相続は遺言書のありなしでどう変わる?書き方と効力・遺留分請求について解説!

  • 「遺産相続でもめないように、必ず遺言を書いておくべき」とはよく聞くけれど、相続って遺言のあるなしでどう変わるの?
  • 遺言はどんな内容でもいいの?家族以外の人に財産をあげる内容の遺言でも有効?
  • 自分が遺言を書いても、家族がそれを無視した場合にはどうなる?対策はある?

「自分の死後には遺産をめぐって家族がもめるようなことが起きないようにしたい」とお考えの方にとって、遺言を書いておくことはもっとも有効な方法と言えます。

というのも、日本の法律では、法律の内容と遺言の内容が食い違う場合には、遺言の内容が優先されるルールになっているからです。

「自分の残す財産を、どの人にどれだけ与えたいか」を遺言に記しておけば、あなたの望む遺産相続の形を実現することが可能となります。

日本は資本主義の国ですから、自分の死後であっても自分の財産は自由に処分できるのが原則となっているのです。

この記事では、遺言を作成した場合の遺産相続に与える効力や、具体的な遺言作成の手続き方法について解説します。

近い将来に起こるご自身の遺産相続について準備を進めているという方は、ぜひ参考にしてみてください。

相続は遺言のあるなしでどう変わる?

もし、あなたが遺言を残さなかったとすると、あなたの財産は法律のルールに従って分割されることになります。

ここでいう「法律のルールに従って」とは、以下の2つのことを法律のルールにゆだねることを意味します。

  • ①あなたの財産は、法律で決まっている順番に従って決まる相続人が相続します(相続順位の問題)
  • ②あなたの財産は、法律で決まっている遺産分割のルールに従って分割されます(遺産分割割合の問題)

逆に、遺言を残しておけば、これら2つのこと(①誰が相続人となるのか?と、②どれだけ相続するのか?の問題)を、あなたの自由に決めることができます。

誰がどれだけの遺産を相続するのか?をあなた自身の意思で決めたい場合には、遺言書を作成しておくのが適切と言えます。

以下では、まずは遺言を残さなかった場合に、上の2つのことがどのように決まるのかを知っておきましょう。

もし、法律のルール通りの遺産分割であなたが大きな問題を感じないのなら、あえて遺言を作成する必要はありません。

ぜひ「あなた自身がどのような遺産相続のあり方を望むか?」を考えながら読んでみてください。

①相続順位の問題

遺言によって相続人を指定しない場合、「あなたの配偶者」と「配偶者以外の親族」が共同で相続人となります。

あなたの配偶者(夫または妻)は常に相続人となりますが、後者の「配偶者以外の親族」は、以下のルールに従って相続人となる人の順位が決まります。

  • 第1順位:あなたの子供
  • 第2順位:あなたの父母
  • 第3順位:あなたの兄弟姉妹

相続順位の問題については、以下のようなルールを理解しておきましょう。

上の順位の人がいる場合、下の順位の人は相続人とならない

上の順位の人がいる場合には、下の順位の人は相続人となることはできません。

例えば、あなたに子供と父親がいる場合には、あなたの死後には子供(第1順位)が相続人となり、父親(第2順位)は相続人となりません。

同順位の人がいる場合、その人たちは共同で相続人となる

同じ順位の相続人がいる場合、その人たちは同じ立場で相続人となります。

例えば、あなたに長男と次男の2人の子供がいる場合には、どちらの子供も第1順位ということになりますから、彼らは共同で相続人になります。

なお、同じ順位の相続人は同じ割合で遺産分割を受ける権利を持つのが法律のルールです(遺産分割の割合については後の「②遺産分割割合の問題」でくわしく解説します)

配偶者は常に相続人となる

あなたの配偶者は、上の第1順位〜第3順位の人たちと、常に共同で相続人となります。

例えば、あなたに妻と子供3人、さらに母親と弟がいるという場合(合計6人の家族)には、妻と子供3人が相続人となります。

あなたの配偶者は、いわば最優先の相続人という扱いになることを知っておきましょう。

なお、ここでいう「配偶者」とは、婚姻届を役所に提出している法律上の配偶者に限られます。

いわゆる「内縁の妻」「内縁の夫」は法律上の相続人とはなりません。

内縁の妻や夫に財産を残したい場合には、遺言を作成しておく必要があります。

子供がすでに亡くなっている場合は孫が相続人となる(代襲相続)

上で見たように、子供は第1順位の相続人となりますが、その子供がすでに亡くなっていて孫がいるという場合には、その孫が第1順位の相続人としての権利を持ちます。

こうしたケースを代襲相続(だいしゅうそうぞく)と呼びます。

例えば、あなたには子供がいて、その子供はさらに子供(あなたから見ると孫)がいますが、あなたの相続発生時にはすでに子供は亡くなっていたとします。

この場合には、あなたの孫が第1順位の相続人となります。

同様に、あなたの父母は亡くなっているけれど、祖父母は健在だった場合に、あなたが亡くなった時には祖父母が父母に代わって相続人となる権利を持ちます。

※法律の定義上これは「代襲相続」とは呼びませんが、仕組みは同じです。

さらに、あなたの兄弟姉妹に子供がいたとして(あなたから見て甥っ子や姪っ子)あなたの相続発生時に兄弟姉妹がなくなっている場合には、その甥っ子や姪っ子が相続人となります。

ただし、兄弟姉妹の場合には代襲相続の範囲は甥っ子・姪っ子までに限られ、「甥の子供」や「姪の子供」はあなたの相続人となる権利はありません。

この点は孫の子供(あなたからみてひ孫)の場合と結論が異なりますので注意しておきましょう(あなたのひ孫は相続人となる権利を持ちます:このケースを再代襲相続と呼びます)

②遺産分割割合の問題

上の①で見た相続順位に従って、「誰が相続人となるのか」を確定したら、今度は「どれだけの割合の遺産を相続するのか」を決めることになります。

相続人が1人だけの場合にはその人がすべての遺産を相続しますが、相続人が複数人いる場合には、以下のルールに従って遺産を分割することになります。

  • 同じ順位の人の相続人同士の分割割合は平等
  • 配偶者と子供が相続人となる場合=「配偶者2分の1:子供2分の1」の割合で分割
  • 配偶者と父母が相続人となる場合=「配偶者3分の2:父母3分の1」の割合で分割
  • 配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合=「配偶者4分の3:兄弟姉妹4分の1」の割合で分割

遺産分割割合の例:配偶者と子供がいる場合

例えば、あなたに配偶者と長男・次男の合計3名の相続人がいる場合には、以下のように遺産を分け合うことになります。

  • 配偶者:2分の1の遺産を相続
  • 長男 :2分の1÷2人=4分の1の遺産を相続
  • 次男 :2分の1÷2人=4分の1の遺産を相続

遺産分割割合の例:配偶者と父母がいる場合

また、あなたに配偶者と父母2名の相続人(合計で3人)いる場合には、以下のように遺産分割を行います。

  • 配偶者:3分の2の遺産を相続
  • 父  :3分の1÷2人=6分の1の遺産を相続
  • 母  :3分の1÷2人=6分の1の遺産を相続

遺産分割割合の例:配偶者と兄弟姉妹がいる場合

あなたに配偶者と兄弟姉妹がいる場合には、配偶者4分の3・兄弟姉妹4分の1の割合で遺産を分けあいます。

例えば、あなたに配偶者と弟・妹の合計3人の相続人がいる場合には、以下のように遺産を分割します。

  • 配偶者:4分の3の遺産を相続
  • 弟  :4分の1÷2人=8分の1の遺産を相続
  • 妹  :4分の1÷2人=8分の1の遺産を相続

実際には遺産は「割合」で分けることができないケースが多い

上で見たように、法律のルールでは「配偶者2分の1・子供2分の1」というように、「割合」で遺産を分割する仕組みになっています。

遺産がすべて現預金で残されているようなケースではこれでも大きな問題はないでしょう。

しかし、実際の相続では土地建物といった不動産や、宝石や骨董品のような「割合で分け合えない遺産」がある場合が少なくありません。

こうしたケースでは、相続人となる人たちが集まって話し合いを行い、法律のルールを参考に遺産分割の方法を決めることになります(遺産分割協議と言います)

「割合」で分け合うことができない場合

例えば、「法律上は兄弟の遺産分割割合は平等となっているのだから、長男は1億円の現預金、次男は1億円の価値がある土地A、三男は1億円の価値がある土地Bを相続する」といった具合です。

これらの財産がそれぞれ同じ1億円の価値であればいいですが、実際にはそのようなケースはまれでしょう。

そのため、法律のルールだけに頼って遺産分割を行う場合には、不平等な結果となってしまうことが少なくありませんので注意が必要です。

この点、遺言を作成しておけば、遺産や家族の具体的な状況に応じて遺産分割割合を決めておくことができます。

例えば、「遺産の8割は兄が相続する。ただし、弟の生活費は兄が現金で毎月○万円ずつ、10年間にわたって渡すこと」といったように、柔軟に遺産相続のあり方を指定することが可能となるのです。

不平等な遺産分割は相続トラブルの元になりますから、誰がどのような形で遺産を相続するのか?は遺言であらかじめ決めておくのが適切なケースが多いでしょう。

(遺言作成にあたって、家族の意見を聞いても問題ありません)

遺言書の書き方と種類

ここまで見てきたように、「法律のルール」で遺産分割を行うのが適切でない場合には、遺言を作成しておくことが必要です。

遺言がある場合には、上で見た法律のルールはすべて無視して、遺言の内容が優先されることとなります(ただし、後で見る「遺留分」に抵触しないようにしておく必要があります)

このように、あなたが作成する遺言には非常に強い効力が認められている分、遺言の作成にあたっては法律のルールに従った形式を守らなくてはなりません。

遺言の作成方法には、以下の3つの方法があります。

  • ①自筆証書遺言
  • ②公正証書遺言
  • ③秘密証書遺言

③の秘密証書遺言は使うメリットがあまりありませんので、滅多に使われません。

基本的には①の自筆証書遺言か、②の公正証書遺言を使うことになりますが、より確実に遺言内容が実現されるようにするなら、②の公正証書遺言を選択するのが良いでしょう。

以下では、それぞれの遺言の形式について簡単に見ておきましょう。

①自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、文字通り「自筆で遺言を作成する方式」のことです。

自筆証書遺言では、全文を手書きで遺言を作成して押印し、自分で保管しなくてはなりません。

(法律の要件を満たさない形で作成された自筆証書遺言は、無効とされてしまう可能性があります)

ただし、平成31年1月13日以降に作成する自筆証書遺言については、遺言書に添付する財産目録(残す財産を一覧で表示したもの)はワープロ等での作成が認められるようになりました。

もっとも、遺言の本文については従来通り自分で手書きで作成する必要があることを理解しておきましょう。

自筆証書遺言は、相続の発生後は遺族に発見してもらい、家庭裁判所で検認の手続きをとってもらって初めて有効になります。

万が一、せっかく作成した自筆証書遺言が遺族に発見してもらえなかったようなケースでは、遺言内容を実現することができない結果となってしまいますから注意が必要です。

実際、このようなかたちで自筆証書遺言が発見されないケースが頻発していたため、法改正によって法務局に自筆証書遺言を保管してもらう仕組みが導入される予定となっています(令和2年7月10日以降に施行されます)

②公正証書遺言

公正証書遺言とは、公証役場という役所に出向いて遺言を作成する方法です(証人2名に立ち会ってもらう必要があります)

作成したい遺言の内容さえ決めておけば、実際の遺言の記録などは公証人という専門家が代行してくれますから、要件不備によって遺言が無効となってしまうリスクを避けることができます。

公正証書遺言の場合、相続の発生後は公証役場が遺言が存在していることを証明してくれますから、遺言書が発見されないというリスクもありません。

そのため、慎重を期したい場合には公正証書遺言を選択するのがおすすめです。

公正証書遺言を選択するデメリットとしては、作成に費用がかかってしまうことが挙げられます(遺言に書き記す財産の科学によってかかる費用は変わります。例えば1000万円以上3000万円以下であれば2万3000円、5000万円〜1億円で4万3000円といった具合です)

また、一度作成した公正証書遺言の内容を書き換えたい場合にも、また費用を負担して遺言作成の手続きをやり直さないといけないのも難点と言えるでしょう。

③秘密証書遺言

秘密証書遺言は、遺言の内容については自分以外の誰にも知られないようにし、「遺言が存在しているという事実」だけを公的に証明してもらいたい場合に選択できる方法です。

公証役場で遺言作成の手続きを行うことは公正証書遺言と同じですが、作成した文面が誰の目にも触れない点が異なります。

必然的に内容面での不備については誰にもチェックしてもらうことができませんから、法律手続きに関する知識に自信がある方などを除いてはあまり選択するメリットはありません。

実際、秘密証書遺言の形で作成される遺言書は全体の1%未満です。

遺留分とは?

上では「遺言を作成しておけば、法律のルールにかかわらず、自由に相続人や相続割合を指定できる」と説明しましたが、これには例外があります。

それは、遺言の内容があなたとごく近しい親族の「遺留分」という権利を侵害してしまう場合です。

遺留分とは、あなたの配偶者や子供、父母が「最低でもこれだけの遺産は分けて欲しい」と要求する権利のことです。

例えば、遺言で「全財産を愛人に与える。親族には一円も渡さない」という内容を書き残したとしても、これは親族の遺留分を侵害することになりますから、遺族から「一部の遺産は私たちにも分けてほしい」という主張をされてしまう可能性があります。

ただし、遺留分は権利を持つ本人の請求がある場合にのみ実現しますから、遺留分を侵害する内容の遺言があったとしても、それを親族が甘受するのであれば問題にはなりません。

遺留分の割合

遺留分は、配偶者・子供・父母が遺族に含まれる場合に認められるもので、以下のような割合で遺産を分け与えなくてはならなくなります(兄弟姉妹には遺留分は認められません)

  • 配偶者と子供が主張する場合:遺産の2分の1が遺留分
  • 配偶者のみがいる場合:遺産の2分の1が遺留分
  • 子供のみがいる場合:遺産の2分の1が遺留分
  • 父母のみがいる場合:遺産の3分の1が遺留分

なお、遺留分請求者が複数人いる場合には、上の割合によって認められた遺留分を、法定相続分で分け合うことになります。

例えば、配偶者と子供3人がいるという場合には、遺留分は2分の1ですので、それぞれの人は以下の割合で自身の遺留分を受け取ることになります。

  • 配偶者の受け取る遺留分:総遺産×2分の1
  • 長男の受け取る遺留分:総遺産×2分の1÷3人=6分の1
  • 次男の受け取る遺留分:総遺産×2分の1÷3人=6分の1
  • 三男の受け取る遺留分:総遺産×2分の1÷3人=6分の1

遺言を作成する際には、遺留分を持つ人の権利を侵害しない形のないようにしておくことがトラブルを避けるために重要と言えます。

まとめ

今回は、遺言を作成した場合とそうでない場合とで、遺産相続のあり方がどのように変わるのか?について解説いたしました。

本文でもみたように、日本の法律では遺言の内容が法律と食い違う場合には、遺言の内容が優先されるのが原則です。

遺言には非常に強い効力が認められていますから、あなたの死後の遺産相続のあり方について、自分で決めておきたい場合には、必ず遺言を書いておくようにしましょう。

一方で、あなたの親族の権利をあまりにも制限する内容の遺言を作成してしまうと、かえって遺産相続をめぐるトラブルを誘発してしまう可能性があります(本部で見た遺留分の問題です)

どのような形の遺言を残すべきか?については遺産相続を専門とする弁護士や司法書士からアドバイスを受けることが可能です。

これから遺産相続の準備を始めるという方は、ぜひ相談を検討してみてください。

吉田ライター
吉田ライター
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