元債務整理事務所従業員が教える「債務整理」の本当のメリット・デメリット

借金等の債務のための支払いが苦しくなってしまった場合に、テレビやラジオ・ポスティングにある「債務整理」はすごく魅力的に感じます。

しかし、「借金の心配がなくなる」「支払いが減る」といったメリットはよく聞こえてくるものの、どんなデメリットがあるのかは正直あまり見えてこないのも事実です。

Expert
なぜって?事実上ほとんどのケースでデメリットなんかないからですよ。

元債務整理事務所の従業員で、FP資格もある私が、債務整理をする事で得られる本当のメリット・デメリットについてお伝えします!

債務整理の概略

まずは、そもそも論として、「債務整理」って何でしょうか。

債務整理とは

「債務整理」というのは、借金返済に困った人が、支払いを免除してもらったり軽くしてもらったりする事で生活再建を目指すためのいくつかある手続きの総称をいいます。

「債務整理法」というような法律があるわけではなく、借金問題に対応するための手続きの総称なのです。

債務整理というは実は、弁護士や司法書士の業界用語で、「借金に関する法律事務手続き」のことをまとめた呼び方です。

医者の専門として、内科・外科・眼科…とあるような専門領域の呼び方がこの債務整理です。

債務整理の手続きには

  • 任意整理
  • 自己破産
  • 民事再生(個人再生)
  • その他(過払い金請求・相続放棄・会社更生・特別清算・特定調停)

といった個別の手続きがあります。

任意整理とは

任意整理とは、貸金業者等と借金の総額・利息・支払い方法などについて話合いの上で、新しい条件での支払いの契約をする事で支払いを軽くする手続き、をいいます。

法人がする任意整理の事を「私的整理」という言い方をする事もあります。

お金を借りたり、債務を負担した際には、契約や法律で規定された事項が適用されます。

しかし、契約や法律で定められた条件での支払いが難しくなるような場合は多々あります。

このようなシチュエーションを考えてみてください

Aさんは毎月5万円の返済を消費者金融にしていたが、病気で2か月働けなくなり、その間返済ができなくなった

このような場合には、契約書上はどうなるかというと

  • 利息に上乗せして遅延損害金を支払う
  • 一括で支払う

という事になります。

契約書上では上記のような請求が可能になるだけで、貸金業者も事情を踏まえて支払いに関する相談には載ってくれるのですが、もっと楽に支払いをできるようにしたいものです。

そのような場合に、弁護士・司法書士に依頼をして、貸金業者と話合いをします。

その結果

  • 支払いの総額:遅延損害金を入れた額を元本とするのか?契約をした元金を総額とするのか
  • 利息の支払い:契約書で定められた利息を支払うのか、利息の支払いを無しにするor利息の支払いを軽くするのか
  • 支払いの方法:一括なのを分轄にする

というように支払う人に負担のない方法に軽くしてもらいます。

自己破産とは

自己破産とは、支払いができなくなってしまった時に、裁判所に申し立てをして、借金の支払いをしなくてよいようにしてもらう手続きの事をいいます。

この制度は破産法という法律に基づくきちんとした国の制度です。

例えば病気や失業で収入がなくなってしまった場合を想定してください。

このような場合にも、遅延損害金が発生して、もう一度仕事についてもとても生活できないレベルの返済しか待っていないとすると、生活を再建しようというやる気もなくなってしまいますね。

そのため、もう借金の支払いはしなくてよい事にします、という事を認めて、生活の再建をさせようという制度が自己破産です。

法律上みとめられた請求する権利をなかった事にする重要な手続きなので、国の機関である裁判所が本当に債務を免除するのが妥当なのか?という事を厳密に審査しますので、裁判所に申し立てをする必要があります。

個人再生とは

個人再生とは、借金の支払いが難しくなった場合に、裁判所に申し立てをして借金の総額を減らした金額を分轄払いにするようにしていく制度をいいます。

上記の任意整理では、実際の実務上借金などは元本額以上に支払いを軽くしてくれる金融機関はありません。

そのため、元本の分割払いではもう支払えないような場合には自己破産を選ぶのが基本となります。

しかし、住宅ローンを抱えた住宅を持っている、自己破産をすると就けなくなる職業であるような場合には、自己破産手続きは選択できません。

そこで、借金を減額すれば支払えるような場合には、個人再生という別の手続きをとることで、自己破産せずに借金を圧縮してあげて支払うという手続きをとる事もできるようにしてあります。

こちらも請求権を強制的に減額した上で、分割払いにする制度なので、本当にそれに値するのかどうか、という事を厳密に審査するために裁判所が判断をする事になっています。

債務整理のメリット・デメリット

債務整理にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

債務整理のメリット

まずは債務整理のメリットと呼ばれるものにはどのような事があるかを見てみましょう。

返済が軽くなるという物理的な面

まずは、自己破産をすれば返済は原則なくなりますし、任意整理・個人再生を選択すれば返済は軽くなります。

これが債務整理の最大のメリットといえるでしょう。

悩まずに済むようになるという精神的な面

そして、債務整理をする事によって返済が楽になれば精神的に落ち着くという事も見逃せません。

すでに返済が遅れているような場合には督促の電話・郵送物に悩む事になります。

遅れていない場合でも、この先ずっと借金生活と思うと精神的に圧迫されますね。

その状態が長く続くと、うつ病・ノイローゼといった精神疾患になってしまい、もう生活自体ができない状態になってしまう可能性もあるのです。

目にするのは怖い数字なのですが、是非知っておいて欲しいのは、自殺の原因の2番目は経済的な問題、1番は健康問題です。

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/h29kakutei-01_1.pdf(厚生労働省:平成29年中における自殺の概況)

残念な事ですが、筆者は法律事務所勤務時代に、担当していたお客様が自殺をされた事案に何度も直面したことがあります。

債務整理により生活が確実に楽になるような事案であったにも関わらず、正常な判断ができなくなってしまった結果、残念な事になってしまったのです。

経済的な再生以上に、精神的な安定による生活再建に債務整理は役にたちます。

債務整理のデメリット

上記のような借金の返済が楽になる反面で、様々なデメリットとして紹介されるのは次のようなものです。

ブラックリスト

人がお金を借りている事実は、信用情報機関と呼ばれるところに登録をされています。

貸金業者が融資の際にその人がどれくらい借りているのかという情報を見るために用いられます。

その支払いが遅延したり、債務整理をしたりした場合には、信用情報期間に登録をされます。

その信用情報に支払いが遅延したり、債務整理をしたという情報が登録された状態をブラックリストと呼んでおります。

実際にブラックリストというリストがあるわけではありません。

この事によって、新しい借り入れができない、というデメリットがあるという風に説明されます。

借入には、住宅ローン・自動車ローン・クレジットカードの発行が含まれます。

住宅ローンや自動車ローンの利用を予定していたり、生活でクレジットカードを使う人(特に自動車を利用する方でETCを利用している方)には、デメリットであるとされています。

プライバシー保護

プライバシー保護の観点から、デメリットを受ける可能性は否定はできません。

まず、法律事務所・司法書士事務所との書類などのやりとりに郵便を使うことがあるため、郵送物を見られてしまう可能性がある事です。

しかし、法律事務所・司法書士事務所も、事務所の名前が書かれた郵送物を差し控えて、無地のものを利用するなどして対応自体はしてくれます。

自己破産の制度を利用する際に、郵送物が管財人と呼ばれる人のところに送られてから、自分のところに一括して転送されてくる制度がありますが、本当に他の身内の方にわかってしまうのかは、家族の生活パターン等にもよってきます。

官報掲載

自己破産・個人再生を利用する場合には、法律の規定により官報という国が発行している新聞に掲載がされる事になっています。

プライバシー保護の観点からはデメリットであるとされています。

本当にデメリットなのか?

上記は一般的にメリット・デメリットと言われるものになりますが、ここで債務整理の実務を経験した私の観点を入れさせてください。

官報掲載を見る人はいない

まず、官報掲載について考えてみましょう。

みなさんは官報を見た事ありますか?

私は債務整理事務所で働くまで見たことがありません。

法律事務所や司法書士事務所で働いている間も、仕事に必要でどんなものか知る、という趣旨でしか見たことがありません。

官報には何が書いてあるかというと、法律などが改正されました、株式会社の決算がありました、といった法律上お知らせをしなければならない、形だけのものです。

官報を普通に見る職業の人は、官報に載せららた情報をシステムに登録する人か、ヤミ金融くらいしか居ないのではないのかな?と思っています。

ここから情報が洩れてあなたの身の回りにわかってしまう可能性がものすごく低いです。

仮に、あなたの情報を目にする職業の人が身近にいたとして、その事を他人に触れてまわるような事があれば、名誉棄損というような事になることも用意に想像つきますね。

ですので、官報に載って人に知られることを恐れて債務整理をしないという事は、意味のない心配をしています!と断言します。

ブラックリストはむしろメリットだ

いわゆるブラックリストに対して拒否感をもっている方はおおよそ次の3点に集約されます。

  • 借入ができないと生活ができなくなるではないか
  • カードが無いと生活に不便だ
  • 将来は住宅ローンや自動車ローンを利用したい

しかし、それぞれ見方を変えて考えると、デメリットではなくなる事に気づいてください。

そもそも借入をする事が前提の生活から抜けられる

「借入ができないと生活ができなくなるではないか」と心配する人は、日常生活において消費者金融等からの借入枠を利用する事が生活に不可欠なものになっています。

この思考回路事態が、借金返済ができなくなっている大きな原因だという事に気づいてもらいたいのです。

ブラックリスト入りで新しい借り入れができなくなる事によって、自分の収入の中で適切な生活ができるように生活習慣が元に戻ります。

収支のバランスのとれた生活を強いてくれるので、私はこれは逆にメリットなのではないかなと思っています。

それでもなお、病気や失業で働けなくなったり、一時的な出費で生活に困るような事がある場合もあります。

前者のようなケースになれば、生活保護の制度を利用すべきケースとなります。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatuhogo/index.html(厚生労働省|生活保護のページ)

カードは別の何かで対応できる

「カードが無いと生活に不便だ」と感じる人は、インターネットショッピングをしていたり、自動車に乗られる方はETCの利用をしている事が多いのではないでしょうか。

しかし、インターネットショッピングをするためにカード決済なら、VISAデビットカードを利用する事で代用できます。

またETCも事前に入金をしておくデポジット方式のETCカードが存在しています。

確かに普通のクレジットカードの場合には、あとから金利をひいて清算をしてくれるので、それに比べると不便かもしれません。

しかし、いつまでも高い金利で生活が再建できないほどの借金と向き合い続ける事に比べれば楽になるのではないでしょうか?

毎回消費者金融や銀行に返済をするためにATMに回っていた時間がそのまま、VISAデビットやETCカードへの入金に回ると考えれば、時間の面での差し引きは0ですね。

住宅ローンや自動車ローンを組みたいならむしろ債務整理をすべき

今は借金返済のための生活をしているが、いつか子供をつくってマイホームが欲しいと考えているのであれば、むしろ債務整理をすべきです。

ブラックリストは一生続くわけではなく、債務整理の手続きの種類により5年~7年程度の期間のみです。

その期間をすぎると、信用情報には借り入れが全くない状態になります。

たとえば今から7年後を考えましょう。

借金返済生活で借金が残っている状態のまま、住宅ローンの審査を受けても、「本当に支払いができるのか?」という疑問を融資の担当者は持たざるを得ません。

住宅ローンは、頭金があるか、どうやって貯めたか、今の借金の状態はどうか、といった事の総合判断をします。

借金返済でカツカツになっているところに頭金がない…というような状態ですと、借りられないのです。

一方で債務整理をした場合の7年後はどうでしょうか。

自己破産をして借金を免除してもらったり、個人再生や任意整理でさっさと返済をしきってしまいます。

そうすると、ブラックリストの状態から解除される時までにしっかり頭金を作る事ができますね。

頭金があって借金もない状態のほうが借りやすいのは、容易に理解していただけると思います。

今の自動車が古くなっているので自動車ローンがそのうち必要になる、と考えている人も同様です。

借入の枠がパンパンになっている状態で自動車のローンの申請をしても通らない可能性があるでしょう。

であれば、一括にはなりますが、自動車を買うための貯金をしておく事で対応は可能なのです。

都市伝説のようなデメリットには騙されないで

債務整理にあたっては、もはや都市伝説レベルのデメリットを信じている方がいらっしゃいます。

特に典型的なのが、自己破産をすると公民権停止になる、といったものです。

そもそも公民権停止とは、選挙権や、立候補する権利を指すので、仮に公民権停止になるとしても、その事自体が日常生活に影響する事はほとんどのケースではないのと、そもそも債務整理で公民権停止になるような事は、どこにも規定されていません。

まとめ

このページでは、債務整理とはどのようなものかについてお伝えした上で、債務整理をする事についてのメリットとデメリットについて一般的に言われている事を紹介した上で、債務整理実務に従事した筆者の体験も踏まえてお伝えさせていただきました。

債務整理には確かにデメリットになる事もありますが、あなたの生活全般を観察する事で、実は事実上デメリットではない事が筆者の経験ではほとんどです。

まずは弁護士・司法書士といった専門家に相談する事をお勧めします。

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