目次
ここ数日、ドバイ原油の価格上昇の様態をみると、2016年に中東の終末を見るかのように下がり続けた原油価格が嘘のように思えてしまいます。
2016年以降はOPECとNon-OPECによる原油の減産調整の結果、今度は駆け抜けるように原油価格は上昇し始めています。原油価格の高騰を避けるために、今後は原油の増産が提案されていて増産が進めば原油の価格はまた、下がり始めることになるでしょう。原油価格の先が読めない値動きが続く中、改めて原油への投資を考えている人も増えているのではないでしょうか。
そこで、今回は原油投資の代名詞でもある原油先物取引の投資方法や、原油投資のメリット・デメリットを徹底的に解説していきたいと思います。
原油に投資したい
私達が自動車の燃料を中心に、原油に依存する暮らしをするようになってから長い年月がたちますが、近年では電気自動車の登場によって、今後の需要は低下していくと見られています。
それでも、今という視点でみれば原油なしで暮らしていくことはまだまだ先の話だと言えるでしょう。需要は徐々に低下するかもしれませんが、減産調整次第では、さらに今後も原油価格が上昇していくかもしれません。
原油の将来性
例えば、原油の生産量が増えてしまうことで、原油の価格がまた下がってしまうことも、もちろんあり得る話です。そうなった場合は、また減産調整が進み原油の価格を押し上げるのを待たねばなりません。
あるいは、原油の需要の低下ににらんで、今後は原油生産から手をひく企業が増えてくるとも言われています。同時に、国によっては主要生産物を原油から別の物に移行させる計画もなきにしもあらずで、そうなった場合は生産者の数が著しく低下し、原油の価格が高騰してしまう可能性もあるとのことです。
いずれにしても、まだまだ需要がなくならない限りは、原油はやはり主要エネルギーであることには変わりはありません。電気自動車が一般的に普及してまうのは2030年以降になるだろうと言われています。
そこで、しばらくは需要が続くとみられる原油に投資するには、いったいどのような方法があるのでしょうか?
原油の投資方法
投資信託
原油をとり扱う投資信託を購入することで、プロに任せながら原油投資を行うことができます。投資信託は各銀行、証券会社などの金融機関の口座を開設する必要があります。
など・・・
株式投資
原油の生産・輸入・販売をメイン事業とし、同時に次世代の水素ステーションや電気、太陽光発電などエネルギー全般にわたり幅広く展開しています。証券会社にて株式の購入が可能です。
現物取引(スポット)
現物の原油を取引するのは、主に原油やガソリンをとり扱う業者、企業や国家となります。企業や国家が原油を現物で取引する時はその都度、近況の先物取引の相場などを参考にしながら、交渉にて価格を決めます。
このような現金と現物の取引をスポット取引といい、消費者がガソリンスタンドから灯油やガソリンを買うことも、要はスポット取引の1種とも言えます。交渉して購入することはまずありませんが、比較的安いガソリンスタンドを各自で選ぶことはできます。
商品先物取引
原油投資の代表的なものが原油の先物取引になり、先物取引の中でもコモディティと呼ばれるジャンルで商品先物取引というものです。先物とは、現在の価格から将来の価格を推定して、将来いくらで売買するかを約束して取引が行われるものです。
先の価格をある程度読める知識が必要となり、商品の生産者、取引者、関連業者の方や、その他の投資経験のある方におすすめです。
先物取引で本格的な原油投資がしたい
それでは、これから原油に本格的な投資をしたい方のために、商品先物取引がどんなものかを詳しく解説したいと思います。
先物は現物の取引や株式の取引等とは全く違うシステムになっています。原油だけに限らず、コモディティ全般に渡って共通するしくみなので覚えておきましょう。
商品先物取引の特徴
- 少額資金で大きな取引をすることを目的とする。
- 「買い」と「売り」の両方で利益を得ることができる。
- FXや株式と異なり、取引期限が設けてあり、最長のもので約1年になる。
商品先物取引の基本
商品先物市場では、生産者・流通業者・消費者が主なトレーダーとなり価格が決定されていきます。価格が上昇すれば、売って利益を得たいと考える人が多くなり、多くの売り注文が出されます。
その時に、その価格で買いたいと思う人が現れなければ、書いてが現れるまで価格が下がっていきます。
セリ市(競売・オークション)のイメージに近いもので、5,000円でスタートしたものが競合者によってどんどん値段が吊り上げられて、最終的に50万で購入されるというシステムです。
反対に5,000円でスタートしたのに誰も買わなければ、4,500円、4,000円と下がっていき、2,500円でようやく買い手がつくケースもあるわけです。
このように売り手(供給)と、買い手(需要)のバランスで、その商品の現在の値段が決められていきます。今が7月であれば8月、9月、10月と将来の予想される値段で売買を行っていくものです。
売りヘッジ・買いヘッジ
世界情勢や地理的要因によって、価格変動の影響を受けやすいことから、売値、買値をあらかじめ設定しておくことで保険のようにリスクを回避することもできます。
このヘッジ取引は主に工業や農業関係の生産者によって利用されています。
ヘッジ
例)工業生産者や消費者は今後の購入価格が高くなると困ります。そこで、購入額を買いヘッジで単価1,000円にキープしておきます。その単価が将来1,200円に上がった場合には200円の利益を得ることができます。
実際には現物の購入に1,200円払うことになりますが、先物取引の買いヘッジの収入が200円入りますので、全体の収支をプラスマイナスゼロに保つことができるのです。
逆に在庫が増えすぎてしまい、高く売りたいのに商品の売値が下がってしまいそうだという時には売りヘッジで実際の売値をカバーすることができるわけです。
価格変動リスク
商品先物取引はリバレッジを利用して、多額の資金を運用しますので、価格変動によっては資金よりも損失額が上回ってしまうリスクがあります。
例)商品単価1g(原油の場合は1バレル)が1,000円の商品を1,000g購入したとします。1,000円×1,000g=100万となりますが、実際の資金は10万でした。
10万の資金をリバレッジ10倍を適用し、100万分の商品先物を購入しました。もし、単価が500円に下がってしまったとします。そうすると、500×1,000g=50万となり、損失は50万円にもなってしまうのです。
商品先物取引の銘柄
- 原油(精製される前の純粋なオイルで、主に中東で生産されているもの)
- ガソリン(ガソリンスタンドで販売されている自動車用のガソリン)
- 灯油(暖房器具の燃料や工業用機器の燃料など)
- ゴム(主要生産国から生産される天然ゴム)
- 金・銀・白金・パラジウム(白金はプラチナのこと、パラジウムは貴金属の1種)
- コーン・大豆・小豆(普段私達が食材として扱っているもの)
など・・・ 金融機関によって取り扱う商品は異なります。
取引の基本ルール
商品先物取引では、各商品ごとに呼び値単位(よびねたんい)と取引単位が決められています。
呼び値単位→売買の相場を決めるために「この商品は〇〇gが〇〇円が市場の相場ですよ」と基準となる価格を提示したもの。原油・ガソリン・灯油の場合は1㎘(キロリットル)でいくらかが表示されています。
取引単位→商品先物の単位は「枚(まい)」です。1枚、2枚、3枚というように枚数で売買を行います。原油・ガソリン・灯油の場合は1枚が50㎘になります。
原油の最低購入単価の例)呼び値(1㎘)5万円の原油を1枚(50㎘)購入した場合
5万×50=250万 となります。
売買期限
限月(げんげつ)→受け渡し決済の期限が設けてあり、その期限のこと
当限(とうぎり)→受け渡し付きとなった限月のことで最終月であることを意味する
期近(きぢか)→もうすぐ当限である時期のこと
期先(きさき)→取引の期間は始まったばかりであること
先切(さきぎり)→受け渡し決済の一番最初の月のこと
納会(のうかい)→取引の決算期限となる最終取引のされた日のこと
発会(はっかい)→最初の取引がはじまった日のこと
以上が商品先物取引を行う上で、最低限に必要な、基本的な知識になります。実際に原油の先物取引を行う前に、原油について、もう少し詳しくご説明したいと思います。
原油とは
原油はガソリンや灯油に精製する前のもので、地中からポンプでくみ取られた天然100%のオイルのことです。日本の石油会社はこのオイルを主にサウジアラビアやアラブ諸国から輸入しているのです。
普段私達が購入するガソリンや灯油の値段は原料となる原油の価格によって、大きく左右されてしまうんですね。
原油の輸入動向
国内の原油の輸入金額は17年に約57兆円と過去最高を記録し、そのうち、原油の輸入金額は約8兆8,000億円、輸入総額の約15%を占めています。
比較的に裕福な日本においては、最近では自動車は1家に1台といわず、1人1台といっても過言ではありません。自動車を所有する人の数が増えれば増えるほど、原油への依存は増長されていくようです。
国内で必要な原油は、サウジアラビアからの輸入が約32%、アラブ首長国連邦からの輸入が約27%、イランからの輸入が約15%となっており、上位3か国で輸入高全体の4分の3近くを占めているのです。
そんな中、有害ガスを排出しないハイブリッドカー、燃料電池車、電気自動車などを見かける頻度も多くなってきています。
ガソリン車の需要
ただ、ハイブリッドカーや電気自動車がいくら二酸化炭素を排出せず環境にやさしい車だとわかっていても、費用的な問題で、そう簡単に車を買い替えるわけにもいきません。せめて、車のローンが終わるまでは乗り続けたいと思うのが自然です。
ガソリン車は、中古車も新車も含め溢れるほどの数が周りで売られているのが現状です。他国に中古車を輸出するくらいに国内の車の在庫は十分すぎるほどの数です。中古でガソリン車を購入したほうが、ハイブリッドカーや水素エネルギーの自動車を購入するよりも経済的であります。
そんな理由が、やはり次世代カーの普及に足止めをかけているようです。実際には原油の輸入量は減少傾向にありますが、先述のように、原油の減産調整により単価が上昇し輸入額自体は結局上昇しているのです。
原油の種類
ドバイ原油
WTI原油
NY原油とも呼ばれています。アメリカ合衆国南部にあるテキサス州とニューメキシコ州を中心に生産される原油になります。日本で取引される原油はドバイ原油ですが、ドバイ原油がWTI原油の価格に左右されてしまうことから、日本でもこのWTI原油の価格が重視される傾向にあります。
その他
- ブレントオイル→イギリスの北海にあるブレント油田から摂れる軽質油
- シェールオイル→アメリカとカナダで開発が進んでいる岩石から摂れるオイル
原油取引のメリット・デメリット
メリット
生活費の中でも節約できるもの、できないものとあると思います。家賃や住宅ローン、車のローンなどは家を買った以上、車を買った以上は、必ずその金額を払わなければなりません。でも食費や衣類や極端な話、1回の洗濯に使う洗剤の量などは減らそうと思えば減らすことができます。
国内で使われる原油の主な用途はガソリンです。そのガソリンのほとんどが通勤用や商業用の車の燃料に使われています。そして、ガソリンも家賃や住宅ローンのように、通勤や仕事で車を使う以上は節約のしようがないということです。
洗濯洗剤の量のように、量を節約すれば途中でエンストをおこしてしまいます。しかも家賃や住宅ローンは双方の同意のもとに支払う金額が設定されますが、ガソリンは一般の消費者にとって、ガソリンスタンドで1リットルいくらといわれれば、その金額で購入する以外に方法がないのです。
私達の生活において原油は、電気や水同様に必要不可欠なものであり、たとえ値段が高騰したとしても買わざるを得ないものなのです。
デメリット
超長期的な意味で考えれば、必ず需要は低下していくと言えます。現在も需要は低下しつつありますが、減産調整により単価が上がっていっているのです。
今後、何年先になるかはわかりませんが、電気自動車や水素エネルギー電池の自動車はいずれは、今のガソリン車にとってかわることが予想されています。そのことが2016年の原油価格大暴落の原因の1つだったのです。
当時、需要は減っているのに、生産量は増加しているというアンバランスな状態から一気に原油の価格が今の3分の1以下に下がりました。なので、またいつ需要と供給のバランスが崩れて原油の価格が暴落してしまうかはわからないということです。
原油先物投資の口座を作ろう
このような、原油のメリット・デメリットをよく考えた上で、売買をするタイミングをじっくりと検討したいものです。それでは、実際に原油先物取引のできるサイトをいくつかご紹介したいと思います。
手数料や取引方法など、利用する口座によって異なりますので、事前に詳細を確認するようにしましょう。
楽天証券 WTI原油先物
NY商品取引所の原油の取引が可能です。ドル建てでの取引になり、為替の知識が必要ですが、よりリアルな原油の値動きにより利益も期待できます。
北辰物産株式会社 東京原油
東京原油、東京ガソリン、東京灯油の3種から選ぶことができます。初心者向きに、先物取引について詳細渡ってサイト内で勉強できるのが魅力です。
日産証券 東京原油
東京原油、東京ガソリン、東京灯油とさらに中京ガソリン、中京灯油と商品数が充実しています。専門のアナリストによるアドバイスも参考にできます。
その他
- フジトミ
- IG証券
- 岡安商事
など・・・商品先物口座はほとんどの証券会社で無料で開設することができます。
まとめ
私達の現代の生活は、もはや車の存在なしには成り立たないと言っても過言ではありません。車の排気ガスによる大気汚染は、世界的に深刻な問題へと進展しているにもかかわらず、今さら便利で効率のいい車の利用をやめることは困難でもあります。
車の普及とともに、需要が著しく拡大した原油は世界中の人々の暮らしを支えている必要不可欠なエネルギーの1つとしてその地位を確立しました。安い車にのろうと高級車にのろうと、必ず一定の量のガソリンは値段を問わず定期的に購入する必要があります。
そんな中、2016年あたりから大気汚染を解決できるハイブリッドや電気自動車の出現とともに、原油の需要が懸念され始めました。ちょうどその頃に原油の生産量が過剰になりすぎたこともあり、原油の価格は一気に下がり始めてしまいました。
その時に世界で初めてOPECとNon-OPECの減産調整が合意され、原油の生産量は減少されることになったのです。主な原油生産国は生き残って行く為に必死で対策を考え、協力し合った結果、原油の減産は実現し今度は上昇が止まらなくなる状態になってしまいました。
2018年の6月に入ってからは特に上昇が続き、つい先日、サウジアラビアはアメリカの要請を受けて、原油価格の高騰を避けるために原油の増産を承諾したとのことです。これで、また原油の価格は下がり始めるかもしれません。
そして、原油が下がりすぎる前に、再び減産すれば価格は上がることになるでしょう。しばらくはこの状態が数年に渡ってくり返されるのではないかと思います。今後の原油の価格は、減産と増産を繰り返しながら上がったり下がったりと激しい動きをしていくことが予想されます。
であるから、これからの数年間は原油投資をするには、一番いい時期かもしれないのです。