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日本の都市鉱山に眠る金の量はいったいどれくらいの量だと思いますか?小さな島国である日本から摂れる、原油や鉱物などの天然資源はごくわずかしかありません。
ところが、都市鉱山に眠る金の蓄積量は最近の調査によると、約6800トンにもなるのです。その数は金の世界有数の資源国である南アフリカにおける量を追い越してしまいました。さらに銀は世界の銀の埋蔵量に対して20%を超える量になることが統計の結果わかったのです。
天然資源に不足する日本では、原油や鉱物などはほとんど他国からの輸入でまかなっていましたが、貴金属に関しては今後は全く違う展開を見せていくことが期待されています。
都市鉱山とは何か、また、都市鉱山を利用した金・プラチナの投資方法を今回はわかりやすくご説明してみたいと思います。
国内におけるこれまでの金の生産
かつては、国内にも金が豊富にとれる鉱山が国内にもありました。新潟県佐渡市の佐渡鉱山です。佐渡市に埋もれる金の存在は、はるか昔々の「今昔物語」にも記されてあり、平安時代末期にはすでに金が使用されていたと考えられています。
佐渡鉱山
1600年代
金が本格的に使われ始めたのは、江戸時代だと言われています。1601年に金銀の鉱脈が佐渡鉱山にて発見され、その後は徳川幕府によって本格的な金の採掘が始まりました。
最盛期には年間で金が400kg、銀40トン以上を産出しました。
この時期から日本におけるゴールドラッシュが始まり、以後、約270年間に渡って約41トンの金が採掘され財政を支えていました。
1800年代以降
その後、1800年代以降になると佐渡鉱山の金は産出量が大幅に低下してしまいます。そこで、西洋技術を取り入れた採掘方法により、金産出量は1896年に一旦は盛り返しますが、その後は衰退の道を辿ってしまいます。
1980年代
日本で最大級の金鉱山である佐渡鉱山の金は、1980年代にはほぼ掘り尽くしてしまっていることがわかりました。下記の図を見ると、1980年代には日本の金の輸入量は過去最高を記録しています。
そして、1989年に佐渡鉱山の発掘作業は休止されてしまうのです。佐渡鉱山から摂れた貴金属はトータルで金78トン、銀2300トンでした。
2000年代
2000年代に入ると、今度は金の輸入量は落ち着き、輸出の量が増え始めます。これまでさんざん国内に入手した金を再資源としてリサイクルすることで、日本は輸出できるほどの金を確保することができたのです。
2001年に開始された家電リサイクル法が成果を出し始めたのです。2008年には400トン、しばらく現象傾向にあったが2011年には190トン、2016年で200トンを超える輸出量が記録されています。
世界における金の生産
それでは、世界的な規模での金の生産はどのように推移してきているのかを見てみたいと思います。
中国が金の生産量はトップ
過去10 年の金の国別生産量は中国が首位で、2016 年の生産量は世界合計の約14%を占めています。中国に次ぐ主要生産国は、2016 年では豪州、ロシア、米国となっています。
2005年時点での世界一の金産出国は南アフリカで295トン、世界全体の12%を占めていました。南アフリカは一時期は金の産出量は世界一でした。しかし南アフリカの金産出量は年々減少していきます。
2007年時点でトップの座を中国に譲り、2016年には7位まで転落、産出量は2005年の半分以下に減少してしまいます。
2017年の世界の金埋蔵量
それでは今度は2017年の金の埋蔵量を見てみたいと思います。
出典:U.S Geological Survey-Mineral Commodity Summaries
金・プラチナが豊富な南アフリカ
ダイアモンドと金・プラチナなどが非常に豊富な南アフリカでは、1800年代には世界中か鉱脈を掘り当てるために開拓者たちが集まりました。かなり大掛かりな開発が長年に渡って、南アフリカで継続されたため、人間達の力で掘り起こせる分は掘りつくしてしまったと言われています。
先程の図をみてもわかると思いますが、中国は金の生産量が世界一であるにもかかわらず、埋蔵量においては9位になっていますね。これは残りの金が国内で少なくなってきていると見ることができるでしょう。
とくに、金やプラチナは希少価値が高く、もともとその量は他の鉱物にくらべて非常に少ない量しか存在していません。だから、このままいつかは枯れ果てて失くなってしまう可能性が高いのです。
都市鉱山とは何か
そこで対策として考えられたのが、資源の再利用です。とくに、人々の生活水準の高い先進国においては、増え続けるゴミの山をどう対処していくかが世界的な問題になっています。
都市鉱山とは、都市でゴミとして大量に廃棄される家電などの中に存在する有用な資源(レアメタルなど)を鉱山に見立てたものである。そこから資源を再生し、有効活用しようというリサイクルの一環となる。地上資源の一つでもある。
出典:ウィキペディア 参考URL:都市鉱山
都市鉱山に含まれる代表的なもの
- 廃車となった車(各種鉄鋼類、貴金属、ゴム、プラスチック、など)
- 家電製品(貴金属、その他金属、化学成分など)
- 建築資材(木材、鉄鋼類)
- 古紙(古新聞、雑誌類)
- 衣類(洋服、布団など)
- 食品(家庭、商業施設などからでた食べ残しの食物など)
都市鉱山から摂れるこれらの資源は、さまざまな方法で再利用されています。金・プラチナ・銀は希少価値の高いものとして、とくに入念に回収されています。
その対策として考えられたのが家電リサイクル法です。家電リサイクル法で回収された家電のほとんどに希少価値の高い金属類が含まれているのです。
日本は都市鉱山の宝庫?
日本では小型家電だけでも、1年間で約65万トンになる量が回収されていて、その中に含まれる貴金属のトータルは844憶円にもなると言われています。
ノートパソコン1台に含まれる 貴金属の例
金:約0.3g
銀:約0.84g
銅:約81.6g
近年では2020年の東京オリンピックに向けて、金・銀・銅メダルの材料が市町村の協力のもとに強化されました。
その結果、冒頭でもお伝えしたように6800トンの金が都市鉱山に埋蔵されていることが最近の調査でわかったのです。この数は、全世界の埋蔵量の16%に匹敵します。
銀も6万トンの量が確認されており、世界の埋蔵量の23%を占めるとのことです。その他にも、鉛、インジウム、銅、プラチナなどの貴金属が多く埋蔵されているのです。
都市鉱山で活躍する企業
都市鉱山に関連した企業
都市鉱山から、貴金属やその他金属等を回収している企業をいくつかご紹介したいと思います。
三菱マテリアル
かつての日本最大の金鉱山、佐渡鉱山でも活躍していた創業140年以上に渡る金属関連の企業です。現在は非鉄金属、金属加工、アルミ缶製造、半導体関連事業を行っています。
直島精錬所
- 香川県香川郡の直島町にて、リサイクル工場を運営。
- 家電やパソコン等のネットワーク機器などから、金、銀、パラジウム、銅などの希少金属を入手。
- 都市鉱山から積極的に材料を使用することで、2030年には世界ナンバーワンのシェアを目指し、大幅な廃棄物削減への貢献を目指す。
- 都市鉱山から得た貴金属を、自社で製造する電子部品の材料として使うとともに、貴金属を地金として販売も行っている。
この直島町はリサイクルを実現するための循環型社会のモデル事業エコアイランドとして、平成14年度に経済産業省・環境省から承認を受けました。
これまでは埋め立てていた廃棄物のリサイクルを、地域住民、事業者、行政が一環となって取り組んでいます。
リネットジャパン
ブックオフグループの企業支援制度第1号として、1998年に古本などのリサイクル事業を開始した企業です。現在は各自治体と提携しながら、国内の小型家電を中心に回収をおこないオリンピックメダルの材料提供企業としても貢献しています。
オンライン宅配回収
- オンラインにて、壊れたり古くなって使えなくなった小型家電の無料回収を行っている。
- 送付する家電の種類によっては、送料がかかる場合もあるが、基本的にパソコンが1台あれば1箱に詰め放題でいろんな家電を一緒に送ることができる。
- 佐川急便が自宅のドアまで引き取りに来てくれる。
- 通信機器のデータが気になる場合は、お任せ安全データ消去サービスにて消去証明書も発行。
2007年よりリサイクル買取と募金を組み合わせた、「スマイル・エコ・プログラミング」活動を行っており地域社会へ貢献しています。
パソコンや携帯電話などを中心に金・プラチナ・銀などの貴金属の回収を160以上の全国の自治体と連携して行っています。
エンビプロ
主に、自動車スクラップ等を中心に幅広い種類の都市鉱山活動をおこなっています。小型家電の回収、プラスチック、遺品整理、ペットボトル等の業者と提携しながら回収・分類したものをさらに国内外の業者へ販売する企業です。
幅広いリサイクル事業
- リサイクルの種類やその素材別に10社以上の事業を運営。
- そこで得られた、貴金属やその他金属等を自動車部品として海外へ輸出。
- リチウム電池の材料等に使われる貴金属の回収
- 遺品や不用品等の処分に活用できるサービスや、リサイクルボックスの設置などを積極的に行う。
2018年4月には、都市ごみ焼却灰の中に貴金属が多く含まれている事実に着目し、太平洋セメントと共同で実証試験として活動を開始しました。
通常は、ごみ焼却灰はそのまま埋め立てられてしまうことが多いので、セメントとしての再資源化も狙っています。
その他の貴金属リサイクル企業
- DOWAホールディングス株式会社
- アサヒホールでングス株式会社
- アサカ理研株式会社
- 中外鉱業株式会社
- 松田産業株式会社
など・・・多くの企業が都市鉱山を活用し、貴金属を再びこの世に送り出しています。
都市鉱山の金・プラチナに投資
金・プラチナ、銀のように希少価値の高い貴金属は、今後の私達の生活を支えるためにも再資源からの確保は非常に重要だと考えられています。
金・プラチナ・銀の他にもクロム、ニッケル、コバルト、マンガンなどの約31種類の金属が、電子機器や電池の材料として必要不可欠なレアメタルとして指定されています。
必要であるにもかかわらず、地中の中から確保できる量は、あと20年前後だろうと言われています。ただ、実際には地球環境保護の問題で、状況はかなり厳しくなっていくものと危惧されています。
今後の貴金属の需要
今後は世界中で、地上の都市鉱山の中からレアメタルを回収していく以外に残さされた道はないのです。今後の差し迫った状況に対応できる都市鉱山の貴金属は、ますます需要は高くなると見ることができます。
とくに、前述のごとく、国内では南アフリカを超えるほどの金・銀の埋蔵量が都市鉱山から見積もられているのです。中国の埋蔵量はかなり少なくなっています。それに、南アフリカからこれ以上発掘することは地球生命に関わります。
今後は日本から、以前輸入して国内に取り入れた金・プラチナ等を輸出していくことが可能となってきます。今のうちに、都市鉱山から摂れる金・プラチナに投資をしておくことは、手堅い資産運用の1つだと言えるでしょう。
金・プラチナの価格情報
どうやって投資するのか
都市鉱山から摂れた金・プラチナ等に投資する方法は簡単です。都市鉱山から貴金属を回収している企業の株式を購入すればいいのです。
その企業の株式を購入
どんな株式であろうと、その他の経済状況に合わせて、値動きは上下してしまいます。でも、値下がりをした時に気になる企業の株を購入しておけば、株価上昇による利益を狙いやすくなります。
同時に、長期で保有すれば配当金も定期的に手にすることができます。ちょうど、この時期はアメリカと中国の関税がらみで、金属系の企業はかなり影響を受けており、値下がりしている傾向にあります。
また、中国やタイがゴミ資源の輸入を制限する動きも強まっており、不安要因になっていると言えるでしょう。都市鉱山関連株の経過を見ながら、購入時期を考えてみてはどうでしょうか?この機会に、その他の企業の情報も調べてみましょう。
都市鉱山の金・プラチナ企業の株価
三菱マテリアル(5711)
2018年6月27日 終値3,040円/ 始値3,005円/ 高値/3,090円 安値/3,040円
リネットジャパン(3556)
2018年6月27日 終値722円/ 始値706円/ 高値/727円 安値/706円
※リネットジャパンは3カ月で見れば高値にきていますが、長期で考えると今は安値です。
エンビプロ(5698)
2018年6月27日 終値円755/ 始値772円/ 高値/784円 安値/755円
まとめ
今回は金が南アフリカの埋蔵金の量を抜いたことに、驚いてしまった人も多いのではないでしょうか?日本の都市鉱山も捨てたものではないですね。
世界中で深刻な問題となっている資源不足によって、いつか本当に普通に生活することさえ、困難な時代がくるかもしれません。
日本の空になった金鉱山や、南アフリカのように掘り尽くされた大地だらけになってしまっては大変です。できる範囲で、再利用できそうなものはリサイクルをするよう心掛けたいものですね。
これまで、さんざん輸入してきたものが一度何かの部品として使われて、こうやってまた輝きを失わずに使うことができる、金・プラチナの耐久性には全く驚くものがあります。燃やしたとしても、その輝きをそのまま残していることもあるのです。
そのように素晴らしい金・プラチナ等のレアメタルは今後、需要が高まると言われる電気自動車にもかかせない素材です。今のうちに投資をしておけば、あとでたっぷりと利益を獲得できるかもしれないですね。