確定申告書の作成の仕方を1から解説

確定申告とは、前年度の1年間に発生した所得や支出などの実績を基準として、税金がいくらかかるのかについて税務署へ申告する手続きです。確定申告は。毎年2月16日(贈与税は2月1日から)から3月15日(消費税は3月31日)までの期間に、税務署に確定申告書を提出することが義務付けられています。

この確定申告の手続きをしないと、「無申告加算税」として、本来納付すべき税金の額に追加して10%相当額の追徴課税が課されます。つまり、ちゃんと確定申告書を提出しいと国からペナルティが課されてしまいます。

このようなことにならないように、今回は「(所得税の)確定申告書」はどのように作成すればよいかということを解説していきます。

1.確定申告書とは

 

確定申告書とは、冒頭でも説明しましたが「前年度の所得の実績報告書」と考えてもらえればわかりやすいかと思います。つまり、昨年1年間でどれだけの所得(稼ぎ)があり、どれだけの税金を納税しなければならないかを申告するための書類です。

確定申告書は所得税だけでなく、法人税や相続税、贈与税といった様々な税金について様式があり、それぞれの税金の課税対象となる所得が発生した場合は、必ず申告しなければなりません。

2.それぞれの項目の意味

確定申告書を作成するうえで、それぞれの項目に何を記入すればよいかということを理解することが大切です。

【収入金額等】

ここでは、給与等による所得のほか、公的年金等や配当収入、保険の解約返戻金などによる収入がある場合にそれぞれに該当する所得金額を記入します。

(各項目の内容)

給与所得:給料やボーナスなどの総支給額(各種手当がある場合はそれらの手当を含めた金額になります)

雑所得(公的年金等):老齢基礎年金や老齢厚生年金などの社会保険から支給されている年金の年間総受給額

雑所得(その他):ほかの9種類の所得の区分に区分されない所得による収入(例)執筆による原稿料や講演料など

配当所得:株式などを保有している人が会社から受けた配当金収入など

一時所得:保険の解約返戻金、宝くじなどの当選金など

【所得金額】

収入金額から必要経費等を控除した金額で、この金額が所得税の課税対象金額となります。

(項目の内容)

給与所得:収入金額から給与所得控除額を控除した金額

雑所得(公的年金等):収入金額から公的年金等控除額を控除した金額

雑所得(その他):総収入金額から必要経費を控除した金額

配当所得:収入金額から配当収入をえるために支出した費用の額(株式等の取得費用など)を控除した金額

一時所得:総収入金額からその収入を得るために支出した金額と特別控除額(50万円)を控除した金額

【所得から差し引かれる金額】

所得控除の金額がここで集計されます。年末調整で処理が行われる、「雑損控除」と「医療費控除」と「寄付金控除」以外の所得控除を最初に集計し、その後に残りの3つの所得控除の金額を集計します。

(各項目の内容)

  1. 社会保険料控除:納付してきた健康保険料や年金の保険料などの年間支払額の合計額
  2. 小規模企業共済等掛金控除:確定拠出年金や確定給付企業年金などの拠出金や各種共済の掛け金などの合計額
  3. 生命保険料控除:生命保険の保険料の合計額
  4. 地震保険料控除:地震保険の保険料の合計額
  5. 寡婦、寡夫控除:寡婦又は寡夫である人であれば27万円控除されます
  6. 勤労学生控除・障害者控除:勤労学生又は障害者である場合は27万円(特別障害者に該当する場合は40万円)控除されます
  7. 配偶者(特別)控除:配偶者の所得金額に応じて、配偶者控除であれば38万円、配偶者特別控除であれば38万円から3万円が控除できます。
  8. 扶養控除:扶養親族の数に応じて定められた金額を控除できます。
  9. 基礎控除:38万円が控除されます。
  10. 1~9の合計:1~9の金額をいったんここで集計します。
  11. 雑損控除:災害などによって発生した後片づけ費用などについて、規定によって計算された金額を記入します。
  12. 医療費控除:一年間に支払ってきた医療費の合計額から一定の金額を控除した金額を記入します。
  13. 寄付金控除:寄付を行った金額から2,000円を控除した金額を記入します。
  14. 10+11+12+13の金額を総合系として一番下の欄に記入します。

【税金の計算】

ここでは、具体的に今年度の所得税額がいくらになるかの計算を行います。

(各項目の内容)

  1. 配当控除 配当所得がある人で、原則として配当所得の金額の5%~10%相当額が配当控除として計上されますが、合計所得金額が1,000万円を超える場合等一定の要件に該当した場合は2.5%~5%と乗率が変わります。
  2. (特定増改築等)住宅借入金等特別控除 いわゆる「住宅ローン控除」のことで、年末調整の適用対象者であっても、初めて適用を受ける場合は必ず確定申告をしなければなりません。
  3. 政党等寄附金等特別控除 特定の政党や公共団体などに一定の要件を満たすような団体に対して寄付を行った場合に計上されるものです。
  4. 住宅耐震改修特別控除等、住宅特定改修・認定住宅新築等等別税額控除 耐震改修やバリアフリー工事などを行った場合に支出した費用がある場合において、一定に要件を満たした場合に適用を受けることが出来ます。
  5. 災害減免額 災害等によって住宅や家財に受けた災害の被害額が、その被害を受けた住宅や家財の時価の1/2相当額以上、かつ、1,000万円以下である場合に申請手続きを行い、所定の計算方法によって算出された減免額を記入します。
  6. 復興特別所得税 平成25年度から平成49年(令和18年)度までの所得税に対して、復興特別所得税として「基準所得税額×2.1%」が徴収されます。
  7. 外国税額控除 外国税額控除は、国外で生じた所得について外国の法令で所得税に相当する租税(以下「外国所得税」といいます。)の課税対象とされる場合、わが国及びその外国の双方で二重に所得税が課税されることになるため、居住者が外国所得税を納付することとなる場合には、一定の金額(以下「所得税の控除限度額」といいます。)を限度として、その外国所得税の額をその納付することとなる年分の所得税の額から差し引くことができます。(参考)国税庁HPタックスアンサーNo.1240「外国税額控除」
  8. 源泉徴収税額 源泉徴収税額は、何らかの報酬を受け取った際に、あらかじめ総支給額から控除されている所得税額のことで、年間の総控除額を源泉徴収票という形で記載された書類が手元に送られてきます。

【その他】

その他の項目には、配偶者の合計所得金額や青色申告特別控除など、確定申告書に記載されている内容についての補足資料や特定の要件に該当する者にのみ適用される控除がいくらあるかなど、上記までの内容に該当しないについて記載するところとなっています。

(各項目の内容)

  1. 配偶者の合計所得金額 今年度の配偶者の合計所得金額を記載します。
  2. 専従者(給与)額の合計 自営業者である場合において、配偶者がその自営業に勤務している場合において、配偶者に対してどれくらいの給与を支払ってきたかを記載します。
  3. 青色申告特別税額控除 所轄税務署長に対して、青色事業者の申告をして受理をされた自営業者等である場合に10万円または65万円を控除することが出来ます。
  4. 雑所得・一時所得等の所得税額及び復興所得税の源泉徴収税額の合計額 雑所得や一時所得などの収入から所得税と復興所得税が源泉徴収された場合に、その徴収された金額を記載します。
  5. 未納付の所得税額及び復興所得税の源泉徴収税額の合計額 確定申告書に記載されていない所得で、まだ納付していない所得税・復興所得税がある場合は、ここに記載します。
  6. 本年分で差引く繰越損失額 前年以前から繰越損失があった場合は、今年度においていくら繰越損失から所得金額を控除するかをこの項目において記載します。
  7. 平均課税対象額 平均課税対象額とは、一時的に所得金額が大きく上昇してしまったときのその直接的な要因とされる所得金額を指します。具体的には「変動所得」と「臨時所得」に分かれています。
  8. 変動・臨時所得 「変動所得」とは、一時的に変動して発生すると考えられる所得のことで、具体的には、「原稿料」や「漁獲やノリの採取による所得」、「要職による所得」があります。「臨時所得」とは、臨時的に発生する所得のことで、具体的には、プロスポーツ選手の契約金などががいとうします。

【延納の届出】

延納の届出の項目では、所得税額を一括で納付することが難しい場合に、所轄税務署長に届出を行うことで、納税額を延期して納付することが出来るようになった金額を今期でどれくらい納付し、翌期以降にいくら納付を延期させるのかなどを記載する項目になります。

(各項目の内容)

  1. 申告期限までに納付する金額 前年度までに延納申請をしていた所得税額のうち、今年度において納付すべき所得税額
  2. 延納届出額 今期に新たに申請した延納される所得税額

3.確定申告書を作成するうえで必要な書類

確定申告書を作成するにあたって、確定申告書に記載されている内容を証明するための書類が必要になるケースがあります。ここでは、具体的に、必要な書類の主なものを説明していきます。
【収入金額等】
  • 給与所得 源泉徴収票(原本)
  • 雑所得(公的年金等) 公的年金等の源泉徴収票(原本)
  • 配当所得 配当計算書などの配当金額が分かる書類(上場株式の配当等については、上場株式の配当等の種類によって、別途、証明できる書類が必要になります)

【所得から差し引かれる金額】

  • 社会保険料控除 社会保険料控除証明書
  • 小規模事業共済等掛金控除 支払った掛金の合計額が分かる証明書等
  • 生命保険料控除 各保険会社が発行する支払保険料合計額が分かる証明書等
  • 地震保険料控除 各保険会社が発行する支払保険料合計額が分かる証明書等
  • 勤労学生控除 学校や法人から交付を受けた証明書等
  • 雑損控除 災害等についてやむを得ない支出をしたことを証明する証明書等
  • 医療費控除 支払った医療費の証明書(レシートなど)
  • 寄付金控除 寄付をした団体等から受けた証明書等

【税金の計算】

4.確定申告書の作成の流れ

確定申告書の作成の流れとしては、近年では国税庁のHPにおいて「確定申告書等作成コーナー」というものが設けられており、こちらから確定申告書のデータを入力したものを出力して、その出力したものを作成する流れとなります。

具体的な入力の流れとしては、「提出する書類を選択する」⇒「第一表・第二表の作成」⇒「各種項目の入力」⇒「個人情報の入力内容の確認」⇒「出力して税務署へ提出」という流れとなります。

ここでいっている流れは、個人所得税のしんこにの流れとなっているため、フリーランスの人や自営業者などの場合は、若干、書式の様式等が異なることがありますが、基本的には流れは同じといえます。

注意してほしいこととしては、「マイナンバー」の入力が義務付けられているということです。マイナンバーは確定申告書に限らず、多くの公的な申請書類を提出するうえで必要になるもので、マイナンバーカードを作成している人であれば問題ないのですが、マイナンバーカードを持っていない場合は、マイナンバーが記載されている住民票を市区町村役場へ取りに行く必要があります。

また、近年では電子申告を推進していますが、電子申請で行う上でもマイナンバーカードは必要になりますので、まだ作っていない人はお早めに作成するといいかと思います。(発行の申請から実際に手元に届くまでに、およそ1~2か月はかかります)


5.確定申告書と年末調整の違い

年末調整の説明のところでも、確定申告書との違いについて説明していますが、年末調整は「会社に勤めている人の給与所得について、まとめて確定申告をするための手続き」であり、確定申告は「個人単位で1年間に発生した所得についての課税額の申告を行うための手続き」となります。

そもそも、年末調整は「確定申告の業務を簡略化させるために行っている」ものですので、給与所得者が対象となりますが、他の所得を有している人については、所得に対する課税区分や税率が異なってくるため、年末調整では行わずに、確定申告によって詳細な所得状況などを報告させることで、より的確な税徴収を図ることが国の狙いといえます。

そのため、年末調整では、会社に勤めている人で給与所得の身で生活している人が対象で、自営業者やフリーランスの人、年金受給者などについては確定申告をする必要があるということになりますが、年末調整の対象者であっても「住宅ローン控除(初年度のみ)の適用者」や「入院等をしたことがある人」などは確定申告をしなければなりません。

つまり、近年話題になっている「副業」をしている人についても、副業で得た収入については個別に確定申告を行う必要がありますので注意が必要です。うっかり、申告をし忘れたがために、会社に督促の通知が届いたりすることもありますので、副業をしている人・副業を考えている人については、その点についても考慮した上で行わなければならないといえます。

6.まとめ

毎年2月16日から3月15日までの期間は「所得税の確定申告書の提出期限」となっているため、この時期になると税務署以外の場所で確定申告書の作成のための特設コーナーが設けられて、毎日、非常に多くの人が確定申告書の作成のために列を作っていいる光景をよく目にします。

確定申告書の作成は、必要な書類を準備したうえで、必要な内容を入力するだけで簡単にできてしまいます。もちろん、パソコンの操作がある程度できる人であることが要件にはなります。実際に私も作成コーナーで確定申告書の作成のお手伝いを毎日50件以上やっていたことがありますが、来場される方々は必要であろう書類はちゃんと用意できており、あとは、どこに何の金額を入力すればよいかが分かれば作れてしまう人が多いことが印象的でした。

確定申告書は毎年1度しか行わないため、1年経過するとせっかく覚えた内容を忘れてしまったり、法改正などによって制度が変わてしまったりと、毎年のように同じようなことを繰り返しているようなルーティンワークになってしまっているところがありますが、基本的な部分の内容(給与所得の内容の入力など)は毎年ほぼ同じものですので、この機に自分で書類を作成することをチャレンジしてみると、思いのほかあっさり作れたりしますので、長時間並んで作成する手間を省けるかもしれません。

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