【FP解説】生命保険を見直す5つのポイント。適切な7つのタイミングも解説

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一生のうちに高い買い物をする機会は幾度となくあるはずです。その中でも生命保険は、長い間保険料を払っていく以上、ほとんどの人にとってはマイホームの次くらいに高い買い物になるでしょう。だからこそ「今、自分に必要な生命保険は何か」を考え、時には見直しをしていくことで、保険料を押さえつつ、必要な保障を確保することができます。今回の記事では

  • 生命保険を見直すべき理由
  • 生命保険を見直す際のポイント
  • 生命保険を見直すべきタイミング

について解説しましょう。

生命保険を見直すべき理由は?

最初に、そもそもなぜ生命保険を見直すべきなのかについて

  • ライフステージに応じて必要な保障は変化する
  • 見直すことで保険料が安くなることもある
  • 後になって「こんなはずじゃない」と後悔することもある

の3つの理由から解説します。

ライフステージに応じて必要な保障は変化する

生命保険の場合「小さい子どもがいる場合」と「子どもが独立している場合」とでは、必用な保障は全く異なります。前者の場合は、自分に万が一のことがあっても、せめて大学までは不自由なく卒業できることを見越して、生命保険で必要な金額を確保できるようにしておかなくてはいけません。

一方、後者の場合は、まとまったお金を遺さなくてはいけない特殊な事情でもない限りは、生命保険による保障は最低限(葬儀の費用に充てる程度)あれば十分なはずです。必要もないのに、保障額が大きいと、無駄な保険料を払い続けていく羽目になるかもしれません。

見直すことで保険料が安くなることもある

従来は、保険といえば代理店を通じた対面販売が基本でした。しかし、近年はインターネット専業の保険会社が登場したり、老舗の大手保険会社がグループ会社としてインターネット専業の保険会社を設立したりなど、オンライン化の波が確実に押し寄せています。

一見、インターネット専業というと「保険料は安いけど、保障が受けられないの?」と不安になるかもしれません。

しかし、インターネット専業の保険会社も視野に入れて見直しをすれば、保険料の大幅な節約にも役立つのです。

インターネット専業の保険会社も侮れない

近年は顧客満足度調査で高いスコアを獲得するインターネット専業の保険会社も現れています。顧客満足度調査を行っている日本のコンサルティング会社・J.D. パワー ジャパンが発表したところによれば、生命保険を扱う保険会社の顧客満足度調査で上位3つに入ったのは、以下の保険会社でした。

  • 第1位:プルデンシャル生命
  • 第2位:ソニー生命
  • 第3位:FWD富士生命、ネオファースト生命

出典:2020年生命保険契約満足度調査 | J.D. Power

1位に輝いたプルデンシャル生命や2位に輝いたソニー生命、3位のFWD富士生命は、専門の担当者が付く販売方法をとっています。しかし、もう1つの3位に輝いたネオファースト生命は、大手保険会社の第一生命傘下のインターネット専業の保険会社です。「専門の担当者に聞きながら選びたい」という人には物足りないかもしれませんが「保険料の節約を重視しつつ、必要な保障はちゃんと確保したい」という人なら、インターネット専業の保険会社の商品も含めて検討する価値はあるでしょう。

後になって「こんなはずじゃない」と後悔することもある

生命保険が役に立つのは、被保険者に万が一のことがあった時です。仮に、生命保険の内容をよく確認もせず、契約したときのままにしていて、万が一のことがあった場合、必要な保障が受けられない可能性も十分にあります。

万が一のことがあってから「こんなはずじゃない」と後悔しても遅いです。「転ばぬ先の杖」という言葉があるように、生命保険の見直しは、元気なうちに手を付けておきましょう。

生命保険を見直す5つのポイント

次に、生命保険を見直す場合にチェックすべきポイントとして

  • 保険の種類
  • 保障金額・解約返戻金・満期金の額
  • 保障期間
  • 保険料
  • 被保険者・保険契約者・保険金受取人

の5つを解説しましょう。

ポイント1.保険の種類

生命保険を含む保険商品を「支払った保険料の扱い」で分けると

  • 掛け捨て型
  • 貯蓄型

に分かれます。まずは、自分が今まで入ってきた生命保険が、どちらにあたるのか確認しましょう。

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両者の違いを、分かりやすく表にまとめました!

 

項目 掛け捨て型 貯蓄型
保険料 安い 高い
戻ってくるお金 ほぼゼロ ある(解約返戻金、満期保険金など)
特徴 保険料に対して得られる保障が大きい
仕組みが簡単
定期保険の場合、更新すると保険料が高くなりがち
貯蓄効果はあるが、保障を重視する場合には不向き
仕組みが複雑
早いうちに解約すると損することも

ポイント2.保障金額・解約返戻金・満期保険金の額

生命保険を含む保険で大事なのは「何があったらいくら給付金・保険金が受け取れるのか」ということです。また、貯蓄型保険の場合は、解約返戻金や満期保険金が設定されています。

  • 保障金額
  • 解約返戻金
  • 満期保険金

の額は、保険証券や契約者専用Webサイトを利用し、必ず確認しましょう。

ポイント3.保障期間

また「何があったらいくら給付金・保険金が受け取れるか」と同じくらい重要なのが「保障がいつまで続くのか」です。生命保険の場合、保障期間を基準にさらに細かくわけると

  • 定期保険
  • 終身保険
  • 養老保険

の3つに分かれます。

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こちらについても、表にまとめました!
項目 定期保険 終身保険 養老保険
保障期間 一定期間 一生涯 一定期間
満期保険金 なし なし あり
解約返戻金 なし(掛け捨て) あり あり
保険料 安い 定期より高い 定期より高い

ポイント4.保険料

生命保険を含め、保険は保障される範囲が広く、保障金額が高く、保障期間が長くなればなるほど、保険料が高くなります。そのため、自分たちに支払える保険料の額を考えつつ、どれだけの保障が受けられるかを勘案したほうがいいでしょう。

1年間の生命保険料の支払いの平均額は?

生命保険文化センターがまとめたところによれば、年間払込保険料(個人年金保険の保険料を含む)は男性で平均23.4万円、女性で平均16.8万円とのことです。世帯でみると38.2万円になります。

出典:生命保険の保険料は年間どれくらい払っている?|公益財団法人 生命保険文化センター

また、1年間に支払う保険料の金額の分布をみると男性は「12~24万円未満」、女性は「12万円未満」が最も多くなっています。

つまり、男性の場合は毎月2万円程度、女性の場合は1万円を切るパターンも少なくない、ということでしょう。女性が1年間に払う生命保険料の金額が男性のそれより少ないのには、専業主婦の場合はもちろん、共働き家庭であっても、男性のほうが収入が多く、負担する生活費が大きくなっているパターンのほうが多いことが考えられます。つまり、男性に万が一のことがあった場合、その家庭は大幅な収入減に見舞われることから、生命保険に加入して、生活費の不足分を担保しているのです。

実際に保険料を払いすぎているかどうかは

  • 生命保険による保障が必要な金額
  • 個々の家庭事情

によっても異なるので、この平均額を上回っているからと言って、一概に「保険料を払いすぎ」と決めつけることはできません。

しかし「自分たちは保険料を払いすぎでは?」と思った場合は、平均値と見比べてみるといいでしょう。

ポイント5.被保険者・保険契約者・保険金受取人

ずっと昔に契約した保険のままだと、保険金受取人が亡くなった家族だったりすることもあり得ます。こうなると、万が一のことがあったとしても、保険金を受け取ることができないので、注意が必要です。保険証券や契約者専用Webページを確認したり、保険会社の担当者やコールセンターに連絡して確認してもらいましょう。

組み合わせ次第で税金が変わることにも注意

被保険者だった人に万が一のことがあった場合、保険会社から死亡保険金を受け取ることになります。死亡保険金には税金がかかりますが、契約者、被保険者、受取人の組み合わせによって、どんな税金がかかってくるのかが全く異なるので注意が必要です。わかりやすくするために、Aさん、Bさん、Cさんの3人家族を想定し、表を作ってみました。

契約者 被保険者 受取人 契約形態 かかる税金
A A B 契約者と被保険者が同じ 相続税
A B A 契約者と受取人が同じ 所得税
A B C 契約者、被保険者、受取人がそれぞれ異なる 贈与税

生命保険の見直しに適切な7つのタイミング

最後に、生命保険の見直しに適したタイミングとして

  • 結婚
  • 出産、子どもの成長
  • 離婚
  • 独立、起業
  • マイホーム購入
  • 子どもの独立
  • リタイヤ

の7つについて解説しましょう。

結婚

独身のうちは、自分が働いて家族の生活を支えているなどの特殊な事情がない限りは、生命保険は必須ではありません。しかし、結婚した場合、家族が増えることになるので、万が一のことに備える必要はやはりあるでしょう。近年ではどちらかといえば少数派ですが、結婚をきっかけにパートナーが専業主婦・主夫になる場合、働き手になっている人に万が一のことがあると、その後の生活が立ち行かなくなってしまいます。

そのため、生活費としてまとまったお金が入ってくるように、生命保険を検討する必要があるでしょう。亡くなった後の生活を保障するという意味では、収入保障保険も検討の余地があるはずです。

一方、結婚後も共働きを続けるなら、どちらかが専業主婦・主夫になるパターンに比べると、生命保険の保険金額は低くてもいいかもしれません。

出産

子どもが生まれた場合、生命保険の必要性はますます高まります。もちろん、万が一のことがあっても生活が崩壊しないほどに蓄えがあるなら問題ありませんが、多くの人にとってはそうではないはずです。

子どもが生まれたら、成長していく途中に万が一のことがあったとしても、大学までは問題なく通ってもらえるほどの保険金を受け取れるようにしておくのが無難です。

離婚

「結婚したカップルのうち、3組に1組は離婚する」と言われています。それくらい、離婚は珍しいことではありません。離婚をしたからといって後ろ指をさされることもないのですが、生命保険の扱いには注意しましょう。保険金受取人を離婚した元パートナーにしていた場合、万が一のことがあった場合には、保険金が元パートナーに渡ってしまいます。

元から元パートナーに渡したいつもりであったなら何ら問題はありませんが、そうでない場合は、保険金受取人は必ず変更してもらうようにしましょう。

手続き自体は、保険会社に連絡すればすぐに対応してもらえるので、あまり構える必要はありません。

独立、起業

日本の場合、サラリーマンなどの給与所得者であれば、在職中に万が一のことがあった場合に死亡退職金が受け取れるケースがあります。また、仕事中の病気やケガが原因で亡くなってしまった場合は、労災保険から遺族年金や遺族一時金が給付されます。

一方、事業主やフリーランスには、そのような制度はありません。そのため、万が一のことがあったとしても、家族が生活に困らないようにしておくのも、大事な思いやりでしょう。会社員時代は生命保険に入っていなかった人でも、独立、起業を機に生命保険を見直すのはよくある話です。

もちろん、独立、起業にあたって十分な貯金があり、万が一のことがあったり、病気やケガで働けなくなったりした場合でも、生活に不自由しないなら、生命保険を含めた保険は必須ではありません。しかし、そうでない場合はやはり、前向きに検討する必要があります。

医療保険や就業不能保険についても見直すべき

生命保険の話からは外れますが、独立、起業をする場合は、生命保険はもちろん、医療保険や就業不能保険についても見直しを行いましょう。サラリーマンの場合、業務外の病気やケガであっても、最大で1年6カ月までは、傷病手当金として給料(厳密には標準報酬月額)の3分の2が受け取れます。しかし、事業主やフリーランスには、そのような制度はありません。

日本の場合、高額療養費制度が設けられているため、公的医療保険の範囲内の診療を受けている限りは、医療費は毎月一定額の範囲内で収まります。

そのため、病気やケガで働けない場合、治療を受けることは可能ですが、その間の生活費をどうやって確保するかがやはり課題になるのです。病気やケガで働けない間の生活費を確保する手段としても、医療保険や就業不能保険は活用できます。

マイホーム購入

マイホームを購入するために住宅ローンを組んだ場合、毎月一定額を返済していかなくてはいけません。そのため、必要な保障を確保しつつ、できるだけ保険料を節約したいと考える人も多いでしょう。住宅ローンを組む時点で、生命保険の見直しも一緒にやってしまうといいかもしれません。

団体信用生命保険に入れなかった場合は?

生命保険の一種ということで、団体信用生命保険についても触れておきましょう。住宅ローンを組む場合、大半の銀行が提供する商品は、団体信用生命への加入を義務付けています。

団体信用生命保険とは、住宅ローンを組んだ人(債務者)に万が一のことがあった場合、保険金により住宅ローンの残債が一括返済される商品です。

この仕組みがあるため、住宅ローンを組んだ人に万が一のことがあっても、遺族に住宅ローン返済の負担が生じることはありません。

しかし、健康上の問題などで、団体信用生命保険に入れないケースもあります。

この場合は、住宅金融支援機構が提供する「フラット35」のように、団体信用生命保険への加入が必須ではない商品を選ぶしかありません。

その際、万が一のことがあっても、遺族が住宅ローンの返済に追われることがないように、引受基準緩和型の生命保険に入るなど、まとまったお金を調達する手段を確保しておきましょう。

万が一のことがあった場合、支給された保険金を使って住宅ローンの残債を一括返済すれば、団体信用生命保険と同じような効果は見込めるはずです。

子どもの独立

子どもが社会人になって独立したら、子育ては一段落するでしょう。その時も、生命保険の見直しの絶好のタイミングです。子どもが小さいときのように、高額な保険金額は必須ではなくなるので、毎月の保険料を切り下げる方向で見直すといいでしょう。状況によっては、民間の保険会社が提供する商品ではなく、共済組合の生命共済を使うのも1つの手段です。

リタイヤ

近年では、60代に入っても再雇用制度を使ったり、独立開業したりなどして働き続ける人が増えています。しかし、会社勤めをしてきた人にとっては、60歳が1つの区切りになっているのも現状でしょう。定年退職(リタイヤ)をした場合、多くの人が現役世代の時より少ない収入で生活をしていくことになるはずです。生命保険に高い保険料を払うよりも、必要な保障だけを残し、あとは貯金に回していくのも合理的な選択と考えましょう。

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