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今日では情報化社会を背景に、充電によって使用可能な通信機器、電化製品が身近にあふれています。充電は、日常生活においてごく当たり前に繰り返されている行為です。
充電に必要な電池の技術は、これからの車や住居、私達の生活スタイルを大きく変えていくことが予想されます。そこで、いかに高性能の電池を製造できるかが多くの電機業界の課題ともなっています。
そんな中、株式投資をはじめながら、電池関連の株ならどんなものがいいのかと頭を悩ませている人も多いのではないでしょうか。
リチウムイオン電池のことは聞いたことがあっても、その電池の材料である黒鉛のことを知っている人は少ないと思います。
今回はこの黒鉛とは何なのか?そして黒鉛関連株をいくつかご紹介しておきたいと思います。
リチウム電池の材料に欠かせない黒鉛とは?
私達の、便利で快適な生活に必要不可欠なリチウムイオン電池にはリチウムだけでなく様々な材料が使われています。
高効率や大量生産化に向けて、各電池関連企業は長年に渡り、地球上に存在するありとあらゆる材料の研究開発に余念がありません。
マグネシウム、ナトリウム、銅、銀、プラチナ、チタンなどの素材の可能性が注目される中、特に黒鉛(こくえん)が欠かせない素材の1つであるということで、最近注目されているのです。
リチウムイオン電池の需要が今後上昇していくことは、明らかに疑う余地はなく、ただ、どのような素材を使うかによって、その電池の性能に大きな差が出てしまいます。
そこで、黒鉛はその電池の性能を高めるために欠かせない素材として、本年度に入り黒鉛の著しい価格の上昇が見られているのです。
値上げが続く黒鉛
2017年に入ってから、EV(電気自動車)に使用される電池の負極材として、黒鉛の需要が高まっており、数か月おきの値上げが繰り返されきました。
日本で製造される黒鉛は高品質であることから、技術開発で飛躍を狙う中国自動車メーカーの中には1トン200万円での取引も提案されているとのことです。
中国をはじめ、EVの開発を急ぐ世界の各自動車メーカーの需要によって、この日本の黒鉛の価格が上昇し続けているのです。
そんな背景もあり、さらに7月に入ってからは東海カーボン、昭和電工、東洋炭素などが黒鉛の値上げに踏み切っています。
リチウムイオン電池に使われる黒鉛
そこで、なぜそこまで黒鉛が電池の製造に必要とされるのかを解説していきたいと思います。
通常はよほど電気の仕組みに関心がないかぎり、電池の中身のことなどは考えないものです。しかし、株式投資にて高い利益をあげていくためには、このリチウム電池の素材をしっておくことは非常に有利であるといえます。
リチウム電池の構造
そこで、リチウム電池の構造を簡単に理解しておきましょう。電池は大まかにプラス極とマイナス極に分かれます。
※セパレータ→とは絶縁体ともいわれるもので、プラス極とマイナス極をそれぞれ分離させるために使われている素材です。
プラス極とマイナス極
プラス極とマイナス極はそれぞれ、正極、負極とも呼ばれています。
正極材としては
- コバルト酸リチウム
- ニッケル酸リチウム
- マンガンさんリチウム
- リン酸リチウム
- ニッケル、マンガン
など・・・約5種類ほどがメインに使われています。
負極材としては
- 黒鉛
- チタン酸リチウム
と選択肢が少なくなり、現時点で商品化されている負極材はこの2種類に限定されてしまうわけです。
黒鉛の代替え品がないという部分が、黒鉛の価格をさらに値上げさせる原因ともなっているのです。
リチウム電池と黒鉛電極の推移
1991年:ソニー・エナジー・テックが世界で初めてのリチウムイオン電池を商品化。(現在、村田製作所によって運営)
1993年:エイ・ティーバッテリー(旭化成と東芝の合併会社)によりリチウムイオン電池の商品拡大化が進む。
1994年:三洋電機によって黒鉛を負極材とするリチウムイオン電池が商品化される。→すでにこの頃から負極材としての黒鉛が注目され始めていたのです。(現在、パナソニックによって運営)
2000年代:電炉の黒鉛電極の需要は増加し、中国が主導する形で上昇トレンドを保ちます。
2012年:リーマンショックにより、一時、黒鉛電極の価格は低下しますが、2012年に向けて本格的な上昇トレンドを見せ高値圏にて推移していきます。
2017年:2013年以降に、中国の生産体制に変化により黒鉛電極の価格は軟化していく傾向を見せますが、2017年末には黒鉛電極の価格は主要企業による値上げによって高騰しました。
2018年:一旦、価格高騰を終えた黒鉛電極は今後の進展が危惧される傾向もありましたが、加速するEVの負極材としての需要が期待され、再びその値動きが注目されています。
なぜ黒鉛が使われるのか
では、なぜ黒鉛が負極材として使われているのか、そして、なぜその他の負極材と代替えができないのか解明していきたいと思います。
黒鉛とは
グラファイト(炭素からできた結晶)と呼ばれる鉱物の1種です。
黒鉛は天然黒鉛と人工黒鉛の2種に分けることができます。
天然黒鉛とは地中近くから発掘された、鉱物で炭素を多く含んでいることからカーボングラファイトまたはカーボンブラックと呼ばれることもあります。
人工黒鉛とは工業用として人工的に作られたものになります。パウダー状にすることで電子部品など小型なものへの使用を可能にしたり、その他ゴムなどの成分と混ぜたりすることができます。
黒鉛と鉛の違いは
いいえ。鉛とは関係ありません。
黒鉛と書かれるようになったのは、昔は黒鉛に鉛が含まれていると考えられていて、当時の勘違いでつけられた名前がいまだに使われているだけなのです
黒鉛は炭素が集まってできたものです。炭素が高温・光熱などによって、ある特殊な炭素の成分へと変化してしまったものが黒鉛です。
炭素はカーボンといわれるもので、石油・石炭・アスファルトなどに熱が加わることによって生じる成分でもあります。
ある物質が長年地中に埋もれてしまい、灰や炭に変化して地中の温度が変わったりすることでできるものです。木が燃えると炭になってしまうことも炭素や黒鉛の仲間だということができます。
※この炭素や黒鉛は、その成分や結晶体によりさらに細かく分類されていきます。
チタンと黒鉛の違いは
先述のように、リチウムイオン電池のもう1つの負極材として、チタン酸リチウムというのがありました。
今のところ、2種類しかない負極材ではありますが、どうして黒鉛の方に著しい需要が見られるのでしょうか。
黒鉛が負極材いに使われている理由
- 耐熱性、熱伝導性が高く、急激な熱変化にも対応できる。
- 電気を通す能力に優れている。
- 軽くて加工が容易である。
- 他の成分の影響を受けにくい。酸・アルカリに強い。
- 他の成分へ影響を与えない。同時に使う他の部品を痛めない。
このような他の材料には見られない、優れた特性があることから、電池の材料としてだけでなく半導体・電機部品・自動車、航空宇宙機器などと多方面にわたって黒鉛が使われています。
チタンの特性
チタン合金による炭素の開発も行われており、東芝はリチウムイオン電池の負極材としてチタン酸リチウムを使用しています。
どれだけの電気を蓄えられるのか、といった点ではチタンは黒鉛の約5,6倍の容量の蓄電が可能となり優位性を見せています。
ところが、電圧に弱いといった性質が大きな欠点となり、用途が限られてしまい、今後の開発次第によるというのが現状です。
ただ、長期的な株式投資の材料としては、気になるところでもあります。
黒鉛のその他の用途は
それが意外なところで、身近にたくさん使われているのです!
スマホ、太陽光パネル、建材、カーナビ、LEDライト、電化製品など・・・、車のタイヤにも使われいます。
電気炉→鉄を作る方法には、一度利用した鉄スクラップを溶かしてリサイクルする「電炉方式」と呼ばれる加工方法があります。この炉の中で黒鉛は鉄を溶かす役割をしています。
カーボンブラック→ゴムに添加剤として使うものです。強度や粘着力、摩擦による抵抗の補強などに使われる黒鉛です。
タイヤやゴム製品が黒いのは、黒鉛が使ってあるからなのです。
その他にもインクや塗料の黒色を強調するためにも使われています。
このようにさまざまな用途に対応できるのが黒鉛の魅力でもあるのです。
黒鉛の今後の可能性
市場では、このような黒鉛に、熱い期待が集まっていますが、今後はどのような展開が予想されるのか考えてみたいと思います。
黒鉛の不安材料
どんなに期待の集まる企業や商品、素材であろうとも、明るい観測ばかりではありません。黒鉛の将来を懸念する声は存在しないでないのです。
黒鉛の不安材料は・・・
これまでの強気な値上げは、中国企業による需要の高さが要因でしたが、中国での黒鉛の生産状況が変化する可能性があるということです。
中国では近年、ずさんな工業の管理体制による、大気汚染、水質汚染、農作物や人間の健康への影響が問題になっていて、環境規制制度が増強されています。
ところが、本年度に入ってから、環境規制に対応できる設備を整えた工場の再稼働が始まっており、上昇し続ける黒鉛企業の株価は4月に暴落傾向におちいったことがありました。
それでも、やはり中国で摂れる黒鉛の質が低いこと、性能の高い黒鉛の生産技術を有していないことなどから、再び黒鉛関連株への期待が集まったということなのです。
黒鉛の生産
黒鉛は先述したように、地中から摂れる自然の鉱物と、人工的に製造される黒鉛とに分かれます。
自然鉱物という視点でみると、黒鉛の生産国は・・・
- 中国
- インド
- ブラジル
- カナダ
- 北朝鮮
- メキシコ
- ロシア
・・・・となり、日本は20位以内にも入っていません。
黒鉛の加工
ところが人工的に黒鉛を製造する技術は、世界的にもわずかな数の企業となってしまうのです。その中に日本のいくつかの黒鉛企業が含まれているのです。
天然の黒鉛だけでは、それを電池の材料にしたり、電子部品などの素材として使うことはできません。
それを電極として使ったり、工業用として使うためには、さらに加工していく特殊な技術が必要となるのです。
そのように、半導体や高精度の部品に必要とされる黒鉛は、ミクロン単位の微細な炭素の粒子へと加工し、多彩な用途に適したサイズ、形状であることが要求されています。
ナノカーボンの技術
そして、人工黒鉛は、ナノ単位にまで分解され今後のテクノロジー技術に対応していく取り組みがなされているのです。
黒鉛の価格
このように、ごく限られた数の企業にしかできない黒鉛の技術と、代替えが不可能な電極としての黒鉛の存在が、今後もさらに黒鉛の単価を挙げていく要素として考えられているのです。
EVや通信機器、各種電力設備等において、今後は電池の使用をさけることは不可能です。電池に関連する機器や設備なりを製造する限り、提示された価格の黒鉛を入手する以外に方法はない、というのが黒鉛の将来の強みとなるでしょう。
ですから、高品質=安全性が高い=高価な黒鉛関連株は今後も上昇を続けていくと見ることができるでしょう。
黒鉛関連株に投資する
それでは、将来に備えて株式投資をお考えの人のために、おすすめの黒鉛関連企業をいくつかご紹介したいと思います。
昭和電工(4004)
- 黒鉛電極では世界トップシェア。黒鉛の値上げ浸透中。
- 石油化学、化学品、アルミニウム、その他鉄鋼、電子部品など扱う。
- 電炉向け需要が拡大。
- 2017年にドイツSGL・GE社を買収しトップへの道を獲得。
- 半導体、電池材料、アルミ包装などで今後の展開を図る
※現在、株価は5,500円前後で10年来の高値更新中。アルミ関連を取り扱うことで生じる貿易摩擦の影響や、その他石油製品の比重が大きいため、原油価格の影響も受けやすいというデメリットもあります。
しかし、それでも純利益は順調に拡大中という、企業の強さを感じる株です。
日本カーボン(5302)
- 炭素繊維が事業の大半を占める。
- 航空宇宙向けの新素材を開発中。
- 黒鉛電極の需要から大幅増益を実現。
- 航空機エンジン部品の本格的出荷が開始。
- プラスチック、セラミック繊維である炭化ケイ素繊維の商品化。
※現在、株価は6,000円前後、しばらく下降基調にあったが最近上昇傾向にあり、先日は一気に140円値上がりしました。
東海カーボン(5301)
- 国内での電極シェアはトップ、世界でも10位以内。
- カーボンブラック、黒鉛をメインとした事業。
- タイヤ業界での営業利益は今期44%増。
- 電極では17憶4,800万の増益。
- 2018年12月期の営業利益は前期比の約6倍超えを予想。
※2009年のリーマンショック以降は、何とこの株は500円から200円の間を推移していたのです!EVの需要とともに、2017年以降に急上昇を重ね、現在の株価に至ったという神話的な存在でもあり、おすすめ株の1つです。
その他の黒鉛関連株
- 東洋炭素(5310)
- 日本ルツボ(5355)
- SECカーボン(5304)
- JXHD(5020)
- 三菱ケミカル(4188)
など・・・ 炭素を取り扱う企業は多いのですが、黒鉛となると企業の数は限定されてしまいます。
まとめ
株式投資をする上では、市場がどのような株式の材料に注目しているかを敏感に感じ取ることは必須の能力となります。
かといって、値上がりランキングにすでに出現ている株を追いかけても、すでに手遅れとなる場合も多々あります。
こまめに日経新聞などを読んだり、身近にある商品で時代の流れを感じ取っていくようにしたいものです。
例えば近所に車の充電用の設備ができたなとか、会社の同僚がハイブリッドカーを購入したなと気付くことで、車の燃料について調べることができます。
また、スマホの電池など充電可能な電池が増えてきたな、セブン-イレブンが電池を製造しはじめたなとか、身近なところから株式投資の材料を選ぶきっかけを探してみましょう。
極力、周りが注目を始める前に手をつけておくことも、株式投資で大きく稼ぐポイントとなります。黒鉛はその他の電池関連株に比べまだまだ知名度の低い業種でもあります。この機会に黒鉛関連株でもお気に入りを見つけておきましょう。