換できないという状態です。
- 為替レート:外国為替市場で取引される通貨の交換比率
- 外国為替市場:通貨を交換するための市場
- 円高:前日と比べて円の価値が上がること
- 円安:前日と比べて円の価値が下がること
為替と毎日の暮らしの関係
確かに、いきなり為替、円高円安と言われても、なじみが浅いもの。どんなものなのか、イメージがつきにくいと思います。
そこで、私たちの身近な例を取って、暮らしと為替の関係をご説明します。
為替レートの動きが、私たちに一番影響のある場面と言えば輸出入でしょう。別に直接海外と取引しているわけでなくとも、日本はさまざまな食料品、石油などのエネルギー資源を輸入に頼っています。そのため為替レートに動きがあると、商品の価格が変動し始めます。
1ドル80円から1ドル120円になると、円の価値が下がりますので「円安」の状態です。すると、外国から物を買うのに1ドル当たり40円も多く日本円が必要になりますので、輸入に頼っているガソリンや小麦などの食品の価格が高くなります。
逆に、1ドル120円から1ドル80円になると、円の価値が高くなりますので「円高」の状態です。すると今度は外国のものを買うのに1ドル当たり40円もお得になります。そうなると今度は輸入品の価格が安くなるのです。
このように、為替レートは私たちの暮らしと密接にかかわっているのです。
2.円高と円安の仕組み
先に述べましたように、まず外貨預金について知っておくべき基本中の基本は、「円高・円安」です。資格の参考書や学校の教科書などで見かけるのは、次のような説明ですが・・・
あまり実感がない分、この説明ではわかりにくいかと思います。ここでは例を挙げて考えてみましょう。
円高・円安とは?
先ほどもお話ししましたが、円安・円高の用語について説明をすると下記のようになります。
- 円高:前日と比べて円の価値が上がること
- 円安:前日と比べて円の価値が下がること
この、「価値が上がった」「価値が下がった」という現象がイメージしにくいため、ややこしいと思われる方が多いのではないでしょうか?
それでは具体的に、下記のように為替レートが変化した場合について考えていきます。
- 1ドル=100円→1ドル=120円
- 1ドル=100円→1ドル=80円
①と②、どちらが円高で円安でしょうか?意外と「円の金額が多くなったほうが円高」と思っている方がいらっしゃいます。この場合も、「1ドル=100円→1ドル=120円」を円高、「1ドル=100円→1ドル=80円」を円安と思っていませんか?これは逆です!
「1ドル=100円→1ドル=120円」が円安、「1ドル=100円→1ドル=80円」が円高が正解です。
慣れてしまえば見分け方は簡単なのですが、間違ったままでいるとせっかく金利の高い外貨預金も元本割れする危険があります。外貨預金を始める前に、しっかりと理解しておきましょう。
円高・円安の具体例
これは為替についてご説明すると、よく出てくる質問です。確かにややこしいですよね。
では、ここに1個1ドルのお菓子があったとします。
それではこのお菓子を買うには、1ドル=120円の時、1ドル=80円の時、それぞれ日本円ではいくらで買えるでしょうか?
答えは
- 1ドル=120円 → 1個120円
- 1ドル=80円 → 1個80円
簡単ですね。
でもよく見てください。②の方が20円お得に買えていますよね。ここがポイントです
同じ1ドルのものを買うのに、①のときでは「120円も払」い、②のときには「80円でお得に」買うことができています。
つまり、同じものを買うのに…
- 円の価値が「低い」と
=外貨に交換するには円の量が「多く」必要
=1ドル当たりの円の金額が「上がる」
=円安
- 円の価値が「高い」と
=外貨に交換するとき円の量は「少なく」済む
=1ドル当たりの円の金額が「下がる」
=円高
このようになります。これが円安・円高の仕組みです。
こう書いてしまうと、円高の方がお得なように見えてしまいますが・・・これはどちらが良いというわけではありません。
円安・円高には、それぞれ得をする人・損をする人がいます。
例としては、
円安ドル高(1ドル100円→1ドル120円になった時)
- 日本で100円で買えた輸入雑貨が、120円に高くなる
- アメリカで10,000ドルだった車が、8,400ドルで、安く買えるようになる
円高ドル安(1ドル100円→1ドル80円になった時)
- 日本で100円で買えた輸入雑貨が、80円になり安く買えるようになる。
- アメリカで10,000ドルだった車が、12,500ドルに値上がりする。
このように、輸入物が安く買える円高は日本の家計には優しいのですが、輸出産業には厳しいと言えます。特に、金額が大きな自動車産業などは、1円変わるだけでも大打撃を受けます。
このように、為替レートは一概にどちらかに偏ればいいというわけではありません。通貨の価値は常に変動する方が、経済全体としては良いのです。ニュースで耳にする円の動きが毎日変化しているのは、このためなのです。
3.外貨預金で注意しなければならない為替レートの動き
それではここからが本題です。外貨預金では為替レートに気を付けなければなりませんが、具体的にどんなことにかかわってくるのでしょうか?
外貨預金で気をつけなければならないのは、預け入れと引き出しのタイミング。この2つのタイミングの時の為替レートが、利益に大きくかかわってきます。
外貨預金の大きなメリットは、円と外貨の変動=為替変動によって得られる利益ですが、これを「為替差益」と言います。
逆にデメリットはその価格変動によって損益が発生してしまうことです。これを「為替差損」と言います。
例えば、「1ドル100円の時に100万円預け、1ドル120円の時に引き出し」した場合を例に考えてみます。(本来は預け入れ期間に得られた金利・外貨交換時にかかる手数料があるのですが、今回はややこしいので、これらの影響を考えずに計算してみます。)
つまり、10,000ドル預けられます。ではこの10,000ドルを、1ドル120円のときに引き出すと日本円でいくらになるでしょう?
なんと1,000,000円が1,200,000円に増えています。つまり、20万利益が出たことになります。これが「為替差益」です。
しかし逆に、「1ドル100円の時に100万円預け、1ドル80円の時に引き出し」した場合だとどうなるでしょう。同じように考えてみたいと思います。
先ほどと同様、10,000ドル預けられます。ではこの10,000ドルを、1ドル80円のときに引き出すと日本円でいくらになるでしょう?
なんと今度は1,000,000円が800,000円に減ってしまいます。この場合は、20万損失が出たことになり、これを「為替差損」といいます。
まとめると下記のようになります。
出典
預け入れ時のレートよりも引き出し時のレートが円安になれば「利益」、逆に円高になれば「損失」になります。
このため外貨預金を検討する際は、今のレートが円安なのか円高なのか、しっかりチェックしてください。
4.為替レートに注意しながら外貨預金をする方法
さて、ここまで外貨預金に深くかかわる為替レートと、円高・円安について。外貨預金と為替レートの関係について、お話ししてきました。
では実際に外貨預金を行おう!と思った時、どういったことに注意していけばいいのでしょうか?ポイントは下記の2つです。
- 常にレートを確認し、円高・円安の基準を持つ
- 時間を分散して預け入れを行う
では順に説明していきましょう。
常にレートを確認し、円高・円安の基準を持つ
為替差益を出すためには、円高の時に預け入れて、円安の時に引き出す!これが基本ルールになります。
しかし、円高のタイミング・円安のタイミングと言われても、なかなか判断がつきませんよね?基本的には円高・円安の一般的な基準というものはありません。なので、自分でどのポイントを基準にするかを決めて、タイミングを見極めることになります。
まず外貨預金をする前に、為替レートを確認しましょう。と言っても、その日の為替レートのみ確認してもあまり意味はありません。為替レートは動きが重要です。過去1年~5年分の為替の動きを見てみることをお勧めします。
例えば、ドルで外貨預金をするとしてご説明します。まず過去1年間のドルのレートの動きを見てみましょう。「為替 ドル 推移」などと検索すると、過去の為替レートの推移をまとめたHPが出てきます。たいていは、1ヶ月、3ヵ月、6ヶ月、1年、5年など、期間が選べるようになっています。
試しに過去1年間の為替レートの動きを見てみましょう。
2018年8月6日現在 米ドルの過去1年間の推移
出典
これをみると、おおよそ1ドル=105~114円のあいだで推移しています。
ここ1年間で外貨預金の一番の預け時、つまり円高だったのは、1ドル=105円の2018年4月のタイミング。逆に一番の払い出し時、円安だったのは、1ドル=114円の2017年11月のタイミング。そして、平均値は1ドル=110円と言えるでしょう。
そして本日の為替レートは、1ドル=111円。ここ1年間の動きをみると、どちらかというと円安になります。
もしこの期間にリーマンショックなど世界的に大きな経済の動きがない限り、この1年間を基準とするのであれば、1ドル=110円を基準にタイミングを考えたほうが良いかもしれません。
ただし注意すべきなのは、今後の為替の動きは完全に予測ができるものではないということ。経済状況や各国の景気によって変わりますので、ここからより円安になって為替差益が期待できることもあれば、反対に円高になり為替差損が発生することもあります。
では、予測できないリスクを避けるにはどうすればいいでしょうか?それは、時間を分散して預け入れをするということです。
時間を分散して預け入れを行う
外貨預金は、最も円高の時に預入れることが理想ですが、そうはいっても相場の予想は難しいもの。そのため、時間の力を借りましょう。時間の力を借りるポイントは、「時間を分散すること」と「長期間投資すること」の2つです。
まず「時間を分散する」方法とは、複数回に分けて投資したり、複数回に分けて売却することで、その時その時の買値や売値の変動を小さくするというものです。
例えば、下記の図のように為替レートが変化したとき。月々1万円ずつ米ドルを買っていくと、5回平均で1ドル当たり100.86円となります。もし109円の円安時にのみ買って、95円の円高ときに払い出しするのでは為替差損が発生しますが、その後も為替が円高に変動した際に買い増しすることで、平均値を下げることができます。
これを「ドル・コスト平均法」と言います。
出典
次に「長期間投資する」方法ですが、これは長期的に投資をすることで、より買値・売値のブレを少なくするという方法になります。
先ほどのドル・コスト平均法についても、短期間に行うより長期的に行う方が効果的になります。例えば、3ヵ月間分散的に投資を行うとしても、そもそも為替レートの動きはそう変化しません。下記の図を見てもわかるとおり、3ヵ月の動きでは1ドル=108~113円の振れ幅しかありません。反対に、10年の動きでは、1ドル=79~122円までの幅があります。
長期的に投資を行っているとこの振れ幅が大きくなりますので、仮に損失が出ても利益に換えるチャンスが出てきますし、全体でみるとリスクが軽減されることになります。
2018年8月6日現在 米ドルの過去3ヵ月の動き
出典
2018年8月6日現在 米ドルの過去5年間の動き
出典
さらに、外貨預金の場合はこれにプラスして金利による利益がついてきます。そのため、なるべく長期的な運用を前提にして、投資を開始しましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?なかなかわかりにくい円高・円安、為替レートについてご説明しました。基本的に外貨で利益を上げるには、「円高の時に日本円→外貨に換え、円安の時に画家→日本円に換える」のがポイントとなります。
また、円高・円安を判断するには、どこの為替レートを基準とするのか、長期的な為替の動きを見て判断することが重要になります。
人気の海外ファンドなど、外国の会社や団体を対象に投資する投資信託、円高・円安などの為替レートは基礎知識となってきます。
外貨預金で為替に慣れてきたら、投資信託にもチャレンジしてみるのもいいかもしれませんね。