2018年に読み解く!世界的ベストセラー『金持ち父さん 貧乏父さん』

世界的投資家として知られるロバート・キヨサキ氏(以下、キヨサキ氏)が、その名を知らしめた世界的ベストセラー『金持ち父さん 貧乏父さん』。現在は多くのシリーズ本が発売され、世界中の人々に愛読されています。メガヒットの始まりとなった『金持ち父さん 貧乏父さん』が教えてくれる投資の大切さは、初版の発売から18年経った今もなお響きます。今回は、金言の詰まった同書のポイントを解説していきます。

自費出版から驚異的な売り上げ 世界的ベストセラー『金持ち父さん 貧乏父さん』

改訂版 金持ち父さん 貧乏父さん:アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学

同書を手がけたキヨサキ氏は、1947年4月8日生まれの日系4世のアメリカ人。アメリカを中心に投資活動を行う投資家です。すでに投資やビジネスで成功をおさめ、誰しもが一度は夢見る二度と働かなくてもいいお金持ちの一人と見なされています(そしてキヨサキ氏自身も「経済的自由を得た」と度々述べます)。

そんなキヨサキ氏が1997年に自身の投資哲学やノウハウを詰め込んだ『金持ち父さん 貧乏父さん』をアメリカで自費出版すると、次第に売れ行きを伸ばして、ニューヨーク・タイムズでベストセラーとして紹介されるまでに至りました(ベストセラーリストには、6年という異例の長さで載り続けました)。日本でも、2000年に翻訳出版されています。

その後、『金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント』『金持ち父さんの投資ガイド[入門編][上級編]』など次々と新作が刊行され、今や20冊以上の人気シリーズになりました。シリーズ全体での累計発行部数は395万部を記録。全世界で4000万部という数字を残しています。

2018年現在も、その人気は衰えていません。書店の経済・投資コーナーに並べられた同シリーズの書籍を見かけた方も少なくないでしょう。

投資の重要性を分かりやすく解説「給料の額によって決められた人生なんて、本当の人生じゃない」

お金にまつわる人生の不思議、感じたことありませんか?

かくいう筆者も、昔この本を手に取って読んでから、投資の大切さ(そして資産が持つ意味と効果)をよく理解しました。こう言うと大げさですが、投資の「と」の字も知らず、お金と言えば銀行にコツコツ貯めるだけの学生に過ぎなかった私にとって、本書の内容は目からウロコの連続でした。衝撃的だったと言っても良いでしょう。

それでは、一体何が衝撃的だったのか。

まず一つは、今までぼんやりとしかイメージできなかった資産の何たるか、資産がもたらす経済的な自由について教えてくれたことです。普段から投資に親しんでいる方なら「なんだそんなことか」と思うかもしれません。逆に投資にうとい人ほど、本書は驚きの世界観を示してくれるでしょう。後ほど説明しますが、本書では、資産がもたらす効果を小学生でも分かるように解き明かしてくれます。

そして資産を増やすための投資という行為の重要性。お金と言えば貯金するかアルバイトをして稼ぐしかなかった私にとって、お金との新しい関係を築くきっかけになりました。

また、本書に記された数々の金言も胸に刺さりました。

「本当にお金に興味がないなら、なぜ働いているんだ?」

「貧乏や金詰りの一番の原因は国の経済や政府、金持ち連中のせいなんかではなく、恐怖と無知だ」

「給料の額によって決められた人生なんて、本当の人生じゃない」

(『金持ち父さん 貧乏父さん』より)

当時、20数年のわずかな人生の中で目にしてきた数々の大人たちを見て沸いていた疑問に、本書が一種の答えをくれた気がしました。投資本の枠におさまらず、人の一生や価値観に大きな示唆を与える点が、本書の人気の秘訣ではないでしょうか。

ポケットからお金が出ていくのが負債 ポケットに入るのが資産

あなたの人生の中にもいたかもしれない貧乏父さん。お金に対するネガティブな姿勢を持っています。

『金持ち父さん 貧乏父さん』では、タイトルどおり2種類の父さんが登場します。お金持ちの父さんと貧乏なお父さんです。2人の父さんは、お金を軸に、正反対の考え方と行動をとります。

「二人の父はどちらも生涯を通じてよく働いた。二人とも仕事はうまくいっていて収入もけっこう多かった。それなのに、一方の父は家族への遺産だけでなく、慈善事業や教会の活動にも何千万ドルという金を遺した。もう一方の父が遺したのは未払いの請求書だけだった」

「貧乏な父親が貧乏なのは、稼ぐお金の量が少ないからではなく、考え方や行動の仕方が原因なのだということに思い当たった」

(『金持ち父さん 貧乏父さん』より)

私たち読者は、この二人の生き方を通じて資産と負債(そして支出)の違いを学んでいきます。もちろん、私たちにとって金言となるのは、金持ち父さんの言葉です。

「中流以下の人間はお金のために働く」

「金持ちは自分のためにお金を働かせる」

「大事なのはどれだけのお金を稼げるかではなく、どれだけのお金を持ち続けることができるかだ」

「お金持ちになりたければ、お金について勉強しなければならない」

「問題は彼らが資産ではなく負債を買うために生涯を費やしていることだ」

(『金持ち父さん 貧乏父さん』より)

「お金を持つ」と書いてお金持ち。稼ぐ能力はもちろんですが、手元にあるお金を保有し続ける能力も大事だと語ります。そんなキヨサキ氏が教える資産と負債の究極の違いはこれです。

「資産は私のポケットにお金を入れてくれる

負債は私のポケットからお金をとっていく」

(『金持ち父さん 貧乏父さん』より)

ポケットに入る・入らないをチェックするために、家計簿をつけるという手もあります。キヨサキ氏は、会計学を学んで数字に強くなることを推奨しています。

いかがでしょうか? 非常にシンプルな回答です。この定義にもとづけば自動車ローン、クレジットカードの未払い分は全て負債。「資産だ」と間違えがちな、ローンで購入した持ち家も負債に当てはまります(キヨサキ氏は持ち家など巨額の負債を購入することは、投資の機会損失になると注意しています)。また税金や食費、水道光熱費、交通費、遊びに使うお金など「支出」もポケットからお金をとっていきます。

※なお、この論理から考えると「養育費や学費がかかるという観点から見て、子どもは負債」と言えます。しかし本シリーズでは、子どもを育てることや寄付することは、人生を豊かにする別次元の話と見なされています。くれぐれも誤解のなきように。

一方、資産は私たちにお金を入れてくれるものです。例えば株や債券、投資信託、不動産や印税、特許権などが当てはまります。つまり、本当の資産は「自分がその場にいなくても収入を生み出すビジネス」、不労所得を生み出します。

「一番大切なことは資産と負債の違いを知ることだ。その違いが分かったら、次は収入を生む資産を買うことだけに努力を集中する。これがお金持ちになるための道を歩み始める最善の方法だ。この方法を実行し続ければ資産の欄が大きくなっていく。その一方で、負債と支出は低く抑えるように努力する。そうすれば資産の欄につぎ込むお金を増やすことができる」

(『金持ち父さん 貧乏父さん』より)

資産はさらなる資産を産む!目指せ“ラットレース”からの卒業

アメーバ増殖のごとく、資産が資産を増やす展開に早く持ち込めるか。

資産と負債の違いをはっきりさせることで、私たちを経済的にサポートしてくれるものと、そうではないものを見極めることができます。あとはキヨサキ氏の言う通り、資産を買うことにひたすら集中すれば、ポケットに入るお金がどんどん増えていきます。

資産を増やすプロセスは、いわば小学生でも分かる足し算・引き算(あとは使っても掛け算・割り算)の世界です。毎月◯万円の収入を生む不動産を手に入れる。年間◯千円の配当と株主優待が手に入るA社の株を購入する。そうやって定期的に収入を生む資産を買い続けると、バカにできない収入になり、あるタイミングで生活に余裕が生まれてきます。それを実感できるタイミングがやって来ます。

それは毎月の生活費への影響が出てくる時です。毎月30万円で生活していたところに、毎月5万円、10万円、15万円……と資産収入が入ります。すると同収入が自身の生活費の損益分岐点に近づき、金銭的余裕が生まれます。その頃には投資に対する知識や経験も増え、資産に費やした金額もかなり膨らんでいることでしょう。すると何が起きるのか。

「資産の基礎は意外と早く作れる。そうしたらもっと投機性の高い投資に目を向ける余裕ができる。投機性の高い投資というのは二倍から無限大の成長の可能性を持つ投資だ」

(『金持ち父さん 貧乏父さん』より)

投機性の高い投資は、成功すれば莫大な利益を生みますが、逆に失敗すれば莫大な損失を出します。そこで勝負に勝って、資産をさらに増やしていこうというのです。

※なおキヨサキ氏の言う「投機性の高い投資」や、実際にどんなものに投資してきたのか、どんな風に投資の良し悪しを見極めたのかは、シリーズ本『金持ち父さんの投資ガイド』の[入門編][上級編]などでより詳しく解説しています。

本書では、資産を貯めないで、あくせく働いて毎月給料をもらって生活費や税金を払う……という、多くの社会人が経験するであろう永遠のループを、ネズミが回し車もいつまでも走り続ける様に似ていることから“ラットレース”と表現します。逆に資産が資産を産み続けて生活がどんどん楽になっていく状況(お金持ちに近づく状況)を“ファーストトラック(高速レーン)に乗る”と表現しています。

生活費を上回る資産収入が出来上がると、投資に費やす時間も増やすことができます。その後はまさに、高速レーンを突っ走るように資産が増えに増え続ける?

キヨサキ氏は、このラットレースから早く抜け出してファーストトラックに乗ること(投資で成功すること)を推奨しています。それは不労所得のみで生活できる状況、つまりプチ資産家になったことを意味します。

不動産投資を中心に解説も……2018年の日本は超少子化社会突入 

『金持ち父さん 貧乏父さん』では、投資先として不動産がよく取り上げられます。その理由は、ズバリ著者のキヨサキ氏が不動産を中心とした投資業で成功したから。どれくらいの資金から始めたのか、どんな物件を買ってきたのか。また住宅ローンの利子や固定資産税などの扱いについて解説しています。

ただし、2018年の日本人から見ると、注意が必要です。

まずその解説の多くはキヨサキ氏が生活の拠点を置く米国の税制を前提に書いています。例えば日本は、固定資産税がアメリカより高いので税制面で不利です。本書を読んで「不動産投資をやりたい!」と思った方は、そうした日米の不動産事情の違いから勉強する必要があるでしょう。

また不動産投資自体に注意が必要です。不動産投資は、賃貸契約などを結ぶこと、言いかえれば自分たち以外の誰かが利用してくれることが前提です。しかし日本は超高齢化社会に突入しようとしており、「2053年には、総人口が1億人を切るのではないか」と少子化問題が叫ばれています。現在、日本の総人口が約1.2億人ですから、35年後に総人口が約17%減少する計算です。これは大きな数字です。約2千万人ですから、東京都の総人口(約920万)の2倍超の人がいなくなることになります。若い世代にとって非常に深刻な問題です。

キヨサキ氏が不動産投資で資産の基礎を気づいた時期は、1990年が中心です。アメリカは、右肩上がりに総人口が増えています。キヨサキ氏も、時代の潮流に乗った点があるということを留意しましょう。

不動産の話に戻りますと、すでに人口減少の影響は出ており、地方を中心に空き物件が増えています。加えて、近年増えてきているアジア系の外国人居住者の賃貸トラブル(騒音問題や不法滞在問題)などもあり、色んな面から考えてビギナーにはより難易度の高い投資になりつつあることを念頭に置いて、判断しましょう。

資産の種類は豊富 新たに仮想通貨も台頭 まずは勉強をしよう

とはいえ2018年現在は、キヨサキ氏が不動産で財産をなした1990年代に比べて、投資対象となるものが大いに増えました。日本では不動産投資、株式投資、投資信託、FXなど以外にも自動販売機ビジネス、カーシェアリング、民泊……などなど新しい形態の投資ビジネスが存在します。

中でも新しい投資方法の一つが仮想通貨です。文字通り、ネット上に「仮想の通貨」を設け、株や為替取引のように、価値の上げ下げの利幅を狙えます。2009年に運用がスタートしたビットコインは、わずか8年で大幅に価値を高め、2017年12月に210万円以上の最高値をつけました。後に、コインチェック騒動などを受けて大幅に下落したものの、いまだに70万〜100万円台をキープしています。

タイミングさえ見極めれば、チャンスはゴロゴロ転がっています。ただどんな投資でも、まず大切なのは勉強です。勉強をして投資マインドを養う必要があります。

「重要なのはお金に関する教育と知恵だ。スタートは早ければ早いほどいい。本を買ったりセミナーに出席するのもいい。実際にお金を運用してみるのもいい勉強だ。はじめは小さい金額でもいい。私は六年たらずのうちに、五千ドルの現金を月々五千ドルのキャッシュフローをもたらす百万ドル相当の資産に変えた。だが、私の場合は幼い子供の頃にお金に関する勉強を始めた。お金についての勉強はぜひやってみてほしい。というにも、それはそれほどむずかしいものではないからだ。それどころか、コツをつかんでしまえば簡単だ」

(『金持ち父さん 貧乏父さん』より)

誰もが「勉強する」というと学校の座学をイメージしますが、現代は学校に通わずとも、書籍(電子書籍も)や動画など様々な媒体を通じて、好きな時に・好きな場所で学ぶことができます。もちろん投資自体も、パソコンやスマートフォンを通じて取引が可能です。そういう意味では、我々はかつてない投資環境を享受していると言えるかもしれません。

今回は以上です。大事なポイントだけを紹介しましたが、『金持ち父さん 貧乏父さん』は今回触れることのできなかった資産を増やすための心がまえや投資にまつわる勉強をすることの大切さ、投資テクニック(※アメリカの税制に即した内容になっているので注意が必要)などを多数紹介しています。一部ストーリー仕立てになっており、そのストーリーを読み進めたほうが、より資産や投資に対する理解が深まります。気になった方は、ぜひ実際に手に取って読んでみてください!

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