年末調整ってどのように行うのか解説します

毎年11月ごろになると「年末調整」という言葉をよく耳にするようになってきます。年末調整は、簡単に言うと所得税の税額計算をスムーズに行うために、あらかじめ納付している源泉徴収所得税の税額と年度末に計算された税額との差額を調整するために行う手続きです。

あらかじめ、会社の方で毎月給与から天引きしている源泉徴収所得税の金額は、毎年の所得税の計算の中からある程度予測される所得金額をもとに計算されているため、若干のずれが生じることがあります。

つまり、会社は毎月の給与がどれくらい支給されているかがわかるため、その予測された給与を基準に年間の所得金額を計算して、毎月給与から点天引きする形で所得税を納付しているが、実際に3月に確定申告をするときに計上される所得税額と比べると、金額のずれが生じているので、所得税法上の年度末である12月ごろに、そのずれを修正する手続きのことを年末調整といいます。

1.年末調整とは

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年末調整とは、冒頭にも述べましたが年度末における納付税額の調整を行うことです。これは、会社が毎月支払っている給与の額を基準に計算している所得税の金額を毎月の給料から天引きしている額と年度末の時点で確定させた1年間の所得金額を基準に計算した所得税額とでは、金額にずれが生じているためです。

そもそも、所得税の計算は1月1日から12月31日までの暦年課税方式をとっているため、2月から3月に行われている確定申告とは目的が異なるものです。(詳しくは「5.年末調整と確定申告」で説明します。)

つまり、年末調整は「1年間で払ってきた税金の額を調節することで、本来の正しい税金の額を納付してもらうための手続き」とも言えます。

2.年末調整の計算の流れ

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年末調整の計算の流れとしては、以下のような流れとなります。

  1. 「扶養控除等(異動)申告書」「配偶者控除等申告書」「保険料控除申告書」「(築堤増改築等)住宅借入金等特別税額控除申告書(2年目以降)」の提出
  2. 年間給与所得に対する課税所得税額の算定
  3. 過不足額の精算
  4. 過不足額の還付・納付処理

具体的な手続きの流れは、11月ごろに年末調整に必要な書類の準備を始め、年内最後の給与の支払いの際に年末調整の計算を行い、そこで納税額の過不足を計算し、源泉徴収の所得税額が多ければ、「還付」という形で翌月支給分の給与に天引きされた分の一部が返ってきますが、不足分がある場合は「控除」という形で、翌月支給分の給与から追加で控除される形になります。

大半の場合は、「還付」されるケースになるのですが、途中で転職をしたなどがあって給与の支払いを2か所以上ある場合は「控除」となることがあります。

【年末調整の際に提出しなければならない書類】

年末調整の手続きの際には、以下の書類を提出しなければなりません。

・給与所得者の扶養控除等申告書

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扶養している配偶者や親族がいることを申告する書類です。この書類を提出することで、配偶者控除や扶養控除、障害者控除といった扶養親族がいることで受けることが出来る所得控除を受けることができます。

・給与所得者の保険料控除申告書

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各種保険料控除や配偶者特別控除を受ける場合に記入する書類です。上記の図にもありますが、それぞれ該当する箇所に必要な事項を記入することで各種保険料控除の適用を受けることが出来るようになります。

3.年末調整でできないこと

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年末調整では、扶養控除等の申請や保険料控除の申請を行うことが出来ますが、一部の所得控除については年末調整ではできないものがあります。

【年末調整では行うことが出来ない所得控除】

年末調整では行うことが出来ない所得控除は「雑損控除」「医療費控除」「寄付金控除」の3つです。

雑損控除

雑損控除は、現金や家・家財といった生活に必要な動産が災害・盗難・横領などで被害に遭ったときに受けられる控除です。つまり、雑損控除は自身の生活におけるもっとも重要な部分において損害が生じた場合に計上される所得控除なので、全14種類の所得控除の中では、重要度が最も高い所得控除ということになります。そして、雑損控除には、他の所得控除にはない「3年間の繰越控除」が認められたりするなど、他の所得控除とは取り扱い方が異なっています。

また、雑損控除の場合、損害額が確定するまでに長期間を要するケースもあるため、年末調整を行う段階では確定していない部分があることもあり、後日になって正式に年間の雑損控除に関する費用等が確定することが十分に考えられます。

そのため、年末調整の段階で処理を行うのではなく、確定申告の時にしっかりと確定させたうえで雑損控除に関する申告を行うほうが望ましいと考えられるわけです。

医療費控除

医療費控除は、1年間に病気やけが等の治療のために病院や診療所等に支払った費用の合計から一定の控除額を控除した残額を所得控除として計上することが出来る所得控除の一つです。

医療費控除が年末調整では行われず、確定申告にて処理が行わなければならない理由は「手続きが非常に煩雑となるため」です。

そもそも、医療費控除を確定申告の際に行うときに必要になるものは「支払った医療費の領収証(レシートも含む)」です。このことからもわかるように、医療費については、病院ごと、薬局ごとに支払った医療費の明細が発行されるわけですので、人によっては膨大な量になることが考えられます。

この領収書の内容の確認業務を普段の仕事にプラスすると、間違いなく年末調整の業務を担当している人はパンクします。そのため、医療費控除の申請については年末調整で行うものではなく、「確定申告の際にご自身で責任もって行ってください」となるわけです。とくに、入院や手術を受けた人は、年末調整を受けられない可能性が高くなりますので、あらかじめ、確定申告に向けた準備をしておくことが必要になるといえます。

寄付金控除

寄付金控除は個人が会社の仕事とは別で行った寄付という活動に要した費用であると考えられるため、会社が一括して処理する年末調整の考え方にはそぐわない部分が強いため、確定申告の際に申告を行わなければならないとされています。

あくまで、寄付は個人の意思によって行われるものですので、年末調整のような一括処理をすることは性質的に難しいという話になります。

近年では、「ふるさと納税」による寄付金控除が行われるようになってきており、こちらに関する処理についても年末調整では行わず、確定申告に際してまとめて処理をしなければならないため注意が必要です。

4.年末調整の手続きの流れ

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年末調整の手続きはの流れは、計算の流れの中でも大まかに説明しましたが、会社が概算で控除してきた源泉所得税の税額と年末調整に際して提出された書類を考慮して計算された所得税額とを比較して、過不足があれば精算処理をするという流れになりますが、具体的な手続きはどのようになっているのかについて説明していきます。

①給与・源泉徴収税額の年額を集計する

会社では、毎月支給する給与について源泉徴収税額として、一定の所得税を控除しています。この控除した金額について、年内最後の給与支給日の段階で年間の源泉徴収された所得税額を集計します。

毎月の給与からどれくらい控除されるのかについては、所得税法によって決められており、それに従って控除が行われています。当然ですが、昇給等が行われたときは、その金額の変動によって、控除される所得税額は変化します。

②給与所得金額の計算

年内最後の給与について給与計算が行われたら、それまでに支給されてきた給与の金額を集計したうえで、その年度の給与所得金額を算定することになります。

給与所得金額は、対象となる計算年度に支払われた「給与等の総支給額」が収入金額として課税所得金額の計算を行うことになります。

【給与所得の計算式】

年間に支払われた給与や賞与などの総支給額(収入金額)-給与所得控除額=給与所得金額

給与所得控除額は、給与所得を計算する上で一定の調整を行うための控除額で、収入金額が大きくなればなるほど控除される金額も大きくなる仕組みになっています。

③各種所得控除の計算

年末調整においては、全14種類の所得控除の中で「雑損控除」・「医療費控除」・「寄付金控除」を除いた11種類の所得控除について集計して計算することになります。

その計算の中で重要になってくるのが「給与所得者の扶養控除等申告書」と「給与所得者の保険料控除申告書」の2種類の書類です。

・給与所得者の扶養控除等申告書

「給与所得者の扶養控除等申告書」は、配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除・障碍者控除・寡婦(夫)控除・勤労学生控除について現状どうなっているかについて記載する内容となっており、子の申告書に記載された内容をもとに、適用される各種人的控除がどれなのかを確認することが出来ます。

・給与所得者の保険料控除申告書

「給与所得者の保険料控除申告書」は、社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除・生命保険料控除・地震保険料控除について、計算年度において、年間でいくら支払ってきたかについて申告するための書類となります。この書類を提出する際に、各種保険会社などから発行された、保険料をいくら支払ってきたかを通知するものを添付していますので、その添付された書類をもとに、各保険料控除の金額を計算します。

④課税給与所得金額の計算

②で計算された給与所得金額から③で計算された所得控除額を控除すると、課税給与所得金額が算出することが出来ます。この金額を基準に所得税額を計算していきます。

⑤所得年税額の計算

④で計算された課税給与所得金額に対して、税率を乗じて所得税額を算出します。その後、住宅借入金等特別控除がある人はその金額を所得税額から控除したう上でその年度の給与所得に課税される税額が算出されます。

⑥過不足の計算

①で算出した概算の所得税額と⑤で算出した所得税額とを比較して過不足があった場合に、翌月の給与の支払いにおいて還付又は納付を行うことになります。

・①の税額>⑤の税額の場合 会社から所得税を徴収されすぎているため、差額分を「還付」されます。

・①の金額<⑤の金額の場合 会社から徴収された所得税が不足しているため、差額分を追加徴収しなければならなきなります。

5.年末調整と確定申告

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年末調整と確定申告は内容はほぼ同じですが、その役割や計算方法などは、若干異なっている部分があります。そもそも、年末調整は「サラリーマンの人の所得税の納付の手続き」であるのに対して、確定申告は「1年間の所得実績が確定したうえで、所得税額を計算する手続き」となるため、それぞれの目的は全く異なります。

【年末調整と確定申告の相違点】

①年末調整は「給与所得」についてのみ申告を行う手続きであり、確定申告は「すべての所得」についての申告を行う手続き

年末調整で行われるのは、基本的に会社から給与を支払われている人であり、その支払われている給与から所得税が源泉徴収されている人が対象となるため、その対象範囲は約6000万人とも言われています。仮に、確定申告の際にこれだけの人数が1か月の間に一斉に申告に来られては、税務署の職員が対応できないことは明らかです。

そのため、サラリーマンのように収入源が給与所得のみの人については、12月の円内最後の給与支払い日の段階でその年度の所得金額がある程度予測できるので、そこで確定申告の処理を行う仕組みが「年末調整」といわれています。

つまり、年間所得が給与所得のみの人が、年末に確定申告を済ませてしまう手続きが年末調整であり、それ以外の所得がある人はすべて「確定申告」において、確定した所得税額の納付を行うことになるわけです。

②年末調整で行われるものと確定申告でしか行われないものの違い

年末調整において、処理が行われないものは「雑損控除」「医療費控除」「寄付金控除」です。それ以外の所得控除については、「給与所得者の扶養等申告書」と「給与所得者の保険料控除申告書」の提出によって、年末調整によって処理が行われます。

他にも、年末調整では、住宅借入金等特別控除についても処理が行われますが、適用初年度については確定申告が必要となります。

なお、年度内に2以上の職場から給与等の支払いを受けている場合については、年度末の時点で会社から給与等の所得を受けている場合は、年末調整で処理をすることが出来ますが、年末の時点で給与等の所得を会社から受けていない場合は、原則として、確定申告を行うことで、源泉徴収所得税の精算を行う必要があります。

③年末調整は会社で一括に行われるが、確定申告は自己申告制である

手続きという点で最も大きな違いは、年末調整は「会社で一括処理される」が、確定申告は「自己申告制」であるということです。年末調整は、処理を行う対象者が会社の従業員の中の対象者ですので、規模が大きい会社であればあるほど、その処理は膨大になり、一括で処理をするといってもなかなかの時間と労力を要するところになります。

これに対して、確定申告は「自己申告制」であるという点で大きく異なります。自分で確定申告書を作成し、必要な書類等を自分で準備して、期限内に申告書を提出しなければならないため、年末調整のように、必要な書類を担当者に提出したら終わりとはいかないということです。

また、確定申告の場合、準備しなければならない書類や提出する申告書の様式など、年末調整と比較すると(原則的に)自分ですべて行わなければならないため、書類が不足していたり、記入漏れがあったりと思わぬところで時間を要する恐れがあります。

6.まとめ

年末調整は、会社に勤めている人の給与に関する所得税の計算を毎月の給与の支払いから天引きしていた分と実際に支払った給与をもとに計算された所得税との差額を精算する手続きです。

そのため、必要な書類を提出しなければ、会社では処理が行われず、自分で確定申告を行うことになるものですので、サラリーマンやパート労働者の方は、毎年11月ごろになると提出を求められる「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」と「給与所得者の保険料控除申告書」の2種類の書類の記入をして担当者に提出することとそれに付随して提出しなければならない「保険料の支払額を証明する書類」をあらかじめ用意しておくことを忘れないようにしておきましょう。

また、年末調整の対象者であっても「住宅借入金等特別税額控除」の適用を初めて受けようとする年度である場合や、医療費が年間で10万円以上となる人、何らかの公的な団体等に寄付を行った場合などは、年末調整では対応できないため、確定申告をしなければなりません。

このように、年末調整の対象者であっても、給与所得以外の所得がある場合や、高額な医療費が発生した場合などのように、確定申告が必要となる場合があるため、事前に確認をしたうえで、スムーズに申告を済ませるための準備をしておくことが望ましいです。

岡崎 隆宏
SRFP隆宏
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社会保険労務士・CFP認定者・1級FP技能士

外資系生保会社で6年くらい営業として実績を積み、その中でFP資格を取得し、その時の経験を活かし、お金に関する執筆を始める。

日本FP協会愛知支部の役員幹事として6年、FPとして一般消費者向けのセミナーの講師や個別相談会の相談員などを担当。得意分野は「公的年金・個人年金」「社会保険制度」「出産・育児関係」等。

現在は、社労士・FPとして、労働や年金等のお金についての記事の執筆や資格試験の講師、セミナー講師等を行っている。

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