あなたの会社の企業年金はどのタイプ?企業年金の種類を解説します。

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近年の年金制度においては、国民年金や厚生年金以外にも、個人年金や企業年金などによって、定年退職後の老後資金対策を図るところが増えてきました。

しかし、制度を導入してみたが、どのようなメリットやデメリットが存在するのかといったことが分からないまま制度に加入している人も多いかと思います。特に、企業年金の場合は、会社が制度の管理を行っているため、従業員は給与から天引きされる掛金を見て、初めて企業年金制度の存在を知るような状況であったりもします。

今回は、企業年金がどのような制度であるかを理解するためのいろはを解説していきます。

1.企業年金の種類と用語の意義

 

企業年金の種類は従来では「厚生年金基金(新規の設立が出来なくなっています)」「適格退職年金(すでに制度は廃止されています。)」が中心でしたたが、現在の企業年金では「厚生年金」・「確定拠出年金(iDeCoなど)」・「確定給付企業年金(企業DB)」の3つにわかれます。

(用語の意義)

・厚生年金基金

厚生年金保険に加入している企業が規約を定めて設立した企業年金の一つです。企業が従業員と給付の内容を約束し、高齢期において従業員がその内容に基づいた給付を受けることができる確定給付型の企業年金制度の一つで、企業や業界団体等が厚生労働大臣の認可を受けて設立する法人である厚生年金基金が、年金資産を管理・運用して年金給付を行います。国の年金給付のうち老齢厚生年金の一部を代行するとともに、厚生年金基金独自の上乗せ(プラスアルファ)を行うものですが、現在は、新たに設立することが出来ません。

・確定給付企業年金(企業DB)

企業が拠出した掛金は個人ごとに明確に区分され、掛金と個人の運用指図による運用収益との合計額が給付額となる企業年金制度であり、従業員のために企業等が規約を作成し、厚生労働大臣の承認を受けて実施する企業年金制度で、企業型と基金型の2種類に分かれます。基本的に、企業が掛け金の全額を拠出する制度となっていますが、改正によって従業員と企業が掛け金を最大で折半負担することが出来る「マッチング拠出」が出来るようになりました。

・確定給付企業年金

企業が従業員と給付の内容を約束し、高齢期において従業員がその内容に基づいた給付を受けることができる確定給付型の企業年金制度であり、企業等が厚生労働大臣の認可を受けて法人(企業年金基金)を設立する「基金型」と、労使合意の年金規約を企業等が作成し、厚生労働大臣の承認を受けて実施する「規約型」がある。基金型は企業年金基金が、規約型は企業等が、年金資産を管理・運用して年金給付を行う。ほかには、個人が掛け金を拠出して、その運輸実績に基づいて年金が支給される個人型(iDeCo)があります。

2.企業型DBとは

 

企業型DCとは「確定給付企業年金」のことです。具体的には、先ほど説明したように「規約型」と「基金型」の2種類に分かれており、いずれの場合においても、企業が掛け金を拠出してその運用実績に基づいて、年金等の支給を確約する制度です。確定拠出年金と異なり、給付額が確約されているという点で大きく異なります。

規約型

規約型確定給付企業年金は確定給付型の企業年金制度で、年金の規約を作成して、企業の外部の信託銀行や生命保険会社に年金の原資を積み立てて、管理・運用する年金制度です。企業の外部で積立を行うため、将来の年金の保護を図りやすくなっています。

規約型確定給付企業年金は、公的年金の国民年金や厚生年金保険に上乗せして給付が行われる3階部分の企業年金に当たります。

【具体的な特徴】

・開始要件

事業主と労働者側で同合意して年金の規約を作成し、厚生労働大臣の承認を受ける必要があります。年金の規約が厚生労働大臣の承認を受ける必要があります。なお、変更についても労使間の合意をしたうえで、厚生労働大臣の承認を受けることで可能となります。

・資産の管理・運用方法

規約型の確定給付企業年金は、企業の外部の信託銀行や生命保険会社などに年金の原資を積み立てて管理・運用を行います。年金の裁定は事業主が行いますが、給付は管理・運用を行う外部の信託銀行等が行います。企業の内部に積み立てるのではなく、企業の外部に積み立てるため、年金原資の保護を図りやすくなっています。

また、規約型の確定給付企業年金を実施する事業主は積立金の管理や運用について、信託会社・信託銀行と信託の契約を結ぶか、生命保険会社と生命保険の契約を結ぶか、農業協同組合連合会と生命共済の契約を結ぶことになり、信託財産の運用は、金融商品取引業者と投資一任契約を結ぶこともできます。

・加入員が少なくても実施することは可能

規約型の確定給付企業年金には、実施するための人数の要件がないため、基金型の確定給付企業年金のように300人以上の加入者が見込まれなくても確定給付企業年金を実施することができます。

ただし、あまりに加入者数が少ないと信託銀行や生命保険会社との契約に要する費用の負担が相対的に重くなってしまうことや、運営の安定性に不安が残るといったデメリットがあるため、実施が困難になることがあります。

・事業主が主導で行いやすい

規約型の確定給付企業年金では、基金型の確定給付企業年金と異なり、労働者側の関与が少なくなることから、基本的に事業主が主導する形で確定給付企業年金の行われることになるため、確定給付企業年金の運営に関して、事業主の意思を迅速に反映させることが出来るというメリットがあります。

しかし、事業主の方針次第では、加入者となる労働者側がほとんど関わらないまま確定給付企業年金の運営が行われることもあるため、労働者側が関わる場面が少ないというデメリットも存在します。

・基金型のような運営管理体制を設ける必要がない

規約型の確定給付企業年金は基金型のように別に法人を設立するわけではないため、基金の運営費用などは必要がないというメリットがあり、規約型の確定給付企業年金を実施する際には、年金の担当として専任の担当職員が置かれる場合もありますが、他の業務との兼任の職員が置かれる場合もあります。

そのため、担当職員は定期的な人事異動によって変わることが多いため、専門的な知識・経験を持った職員が育成されづらいことや、年金の管理・運用の専門的な知識・経験が企業の他の部署で活かしづらいというデメリットがあります。

規約型

企業年金基金とは、あらかじめ給付される年金が基本的に確定している基金型の確定給付企業年金という企業年金制度を実施するために設立される法人で、母体となる企業などから独立して、年金資産の管理・運用や受給者への年金給付を行います。企業年金基金は、公的年金である国民年金や厚生年金保険に上乗せして、いわゆる3階部分の企業年金の給付を行います。

基金型の確定給付企業年金とは、確定給付型の企業年金で、企業年金基金という法人を母体企業とは別に設立する部分に特徴があります。

【具体的な特徴】

・確定給付型の年金を実施する

企業年金基金は確定給付企業年金法に基づいて、確定給付企業年金を行います。企業年金基金の年金資産の運用リスクは企業年金基金、すなわち、母体となる企業が負うことになります。

・実施母体の企業とは別の法人を設立して管理を行う

基金型の確定給付企業年金では母体となる企業とは別に独立した法人である企業年金基金を設立して、年金の積立金の管理・運用を行います。企業年金基金には、代議員、代議員会、理事、理事長、監事が置かれ、基金の業務運営を行います。母体の企業とは別の組織となるため、独立性が高まり、健全な年金制度の運営が可能になるというメリットがあります。

しかし、企業年金基金の設立は厚生労働大臣が認可することになっていて、認可を受けることで企業年金基金による基金型確定給付企業年金が実施されるため、開始時期が規約型に比べると遅くなるというデメリットがあります。

・別法人を設立するため、そちらへ人員を割り当てる必要がある

企業年金基金には執行機関である理事などが置かれ、通常は基金の事務を遂行するために事務局が設置され、事務職員が配置されます。そのため、企業年金基金の運営のための人手を確保する必要があります。人手を確保するということは人件費や、企業年金基金の事務所の賃料や事務を行うための費用などのお金も必要となり、コストがかかります。

・最低でも300人以上の加入者が必要

基金型の確定給付企業年金の実施のため企業年金基金を設立する場合には、300人以上の加入者が必要となるため、規模の小さい事業場では単独で基金型を実施することは難しいといえます。

そのため、単独で人数の条件を満たせない場合には確定給付企業年金を実施する場合、基金型ではなく規約型を検討するか、他の事業主と共同で設立することを目指すことになります。

3.企業型DBの手続きの流れ

 

受給手続きは企業型DBの種類によって異なります。基本的に、基金型の場合は各企業年金基金が窓口になり、規約型の場合は会社が窓口となり手続きを行うことになります。

企業年金連合会から、支給開始年齢の到達月になると、登録されている住所に「企業年金連合会老齢年金裁定請求書」(以下「裁定請求書」という。)と「年金の請求手続きについてのご案内」が送付されます。

裁定請求書が届かない場合など、裁定請求書の発行を希望される場合は、以下の方法により、裁定請求書の送付をご依頼ください。なお、ご依頼を受けてからおおむね1週間程度で裁定請求書をお送りしております。(代理人の方宛に請求書をお送りする場合には、委任状が必要となります。

(裁定請求書の送付の依頼方法)

1.電話

電話の場合は、加入されていた厚生年金基金の加入員番号または国の基礎年金番号を確認するので、番号のわかるものをあらかじめ準備しておくことが必要です。

2.インターネットから依頼

インターネットから依頼できる内容は、企業年金連合会の年金記録の確認と連合会年金相談サービスの2種類あります。

①企業年金連合会の年金記録の確認

連合会が年金の記録をお預かりしているか確認することができます。

②連合会年金相談サービス

連合会年金の受給者・これから受給される方のご相談を受けることが出来ます。

3.文書による依頼

文書による依頼の場合は、葉書等で「裁定請求書送付依頼書」を郵送することになります。

4.iDeCoとの違い

 

(1)企業が主導して行うものか?個人が主導して行うものか?

企業DBは企業が主導で行う企業年金制度ですので、個人単位で関与する内容はあまり大きくないものです。これに対して、iDeCoは個人が金融機関を選択して、運用内容まで決定する形の年金制度となっているため、個人単位で最初から最後まで関与することになり、完全に自己責任の下で行われるものとなります。

(2)加入対象者が異なる

iDeCoは個人型の確定拠出年金なので、加入対象者は個人であり、一定の要件を満たしている人であればだれでも加入することが出来ますが、企業DBは会社が実施している企業年金制度となるため、その会社の所属している人のみが対象となっています。

(3)企業型DBは給付が確約されているのに対して、iDeCoは運用の結果次第では給付が行われない恐れがある。

企業型DBは、確定給付企業年金の制度となるため、給付が確約されている企業年金制度となりますが、iDeCoは確定拠出年金ですので、掛け金を拠出しなければ、給付が行われることもありません。また、積み立てた掛け金の運用の方法によっては、元本割れを起こすウリスクがあるため、将来における給付が確約されているわけではありません。

【間違えやすい3つの制度】

企業型DB・企業型DC・iDeCoはいずれも3階部分の私的年金です。しかし、似たような略称のものが多く、内容を混同する恐れがあるので、ここで整理してみようと思います。

①企業型DB

確定給付企業年金のことで、老後に支給される年金が確定しています。企業が社員のために掛け金を拠出して、その積立金を運用する形をとっています。

年金等の受給方法としては、一時金・年金のいずれかで受給することになります。また、企業型DBは「規約型(会社の中で運用・管理を行う)」と「基金型(別法人を立ち上げて、その法人が運用・管理を行う)」とに分かれます。

そのため、従業員が企業年金制度への介入度合いが「企業年金を実施するかどうかについての同意」の部分だけとなっていることが多く、従業員に制度がしっかりと伝わらないまま、制度の運用が行われるということも考えられるため、しっかりとした説明を聞く必要はあります。

②企業型DC

確定拠出年金の企業型のことを言います。こちらはDBとは異なり、老後に給付される年金額が確定していないため、運用次第では元本割れをするリスクがあります。これはiDeCoにおいても同様のことが言えます。掛金は原則として「全額企業が負担する」のですが、法改正によって「半額までは従業員も掛金を拠出することが出来る(マッチング拠出)」形に変更されています。

従業員等の介入については、掛け金の半額まで拠出することが出来るといった部分などから、DBに比べるとある程度、従業員の介入要素は高いものといえます。

③iDeCo

確定拠出年金の個人型のことを言います。iDeCoは個人が自己責任の下で掛金の拠出を行い、その運用方法を運用先に指図し、その運用結果に応じて老後に受け取ることが出来る年金額が決定する仕組みとなっています。今までは、自営業者などを中心に加入者が多かったのですが、近年の法改正により、専業主婦(夫)や公務員等であっても、加入要件を満たしていれば加入することが可能となってきました。

個人単位で行うため、最初から最後まで、ほぼ自分で運用をおおなうことになります。なお、iDeCoとNISAとを組み合わせて分散投資を行う人が増えている傾向にあります。

5.まとめ

企業が行う企業年金には、確定給付企業年金のように老後の時点で急須される年金額が確定しているタイプや確定給付企業年金(企業型)のように運用先を選択したうえで、その運用実績が年金額に直結することもあります。

企業年金は企業がどのような形で行っているかによって、その取り組み方や制度の在り方について大きく異なる福利・厚生の制度になります。まずは、じぶんの企業の福利厚生制度を確認したうえで、どの企業年金制度を導入して取り組んでいるかをしっかりと確認することが大切になります。

今後は公的年金制度だけでは、賄いきれない状況がすぐそこまで迫っているといえます。そう考えたうえで、会社が従業員に対して行う取り組み方も変化の兆しを見せ始めているのかもしれません。その上で、新たな企業年金制度がどんどん導入が進んでくることも想定できます。

これからの時代において、企業年金の形が多種多様になってくることことが考えられますので、早めに制度改革を考えてみることが大切なことにつながっているかもしれません。

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