病院の言いなりになってはダメ!入院にかかる医療費節約法

入院となると、とにかくお金がかかるもの。さらに仕事を休んだり、子供を預けたりすることも考えると、入院費用は少しでも安く抑えたいものですよね。とはいえ、病気やケガのことはよくわからないから、病院から言われるままに必要なものを準備したり、請求されたお金を支払ったりして、それでおしまいという方がほとんどではないでしょうか。

でも実は、入院にかかる医療費を節約する方法はいくつかあります。本当は払わないくて良いものの支払いを止めたり、もらう権利のあるお金をもらえるように手続きしたり、知っていれば節約になることが存在します。普段の収入や、入院にかかる自己負担額の大きさによって節約できる金額は変わってきますが、人によっては医療保険と合わせると出費のほとんどをまかなえるケースもあります。

そこで今回は、入院にかかる医療費を少しでも節約する方法をご紹介します。事前に知らないと後からでは間に合わないものもありますので、ぜひ入院手続き前にご確認ください。

 

病院に入院するときにかかる費用

そもそも、入院するとかかる費用にはどのようなものがあるのでしょうか。通院のときにはどのように違うのでしょうか。何も考えずに病院からの請求どおり支払っている方が多いですが、実は下記のような分類で費用が発生しています。

病院に支払う費用

入院すると病院へその費用を支払うことになります。内訳としては以下のとおりになります。

入院基本料

入院基本料は入院治療にかかる費用になります。診察、投薬、手術オペなど治療に関する様々な行為に関する費用がまとめて請求されます。通院したときに病院に費用を払うのと同じですね。

またこちらに看護や療養に関する費用も含まれます。看護師さんたちが病室のベッドで過ごす1日をサポートしてくれたり、理学療法士や作業療法士の方々リハビリのサポートをしてくれたりと、元気になるまでに様々なサポートを受けて退院となりますが、このサポートに対する費用もこちらに含まれています。

食事療養費

食事療養費は、入院中に提供される食事の費用になります。1日3食バランスのとれた料理を出すために栄養士がメニューを考えて作られています。糖質制限のある患者向けには糖質控え目のメニューになったり、絶食明けの患者むけにはご飯の代わりにおかゆだったりと、病気の症状や治療の状態に合わせた食事を出してくれます。

実際に作るのにかかる費用は毎食異なってきますが、請求される費用は1食ごとにいくら、と決まった金額になります。1食の値段をいくらに設定するかは病院によって異なりますが、だいたい1食あたり460円程度としている病院が多いようです。

先進医療技術料

先進医療技術料とは、医療保険の範囲外の治療法や薬を使って治療をする場合にかかる費用です。すでに治療法が確立され、保険の範囲内でできるものであれば良いのですが、まだ治療法が確立していなかったり海外で身体への負担の少ない治療法が最近できたりした場合には、この先進医療技術に該当するような治療法を使ったほうが良いケースも考えられます。

先進医療を受けるか、医療保険で認められた治療のみで治すかは治療を始める前に医師と相談して決める形になります。ですので先進医療技術料がこちらの同意なく勝手に請求されることはありませんが、あらかじめ先進医療を含む治療を受ける旨を同意した入院であれば、請求時にこちらが加算されます。

差額ベッド代

差額ベッド代は標準よりもグレードの高い部屋へ入院した場合にかかる費用です。標準が6人部屋であれば、グレードの高い部屋として4人部屋や2人部屋、個室といった部屋を選ぶと差額ベッド代がかかります。部屋の人数によって病院側の対応が大きく変わるわけではありませんが、人数が少ない部屋や個室のほうが静かに過ごせます。

差額ベッド代に関しても先進医療技術料と同様に、基本的にはこちらの同意なく請求されることはありません。大部屋だと周りの人が気になってストレスだとか、入院中も仕事の打ち合わせをしたいから個室が良いだとか、そういった場合には差額ベッド代を払って部屋をグレードアップするという選択肢もありでしょう。会社の健保で差額ベッド代を負担してくれる制度がある、という場合もあるので、一度確認してみると良いかもしれません。

 

上記以外に必要になる費用

病院に支払う費用以外にも、入院にあたり必要になるものがあります。

例えば部屋着などの衣服は病院によってはレンタルできる場合もありますが、持ち込みが必要な場合もあります。お腹を切るような手術の予定があれば、前開きの部屋着を準備するように言われるケースは多いです。

またケガでの入院ならば、固定ベルトなどの器具が必要となる場合もあります。傷を洗うための桶などが必要となる場合もあります。こういったものは売店などで自費購入するように指示されるか、病院から支給される代わりに退院時の精算に含まれる形になることが多いです。

ベッドの脇にはテレビが設置してある病室が多いですが、テレビを見る場合にテレビカードが必要となる場合があります。普通のチャンネルにも課金される場合もあれば、有料チャンネルのみ課金され民放やNHKは無料で観られるという場合もあります。値段設定としては、1,000円で1,000分(16時間40分)といなっている病院がほとんどです。

 

入院時にかかる医療費を節約する方法

入院した際にかかる費用がわかったところで、そのうち節約できる箇所についてご説明していきます。ひとつひとつは少額かもしれませんが、積み上げていくと結構な差になる方がほとんどです。申請が必要なものもあるのでつい面倒くさくなって忘れてしまいがちですが、ぜひ時間をとってチャレンジしてみてください。

病院都合での差額ベット代

こちらの要望ではなく、病院側の都合で差額ベッド代の必要な病室をあてがわれることがあります。手術を急ぐ必要があったり、入院患者のやりくり上大部屋にうまく入れなかったりする場合です。こういった病院都合で発生する差額ベッド代については、こちらが支払う義務はありません

ただし、入院時に「大部屋が空いていないので、良かったら個室はどうですか」などと勧められ、自らの意思で個室を選んでしまった場合には差額ベッド代を請求される可能性があります。自発的に希望していないのに個室や上位ランクの部屋を提案された場合はこちらからお断りをし、それでも病院都合ということであれば、差額ベッド代は払わない旨を病院に伝えましょう

 

必要品の持ち込み

こちらはほかの4つとは違い、支払いを断る権利があったり治療費や生活費が支給されたりする制度ではありません。自分自身の裁量でいろいろと工夫できるところなので、出来そうなものはぜひ取り入れてみてください。

まずひとつめは部屋着になります。レンタル部屋着を準備している病院でも、持ち込みたいと申し出れば受け入れてくれるところがほとんどです。ぜひ病院側と相談してみてください。

ふたつめに、固定ベルトなど治療の過程で必要となる器具備品類については、周りに同じ病気やケガをした経験を持つ人がいれば譲ってもらえる可能性があります。ぜひお譲りのお願いをしてみましょう。ただし、衛生的に問題がないものに限ります。

上記以外でも、節約できるところはぜひ積極的に節約してみましょう。基本的に病院からレンタルするものや購入するものについては、自前で揃えたほうが安く済むケースが多いです。持ち込みできそうなものは事前に病院に確認してみましょう。持ち込みOKということであればぜひご自身で揃えて、その分の費用を抑えたいところです。

 

限定額認定

ここからの3つは、申請モノになります。健保だったり確定申告だったりと微妙に申請先が異なるのでお作法も違って大変に感じられるかもしれませんが、戻ってくる額もその分大きいので、申請先の担当の方のチカラも借りながらぜひやってみてください。

まず一つ目は限度額認定です。日本には高度療養費制度といって、高額の治療を行った場合に一定額を超えた分が払い戻される仕組みがあります。一定額がどのくらいかは収入によって変わってきます。

年収ごとの自己負担限度額

住民税をおさめているかどうか、そして年収がどのくらいかによって払い戻される額は変わります。年収ごとに1カ月の自己負担限度額が決まっていて、これを超えた分が払い戻される仕組みになっています。

年収 自己負担限度額(ひと月あたり)
年収約370万円まで 57,600円(同一年4回目以降は44,400円)
年収約370~770万円 80,100円+(医療費合計 – 267,000円)×1%
(同一年4回目以降は44,000円)
年収約770~1,160万円 167,400円+(医療費合計 – 558,000円)×1%
(同一年4回目以降は93,000円)
年収約1,160万円以上 842,600円+(医療費合計 – 267,000円)×1%
(同一年4回目以降は140,100円)
住民税非課税の場合 35,400円(同一年4回目以降は24,600円)

年収に関しては「約」という文字が金額の前につくので、詳しい負担額は申請結果を見て判断することとなりますが、入院を伴うくらいの大きな治療であれば払い戻しを受けられる可能性は高いと言えます。

なお、ひとつの病院での負担額が上記に届かない場合でも、複数の病院の負担額を合計して上記の金額を超える場合には払い戻しを受けられる可能性があります。また家族に要介護の方がいたりすると、払い戻しの基準となる自己負担額が下がる場合があります。詳しくは健保の担当の方に相談してみると良いでしょう。

払い戻し方法には2種類ある

高額治療を受けた場合、払い戻しを受ける方法は大きく2通りあります。どちらの手続きもしないままだと払い戻しを受けることが出来なくなってしまうので、必ずどちらかの手続きをしましょう。

ひとつは、入院にかかる費用をいったん全額払ったあと、健保などに申請をして払い戻しを受ける方法です。申請をしてから払い戻しを受けるまで2~3か月程度かかることが多く、最終的な自己負担額よりも大きな金額を一時的に支払う必要が出てきます。

もう一つが、「限度額認定証」という証明書を使う方法です。入院費用の精算時にこの認定証を提示すると、自己負担額のみの支払いで済みます。ひとつめの方法で申請した場合に払い戻される金額を、あらかじめ差し引いてもらえるというイメージになります。「限定額認定証」は事前に健保等に申し出て発行してもらう必要があるので、入院が決まったらすぐに手続きをしておくようにしましょう。

「限定額認定証」を使う方法のほうが窓口で支払う金額が少なくなるので、手元の現金があまり多くない方にはこちらがオススメです。逆にお金に余裕のある方は後から払い戻しを受ける方法を選び、かつ支払いをクレジットカードにしてポイントをためるようにすればよりお得になります。

医療費控除

医療費控除とは、1年間の医療費が一定額を超えた場合に税金の還付を受けられる仕組みです。差額ベッド代や限度額認定と比べると節約できる金額は小さくなりますが、確定申告さえきちんとやればだれでも還付を受けられるので、ぜひこちらも活用しましょう。

税金のしくみと医療費控除

医療費控除が関係する税金は、ズバリ所得税です。所得税とは、1年間にその人が得た所得に対してかかる税金のことを言います。

所得税は基本的には、収入の金額によって計算されます。ただし住宅を購入していたり、家族を養っていたりすると、それにかかる費用が控除として認められ、収入からそれらの費用を差し引いた金額に対して所得税が計算されます。つまり、控除された金額の分だけ税金が少なくて済むので、お得になるというわけです。逆に税金を払っていない人には恩恵のない制度となります。

なお、医療費控除が直接関係するのは所得税ですが、住民税にも影響があります。所得税の金額と住民税の金額は連動するので、所得税として納める金額が少なくなると住民税として納める金額も少なくなります。

どのくらい節税できるのか

控除額がどのくらいになるか、言い換えればどのくらい節税できるのかは、所得金額によって変わります。

所得金額が200万円未満の場合は、1年間で支払った医療費のうち所得金額の5%を超える分について税金を支払わなくて良いように還付申告することができます。所得金額が200万円を超える場合は、1年で支払った医療費のうち10万円をこえる分について税金を支払わなくて良いように還付申告することができます。

いずれの場合も、確定申告が必要になります。これまで収入が会社からの給料のみだった方は、わざわざ税務署に出向いて確定申告をするという習慣がないかもしれませんが、医療費控除を受けられるだけの医療費がかかった年については、確定申告をするようにしましょう。

 

傷病手当金

傷病手当金とは、病気やケガにより仕事を続けられなくなったり、その治療のために仕事を休まなければならなかったりするときに、その保障として支給されるものです。入院をしている間というのは会社に行けず、仕事ができないという方がほとんどであり、この傷病手当金の支給条件に該当することが多いです。また退院後しばらくは自宅療養という場合はその期間も仕事を休むことになるため、傷病手当金の対象期間に含まれます。

傷病手当金は健康保険から支給されるものなので、対象は会社員や公務員になります。あくまで仕事ができない間の保障という位置づけなので、給料が出ない日、もしくは1日単位に換算したときに手当金よりも給料のほうが少ない場合のみ支払われます。また仕事を休んだ期間が3営業日連続することが必要で、この条件が成立した場合のみ、その次の休んだ日から支給対象となります。支給期間は最大で1年半です。

なお、傷病手当金として支給される金額は、過去12か月の平均給与の3分の2の金額について、日割り計算した金額となります。普通に働けていたとしたらもらえたはずの給与よりも少ない金額になることがほとんどです。ですので、もしあなた自身の給与のみで家族を養っている場合など療養中の収入減が困るようであれば、医療保険などへの加入を検討しましょう。

 

お金のかかる入院治療を少しでも安く

入院・手術しないと治らない病気やケガというのはあります。お金に余裕がなくても、仕事をしばらく休んで治療に専念する、ということは必要でしょう。でも、そういったときに少しでも出ていくお金を減らす方法はあります。今回ご紹介した方法をフル活用して、なるべく生活にダメージのない入院生活を送りましょう。そして元気になったら、また思い切り働けると良いですね。

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