分かりにくい介護保険制度の手続きをじっくり解説します

介護保険制度は平成9年に制定され、平成12年より施行された介護保険法によって規定されている制度です。

この介護保険制度は、従来の「老人保健制度」や「老人医療制度」をベースとしている制度とも言われており、昨今の要介護認定者が増加していることなどからも、制度の充実が図られているものと考えられています。

今回は、介護保険制度における「手続き」にフォーカスを当ててみたいと思います。介護保険制度は、介護施設の利用者の介護状態によって大きく2種類に分かれており、介護状態によっては、介護施設の利用料が大きく異なるところもあります。その介護状態についてどのように認定がなされるかについて詳しく見ていきます。

1.介護保険制度の始まり

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介護保険制度の始まりは平成9年に制定された介護保険法が始まりとされています。

1963年に制定された老人福祉法が制定されて、「養老院」と呼ばれる現在の老人ホームといわれる施設がスタートしたことを皮切りに、1973年には「老人医療無償化」がスタートしました。これに伴って、老人医療・福祉制度がより良いものになっていくものt考えられていました。

しかし、現代における超高齢化ほどではないにしても、高齢者の増加に伴って、財政が圧迫されることが懸念され、無償化の制度については1982年に廃止されることとなったわけです。

とはいえ、増える高齢者に対する福祉の充実をした施策を始めていくために、1990年代には、ゴールドプランや新ゴールドプランといった施策を進めていくことを推進していました。

福祉サービスの拡充はできたものの、その福祉に対する福祉専門職の人が圧倒的に不足している事態を招くことになってしまい、さらに、大量に増えたサービスに対する財源の確保という課題に直面することになりました。

そう↓問題を解決するために、2000年に誕生したのが介護保険法です。

2.介護保険の仕組み

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(被保険者・保険料)

介護保険の被保険者は第1号被保険者と第2号被保険者とに分かれています。

65歳以上の方(第1号被保険者)40歳以上64歳の方(第2号被保険者)
対象者65歳以上の者40歳以上65歳未満の者で公的医療保険の加入者
受給要件要介護状態・要支援状態のいずれかの状態であること要介護(要支援)状態が、老化に起因する疾病(特定疾病)による場合のみ
保険料の徴収方法市区町村から特別徴収【老齢年金から天引き】(65歳になった月から徴収開始)医療保険料と一体的に徴収(40歳になった月から徴収開始)

(保険者と財政)

介護保険の保険者は市町村と特別区(広域連合を設置している場合は広域連合)です。介護保険は介護サービス費用の9割(一定水準以上の所得者については8割)を給付するとともに、保険料を徴収することで財政運営を行っています。

現在、介護保険の財源は公費5割・保険料5割(第1号被保険者が22%、第2号被保険者が28%)から構成されています。

(具体的な介護サービスの利用の流れ)

介護保険制度の介護サービスを利用するには、要介護(要支援)認定を受けなければなりません。(認定については「4.介護保険における介護認定とは」で解説します)

①申請

介護サービスの利用を希望される者は、市区町村の窓口で「要介護(要支援)認定」の申請を行います。

②要介護認定の調査、判定

【認定調査・主治医意見書】

市区町村の職員などの認定審査員が自宅を訪問し、心身の状況について、本人や家族から聞き取りなどの調査を行うとともに、直接主治医(かかりつけ医)に医学的見地から、心身の状況について意見書の作成をしてもらいます。

【審査・判定】

認定調査の結果と主治医の意見書をもとに、保険・福祉・医療の学識経験者による「介護認定審査会」で審査し、どのくらい介護が必要なのかを判定します。

要介護状態は要介護1~5又は、要支援状態は要支援1・2のいずれかに認定されます。

③認定結果の通知

原則として、申請から30日以内に、市区町村から認定結果が通知されます。

④ケアプランの作成

要介護1~5と認定された人は、在宅で介護サービスを利用する場合、居宅介護支援事業者と契約して、その事業者のケアマネージャーに依頼して、利用するサービスを決め、介護サービス計画(ケアプラン)を作成してもらいます。

⑤サービスの利用開始

サービス事業者に「介護保険被保険者証」と「介護保険負担割合証」を提示して、ケアプランに基づいた居宅サービスや施設サービスを利用します。ケアプランに基づいた利用者割合は、費用の1割または2割となります。

3.介護保険が適用される者の範囲

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介護保険が適用される者の範囲は、介護サービスを受けることが出来る者言うこととなります。そのため、介護保険による介護サービスを受けることが出来る者である第1号被保険者と特定疾病により要介護(要支援)状態になった第2号被保険者ということになります。

【特定疾病とは】

特定疾病とは、以下のいずれかの疾病のことを言います。

  1. ガン(末期)
  2. 関節リウマチ
  3. 筋萎縮性側索硬化症
  4. 後縦靭帯骨化症
  5. 骨折を伴う骨粗鬆症
  6. 初老期における認知症
  7. 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
  8. 脊髄小脳変性症
  9. 脊柱管狭窄症
  10. 早老症
  11. 多系統萎縮症
  12. 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
  13. 脳血管疾患
  14. 閉塞性動脈硬化症
  15. 慢性閉塞性肺疾患
  16. 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

4.介護保険における介護認定とは

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介護保険における介護認定制度としては、「要介護」と「要支援」の2種類に分かれますが、主に「要介護」に該当する人が介護保険制度を利用することになります。ここでは、要介護認定制度について、詳しく見ていきたいと思います。

【要介護認定とは】

寝たきりや痴呆等で常時介護を必要とする状態(要介護状態)になった場合や、家事や身支度などの日常生活に支援が必要になった状態(要支援状態)となった場合に介護サービスを受けることが出来る状態になった人について、「要介護状態」「要支援状態」のいずれかになるかの判定を行うことを言います。「要支援状態」が2段階、「要介護状態」が5段階の合計7段階の中から、介護状態の認定を行われる形で、要介護認定が行われています。

【要介護認定の流れ】

要介護認定を受けようとする者は、市町村にある介護認定審査会へ要介護認定の審査を受けます。具体的な流れは以下の通りです。

① 要介護認定を受けようとする者の「主治医の意見書」「心身に関する状況調査」などが行われます。

② ①の内容に基づいてコンピュータによる要介護認定基準時間の算出(いわゆる「一次判定」)が行われます。

③ ①と②の内容を勘案して、介護認定審査会による審査(いわゆる「二次審査」)が行われて、その結果によって、要介護認定にするかどうかの判定が行われます。

【要介護認定基準】(参照:厚生労働省「2015年の高齢者介護~高齢者の尊厳を支えるケアの確立に向けて~」)

要介護認定基準とは、介護の状態がどれくらい必要であるかを決める基準となるもので、「要介護認定等基準時間」をそれぞれの基準に当てはめることで、行われます。

<要介護認定でチェックされる項目>

①身体機能・起居動作

介護認定を希望する者が、生活するうえで必要な基本動作をどの程度できるかについての確認を行います。具体的には、「麻痺」「拘縮」「寝返り」「視力」「聴力」など13項目についてチェックしていきます。

また、聞き取り調査を中心として、必要に応じて認定希望者に実際に体を動かしてもらったり、家族に話を聞いたりすることでのチェックも行われます。

②生活機能

「食事摂取」「排尿」「上着の着脱」「外出頻度」などの日常生活が出来るかどうかについてのチェックを行います。

③認知機能

「生年月日や年齢を言う」、「自分の名前を言う」といった項目により、医師の伝達が出来るかどうか、短期記憶が出来るかどうか、自分がいる場所がどこなのかなどについての確認を行います。

④精神・行動障害

過去1か月間を振り返り、「社会生活を送るうえで不適切な行動があったか」「あった場合、頻度はどの程度であったか」などを確認します。具体的には「泣いたり、笑ったりして感情が鵜安定になることがあるか」「大声を出すことがあるか」などの質問について、「ない」「ときどきある」「ある」のいずれかで回答してもらうことになります。

⑤社会生活への適応

薬の内服や金銭管理、買い物や簡単な整理といった社会生活を行う能力があるかどうかや、集団に適応することが出来るかどうかを調査します。。

<要介護認定等の基準時間の分類>

要支援要介護認定等基準時間の分類の要介護認定等基準時間が、25分以上32分未満、または、これ以上に相当する状態
要介護1要介護認定等基準時間の分類の要介護認定等基準時間が、32分以上50分未満、または、これ以上に相当する状態
要介護2要介護認定等基準時間の分類の要介護認定等基準時間が、50分以上70分未満、または、これ以上に相当する状態
要介護3要介護認定等基準時間の分類の要介護認定等基準時間が、70分以上90分未満、または、これ以上に相当する状態
要介護4要介護認定等基準時間の分類の要介護認定等基準時間が、90分以上110分未満、または、これ以上に相当する状態
要介護5要介護認定等基準時間の分類の要介護認定等基準時間が、110分以上、または、これ以上に相当する状態

(参考)要支援状態または要介護状態についての、おおむねの状態像

自立(非該当)歩行や起き上がりなどの日常生活上の基本的動作を自分エ行うことが可能であり、かつ、薬の内服、電話の利用などの手段的日常生活動作を行う能力もある状態
要支援状態日常生活上の基本的動作については、ほぼ自分で行うことが可能であるが、日常生活動作の介助や現在の状態の防止により、要介護状態となることの予防に資するよう手段的日常生活動作について、何らかの支援を要する状態
要介護状態日常生活上の基本的動作についても、自分で行うことが困難であり、何らかの介護を要する状態

<要介護状態について考えられる状態像>

要介護1要介護状態から、手段的日常生活を行う能力がさらに低下し、部分的な介護が必要となる状態
要介護2要介護1の状態に加え、日常生活動作についても部分的な介護が必要な状態
要介護3要介護2の状態と比較して、日常生活動作及び手段的日常生活動作の両方の観点からも著しく低下し、ほぼ全面的な介護が必要となる状態
要介護4要介護3の状態に加え、さらに動作能力が低下し、介護なしには日常生活をいともむことが困難となる状態
要介護5要介護4の状態よりもさらに動作能力が低下しており、介護なしには日常生活を営むことがほぼ不可能な状態

【痴呆性老人自立度・障害老人自立度について】

ランクⅠ何らかの痴呆を有するが、日寿生活は家庭内及び社会的にほぼ自立している
ランクⅡ日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが多少みられても、誰かが注意していれば自立できる。
ランクⅢ日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが時々見られ、介護を必要とする
ランクⅣ日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁にみられ、常に介護を必要とする
ランクM著しい精神症状や問題行動あるいは、重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする

【障害老人自立度】

ランクJ何らかの障害等を有するが、日常生活はほぼ自立しており独力で外出できる
ランクA屋内での生活はおおむね自立しているが、介助なしには外出できない
ランクB屋内での生活は何らかの介助を要し、日中もべ戸ノ上での生活が主体であるが座位を保つ
ランクC1日中ベッド上で過ごし、排せつ、食事、着替えにおいて介助を要する

5.介護保険の手続き

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介護保険を利用するためには、まずは「市区町村」に介護保険の手続きを行わなければなりません。また、役所以外であっても「地域包括センター」があれば、そちらでも対応しています。

【介護サービスを受けるまでの流れ】

介護サービスを受けるために介護保険における手続きの流れとしては、「①要介護認定申請書の提出」「②一次判定(訪問調査)」「③二次判定(主事意見書)」「④ケアマネージャーによる介護サービス計画書の作成」の順番で手続きが進みます。

【介護保険の申請手続きに必要な書類】

介護保険の申請手続きを行うためには3つの書類が必要になります。

①要介護認定申請書

②介護保険被保険者証

③個人番号(マイナンバー)と身分証明書

【調査から要介護認定を受けるまで】

申請が受理された後、介護サービスを受ける本人と聞き取り調査を行い、その調査結果に基づいて、一次判定、二次判定が行われ、最終的な要介護認定が毛亭される通知が届くまでに約30日ほどかかります。

【ケアプランの策定】

(要支援1・2の場合)

申請の結果、要支援1・2、非該当であった場合、「介護予防サービス」が適用されることになります。介護予防サービスが適用されると、デイサービスやホームヘルパー、各自治体が展開している介護予防支援事業のプログラムなどを利用することが出来ます。

(要介護1~5の場合)

申請の結果、要介護(1~5)となった場合、後日、介護保険被保険者証が送られます。その上で、具体的な介護サービスの利用内容について介護サービス計画書の作成が必要になるため、役所窓口や地域包括支援センターにてケアマネージャーが所属している「居宅介護支援事業所」を紹介してもらい、ケアマネージャーによる介護サービス計画書(ケアプラン)を作成してもらいます。

6.まとめ

介護保険は、他の社会保険とは性質が全く異なる部分が多く、制度が出来てから歴史が浅いこともあるため、なかなか仕組みが理解されにくい状態になっているところがあります。

しかし、これから迎える超高齢化社会の時代においては、介護保険制度の利用者数が増加の一途をたどることは明白なことでもあります。

そう考えると、介護保険制度についても他の健康保険や年金制度と同様に認識をしっかりと持っていくことが急務とも言えます。しかし、実際のところ、介護保険制度は各自治体が運営しているという点を考えると、国が行っている健康保険などの社会保険制度に比べると、保障内容などの部分において課題があるかと思います。

介護は普通に日常生活を送っている人であっても、突然起こる可能性のあることです。しかし、肝心な介護に関する制度について知らない人が多すぎることも真実です。

制度を理解して、万一に備えることで、せっかく支払っている保険料を無駄にしないためにも、介護保険の各種制度や認定に関する制度など、しっかりと理解しておく必要があるかと思います。要介護の状態によっては、施設の利用料が大きく異なることもあるため、そういった部分も含めて、一連の手続きの流れを把握して、万一の介護が発生した場合にも備えられるようにしておくことが必要です。

岡崎 隆宏
SRFP隆宏
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社会保険労務士・CFP認定者・1級FP技能士

外資系生保会社で6年くらい営業として実績を積み、その中でFP資格を取得し、その時の経験を活かし、お金に関する執筆を始める。

日本FP協会愛知支部の役員幹事として6年、FPとして一般消費者向けのセミナーの講師や個別相談会の相談員などを担当。得意分野は「公的年金・個人年金」「社会保険制度」「出産・育児関係」等。

現在は、社労士・FPとして、労働や年金等のお金についての記事の執筆や資格試験の講師、セミナー講師等を行っている。

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