終身保険とは
終身保険とは、万が一のことになったり、ケガや病気が原因で重い障害が残ったときに死亡保険金を受け取れる生命保険のことです。なお、途中で解約した場合は、解約返戻金としてまとまったお金を受取ることができます。万が一のことがあった場合の家族の生活費を賄うための手段としてはもちろん、タイミングを見て解約し、子ども・孫の学費や老後の生活資金に充てることもできる商品です。
ここで、終身保険の特徴として、次の4点について解説しましょう。
- 保障期間は一生続く
- 保険料は一定
- 保険料の払込期間が選べる
- 解約返戻金がある
1.保障期間は一生続く
「終身」という言葉が名前にある通り、終身保険による保障は、途中で解約する場合を除いて一生受けられます。
2.保険料は一定
終身保険の保険料は基本的に一定です。途中で特約を追加したり、保障の条件を変更した場合は変わることもありますが、それ以外は契約したときと同じ保険料を払い続けると考えましょう。
3.保険料の払込期間が選べる
既にふれた通り、終身保険の保障期間は生きている限り続きます。一方、保険料の払込期間は自分で決めることもできるのです。一生保険料を払い続ける終身払いと、決められた期間のうちに保険料を払い終える短期払いのいずれかを選びましょう。
なお、短期払いをさらに細かく分けると、以下のように分類されます。
期間タイプ | 10年、15年、20年など年数が基準になっている |
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年齢タイプ | 60歳まで、70歳までなど具体的な年齢が基準になっている |
4.解約返戻金がある
解約返戻金とは、保険に加入していた人が自分から契約を解除したり、逆に保険会社から解除されたりした場合などに、加入していた人に対して払い戻されるお金のことを指します。終身保険を何らかの理由で途中解約した場合は、解約返戻金が受け取れるのです。
なお、解約返戻金は、加入してから年月が経つにつれ、金額が増える割合が上がっていきます。
終身保険を選ぶポイント
次に、終身保険を選ぶ上での具体的なポイントについて考えてみましょう。以下の6つについて解説します。
- いくらぐらいの保険金を受け取りたいか
- 解約返戻率はどのくらいか
- 保険料の支払いが免除される特約はあるか
- 毎月どれぐらい保険料を払えるか
- 契約できる年齢の範囲
- 健康状態の告知
ポイントその1.いくらぐらいの保険金を受け取りたいか
終身保険に限らず、保険を選ぶ上で重要になるのが「保険金はどのぐらい欲しいか」です。終身保険の場合
- 自分が万が一になった場合の家族の生活費、葬儀代
- 家族(子ども、孫など)の学費の援助
- 老後の生活資金
など、利用目的が多岐にわたります。まずは、自分が何のために終身保険に入るのかを考え、その上で必要な金額を導き出しましょう。
人並みのお葬式=平均的な葬儀を営む場合の費用を終身保険でまかなうことを想定した場合を考えてみます。公益財団法人生命保険文化センターの調査によれば、2017年の葬儀の平均費用は約178万円でした。
参照:葬儀にかかる費用はどれくらい?|公益財団法人 生命保険文化センター
ポイントその2.解約返戻率はどのくらいか
終身保険を生きているうちに解約し、老後資金や家族の学費など、まとまった出費に充てるつもりなら、解約返戻率についてもチェックしておきましょう。基本的な傾向として、保険料を払った年数が長ければ長いほど、解約返戻率は上がっていきます。つまり、早い段階で解約してしまった場合、払い込んだ保険料の総額を下回る解約返戻金しか受け取れないことに注意が必要です。
低解約返戻金型終身保険とは
保険会社によっては、低解約返戻金型終身保険を販売していることがあります。これは簡単に言うと、保険料の払込期間中は解約返戻率を低く抑え、払込期間の終了後は解約返戻率が一気に上がる商品のことです。保険料の払込期間中に解約すると損をしてしまう反面、保険料が通常の終身保険に比べると安いというメリットがあります。
ポイントその3.保険料の支払いが免除される特約はあるか
- 年齢が若い
- 小さな子どもがいる
- 貯蓄や他の保険など、緊急時の生活費を賄える手段が不十分である
という条件が揃っている状況で終身保険を検討する場合に考えて欲しいのが、保険料の割引制度や、保険料の支払いを免除してくれる特約です。保険料の支払いを免除してくれる特約を付帯すると、どうしても月々の保険料は上がります。しかし、上記の条件が揃った中で、高度障害状態にはならないほどの病気やケガをしてしまったときのことを考えましょう。
そうならないのが一番であることは言うまでもありませんが、病気やケガをすると、一定期間の休職を余儀なくされる上に、復帰しても元通りに働けるとは限りません。終身保険の場合、終身払いなら一生、短期払いでも長い間保険料を払い続ける必要があります。
本当にどうしようもないときは解約するという選択肢もありますが、タイミングによっては解約返戻率がかなり低くなるのも事実です。
ポイントその4.毎月どれぐらい保険料を払えるか
終身保険は、一生、もしくはある程度の長期間は保険料を払い続ける商品です。そのため、選ぶ際は「毎月、いくらまでなら保険料を払えるか」も踏まえて考えてみましょう。
ポイントその5.契約できる年齢の範囲
簡単にいうと「何歳から何歳までなら終身保険に入れるか」という意味です。保険会社によって扱いが様々なので、保険会社の公式ホームページや、個別のパンフレットで必ず確認しましょう。また、年齢によっても終身払いしか選べないのか、短期払いも選べるのかには扱いに差があります。これも併せて確認してください。
オリックス生命「終身保険ライズ」の場合
例えば、オリックス生命が販売している終身保険ライズの場合は、契約年齢と保険料払込期間が以下のように設定されています。
契約年齢 | 保険料払込期間 |
---|---|
15歳~40歳の方 | 10年払済、15年払済、20年払済 50歳払済、55歳払済、60歳払済、65歳払済、70歳払済、75歳払済、80歳払済、終身払 |
41歳~45歳の方 | 10年払済、15年払済、20年払済 55歳払済、60歳払済、65歳払済、70歳払済、75歳払済、80歳払済、終身払 |
46歳~50歳の方 | 10年払済、15年払済、20年払済 60歳払済、65歳払済、70歳払済、75歳払済、80歳払済、終身払 |
51歳~55歳の方 | 10年払済、15年払済、20年払済 65歳払済、70歳払済、75歳払済、80歳払済、終身払 |
56歳~60歳の方 | 10年払済、15年払済、20年払済 70歳払済、75歳払済、80歳払済、終身払 |
61歳~65歳の方 | 10年払済、15年払済 75歳払済、80歳払済、終身払 |
66歳~70歳の方 | 10年払済 80歳払済、終身払 |
71歳~75歳の方 | 終身払 |
ポイントその6.健康状態の告知
ある程度年齢が高くなってから終身保険を検討する場合、特にチェックすべきなのが「健康状態の告知」です。告知書といって、所定の書類を提出すればいい場合がほとんどですが、年齢や保険金額によっては、別途健康診断書の提出を求められる場合があります。
現役FPがおすすめする終身保険ランキング
1位.終身保険ライズ/オリックス生命
保険料(30歳男性) | 4,526円 ※保険金額200万円、60歳払済として算定 |
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解約返戻率(2020年7月現在) | 105.6% ※保険料払込期間満了直後の解約を想定 |
設定されている割引・特約 | リビング・ニーズ特約 介護前払特約 |
契約可能年齢 | 15歳~75歳 |
終身保険ライズをおすすめする理由
この保険をおすすめする理由は「低解約返戻金型終身保険であるため、保険料が安く抑えられている」ことです。60歳払込満了とした場合、期間満了直後の解約返戻率は105.6%にも達します。つまり、5%以上上乗せされて戻ってくるということです。保険料払込期間満了前に解約しない予定があるなら、貯蓄性のある保険として活用できるでしょう。
また、保険期間として短期払いを選択した場合で、重い介護状態に概要した場合は、前払いで保険金を支払ってくれる「介護前払特約」が付加されています。つまり、以下の条件に該当した場合、指定保険金額から会社所定の率により死亡保険金の前払いとなる期間相当の利息を差引いた金額が保険金として支払われると考えましょう。
- 主契約の保険料払込期間経過後であること
- 被保険者の年齢が満65歳以上であること
- 公的介護保険制度にもとづく要介護状態区分のうち、「要介護4」または「要介護5」の状態にあること
出典:終身保険RISE[ライズ]|オリックス生命保険株式会社
デメリットですが、あえて挙げるとすれば、オンラインでの申込に対応していない商品であることでしょう。実際に申し込む際は、オリックス生命保険の商品を扱っている保険ショップに出向き、手続きを進めるか、郵送でやり取りをするか選ぶ必要があります。
2位.E-終身/FWD富士生命
保険料(30歳男性) | 4,566円 ※保険金額200万円、60歳払済として算定 |
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解約返戻率(2020年7月現在) | 106.1% ※保険料払込期間満了直後の解約を想定 |
設定されている割引・特約 | 保険料払込免除特約 |
契約可能年齢 | 0歳~75歳 ※この範囲内で、保険料払込期間が10年以上かつ90歳以下になるよう設定 |
E-終身をおすすめする理由
この商品をおすすめする理由は、次の2点です。
- 病気やケガで働けなくなった場合でも保険料の払い込みが免除される
- 年金・介護保障に移行することもできる
まず「病気やケガで働けなくなった場合でも保険料の払い込みが免除される」ですが、この商品には保険料払込免除特約を付帯することができます。
以下の状態になった場合は、それ以降の保険料の支払いが免除される仕組みです。
- 悪性新生物・急性心筋梗塞・脳卒中により所定の状態に該当した
- 傷害または疾病を原因として所定の身体障害状態もしくは所定の要介護状態に該当した
また「年金・介護保障に移行することもできる」ですが、保険料払込期間満了後、死亡・高度障害保障(全部または一部)を年金・介護保障へ移行することができます。つまり、本来は万が一のことになったり、重い障害が残ったりした場合に受け取れる保険金を、年金・介護給付金・介護年金として受け取れるのです。
基本的にはオンラインや郵送で申し込める商品ではありますが、保険金を高額にしたい場合は、対面での申込が必須になります。時間がない人にとってはわずらわしいという点で、デメリットになるかもしれません。
3位.アクサダイレクトの終身保険/アクサダイレクト生命
終身死亡保険のシミュレーション | アクサダイレクト生命保険
保険料(30歳男性) | 2,924円 ※保険金額200万円、終身払として算定 |
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解約返戻率(2020年7月現在) | ※解約返戻率の趨勢については、本文中に記載 |
設定されている割引・特約 | リビング・ニーズ保険金 |
契約可能年齢 | 20歳~69歳 |
アクサダイレクトの終身保険をおすすめする理由
この商品をおすすめする理由は「商品設計がシンプルであるため、保険料が安い」からです。基本的に、保険料の払込期間は終身払のみになっています。保険会社の側から見れば、画一的な取り扱いをすればいいので、事務作業にかかるコストも節約できるのです。また、特約がリビング・ニーズ保険金(余命6カ月以内と判断された場合に保険金を受け取れる)しかないことも、事務作業にかかるコストの削減には役立っているでしょう。そのため「終身保険には入りたいけど、保険料が高いのは嫌」という人にはおすすめです。
しかし、この商品には1つ認識しておくべき大きなデメリットがあります。
公式ホームページには、払込保険料と解約返戻金の推移としてこのような表が掲載されていました。
払込保険料と解約返戻金の推移(30歳男性 保険料払込期間終身、基本保障200万円の場合)
経過年数 | 払込保険料累計額 | 解約返戻金額(解約返戻率) |
---|---|---|
1年 | 35,088円 | 23,600円(67.2%) |
5年 | 175,440円 | 119,200円(67.9%) |
10年 | 350,880円 | 240,600円(68.5%) |
15年 | 526,320円 | 363,400円(69.0%) |
20年 | 701,760円 | 485,800円(69.2%) |
25年 | 877,200円 | 606,400円(69.1%) |
30年 | 1,052,640円 | 725,400円(68.9%) |
35年 | 1,228,080円 | 841,400円(68.5%) |
出典:終身死亡保険のシミュレーション | アクサダイレクト生命保険
保険料支払期間が終身のみということは、生きているうちに保険料支払期間が満了することはあり得ない、ということです。そのため、契約期間が長ければ長いほど、解約返戻率は上がっていきますが、それでも100%にはなりません。
4位.終身保険 つづけトク終身/メットライフ生命
保障プランと保険料のシミュレーション(見積もり)|終身保険 つづけトク終身のメットライフ生命
保険料(30歳男性) | 6,390円 ※200万円コースAA2プラン・60歳払済として算定 |
---|---|
解約返戻率(2020年7月現在) | ー |
設定されている割引・特約 | 三大疾病保険料払込免除特約 |
契約可能年齢 | 20歳~50歳 |
終身保険 つづけトク終身をおすすめする理由
この商品をおすすめする理由として挙げられるのは「災害で死亡した場合、保険料が5倍になる」ことです。例えば、保険料の算定の例で用いた「200万円コースAA2プラン」の場合、万が一のことになったり、障害が残ったりした原因によって、給付が受けられる保険料が以下のように変化します。
保険金 | 説明 | 金額 |
---|---|---|
死亡・高度障害保険金 | 病気やケガで万が一のことになったり、所定の高度障害状態になったりした場合 | 200万円 |
死亡保険金+災害死亡保険金 または高度障害保険金+災害高度障害保険金+障害給付金(第1級) | 災害で万が一のことになったり、所定の高度障害状態になった場合 | 1,000万円 |
障害給付金(第6級~第2級) | 不慮の事故で所定の身体障害状態になった場合 | 程度に応じ20万円~140万円 |
災害で万が一のことになった場合、通常の病気やケガの場合と比べて、残された家族の生活の立て直しにはかなりのお金がかかります。そのような事情を考えると、保険金が割り増しになるのはメリットが大きいでしょう。
また、三大疾病保険料払込免除特約が付帯しているため、被保険者が以下のいずれかの状態に陥った場合は、それ以降の保険料が免除されます。
悪性新生物(=がん) | 責任開始時の属する日からその日を含めて91日目以後に、責任開始時前後を通じて初めて悪性新生物に罹患したと医師により診断確定されたとき。 ※上皮内新生物は対象になりません。 |
---|---|
心疾患 | 責任開始時以後に発病した心疾患の治療を目的として継続20日以上の入院をしたとき。 |
脳血管疾患 | 責任開始時以後に発病した脳血管疾患の治療を目的として継続20日以上の入院をしたとき。 |
一方、デメリットとしては「貯蓄目的、老後の資金確保目的としては使いづらい商品である」ことです。これまでの説明からもわかるように、災害で万が一のことになったり、重い障害が残ったりした場合に保険金が割り増しされるなど、どちらかといえば「家族の生活を守ること」に主眼を置いた商品設計がされています。また、契約できる年齢も20歳から50歳までと他の商品とくらべるとかなり狭いです。
5位.ネオdeとりお/ネオファースト生命
低解約返戻金型特定疾病保障終身保険の特長|ネオファースト生命
保険料(30歳男性) | 8,592円 ※保険金額300万円、60歳払済として算定。なお、特約は一切付加していない。 |
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解約返戻率(2020年7月現在) | ※解約返戻率の趨勢については、本文中に記載 |
設定されている割引・特約 | 上皮内新生物保障特則 非喫煙者割引特約 |
契約可能年齢 | 20歳~85歳 |
ネオdeとりおをおすすめする理由
本来、終身保険は万が一のことになったり、重い障害が残ったりした場合に保険金としてまとまったお金が受け取れる商品です。しかし、ネオdeとりおはそれ以外にも、三大疾病で所定の状態になった場合、一時金として保険金が受け取れる商品になっています。
がん | 初めて所定のがんと診断確定されたとき |
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急性心筋梗塞 | 約款所定の状態が30日以上継続したり、または手術を受けたりした場合 |
脳卒中 | 約款所定の状態が30日以上継続したり、または手術を受けたりした場合 |
厳密に言うと「終身保険と医療保険をミックスさせた商品」というのが正しいところです。そのため、すでに十分な貯金があるものの「万が一のことになったり、重い病気で入院する羽目になったら、まとまったお金は受け取れるとありがたい」という人なら、選択する価値はあるでしょう。
一方、この商品を検討する際に、見落としてはいけないデメリットがあります。それは「高度障害状態になった場合をカバーしていない」ということです。保険金を受け取れるのが死亡時もしくは三大疾病で所定の状態になった場合のみに設定されています。しかし、現実的にはそれ以外の理由でも働けないほどの障害が残ることはもちろんありうるのです。貯金や医療保険など、他に生活費を賄える手段を確保しているなら問題ありませんが、そうでないなら、この商品ではなく、高度障害状態になった場合もカバーしてくれる終身保険を優先して選びましょう。