民泊とホテル・旅館などの宿泊業はそもそもターゲットが違う? それぞれの特徴を分析して、今後の可能性を検証!

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民泊とホテルや旅館などの宿泊施設はどう違うのだろうかと、不動産投資を始めるにあたって疑問に思う人は少なくないと思います。

訪日外国人がいかに増加傾向にあるかは、わざわざ情報を調べなくとも道を歩いているだけでも感じ取ることはできます。とくにここ1,2年は見かける外国人の数も増えてきたようです。

そんな中、民泊とホテルなどの宿泊施設は高い利回りを期待することができる条件を備えているということで、堅実な不動産投資の1つとして注目を浴びています。

どちらがより確実に利益を獲得できる方法なのでしょうか。

今回は民泊がホテル・旅館などの宿泊施設とどのように違うのか、また、それぞれの今後の可能性はどうなのかを比較しながら検証していきたいと思います。

民泊新法と民泊の現状は

国内旅行、海外旅行においてはほとんどの海外の主要都市にて民泊はメディアでわざわざ取り上げるまでもない周知のシステムとなっています。

ところが、これまで外国人の出入りが少なかった日本においては民泊の普及は非常に難解な過程をたどっているのが現状であります。

ただ、今後の国際化にあたって日本もある程度の柔軟性を持った態度が期待されても当然だと思えるほど、民泊の需要は全く減少する気配がありません。

そこで、まずは民泊新法がどんなものなのかを簡単にご説明しておきたいと思います。

民泊新法の概要

大量キャンセルを実施せざるを得なかった民泊サイト業者のエアビーは、今後のトラブルを避けるために合法的な方法で民泊の認可を受けることを推奨しています。

詳しくはエアビーのサイトにて確認できます。

民泊新法

民泊の認可手続き方法

届け出の資格→その住宅が、実際に居住しているだけでなく、賃借人を募集している空き家、空き室、別荘などであること。

簡易宿屋としての申請→使用する部屋の床面積が33平米以上であること。

33平米はトータルで21.31帖となり、通常の賃貸の間取りで言えば、1K、1DK、1LDKの広さになります。

特区民泊としての申請→東京都大田区など特定の地域の施設に限定されているので各市町村への問い合わせが必要。原則として25平米以上であれば要件満たすことができる。

特区民泊とは自治体も民泊を推奨しており、規制が比較的安易な地域。

最低必須の設備→台所、浴室、お手洗い、洗面所

必要書類の提出

  • 建物の登記証明書(法務局にて取得)
  • 入居者を募集している建物であることを裏付ける証明書
  • その建物が別荘や居住に使われいることを裏付ける証明書
  • 住宅の図面(床面積や設備等が表示されているもの)
  • 借主が行う場合は大家による転貸承諾書
  • 分譲マンションの場合は管理規約
  • 住宅宿泊管理業者に依頼する場合は管理受託契約書

などが概ね必要な書類となります。

申請先→厚生省の管轄となり、各都道府県の定めた保健所にて申請。各地域の自治体によって、民泊に取り組む姿勢が異なるため、旅館業法担当窓口にて事前に相談しみることも必要。

許可・営業開始

保健所の許可を得れば、いつでも営業を開始することができる。地域により差はあるが、おおよそ2、3週間程度。

営業後の報告

営業にあたっては、衛星管理が義務づけられていて基準は各自治体により様々です。定期的に経営状態を報告する必要がある。(宿泊名簿やパスポート等)

民泊の現状は

もともと民泊とは民宿から派生した宿泊スタイルとなり、本来はその概念を明確に規定することは難しいと思われるものでもあります。

例えば、大家の姉の友人が宿泊先を探しているとします。大家である妹は、うちのアパートの空き部屋に泊まっていけば?と提案して宿泊料をもらったとします。これは違法になるのでしょうか?

この場合は全く法律に触れることはありません。

もし、明らかにそれがビジネスとなってしまうと場合には、お役所の介入が発生してしまうわけです。

ですので、詳細を明確に提示しない民泊業というものもあり、友人の友人に部屋貸しただけとなれば、誰にもそれが違法であると咎めることはできなくなってしまいます。(一応、逃げ道もあるということです。)

本格的な不動産投資として民泊や宿泊施設を始めたいのであれば、もちろんきちんと申請して認可をとっておく必要があります。

東京や大阪では、民泊の需要が特に高いため、特別な規制も設けられていて、比較的に認可もおりやすい状況となっています。

日本の歴史的文化財の宝庫である京都府でも、以前は厳しかった規制が緩和されつつある段階にきているとのことです。

民泊の種類

そこで実際に、民泊投資を始めるとして、宿泊施設の需要が最も高いといわれる東京都内を参考に、どんなタイプの民泊があるのかを見てみたいと思います。

基本的に1ベッド、1部屋いくらで換算されますが、大家さんによって人数制限やペットや子供可などの条件や換算方法が異なります。

大家さん次第で、部屋代、その他のサービス等の交渉ができることが、大家さんにとってもゲストにとっても、民泊の大きな魅力となっているようです。

ドミトリータイプ(シェアタイプ)

出典:Stay Japan

1,000円~3,000円代

  • 江東区、畳部屋、3LDKの各部屋を他のゲストとシェア、ダブルベッド1台、布団もあるので3人でも宿泊可、共用バス・洗面所・台所、コンビニ10秒、大家同じ建物内に居住。(宿泊料/2,400円)

 

  • 江東区、4LDKのマンションを宿泊施設用に改造。2段ベッドがたくさん並んでいて部屋というよりはベッドを借りるというイメージ。その他の設備は全部共用。(宿泊料/1,600円)

ホテル・旅館の場合は?

この金額で、ホテルや旅館を探すことは非常に難しい、あるいは不可能とも言えるでしょう。ということは、安さではホテルや旅館は民泊には太刀打ちできないことにもなります。

アパート・マンション個室タイプ

出典:Stay Japan

4,000円~9,000円代

  • 東京スカイツリーの近辺、キッチン・ユニットバスのワンルームでベッドが部屋の大半を占める。ベッド2台、電子レンジなど。(宿泊料/4,800円)

 

  • 渋谷区、ワンルーム、駅から遠いが閑静な住宅街で環境はいい、完全個室、観光案内の別途サービス付き。(宿泊料/7,500円)

ホテル・旅館の場合

ゲストの用途に応じて、民泊がいい場合、ホテルがいい場合と分かれてくるかと思います。

例えば、数千万や億単位での取引を交渉する担当者は「ホテルオークラ」に部屋を取っていることが、会社のイメージアップへもつながります。反面、新人研修を目的とした社員の宿選びは安くて実生活の可能な民泊の方が好まれるでしょう。

一戸建て、貸し切りタイプ

1万5千円~5万円

  • 世田谷区、新築一戸建て、3LDK、ベッド6台、渋谷まで10分、大画面TV、洗濯機、乾燥機、商業施設充実。(宿泊料/2万4千円)

 

  • 東京都大田区蒲田、古い一戸建て、1LDK、風呂トイレ別、庭付き、子供・ペット利用可。駅遠い。スーパー近い。(宿泊料/1万8千円)

ホテル・旅館の場合

一戸建てタイプの民宿やペンションはごく限られた地域のみでしたが、民泊の場合は都心部でもそれが可能になります。今後は民宿やペンションも民泊としてひとまとめに分類されていくかもしれないですね。

ゲストが民泊を選ぶポイント

安さ重視のゲスト

カジュアルな観光客、最低限の宿泊施設が必要な若いサラリーマンなどにとっては、便利な環境にていかに安く宿泊できるかがポイントになるようです。

ヘアドライヤー、Wi-Fi、コインランドリーの使用、電子レンジ、タオル、石鹸、シャンプー等の簡易的なサービスの需要が高くなります。

※格安の住居の場合は、他のゲストとのシェアは避けらませんが、日本人サラリーマンの利用もあり、簡易的な宿として好評。

その他、不便な立地条件や古い木造アパートで布団のみの部屋なども2,000円代から宿泊可能。

部屋の雰囲気重視

年代を問わず、カップルや夫婦での旅行の場合は、便利さや安さよりも部屋のイメージが重視されがちです。

ベットカバーの色やクッションのデザイン、ソファやテーブルなどのデザイン、和風のイメージや洋風イメージ、レトロな感じやモダンな感じなどが好まれています。

民泊ならではの個性的なインテリアや、ワインやシャンペン、その他酒類や軽食などのサービスがゲストを惹きつけるポイントとなります。

※駅近辺や新宿、渋谷、銀座などの主要エリアになると金額は高くなっていきます。賃貸事情と同じように、宿泊料金に応じて、設備の充実度や便利度、快適度が異なってしまいます。

日常生活重視

家族連れや長期滞在者の場合は、便利さや安さも重視されますが、いかに日常生活における設備が整っているかがポイントになるようです。

海外在住の日本人の家族が一時的な帰国で利用されることもあります。

洗濯機、乾燥機、キッチン完備、まな板、包丁、調味料、アイロン、アイロン台、洗面設備、乳幼児用のベッドやベビーカー、洗面用設備などの有無が重視されています。

※1LDKの一戸建てで1万5千円から、3LDKだと3万以上の宿泊料が多いようです。中には、映像サービスや通信設備のサービスなどが充実しすぎていて、割高な料金のものもあるようです。

このように、民泊にも料金やサービスなどで色んなタイプのものがあるようです。簡単に都心部での民泊の実態を見てみましたが、その他にはどんな民泊があるのでしょうか。

民家タイプの民泊とは

これまで、ご紹介したような民泊とはまたちょっと違うタイプの民泊が、最近注目され始めています。

毎年、増加を見せる訪日外国人たちはこれまでは主に都心部に集中していましたが、近年では徐々に郊外へと目を向ける動きが見られています。

民家を利用した民泊

2015年より国土交通省によって、民泊の試験的対策として推進されているのものに、「小さな拠点づくり」というプロジェクトがあります。

このプロジェクトは過疎化の進む農村地域がメインとなり、訪日外国人たちが利用できる観光となる呼び物や民泊を利用して、地域の振興に役立てていこうという企画になります。

岩手県北上市、秋田県東成瀬村、山形県小国町、山梨県上野原市、三重県津市などの約24地域が選定されています。

津市美杉地区の民泊(三重県)

2018年7月12日の日経新聞によると、三重県津市美杉地区では、ホテル経営者と空き家に悩む大家さんとの提携による民泊プロジェクトが進展しているとのことです。

過疎と高齢化を解決していく企画として、古民家などを民泊施設として改装していくプロジェクトで、田舎や農村の景観を生かしたデザインが重視されています。

季節を彩る野菜や花、田んぼや畑を強調したり、小川のせせらぎを利用した庭づくりに専念したり、陶芸農作業材木伐採ゴエモン風呂焚火と釜で炊くご飯づくりなどの体験ができるのです。

美杉地域の民泊プロジェクトが注目となった、もう1つの理由としては、ともすると民泊の競合ともなり得るホテル経営者が一丸となって、この企画に取り組んでいるところにあるのです。

地域振興のためには、民泊もホテルも隔たりなく協力し合う体制が欠かせないということでしょう。

ホテルや旅館と民泊の違い

民泊の普及に伴い、自らの経営を危惧するホテルや旅館などの宿泊業者は多いと聞きます。ホテルや旅館などが、これまでの収益が低下してしまうと考えるのは当然かもしれません。

不動産投資にあたって、民泊とホテルや旅館を迷ってしまう人もいるように、それぞれの宿泊施設は互いに、ゲストを奪い合っているかのように見えてしまいます。

ところが比較分析してみると、確かに民泊という新しい宿泊スタイルによって打撃を受ける宿泊施設もあるかもしれませんが、ホテルや旅館は役割が全く異なるのです。

ターゲットが違う

そもそも民泊を求めるゲストと、ホテルや旅館を求めるゲストはそれぞれ、何を求めているのかを考える必要があります。

民泊に求められるもの

  • 安さ、気軽さ、便利さ
  • 個性的な演出(インテリア、田舎や都会の体験)
  • 日本の日常生活に溶け込むこと
  • 何気ない普段と変わらない暮らし(洗濯ができる、料理ができる)
  • 大家さんや地域の人とのコミュニケーション

など・・・と親しみやすさや、安さや気軽さが何よりも重視されていると言えるでしょう。

ホテル・旅館に求められるもの

  • 鍛錬されたプロの対応
  • 洗練された演出(高級感やビジネスの雰囲気、壮大感など)
  • 日常生活を感じさせない空間
  • ブライダル、大広間、レストラン、バーやラウンジの利用
  • 必要以上のコミュニケーションを取る必要がない

など・・・

以上のように、一見して全く異なる空間やサービスをゲストはそれぞれの宿泊施設に求めているわけです。そもそもターゲットが全く異なるのです。

ホテル・旅館にしかできないサービス

ブライダルや結婚記念日などの特別な日

も結婚式を挙げる、結婚記念日を祝う、大切な父親の還暦を祝う、大切な記念日の旅行計画、大切な取引先との会合など、とても重要な特別の日の催しであればまず民泊の利用は考えないでしょう。

ホテルスタッフの対応、入り口、フロント、エレベーターや室内のデザインなどひとつひとつの過程においてエレガント、スタイリッシュ、プロフェッショナルであることが期待されます。

今後の宿泊施設の可能性

民泊の出現によって、中途半端な民泊もどきのホテルや旅館は存在価値を失い、今後はかなり厳しい時代を迎え減少していくことが予想されます。反面、付加価値の高いホテルや旅館は競合数が減ることで以前より集客数が増加する可能性も出てきます。

民泊も同様に、安価なホテルもどきの特徴のない民泊は魅力に欠け、今後も増え続けるであろう競合相手に勝ち抜いていくことが難しくなると思われます。

安さや気軽さ、個性的な空間、生活上の利便性などを徹底的に追求した民泊の存在は、高級感やネームバリューやブランド性の高いホテルや旅館の価値を対象的に浮き彫りにしてくれる役割を果たすことも期待できます。

民泊も含めてホテル・旅館などの宿泊施設は、今後はその役割に応じてサービスを提供していくものとなり、宿泊施設全般としてひとまとめに考えられていくのではないかと思います。

今後の参考までに、独特の空間演出が期待できるホテル、個性的な民泊をいくつか紹介したいと思います。

民泊やホテルの紹介

アゴーラ・ホスピタリティズ

出典:アゴーラ・ホスピタリティ 公式HP

大自然の景観を活かした空間の演出ではトップクラスのホテルです。都心部でもヨーロッパのアンティーク調を基盤とした高級感のあるスペースを提供しています。

お洒落なフレンチレストランで花火大会が楽しめる企画や、スパで美容と健康をケアしながらくつろげる設備、森に囲まれた温泉や色彩豊かな懐石料理など、高い費用を払う価値のあるサービスを提供しています。

ホームスティ型民泊

出典:Stay Japan

大家(ホスト)が実際に住んでいる戸建て(マンション)の一室を貸すタイプの民泊です。ホームスティ型とも呼ばれていて、設備費用がほとんどかからないというメリットがあります。

どうせ使わない部屋があるのであれば、と軽い気持ちで始める人が多いようです。ゲストと一緒に食事をしたり、観光に連れていってあげたり、日本語を教えてあげたりとコミュニケーションを取ることで他と差をつけることができます。

2世帯住宅まるごと貸し切り民泊

2世帯、3世帯など小型のアパートや住宅を丸ごと貸し出す民泊は、なかなか他ではみれない民泊ならではのサービスだといえるでしょう。このタイプは競合が少ないというメリットがあり、カップル同志や家族同士で旅行をする国内外の需要に応えることができます。

車や自転車のレンタルサービス、通訳サービス、観光案内サービス、清掃、クリーニングなどで他との差別化をはかることろもあります。

山の中の一軒家タイプの民泊

出典:楽天トラベル

山の中の空き家を利用して、コテージ風やペンション風に改造することもできます。友達同士やサークル関係、趣味や娯楽仲間たちと団体で借りれる、釣りや水遊びやバーベキューなどと幅広く楽しめるメリットがあります。

貸ボート、アウトドアグッズ、サウナ、マッサージルームなど特殊なサービスを提供することも可能です。

まとめ

民泊を選ぶゲストはホテルのような、気が引き締まるような高尚なサービスは求めていません。ホテルや旅館を選ぶゲストは民泊のように近所の人が部屋を貸すような気軽なイメージは求めていません。

不動産投資として宿泊施設で成功するにあたっては、民泊にするかホテルにするかと言うよりは、どんな客層をターゲットとしていくのかが大切になると思います。

ターゲットを決めていくポイントは

  1. どのような宿泊施設の提供が可能なのか(自宅、アパート、ホテルなど)
  2. どのようなサービスの提供が可能なのか(安さ、ファミリータイプ、高級感など)
  3. 競合がもっていない自分だけの武器は何なのか(中国語、飲食店経営、着付けなど)

以上の3つを考えていくことで、より明確に具体的なターゲット層が見えてくるかと思います。ターゲットを絞ることで、他には真似のできないサービスを確立し、高い効果を上げていくことも可能となるでしょう。

最近の不動産情報によると、民泊や宿泊施設を対象とした中古物件の問い合わせはかなり多いとのことです。

すでに所有している建物を利用するのが経済的ではありますが、本格的に建物から探してみても意外とアイデアが膨らむのかもしれないですね。国際化の時代の波に乗った不動産投資で、あなたも将来に備えておきませんか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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