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総務省がまとめた「平成30年版 情報通信白書」によれば、日本国内の2017年のモバイル端末の保有状況は、84.0%にものぼるとのことです。また、スマートフォンの保有率は60.9%にも達していました。
参照:総務省|平成30年版 情報通信白書|情報通信機器の保有状況
つまり、ほとんどの人が持っていると言っても過言ではない状況です。しかし、だからこそ問題になるのが「毎月の通話料をいかにして節約するか」ということでしょう。そこで、方法の1つとして提案したいのが「スマホを格安SIMにする」ことです。今回は
- メリット
- デメリット
- 実際に変更する際の流れ
- 事前に確認すべきこと
について解説します。
スマホを格安SIMにして通信費を節約する方法とは
最初に、スマホを格安SIMにして通信費を節約する方法について解説しましょう。
格安SIMとは
格安SIMとは、専用の会社が提供しているインターネットサービスや通話サービスを利用できるSIMカードのことです。そして、専用の会社のことを「MVMO」といいます。
MVMOとはMobile Virtual Network Operator(仮想移動体通信事業者)のことで、簡単に言うと「自前の通信回線を持たず、他社のインターネット・通話の回線を借りてサービスを提供している事業者」のことです。
格安SIMと大手キャリアの違い
格安SIM業者=MVMOに対し、NTTドコモ、au(KDDI)、ソフトバンクなど、自前で通信回線を持っている業者のことをMNO(Mobile Network Operator、移動体通信事業者)と呼びます。これらのMNOは総務省から通信に利用できる周波数帯をそれぞれ割り振られているため、自前で基地局を設置し、音声通話、インターネット通信ができるサービスを運営できるのです。
一方、MVMOは自前で基地局は設置せず、MNOから回線を一部借りて、音声通話、インターネット通信ができるサービスを運営しています。つまり、ここまでの話をまとめると、以下のようになります。
MNO | MVMO | |
---|---|---|
周波数帯の割り当て | あり | なし |
基地局などの自前の設備 | あり | なし |
ちなみに、基地局を設置するのには、すごくお金がかかります。
総務省の資料によれば、基地局を1つ整備するのには、平均で1,724万円かかります。カバーエリアが最大で3キロ程度であるため、これを日本全国に展開するには、相当なお金がかかるのがわかるはずです。
参照:総務省 総合通信基盤局 電波部 移動通信課「携帯電話の基地局整備の在り方について~論点整理~」
スマホを格安SIMにして通信費を節約する方法のメリット
次に、スマホを格安SIMにして通信費を節約する方法のメリットとして
- 固定費を削ることになるので節約効果が高い
- 家族全員でスマホを持つ場合でも費用がかさまない
- SNS使い放題のプランにすれば無料通話もしやすくなる
の3つについて解説しましょう。
1.固定費を削ることになるので節約効果が高い
節約、という意味で最も効果があるのは、やはり、固定費を削ることです。例えば
- 賃貸に住んでいるなら家賃の安い物件に住み替える
- 持ち家ならローンの借り換えを検討してみる
- 使わない月額サービスは外す
- 電力会社、ガス会社の見直しをする
などが考えられますが、スマホを格安SIMにするのもこれにあたります。
2.家族全員でスマホを持つ場合でも費用がかさまない
今は、中高生でもスマホを持っているのはめずらしくありません。お付き合い、という部分もあるのでそれ自体は否定しませんが、中高生の場合、現実的には家族が毎月の利用料を払うことになる場合が大半でしょう。そうなると「どうやって節約するか」を真剣に考える必要があります。
実際、どれだけ節約できる?
ここで、格安SIMに切り替えることで、どれだけ節約効果があるのかについて考えてみましょう。以下の条件で計算してみます。
- 4人家族(両親、子ども2人)全員がスマホを持つ
- 音声通話ができるようにする
- 家族全員が同じプランを契約する
まず、大手キャリア(au)の場合を考えてみましょう。1人あたりの金額は以下のようになります。
出典:スマートフォン料金プランシミュレーション|スマートフォン・携帯電話 | au
一方、格安SIM(LINEモバイル)の場合を考えてみましょう。データ容量は6GB、音声通話SIMおよびSNSデータフリープランを選んだ場合、月額は2,480円になります。
出典:料金プラン|LINEモバイル【公式】選ばれる格安スマホ・SIM
差をわかりやすくするために、表にまとめてみました。
大手キャリア(au) | 格安SIM(LINEモバイル) | 差額 | |
---|---|---|---|
1人当たり | 6,006円 | 2,480円 | 3,526円 |
4人の合計 | 24,024円 | 9,920円 | 14,104円 |
上の表は1カ月あたりの金額なので、1年に直すと169,248円もの差になります。
3.SNS使い放題のプランにすれば無料通話もしやすくなる
最近では、携帯電話の音声通話ではなく、LINEやフェイスブックなどのメッセージ機能を使ってやり取りする人も増えています。音質を気にしすぎなければ、音声通話も可能なので、これをぜひ活用しましょう。
格安SIMの中には、対象となるSNSの利用に関しては、データフリー(使い放題)になるプランを設けているところもあります。そのようなプランを利用すれば、いくら使っても通信料は上がらないので安心です。
スマホを格安SIMにして通信費を節約する方法のデメリット
一方、スマホを格安SIMにして通信費を節約する方法のデメリットとして
- 家、職場がある地域によっては電波が入りにくい
- 海外でのデータ通信はできない
- 大手キャリアのメールアドレスは使えない
- 設定作業は自分でやらないといけない
の4つを解説しましょう。
1.家、職場がある地域によっては電波が入りにくい
既に触れた通り、格安SIM(MVMO)は自前で基地局を持たず、大手キャリア(MNO)の基地局をいわば間借りしています。つまり、どの大手キャリアの基地局を使えるかで、おのずと格安SIMが使えるエリアも決まってしまうのです。格安SIMを利用する際は
- まず、どの大手キャリアの基地局を利用しているのかを調べる
- 自宅や実家、親戚の家など自分がよく行く場所で利用できるか調べる
のを忘れないようにしましょう。
格安SIMサービスのホームぺージには
- サービスエリアにする紹介
- サービスエリアを地図上で探す機能
がついていることがほとんどです。このような機能を用いて「自分がよく行く場所で利用できるか」を格安SIM選びの1つの基準にしましょう。
2.海外でのデータ通信はできない
スマホなどの携帯電話の番号をそのまま用いて、海外でも音声通話やSMSなどの携帯電話によるサービスが利用できるサービスを国際ローミングといいます。大手キャリアであれば、国際ローミングによるデータ通信もできますが、格安SIMの場合は
- 音声通話とSMSには対応しているが、データ通信ができない
- 音声通話とSMSも含め、一切国際ローミングができない
など制限がある場合がほとんどです。格安SIMを使っている人が海外に行く場合は
- 自分が使っている格安SIMの対応状況を調べる
- 必要に応じて現地でSIMカードを買ったり、日本で対応したWi-Fiルータを借りていったりする
などの対応を事前に講じましょう。
3.大手キャリアのメールアドレスは使えない
これまで大手キャリアのメールアドレスを使ってきた人は、格安SIMに切り替えるとそのアドレスは使えなくなります。もし、何かのサービスでそのアドレスを使っていたり、家族や友人・知人に教えていた場合は、切り替え作業が必要です。
例えば
- 「~@docomo.ne.jp」
- 「~@au.com」
- 「~@ezweb.ne.jp」
- 「~@i.softbank.jp」
などがこれに当たります。ただし、GmailやYahoo!メールのアドレスは問題なく利用できるので、近日中に格安SIMに変更する予定があるなら、そちらをメインのアドレスとして使っていくといいでしょう。
4.設定作業は自分でやらないといけない
格安SIM業者の多くは、自前の店舗を持っていなかったり、大手家電量販店にコーナーを設けて居なかったりするので、必要な設定は自分でやらなくてはいけません。機械の扱いが苦手でないなら、決して難しい作業ではないのですが、苦手な人にとってはこの辺りはやはりネックになるでしょう。
- ワイモバイル
- UQモバイル
などは、店舗を構えている数少ない格安SIM業者なので
という人は「店舗があるかないか」を1つの基準として選んでもいいかもしれません。
スマホを格安SIMにして通信費を節約する方法の一連の流れ
実際に、スマホを格安SIMにして通信費を節約する方法の一連の流れを解説しましょう。一般的な流れは、以下の通りです。
- どこの格安SIMにするか決める
- スマホ本体は新しく買うかを決める
- MNP予約番号を取得する
- 申し込みをする
- SIMカード・スマホ本体が届く
- SIMカードをスマホ本体に装着する
- 通信接続の設定をする
1.どこの格安SIMにするか決める
最初に、どこの格安SIMにするかを決めましょう。有名な格安SIM業者をまとめました。
会社名 | 特徴 | 料金プランの一例 |
---|---|---|
Y!mobile(ワイモバイル) | ソフトバンクの子会社で、格安SIMサービスに特化。ソフトバンクの店舗内に対面カウンターを設けているので、店員とやり取りしながら契約を進められる。ソフトバンク回線を利用可能。 | 「スマホベーシックプランM」毎月2,980円 (高速データ通信毎月13GBまで、10分以内の国内通話は何度でもかけ放題) |
LINEモバイル | コミュニケーションアプリ「LINE」で有名なLINE株式会社が運営する格安SIMサービス。LINE、Twitter、Facebookなど所定のSNSの利用に関しては追加料金がかからないプランが人気。NTTドコモ、au、ソフトバンク回線を利用可能。 | 「ベーシックプラン+SNSデータフリー」毎月2,480円(高速データ通信毎月6GBまで、対象SNSの利用によるデータ通信は無制限) |
UQモバイル | KDDI傘下の格安SIM業者。同じKDDIグループであるauの回線を利用。対面カウンターもあるので、店員とやり取りしながら契約を進められる。 | 「Rプラン」毎月2,980円 (高速データ通信毎月10GBまで、余った場合は翌月に繰り越しが可能)※契約解除料なし |
BIGLOBEモバイル | 大手プロバイダ、BIGLOBEが提供する格安SIMサービス。回線はNTTドコモかauかを選択可能。専用アプリの「BIGLOBEでんわ」から発信すれば、国内通話料が半額になる。 | 「6ギガプラン」毎月2,150円(音声通話、データ通信、SMSが利用可能。) |
mineo(マイネオ) | 関西電力の子会社、ケイ・オプティコムが運営する格安SIMサービス。通勤時間や昼休みなど、回線が混雑する時間帯に速度制限がかかる代わりに料金が安い「エココース」の設定など、ユニークな取り組みが特徴。NTTドコモ、au、ソフトバンク回線を利用可能。 | 「デュアルタイプ(音声通話+データ通信) Aプラン」毎月2,190円(高速データ通信毎月6GBまで、音声通話、SMSも利用可能) |
2.スマホ本体は新しく買うかを決める
次に、格安SIMに切り替える際に、スマホの端末自体を新しく買い替えるかどうかも考えましょう。今まで使っていた端末をそのまま使う場合は、キャリアの店舗でSIMロック解除の手続きをしてもらわないといけません。
一方、端末も買い替える場合は、格安SIM業者のホームページやパンフレットを見たり、店舗に行って聞いたりなどして、好きな端末を選びましょう。
3.MNP予約番号を取得する
今まで使っていた携帯電話番号をそのまま使いたい場合、MNP予約番号を取得する必要があります。
MNPとは「Mobile Number Portability」の略で、日本語では「携帯電話番号ポータビリティ」のことです。この仕組みがあるので、携帯電話会社を変更しても、これまで使ってきた電話番号を変えなくても済みます。
出典:格安スマホへのMNPの方法|LINEモバイル【公式】選ばれる格安スマホ・SIM
そして、MNPを利用する際に必要になるのが、MNP予約番号です。これは10桁の番号ですが、有効期限が付されています。有効期限の間に手続きを行うことで、自動的に従来利用していた携帯電話会社との契約が終了し、新しい携帯電話会社との契約が開始します。
なお、MNP予約番号の取得は
- 携帯電話会社の店舗
- 専用の電話番号
- 公式ホームページ上の手続き
で行うことができます。この際
- 10桁の番号に間違いはないか
- 有効期限はいつまでか
の2点はかならず確認し、メモやスクリーンショットをとって、保存するようにしてください。
4.申し込みをする
MNP予約番号が取得できたら、申し込みをしましょう。格安SIMの場合、オンラインで申込をするのが一般的です。また、その際
- 本人確認書類
- クレジットカード
- 連絡先メールアドレス
- MNP予約番号
が必要になるので、揃っているか確認しましょう。
格安SIM業者によって、本人確認書類として利用できる書類は、細かい違いはありますが、一般的にほぼすべての格安SIM業者で利用できるのは
- 運転免許証
- マイナンバーカード
- 日本国パスポート
- 運転経歴証明書
- 特別永住者証明書
- 身体障害者手帳
などです。
また、店頭での申込ができる格安SIMを利用する場合は
- 本人確認書類
- クレジットカード
- 連絡先メールアドレス
- MNP予約番号
を持って、実際に出向きましょう。その後は、契約からSIMカードの装着、通信接続の設定まですべてやってくれます。
5.SIMカード・スマホ本体が届く
逆に、店頭に出向いて手続きをしなかった場合は、数日でSIMカードとスマホ本体が届きます。荷物を開け
- 部品の破損、傷などはないか
- 説明書が入っていないなどのトラブルはないか
を確認しましょう。
6.SIMカードをスマホ本体に装着する
特に問題がないことを確認したら、SIMカードをスマホ本体に装着してください。大まかな手順は以下の通りです。
1.SIMカードと端末を用意する
出典:APN設定方法(Android)|LINEモバイル【公式】選ばれる格安スマホ・SIM
2.SIMカードを取り外す
出典:APN設定方法(Android)|LINEモバイル【公式】選ばれる格安スマホ・SIM
3.トレーを引き出す
出典:APN設定方法(Android)|LINEモバイル【公式】選ばれる格安スマホ・SIM
4.SIMカードを挿入する
出典:APN設定方法(Android)|LINEモバイル【公式】選ばれる格安スマホ・SIM
7.通信接続の設定をする
SIMカードを挿入できたら、初期設定を行いましょう。詳しい手順は、格安SIMカードが届いた際に同封されている説明書や公式ホームページで確認できます。
スマホを格安SIMにする前に確認すべきこと
最後に、スマホを格安SIMにする前に確認すべきこととして
- 契約更新月を確認する
- 本人確認書類と支払方法を確認する
の2点について解説しましょう。
1.契約更新月を確認する
大手キャリアから格安SIMに乗り換える場合も含め、携帯電話会社を乗り換えるときには、乗り換え前の会社の契約更新月を確認しましょう。契約更新月以外に解約した場合、違約金を払わなければいけないなど、条件が付されているケースもあります。タイミング次第では、非常に高くなってしまう可能性もあることに注意しましょう。
2.本人確認書類と支払方法を確認する
本人確認書類として、健康保険証など「写真がついていないもの」を使いたい場合、補助書類として公共料金領収書や住民票などの補助書類の提出も求められるケースがります。運転免許証やマイナンバーカードなどがない場合は、特に気を付けるようにしてください。
また、格安SIMの月額利用料の支払は、クレジットカードのみとしている場合も多いです。しかし、一部の格安SIM業者では、店舗や郵送での手続きを行えば、銀行引落による支払も受け付けてくれます。今回紹介した中では、ワイモバイルやUQモバイルが対応しているので「格安SIMを使いたいけど、クレジットカード払いにはしたくない」という人は検討してみてください。