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お互いに収入がある共働き夫婦の場合、どちらか一方だけが働いている世帯に比べると、1ヶ月あたりの手取り収入が多いことがほとんどです。生活費に回せるお金が多くなるのはもちろん、マイホームを購入するときも、ある程度余裕のある予算で家を選ぶことができるでしょう。
しかし、余裕があるからといって、何も考えずにマイホームを購入するのは止めたほうが身のためです。そこで今回の記事では
- 共働き夫婦が協力して住宅ローンを組む方法
- 共働き夫婦が協力して住宅ローンを組む場合の注意点
について解説しましょう。
共働き夫婦が協力して住宅ローンを組む方法
そもそも、共働き夫婦が協力して住宅ローンを組む場合、どういうやり方があるのでしょうか。考えられるパターンとして
- どちらかが単独で住宅ローンを組む
- 夫婦で収入を合算して住宅ローンを組む
- ペアローンを組む
の3つについて解説しましょう。
どちらかが単独で住宅ローンを組む
1つ目の方法は、夫婦のどちらか一方(収入、年齢で判断)が債務者となって住宅ローンを組む方法です。どちらか一方が専業主婦・主夫のパターンと仕組みはまったく変わりません。
例えば、こんな夫婦がいたとしましょう。
- 夫:30歳、年収650万円
- 妻:30歳、年収400万円
メリット
メリットとしては無理のない返済スケジュールが組めることが挙げられます。このパターンの場合、夫婦のどちらか一方が債務者の場合、あくまで債務者の年齢と収入のみが審査において用いられます。
デメリット
一方、あくまで「夫婦のどちらか一方の収入に応じた額しか借りられない」ことになるため、住みたい地域や家族構成、家に対する希望を100%かなえられるとは限らないのも事実です。
もちろん、「家なんて、安全で快適に住めればそれで充分」というように、あまりこだわりがないタイプの夫婦ならあまり問題はありません。
夫婦で収入を合算して住宅ローンを組む
2つ目の方法は、夫婦で収入を合算して住宅ローンを組む方法です。ただし、年収が低い方については、年収をすべて合算するわけではなく、金融機関が定める割合(相場は1/2程度)で合算し、その上で融資可能額を決めるやり方を用います。
例えば、先ほど挙げた
- 夫:30歳、年収650万円
- 妻:30歳、年収400万円
という夫婦の場合、650万円 + 400万円 × 1/2 = 850万円をもとに融資可能額が決まると考えましょう。
連帯保証型と連帯債務型
夫婦で収入を合算して住宅ローンを組む場合、収入が多い方が主債務者になることがほとんどです。一方、収入が少ない側はどんな役割を負うのかは、契約によって異なります。考えられる2つのパターンとして
- 連帯保証型
- 連帯債務型
について解説しましょう。
連帯保証型
収入が少ない側を連帯保証人として契約するパターンです。
連帯債務型
平等に返済していく義務が生じると考えてください。
メリット
この方法のメリットとして挙げられるのは
- 収入が合算できるので、借入額が増やせる
- 手数料などの住宅ローンに関する費用が1人分だけでいい
- 連帯債務型であれば、夫婦2人とも住宅ローン控除が使える
の3点です。
収入が合算できるので、借入額が増やせる
金融機関によって、どれだけ主債務者でない方(連帯債務者、連帯保証人)の収入が合算できるのかはまちまちです。
手数料などの住宅ローンに関する費用が1人分だけでいい
一般的に住宅ローンを組む場合、以下の諸経費がかかります。
- 保証料
- 保証会社への事務手数料
- 抵当権設定関連費用
- 印紙税
- 団体信用生命保険料
連帯債務型であれば、夫婦2人とも住宅ローン控除が使える
夫婦で収入を合算して住宅ローンを組む際に、どちらか一方が連帯債務者となる方法を使った場合、夫婦2人とも住宅ローン控除が使えます。
このため、夫婦2人分の税金が安くなると考えましょう。
デメリット
一方、デメリットとしては
- 連帯保証人、連帯債務者は団体信用生命保険に加入できない
- 連帯保証人は住宅ローン控除が使えない
- 連帯債務型での契約を引き受けてくれる金融機関が限られている
ことが挙げられます。
連帯保証人、連帯債務者は団体信用生命保険に加入できない
ほぼすべての住宅ローンでは、主債務者に対して団体信用生命保険への加入が義務付けられています。つまり、住宅ローンの債務者が死亡したり、高度障害状態に陥ったりした場合は、それ以降の返済が免除されるということです。
しかし、連帯保証型で収入を合算して住宅ローンを組む場合、そもそも連帯保証人は債務者ではないため、団体信用生命保険には入れません。また、連帯債務者に関しても、入れないとしている金融機関が圧倒的に多いです。
連帯保証人は住宅ローン控除が使えない
収入を合算して住宅ローンを組む場合、その契約が連帯債務型であれば、2人とも住宅ローン控除が使えます。
連帯債務型での契約を引き受けてくれる金融機関や商品は限られている
収入を合算して住宅ローンを組むこと自体を受け付けてくれる金融機関は多いですが、そのほとんどが、債務者でない人を連帯保証人として立てるよう求める契約になっていることがほとんどです。
なお、住宅金融支援機構が民間の金融機関と組んで提供している固定金利型の住宅ローン「フラット35」であれば、連帯債務型での契約を結ぶことが可能です。
ペアローンを組む
3つ目の方法は、ペアローンです。1つの物件に対し、夫婦それぞれが1件ずつ住宅ローンを契約し、お互いに連帯保証人になる方法と考えましょう。なお、ペアローンを組む場合、金額・期間などは、それぞれの状況に応じて自由に決められます。
ただし
- 借入先金融機関は同じでなくてはいけない
- 購入する物件に夫婦が同居しなくてはいけない
など、契約にあたっての条件が設けられているので、必ず確認しましょう。
メリット
この方法のメリットとして
- 高額な金額の借り入れが可能になる
- 夫婦2人とも住宅ローン控除が使える
- 夫婦の一方に万が一のことがあった場合、返済の負担が減る
の3点が挙げられます。
高額な金額の借り入れが可能になる
夫婦のそれぞれが住宅ローンを契約することになるため、比較的高額な物件であっても購入することができるようになります。
夫婦2人とも住宅ローン控除が使える
また、夫婦2人とも債務者となるため、住宅ロ―ン控除を使うことももちろん可能です。結果として節税ができます。
夫婦の一方に万が一のことがあった場合、返済の負担が減る
この方法の特徴として、夫婦2人が両方とも債務者になるため、団体信用生命保険に加入することが挙げられます。
デメリット
一方、デメリットとしては
- 住宅ローンに関する諸経費が2人分かかる
- 夫婦のどちらか一方の収入減、失業には弱い
ことが挙げられます。
住宅ローンに関する諸経費が2人分かかる
ペアローンの特徴として「夫・妻の両方が債務者となって金融機関と契約手続きをする」ことが挙げられます。
夫婦のどちらか一方の収入減、失業には弱い
ペアローンはあくまで「夫婦が2人とも何ら支障がなく働け、収入を得られている」前提で融資額を決定します。
共働き夫婦が協力して住宅ローンを組む場合の注意点
次に、共働き夫婦が協力して住宅ローンを組む場合の注意点として
- 贈与税がかかるケースもある
- 借り換えが難しいケースもある
- 配偶者の収入減には注意
- 離婚が決まったらすぐに金融機関に相談を
の4点についても解説しましょう。
贈与税がかかるケースもある
違っている場合は、一方からもう一方に経済的な利益の供与があったとして、贈与税がかかることもあるので注意しましょう。同様に、夫婦のどちらかがもう一方の返済分を肩代わりしているケースも、経済的な利益の供与があったと見なされる可能性があるため、注意してください。
ケーススタディ
例えば、夫婦2人でペアローンを組み家を購入したとしましょう。この場合に贈与税が生じるパターンの例を挙げてみます。
1)3,600万円の物件を購入し、諸費用400万円は夫が負担したため、購入価格は合計で4,000万円となる。
2)夫が頭金として600万円を負担した。残額については、夫婦2人がペアローンを組み、各自1,500万円を返済することにした。
3)住宅の持分割合は、夫:妻=50:50として所有権登記した。
4)夫の実際の負担額は「400万円 + 600万円 + 1,500万円 = 2,500万円」、妻の実際の負担額は1,500万円である。
5)持分割合に応じた場合、妻が本来負担すべき金額は2,000万円(4,000万円)であるため、贈与税の対象となるのは500万円(=2,000万円 - 1,500万円)である。
6)この場合の贈与税額は(500万円 - 110万円)× 20% - 25万円 = 53万円となる。
借り換えが難しいケースもある
ペアローンであっても、連帯債務型で収入を合算して住宅ローンを組んだ場合であっても、借り換えをすること自体はできます。ただし
- どちらかが退職したり、転職したりして、収入がなくなったり、激減したりした
- どちらかが体調を崩し、団体信用生命保険に加入できなくなってしまった
など、住宅ローンを組んだ当初の状況から大きく変化した場合は、借り換え自体ができなくなる可能性があることに注意が必要です。
配偶者の収入減には注意
住宅ローンを組む際に注意すべきことの1つとして
が挙げられます。
特に、夫婦で収入を合算して住宅ローンを組む場合、会社の業績不振や倒産で収入が激減する場合に加え
- 子どもが生まれて、子育てに専念したいということで退職する
- 病気やケガで長期休養を余儀なくされた
などの理由で収入が激減した場合も影響を受けるので、注意が必要です。
離婚が決まったらすぐに金融機関に相談を
現在、結婚した夫婦の3組に1組は離婚するといわれています。つまり、離婚はなんら珍しいことではないし、その後の人生を前向きに進めていけるなら、1つの選択肢にもなるでしょう。しかし、住宅ローンとの関連においては、注意が必要です。
住宅ローンが残っていた場合は特に注意
連帯債務型で収入合算ローンを組んだ場合、そのローンを使って買った住宅は、夫婦2人の共有名義となります。もちろん、離婚する時点でローンが残っていなければ、共有名義を止めて、どちらか一方の名義にすること自体は、法務局に登記申請を行えばいいだけなので、非常に簡単です。
厄介なのは、住宅ローンが残っていた場合でしょう。もちろん、家を売ってしまい、そのお金で住宅ローンの残高を返済できそうなら、何ら問題はありません。しかし、家を売ったとしても、住宅ローンの残高を返済できそうにない場合は、扱いが難しくなります。
離婚する場合、相手との縁を切るために連帯債務者から外してほしいと思ったとしても、金融機関の承諾がなければ容易にはいきません。
住宅ローンを払い続ける場合も苦労するかも
また、離婚の原因が何かにもよりますが「夫は出ていくものの、妻と子供が住む家の住宅ローンを支払い続ける」という話に落ち着くのも珍しくはありません。しかし、このような方法を取る場合、夫が離婚後もちゃんと住宅ロ―ンの支払いを行うという保障はどこにもないのです。夫が住宅ローンの返済を怠った結果、物件を差し押さえられてしまうのは珍しくありません。
ペアローンの場合は債務引受と借り換えが選べるが
また、ペアローンを組んでいた夫婦が離婚することになった場合、2本あるローンを1本にまとめる方法が考えられます。大きく分けると
- 債務引受:債務をその同一性を維持したまま引受人に移転する契約を結ぶ
- 借換:金融機関から新規に融資を受け、別の金融機関から融資を受けていた既存の借入を返済する
の2つです。それぞれについて、メリットとデメリットをまとめました。
項目 | メリット | デメリット |
---|---|---|
債務引受 | 現在借り入れしている銀行だけで手続きが完結する | 審査が厳しい上に、保証人が必須である |
借換 | 諸費用も含めたお金を、安い金利で借りられる | 新たな抵当権設定を行わなくてはいけない上に、新たな金融機関とも手続きを進めなくてはいけない |
いずれにしても、そう簡単ではないのがわかるはずです。
どの方法がいいのかはケースバイケース
結局のところ、どの方法で進めるのがいいのかは、夫婦それぞれが置かれた状況にとって全く異なります。また、どんな方法を用いる場合でも、金融機関からの同意は必須です。