相続税に抜け道はある?税務調査で納税漏れが発覚した場合のペナルティは?

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  • 親の遺産を相続したけれど、税理士に相談したら「相続税の金額がかなり大きくなる」といわれた…。
  • 相続税の負担を少しでも小さくしたいけれど、何か抜け道ってないの?
  • 相続税の納税を期限までにしなかったらどうなる?税務調査って一般個人の家庭でも来ることがあるの?
  • 税金逃れが明らかになった場合のペナルティの具体的な内容は?罰金や延滞税はどうやって計算する?

相続税は、一定額以上の遺産が相続される場合に課税される税金です。

(目安としては、3600万円以上の遺産がある場合に相続税がかかります)

日本の法律では、遺産の金額が大きくなれば大きくなるほど、相続税の負担額も大きくなるルールになっています。

すでに税理士などに相談して相続税の大まかな税額を試算してもらった人の中には、「こんなに納税額が大きいなんて…」と負担に感じている方もひょっとしたらいらっしゃるかもしれません。

税金の負担が大きくなるときには「なんとか抜け道がないものか…」という気持ちになってしまいますよね。

しかし、納税義務のある税金の負担から逃れようとすることには大きなリスクがあることを理解しておく必要があります。

具体的には、税務署が行う税務調査の結果として、本来の税金を納める義務の他に延滞税や加算税といったペナルティが課せられてしまう可能性があるのです。

以下では、相続税の税逃れが明らかになったときにどのような不利益があるのかについて具体的に解説します。

税金の負担を少しでも小さくするためにやっておくべきことについても解説しますので、近い将来に遺産相続が控えているという方は、ぜひ参考にしてみてください。

相続税に抜け道はある?

結論から言うと、相続税の負担から逃れることは非常に難しいと言えます。

その理由としては以下の2点が挙げられます。

相続税の税逃れが非常に難しい理由

  • ①税逃れが明らかになった場合に、非常に重いペナルティを課せられる可能性がある
  • ②税務署には広い範囲の調査権限が与えられているので、ある程度の金額が相続される場合には、税逃れを発見されてしまう可能性が極めて高い

第一に、①税逃れが発覚した場合には非常に重いペナルティを負うリスクがあります。

具体的には、加算税や延滞税といった追徴課税を課せられてしまう可能性があり、これらは本来納める税金の15%〜20%にもなる思いペナルティです。

また、②チェックを行う税務署は、あなたの資産の状況について調査を行う広い範囲の権限を与えられています。

そのため、税逃れが成功する可能性は非常に低いというのが現実なのです。

相続税の税逃れが明らかになった場合のペナルティ

相続税の税逃れをした事実が明らかになった場合には、具体的にどのようなペナルティが課せられてしまうのか?について理解しておきましょう。

相続税の税逃れが明らかとなった場合のペナルティとしては、大きく分けて以下の2つが考えられます。

  • ①延滞税
  • ②加算税

以下では、これら2つのペナルティの具体的な内容(計算方法)について解説いたします。

なお、税額が非常に大きいケースでは刑事罰が科せられることもありますが、税逃れで刑事罰が科せられるのは非常にまれなケースと言えます。

(新聞に載るようなニュースになる程、大きな金額の税逃れが明らかになったような場合に限られます)

①延滞税

延滞税は、法律で決められた期限までに納税を行わなかった場合に課せられるペナルティです。

延滞税の計算は以下のように行います。

延滞税=本税の金額×延滞税率

注意点として、延滞税の税率は「納税の期限からどのぐらいの日数が経っているか」によって異なることです。

具体的には、納税期限から2ヶ月が経過しているか?によって税率が以下のように変化します(日割り計算で計算します)

  • 納期限から2ヶ月以内の場合:2.6%
  • 納期限から2ヶ月以内の場合:8.9%

つまり、本来の納期限から2ヶ月以内に申告と納税を行えば延滞税の負担はまだ小さくてすみますが、それ以降になると非常に思い負担が生じてしまうというわけです。

(※なお、延滞税の税率は毎年微妙に変更されますので注意してください。上記の税率は平成31年1月1日〜平成31年12月31日に生じた納税義務に関して適用される税率です)

延滞税計算の具体例

上の計算方法をもとに、延滞税の金額を実際に計算してみましょう。

例えば、本来の相続税納税額100万円で、納税期限の日から5ヶ月後(150日後:1ヶ月は30日間とします)に納税を行なったとします。

この場合の延滞税は、以下のように計算できます。

  • 納期限から2ヶ月以内の延滞税=本税100万円×2.6%×60日間÷365日=4273円
  • 納期限から2ヶ月以降の延滞税=本税100万円×8.9%×(150日−60日)÷365日=2万1945円
  • 合計:4273円+2万1945円=2万6200円(百円未満は切り捨て)

本来の税額100万円に対して2万6200円もの延滞税が発生しますので、非常に大きな負担といえます。

当然ながら、本税の金額が大きくなればなるほど、延滞税の金額も大きくなってしまいます。

相続する遺産の金額が大きくなるケースでは、納税漏れが生じないように細心の注意が必要です。

②加算税

上でご説明致しました延滞税の他にも、加算税というかたちでペナルティが課せられることがあります。

加算税は、相続税の申告期限が過ぎた後、税務署によって税務調査が行われた結果として、納税漏れとなっている税金がある場合に課せられるペナルティです。

加算税は延滞税と比較して、より「罰則」としての性格が強いもので、以下のような種類があります。

  • 過少申告加算税
  • 無申告加算税
  • 重加算税

それぞれの加算税の内容について、順番に見ていきましょう。

過少申告加算税

過少申告加算税は、相続税の申告納税手続きは完了したけれど、その金額が間違っていて小さ過ぎた場合に課せられるペナルティです。

(相続税の金額は、相続人となる人が自分で計算して税務署に申告しなくてはなりません。なお、多くのケースでは遺産相続手続きを専門とする税理士に相続税の申告代理を依頼します)

例えば、本来は100万円の相続税を納めるべきところ、80万円しか納税しなかったようなケースが該当します。

過少申告加算税は、追加で納税が必要な金額に対して、10%の税率(追徴税額が50万円を超える部分については15%)で計算して課せられます。

計算式にすると以下のようになります。

無申告加算税

無申告加算税は、期限までに申告手続きを行わず、その後に税務調査が行われた場合に課せられるペナルティです。

無申告加算税は、本税の金額に対して15%(本誓が50万円を超える部分については20%)の割合で計算して納めなくてはなりません。

なお、無申告加算税は期限後申告を行なった場合には負担を減らしてもらえるというルールがあります。

(つまり、相続税の申告期限が経過し、その後に税務調査がまだ来ていない段階で申告手続きを行なった場合には、無申告加算税の負担を軽減してもらえるということです)

税務調査前に期限後申告を行なった場合は、無申告加算税の税率は5%となります。

重加算税

加算税の中でも、もっとも負担が大きいのがこの重加算税です。

重加算税は、税逃れの目的で財産を隠した時や、帳簿を改ざんした時など、税逃れの態様がとても悪質であるケースに課せられるペナルティです。

(悪質であるかどうかの判断は税務署の職員が税務調査の現場をみながら判断します)

重加算税は、上で見た「過少申告加算税」や「無申告加算税」に代えて課せられます。

(つまり、重加算税が課せられる場合には、過少申告加算税や無申告加算税が課せられることはありません)

過少申告加算税に代えて重加算税が課せられる場合には、税率は35%となります。

また、無申告加算税に代えて重加算税が課せられる場合には、税率は40%にもなります。

税逃れをしようとした結果として重加算税が課せられてしまう場合、最大で本来の税額の4割り増しもの金額で納税を行わなくてはならなくなるというわけです。

悪質な税逃れには、非常に大きな社会的制裁が課せられてしまうことを理解しておきましょう。

税務調査は本当に来る?

「一般個人の相続に、わざわざ税務署が調査に来ることはないだろう…」と思われる方もひょっとしたらおられるかもしれません。

しかし、相続税の税務調査は、ひんぱんに行われているのが実際のところです。

具体的な統計データとしては、国税庁が発表している「相続税の調査の状況について」という情報があります。

国税庁:平成29事務年度における相続税の調査の状況について

この統計によると、税務調査が行われた件数は年間で1万2576件でした。

そのうち実に1万521件(全体の83.7%)で何らかの納税漏れが指摘されています。

平成27年度中に亡くなった人の数は約129万人で、そのうち相続税の課税対象となった人の数は約10万3000人です。

国税庁:平成27年分の相続税の申告状況について

相続税の課税対象となった10万3000件の相続のうち、1万2576件が税務調査の対象となっていることになります(約12.20%)

これはごく少額の遺産相続案件も含めた数になりますから、富裕層の相続においては、税務調査が行われる可能性は極めて高いといえるでしょう。

(税務署は少しでも多くの税金を集めるのが仕事ですから、当然ながら納税額が大きな相続案件を優先して税務調査を行なっています)

相続税の税務調査はいつ来る?

上の統計資料の中でも触れられていますが、相続税の税務調査は、おおむね相続発生後2年が経過した時点で行われることが多いです。

例えば、2019年内に発生した相続税であれば、2023年ごろになってから税務調査が行われることが多いといった具合です。

まさしく「忘れた頃にやってくる」のが税務調査です。

「相続発生後しばらく何もいってこなかったからきっと大丈夫だろう…」と安易に判断してしまうことは禁物と言えるでしょう。

相続税の申告期限は相続発生後10ヶ月以内ですが、もしこの期間中に申告ができなかったとしても、申告を行わずに放置するよりはずっとましです。

というのも、必要な税務申告を行わなかった場合のペナルティとして「無申告加算税」というものがあるのですが、これは期限後であっても申告を行った人に対しては負担を小さくしてもらえるルールになっているからです。

無申告加算税は、原則として本税(本来納めるべき相続税額)×15%の金額、本税額が50万円を超える部分については20%の税率で計算されます。

(例えば、相続税額が1000万円だったとしたら、無申告加算税として147万5000円もの追徴課税が必要となります)

すでに相続税の申告期限が切れている場合はどうしたらいい?

この記事をお読みの方の中にも、「相続税の申告期限はすでに過ぎているけど、役所から何もいってこないから放置している…」という方もいらっしゃるかもしれません。

そういったケースでも、期限後の申告を行なっておくことでペナルティを小さくすることが可能となりますから、申告義務を果たしておくことは大切です。

(期限後申告については、専門の税理士に相談しましょう)

相続税は「節税対策」で合法的に安くできる

上で見てきたように、相続税には抜け道は基本的にないものと考えておくべきですが、「合法的な方法」によって負担額を小さくする方法はいくつか考えられます。

いわゆる節税対策と言われる方法がそれですが、リスクの大きい税逃れの方法を模索するよりも、法律の範囲内で選択できる節税対策を検討する方が賢明と言えるでしょう。

代表的な相続税の節税対策としては、以下のようなものがあります。

相続税の節税対策の具体例

  • アパート投資など不動産投資を活用する
  • 墓石など非課税の財産を購入しておく
  • 生命保険に加入し、保険金の形で財産を渡す
  • 養子縁組によって法定相続人を増やす

これらはいずれも法律の範囲内で行うことができる、合法的な節税対策です。

例えば不動産投資などを活用した場合には、相続税評価額を最大で8割減額してもらえる特別な制度(小規模宅地等の特例と言います)の適用を受けることも可能です。

また、墓石などは相続税の課税対象とならないほか、生命保険金には独自の非課税枠が設けられていますから、相続税の負担額を小さくする高が期待できます。

養子縁組には法定相続人を増やし、相続税の基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数で計算します)を増加させる効果があります。

こうした節税対策については、具体的にどのように手続きを進めていくかで慎重な判断が必要になりますから、相続対策を専門としている税理士などに相談することをおすすめします。

遺産の多くが不動産である人は特に注意が必要

遺産の多くが土地や建物といった不動産である場合には、特に注意が必要です。

(日本では土地や建物を購入する人が多いですから、多くのケースがこれに該当します)

相続人個人が(相続財産とは別に)負担するお金が発生する可能性があることが挙げられます。

相続税の納税は期限までに現金で行わなくてはなりませんが、不動産を現金化するのには通常は時間がかかるからです。

相続税は不動産の経済的な価値から計算されますから、遺産にどれだけの現金が含まれているかに関わらず、現金で納付する必要のある金額が発生するのです。

相続人のポケットマネーでの納税が必要になるケースも

例えば、土地1億円と現金1000万円を相続し、相続税の負担額が1200万円だったとします。

この場合、土地を処分せずに遺産分割を行うこととした場合には、200万円だけ相続人が自らの財産から負担しなくてはならないお金が発生します。

このように、遺産に含まれる現金で相続税の納税ができない場合には、相続人となる人のポケットマネーで相続税をいったん納税しなくはならないケースもあるのです。

上記のケースでは土地1億円を現金化すれば遺産の中から納税を行うことが可能になりますが、土地の売却には長い時間がかかりますし、売却の前提として相続に関する手続き(遺産分割協議など)が完了している必要があります。

相続税の納税期限は相続発生後10ヶ月となりますので、可能な限り早いタイミングで遺産相続に関する手続きを完了しておくことが大切です。

まとめ

今回は、本来納めるべき相続税の納税をしなかった場合に、どのようなペナルティが生じるのか?について解説いたしました。

本文でもみたように、納税義務のある税金の負担から逃れる方法は基本的にありませんが、合法的な方法によって税額を減らすこと(つまり脱税ではなく節税)は可能です。

相続税の節税対策に関する具体的な方法については、遺産相続実務を専門とする税理士からアドバイスを受けることができます。

これから遺産相続に関わる可能性がある方は、ぜひ相談を検討してみてください。

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