目次
自転車保険義務化について
「どんな自治体が義務化をおこなっている?なぜ自転車保険が義務化されているの?」
乗り物と保険という観点から考えた時に、自動車でもバイクでも通常なにかの乗り物を利用する際には、保険に加入する事が一般的です。何故なら、なにか事故が起こった場合に賠償額が高額になるケースが少なく、そのようなリスクに対応するためだと言えるでしょう。
また、自動車・バイクと言った乗り物場合は加入が義務付けられており、加入していない場合は罰則が存在しています。そんな中で、これまで加入が義務付けられていなかった乗り物に、自転車が挙げられるでしょう。
自転車はバイクや自動車と比較した時に速度もそれほど出ませんし、一般的に自動車・バイクと比較した時にそれほどリスクが無いと見られている事が多いです。また、免許制でも無いので、若年層でも気軽に利用する事が可能になっています。
しかし、そんな自転車も近年義務化の流れが始まっており、今回は自転車保険の義務化というテーマで、
- 自転車保険の義務化が行われる理由
- 自転車保険に義務化と罰則
- 義務化に備えるための自転車保険
という観点から解説していきたいと思います。まず、はじめに自転車保険義務化が行われている理由・義務化を行っている自治体等について解説していきたいと思います。
なぜ、自転車保険が義務化されているのか?
自転車に乗るために免許等は必要なく、子供から大人まで気軽に利用できるのが自転車の魅力であると言えるでしょう。義務化が行われつつあるとは言っても、このような状態が変わるような事は無いと思います。
ただ、自転車を気軽に利用する事が出来るという事で、自転車を利用する上で存在しているリスクを軽視してしまうのは、危険な事です。これから、自転車保険が義務化されつつある背景について押さえていきましょう。
自転車にも大きなリスクはある
一般的に利用する事が多い乗り物は「車」「バイク」「自転車」となっていると思います。その他にも選択肢は存在していますが、現時点では最も利用されていると言えるでしょう。
この中で、唯一免許が必要ないのが「自転車」になっています。車やバイクの利用には免許が必要であり、バイクでは16歳から・車は18歳からという年齢制限も存在しています。
なぜ、このような年齢制限が存在しているかと言うと、身体的な成長はもちろんですが、それよりも重視されているのは年齢ともなって上がってくる判断能力です。車やバイクの利用に伴っては、一般的な判断能力が必要不可欠だと言えます。
上記したような乗り物と比較した時に簡単に利用できてしまう自転車ですが、もしも「自転車で死亡事故を起こしてしまった」というケースに遭遇した事を考慮した事がある方は、あまり多くないでしょう。
バイクや自動車に比べると、どうしても死亡・高度障害に繋がるような事故のリスクが少ないように感じてしまいます。ただ、自転車であっても誰かに事故を起こしてしまい、誰かに危害を加えた場合は賠償責任が生じます。
自転車の賠償責任というのは、どうしても少なく見積もってしまいがちですが、死亡・高度障害に繋がるような事故であった場合は、数千万円規模の賠償責任が生じてしまう事も少なくありません。
そもそも、加害者が被害者に対して支払う事になる賠償金というのは、乗り物によって変化するものではありません。両者の過失の度合いや、与えられた・与えた損害のレベル(逸失利益、介護に伴う損害)によって異なります。
死亡事故等のリスクを自転車になると、どうしても自動車・バイクと比較した時に安易に考えてしまいがちです。しかし、実際はどのような乗り物であったとしても、もしもの時の賠償額というのは大きなものになりがちなのです。
自動車と自転車を比較
これから、自転車に関するリスクをしっかりと押さえるために、自転車と自動車のよく出される死亡事故の事例についてご紹介したいと思います。
自動車事故の事例
自動車保険の必要性をアピールするために、よく挙げられる事例は平成23年に横浜地裁が出した「約5億800万円」の裁判です。この金額は、自動車事故の賠償額としては最高額のものになっており、よく出てくる事例だと言えるでしょう。
この金額になった大きなポイントは、被害者の逸失利益になっています。被害者の職業が眼科の開業医だったので、年収が約4,000万円と高額でした。そのため、逸失利益が4億以上のものとなり、賠償額が大きくなった事例です。
逸失利益によって大きな賠償額に繋がった代表的な事例ではありますが、実際はここまで大きくなるのは特殊なケースであると言えます。自動車事故であっても、通常賠償額は数千万円~1億円程度に収まる事が少なくありません。
自転車事故の事例
次に、自転車事故の代表的な事例についてご紹介したいと思います。自転車事故で、賠償金が高額になった事例として紹介される事の多いのは「約9,200万円」の賠償金が判決として出たものです。
この自転車事故自体は死亡事故でありませんでしたが被害者に言語障害等が見られ、賠償金が大きくなりました。自転車事故においては、死亡事故よりも高度障害が残ってしまい高額な賠償金が請求されるケースが少なくありません。
介護費用等が賠償金をアップさせる要因となっており、自転車同士・自転車と歩行者どちらのケースにおいても、最も高額なのは被害者に大きな障害が残ってしまったケースになっています。
また、自転車事故は加害者が若年層であるケースが多いです。先程の事例でも、加害者は高校生でした。また、対歩行者の最高額の事例に関しても、加害者は11歳の小学生でした。
やはり、免許制ではなく、気軽に子供であっても利用する事が出来るという自転車の特徴が、事故に関しても大きく出ていると言えるでしょう。お子さんが通勤に自転車を利用しているケースは、要注意であると言えます。
自治体によって大きく異なる義務化
先程、自転車事故のリスクについてご紹介したので、自転車が十分危険な乗り物になる可能性を持っている・賠償責任が生じる可能性があるという事について、押さえて頂けたと思います。
上記したようなリスクが存在しているため、義務化の流れが強くなっています。ただ、国を挙げて自転車の義務化を行っているというよりは、各自治体が行っているという認識の方が正しいと言えるでしょう。
というのも、義務化を行っているか?行っていないか?は自治体によって異なり、傾向としては都市に多い傾向にありますが、未だに義務化していない地域・義務化している地域が異なっています。
自転車保険を義務化している自治体
自転車保険を義務化している自治体は、以下のような自治体が挙げられます。
- 大阪府
- 京都府
- 兵庫県
- 名古屋市
- 鹿児島県
- 埼玉県
- 神奈川県(予定)
- 静岡県(予定)
- 長野県(予定)
府県を中心的にご紹介しましたが、市町村クラスで見てみるといくつか導入している地域があります。詳細を詳しく知りたい場合は、各自治体に問い合わせるのがおすすめです。もしかしたら、現在実施されているだけではなく、予定されている可能性もあります。
また、実際に義務化しているという形ではなく、努力義務化という自治体もあります。以下のような都道県が努力義務化になっています。
- 東京都
- 北海道
- 群馬県
- 愛媛県
- 鳥取県
- 千葉県
- 徳島県
- 香川県
- 福岡県
- 熊本県
自転車保険義務化は兵庫県から始まった流れではありますが、やはり人工が密集しており自転車事故のリスクが高い関西・関東に多いと言えるでしょう。また、上記したもの以外にも、今後予定されている可能性もあります。
先程も少し触れましたが、この自転車保険義務化というのはあくまで国が行っているものではなく、各自治体が条例として導入しているものであり、詳細については自治体に確認する必要があります。
必要な保険等が異なるケースも考えられるので、自転車保険義務化に伴って自転車保険に加入する際は、各自治体でのチェックを行いましょう。
自転車保険義務化に伴って罰則はある?
自転車保険が義務化されつつある背景や、実際に導入している自治体についてご紹介させて頂きました。義務化と聞くと、違反してしまうと逮捕されたり、罰金を支払わないといけないようになるというイメージがあると思います。
なので、これから自転車保険義務化に伴う罰則等についてご紹介していきたいと思います。
罰則は無い
結論からご紹介すると自転車保険の義務化に伴って、自転車保険を契約してない状態で運転したとしても罰則はありません。自転車保険義務化は各自治体が独立して制定しているルールなので、条例違反という形になります。
条例とは
先程、自転車保険の義務化を行っている地域や努力義務を行っている地域についてご紹介させて頂きました。つまり、現時点では義務化になっていない地域もあるという事です。
なぜ、同じ日本なのにこのような違いが出てくるかと言うと、条例と法律の違いによるものです。日本全国どこでも共通して守らないと行けないルールは法律になり、国会で様々な処理を行うのが法律になっています。
一方の条例とは、各自治体が制定するルールの事です。つまり、条例に関する様々な行政的な処理は各自治体で行う事になり、条例があるような地域と無い地域の違いが出てくるようになっています。
法律は全国的なルール、条例は各自治体のルールと押さえると良いでしょう。自転車保険も現在では法律で決まっているものではなく、条例によって決められているので地域によって義務化・義務化してないという違いが出てくる事になります。
条例違反にはなる
自転車保険の義務化は条例で、現時点では罰金・逮捕等の罰則は存在していません。もちろん、条例の中でも逮捕や罰金に繋がるようなものは存在しています。そのため、罰則の有無と条例・法律の違いは関係ありません。
ただ、自転車保険が義務化されているような地域で、自転車保険に加入してない場合は条例に定められた事を破っている事になりますから、条例違反の対象にはなります。
また、先程ご紹介したように条例は各自治体が独立して行うものになります。つまり、全国的に共通したルールを守らないといけない法律と違って、条例の場合は各自治体によって詳細が異なってきます。
自治体によって、自転車利用者に対しての自転車保険を促進しているだけではなく、保護者に対しても自転車保険の加入を促進しているものもあります。
自転車保険の義務化と言っても、条例という形式上詳細が自治体によって大きく異なります。このあたりの詳細は、自治体によって本当に異なるので、義務になっている保険を各自治体でチェックする必要があるでしょう。
通学・通勤で使えなくなるかもしれない
先程、自転車保険の義務化に伴って罰則は存在しないとご紹介しました。罰則が無いとあまり加入への必要性を感じなくなりますし、何よりも加入への動機に繋がらないかもしれません。
ただ、形としては条例違反になるので、自治体や通勤先・通学先のルールで自転車を利用できないというケースが存在しています。つまり、罰則は無くても何かしらの不都合が出てくる可能性があります。
もちろん、罰則がない以上実質的には「加入奨励」というルールになっていると言えるでしょう。しかし、全国的に義務化の流れが強いので、近い将来罰則が出てくる可能性も否めません。
保険料を支払うのは実際に自転車を利用する方なので、必要・必要じゃないを各自で判断する必要があります。しかし、忘れてはいけないのが保険料を払うのは自転車の利用者次第ですが、賠償金は利用者の意思関係なく請求されます。
自転車事故のリスクを考慮した時に、通勤・通学等で頻繁に自転車を利用する方の場合は特に必要性が高いと言えるでしょう。
自転車保険義務化に備えるために
今回は、自転車保険と義務化というテーマを様々な観点からご紹介させて頂きました。中には自転車保険の必要性を強く感じた方も居るかも知れません。なので、これから自転車保険の概要と義務化に伴って重視するべき点をご紹介していきたいと思います。
自転車保険の概要
自転車保険について簡単にご紹介すると「自転車に関する様々なリスクを補償する保険」というものになっています。保険はなにかあった時のために加入するものであり、保険を理解する最も簡単な方法は補償内容を把握する事です。
自転車保険が提供している補償は主に以下のようなものになっています。
- 損害賠償責任に関する補償
(自転車で怪我をさせたり、死亡させた時) - 示談交渉・弁護士費用
- 死亡保険金や治療費補償
(保険事故で怪我をした時に) - ロードサービス・車両盗難等
上記したものが主な自転車保険の補償内容になっています。上記したような補償内容は一見、多種多様な異なった補償内容に見受けられますが、補償の対象という観点から見た時に分類する事が可能です。
死亡保険金や治療費というのは、死亡した時・治療が必要になった時にお金が入る補償の事を指していますが、この対象は「自分に何かあった時」というものになっています。つまり、補償の対象が保険に加入している人になっている事です。
逆に損害賠償責任に関するもの、示談交渉、弁護士費用というのは、事故を起こした際に「誰かを補償する」というものになっています。間接的に、補償の対象者は「加害者になった場合の被害者に対するもの」という補償であると言えるでしょう。
最後にロードサービスや盗難等の補償です。これは、自転車に何かあった時の補償になっており、高額な自転車を利用しているケースで人気の高いものになっています。
どの補償も魅力的に見えますが、実際はニーズによって必要な補償内容は異なると言えるでしょう。傷害保険等に加入している場合は、自分に対する補償は必要ないかもしれません。また、他の保険で賠償責任関連の補償を行っているケースもあります。
一見、関連性のない補償ですが、補償の対象という観点から考えた時に、必要な補償を見分けやすくなります。各ニーズに合わせて、自転車保険に加入しましょう。
義務化に伴って重視するべき所
先程、自転車保険の基本的な補償内容についてご紹介させて頂きました。ここで気になるのは、義務化に伴って必要な補償はどれなのか?というポイントでしょう。
結論からご紹介すると、自転車保険の義務化に伴って必要性の高い補償は「加害者になった時に被害者を保護するもの」だと言えます。つまり、損害賠償責任に関する補償・示談交渉・弁護士費用等がこれにあたります。
そもそも、自転車保険の義務化の流れ自体が、自転車事故で数千万円規模の賠償責任が発生するのに対し、バイク・車と異なって自転車には保険が必要ないという観点から始まっています。
自動車に関しては自賠責保険が義務となっており、自賠責保険は任意保険と異なって被害者の保護観点から加入が義務付けられています。自転車保険についても、自分以外の誰かに対する補償が重要だと言えるでしょう。
まとめ
自転車保険義務化の概要
- 自転車であっても高額の賠償責任が発生するリスクが有る
- 義務化は自治体によって異なる
義務化と罰則
- 罰則はない
- 条例のため、条例違反になる
- 通勤・通学で自転車を利用出来なくなるかも
自転車保険について
- 自転車に関するリスクを補償する
- 義務化に伴って、賠償責任関連を重視するべき
今回は、自転車保険と義務化というテーマで、義務化の背景や自転車保険の義務化に伴う罰則、義務化に伴って重視したい点についてご紹介させて頂きました。
自転車保険義務化の流れは条例によって行われており、自治体によって義務化してない・努力義務化であるというように、地域による差が出ています。ただ、自転車に関するリスクは、どのような地域でも潜在的に存在しているので、しっかりと自転車保険で補償していきましょう。