ソーシャルレンディングとは?メリットや危険性をわかりやすく紹介

ソーシャルレンディングとは?

ソーシャルレンディングとは、お金を貸したい個人投資家(貸して=レンダー)とお金を借りたい企業(借りて=ボロワー)をインターネット上でマッチングするサービスで、クラウドファンディングと呼ばれる投資手法の一つです。貸付型クラウドファンディングや融資型クラウドファンディングと呼ばれることもあります。

ソーシャルレンディング事業を運営する会社は、インターネットを活用し、ウェブサイト上で資産運用したい個人から小口のお金を集め、その資金を企業に融資します。サービスにもよるものの、最少投資額は1万円と、元本が少なくとも始めやすい資産運用方法です。最近は一円から投資できるところもあるようです。

例えば、借り手の企業に対して15%の貸出金利で融資を行い、ソーシャルレンディング運営会社が6%の手数料を取得すると、個人には9%の利回りが分配されます。

当然、借り手企業は資金を返済する必要があります。返済額とともに、利率、今回の場合は15%を毎月支払います。
なお、元本は満期に一括返済する形もあります。

ソーシャルレンディング運営会社はこのうち、支払われた利率から数パーセントを営業者報酬として取得し、残りが投資家への利回りとなります。

なぜ企業が銀行以外からお金を借りようとするのかというと・・・

  • 創業したてで、取引の実績が浅く、銀行からの融資が十分に受けられない
  • 新規事業など銀行からリスクが高い融資案件とみなされてしまった場合
  • 銀行からの融資はすでに受けているが、さらに追加で資金が欲しい

などの理由があるからです。

その企業に対して、ソーシャルレンディングの運営会社が融資をしても問題ないかどうかの厳正な審査を行い、審査を通過した企業への融資ファンドが組成されています。

投資家はソーシャルレンディング会社と匿名組合契約という契約を交わして融資したいファンドに出資を行い、その出資金をソーシャルレンディング会社がお金を借りたい企業へ融資します。その後、企業から返済された元本と利息をソーシャルレンディング会社が投資家へ分配するという流れとなっています。

ソーシャルレンディングは、高い利回りに対して貸し倒れの件数が少なく、効率的な資産運用手段の一つとしてここ数年で知名度も一気に上がりメディアなどでも取り上げられることが多くなりましたが、業界としてはまだまだ発展途上の段階にあると言えるでしょう。

ソーシャルレンディングのメリット

高い利回り

ソーシャルレンディングで投資したレンダーが受け取れる利回りは年利で5~8%程度です。中には10%以上の利回りを提供するファンドもあります。定期預金などに比べるとかなり魅力的な数字です。なぜソーシャルレンディングはこの低金利の時代にここまで高い利回りを出すことができるのでしょうか。

なぜ企業は、銀行からではなくソーシャルレンディングでお金を借りるのか。その理由は上記で説明しました。

結論から述べると、さまざま理由により銀行からお金が借りられない、もしくは、銀行融資だけでは必要資金が足りない企業がたくさんいるからです。

このような紹介をすると、銀行から借入もできないようなリスクの高い企業に融資をしているのかと不安に感じられる方もいるかもしれませんが、必ずしもそういうわけではありません。実は、財務的に健全な企業であっても、厳格な銀行の融資審査基準によって、融資を受けたくても受けれられない企業が世の中にはたくさん存在しているのです。

銀行は、かつてずさんな融資を連発していたことで多額の不良債権処理に苦しみました。その経験から、厳格な融資審査基準を自らに設け、その基準に則って慎重に審査を行っています。それにより融資先の状況は大きく改善しましたが、一方で審査の柔軟性は損なわれる結果となりました。

利益がしっかりと出ているにもかかわらず創業年数が浅い、前期が赤字であるなどといった理由で融資を断られるケースはたくさんあります。また、融資審査の手間が増大したことで、小額の融資案件や借入期間の短い案件は、手間がかかる割に収益が見込めないという理由により断られることが多くなりました。

このように、現在の銀行融資は柔軟性が欠如しており、資金需要者の幅広いニーズに対して対応できているとは言い難い状況なのです。

そんな中、銀行があまりやりたがらない少額融資や短期間融資、銀行融資だけでは足りない分の資金を融資する融資、事業者本体とは切り離して特定のプロジェクトだけを評価するプロジェクトファイナンスなど多様な融資スキームで、勢いを増してきたのがソーシャルレンディングです。

元本変動リスクがない

ソーシャルレンディングは元本の価格変動がありません。一度投資すると基本的には運用期間が終わり、満期償還されるまで何もする必要がありません。しかし、デフォルトが起こった際には、元本割れもあり得ます。

デフォルトのリスクは低い

ソーシャルレンディングにおける過去4年間の貸し倒れ率は2.1%以下と、比較的保全性が高い金融商品です。しかし融資という特性上、今後デフォルトが起こることは十分考えられます。デフォルトが起こった際の損失を最小限にするよう、一箇所にすべての資金を注ぎ込まず、分散投資を心がけましょう。

また、投資できるファンドの中には担保や保証が付いたものもあります。
担保などがある場合は、貸し倒れが起きた際にソーシャルレンディング運営会社が担保の売却をはかり、債務履行を求めるため、比較的保全性が高くすることができます。

初心者でも比較的始めやすい

ソーシャルレンディングと聞くと、わけもなく難しいことのように感じますが、ソーシャルレンディングはFXや株式投資のような価格変動がないため、時間や能力で他投資家と競う必要がありません。

投資するファンドと投資元本の金額が同じ場合、ベテラン投資家でも初心者でも成績は同じです。

ソーシャルレンディングのデメリット

デフォルトのリスクがある

企業へ融資するという構造上、何らかの理由で借り手が返済不可能に陥った場合、デフォルトとなります。投資元本を毀損する可能性があるため、ファンドや事業者を選択する際には注意が必要です。

流動性が低い

基本的には、一度投資を行うと満期を迎えるまで資金を引き出すことはできません。これは借り手の返済遅延が起こった際も同様です。絶対に生活資金を使ってまで投資を行わないようにしましょう。

手数料がそれなりにかかる

ソーシャルレンディングでは出金の際に手数料がかかる事業者がほとんどです。1万円など少額の投資を行なっていた場合、出金手数料により利益が結構目減りしてしまいます。

どんな手数料がかかるのか、いくら必要なのかについてはしっかりと確認する必要があります。

ソーシャルレンディングの際の注意点とちょっとしたコツ

ソーシャルレンディングは、利益をあげることもあれば損失を出すこともあります。

初心者でもはじめやすい投資である一方、何も知らずに投資を行うよりも、リスクを避ける方法や運用のコツを知っていたほうが良いでしょう。ここでは、ソーシャルレンディングの安全性や利益を高めるために気をつけたい点を紹介します。

基本は分散投資

分散投資とは投資対象を複数用意し、リスクの集中を避けることです。

例えば、一つの事業者に資金を集中させていた場合、その事業者が倒産に陥ると投資金額すべてを失う可能性があります。ソーシャルレンディングは、分散投資によって、大きな損失を被るリスクを抑えることができます。

投資金額が数万円程度のであれば、単一ソーシャルレンディング事業者やファンドに資金が集中することはやむを得ないでしょう。しかし、ある程度まとまった金額を投資する際には、分散投資を心掛けるべきです。

例えば、ひとつのソーシャルレンディング事業者のみに投資をした場合、万が一その事業者が経営不振という自体になると投資元本すべてが毀損してしまいます。ファンドも同様、単一のファンドに集中投資し、そのファンドの借り手企業が貸し倒れとなった場合、大きな損失を被る可能性があります。

こうした失敗を避けるためには、どんなに利回りが高いファンドや好ましいソーシャルレンディング事業者があったとしても、そこだけに投資するのではなく、複数のファンドや事業者などに投資対象を分けることが大切です。

複利効果で効率アップ

複利運用とは、運用により得た収益を再投資することで、利益が利益を生み出していき、雪だるま式にどんどん利益が大きくなっていくという運用方法です。

ソーシャルレンディング投資は元本の価格変動が無いため、仮に利回り8%で複利運用した場合、想定では9年で元本の2倍になります。

複利運用を念頭において、

  • 投資予定の資金は、遊ばせず、できる限り間を空けず投資すること
  • 利益をできるだけ引き出したりせず、投資に充てること

を徹底しましょう。

ソーシャルレンディング事業者のリスク

maneo、オーナーズブック、sbiソーシャルレンディングなどソーシャルレンディング事業者が乱立するなかで、事業者選びは非常に重要です。

ソーシャルレンディング事業者が倒産したり、不正で業務停止になっていては、投資家の資金のリスクが高まります。
ソーシャルレンディング事業者選定の際、以下の点を注意して調べるようにしましょう。

  • 株主構成
  • 投資先案件の説明の丁寧さ
  • 貸し出し、分配の実績

1点目の株主構成は外部企業の出資などが入っていれば、第三者によるチェックが行われているため、信頼度の指標として使うことができます。

2点目の投資案件の説明の丁寧さは、貸出先企業の審査をしっかり行えているかを表すと考えています。

特に2点目に納得感がないソーシャルレンディング事業者には、お金を預けたいと思いません。

私が一番重視しているのは貸し出し・分配の実績および運営がしっかりしているか、という点です。投資する際にもいきなり多くのお金をつぎ込むのではなく、まずは試しに少額投資してみて、貸出や分配が想定通り行われるのかがある程度確認できてから少しずつ投資金額を増やしていく、という形を取るのが理想です。

また、運営面では入金や出金がすぐに反映されるか、質問に対する回答が返ってくるか、といった点もチェックします。そのあたりは実際に投資してみないとわからない点です。

日本のソーシャルレンディングの歴史とこれから

ここでは、ソーシャルレンディングの歴史について簡単に説明していきましょう。

ソーシャルレンディングはいつからあるものなのか、どのような歴史を経て、今の日本に浸透してきているのか。

初めは個人間同士で融資できるサービスだったソーシャルレンディングが、今では個人対企業にまでできるほど成長し、日本でもたくさんの投資が行われています。

2005年に世界で初めて、知らない人同士で融資を行うことができるソーシャルレンディングをイギリスのZopaが始めました。その後は、中国や韓国でもソーシャルレンディング事業が始まりました。今では紹介しきれないほど多くのソーシャルレンディング事業が起ち上がっており、盛んに投資が行われています。

そして、2008年10月に日本初のソーシャルレンディングmaneoが起ち上げました。maneoは今でも日本でトップクラスのソーシャルレンディングです。

maneoがソーシャルレンディングを初めてから、日本でも火を噴くように次々とソーシャルレンディング事業が立ち上がり始めていきました。2011年3月にはSBIグループの「SBIソーシャルレンディング」、2013年10月に「クラウドバンク」がサービスを開始しました。その後もぞくぞくとソーシャルレンディング事業者が起ち上がっており、今後も続々と出てくることは間違いありません。

2018年には市場規模が2,000億円を超えたソーシャルレンディングですが、事業者に業務改善命令が出されたり、システムに大幅な遅延が出たり、少なからず問題も発生しています。

今、多くの投資家が望むのが、融資先の会社の名前など、ソーシャルレンディング投資に関する情報開示と監視体制の強化です。6月に金融庁から、ソーシャルレンディング会社に向けて、投資家保護の観点でこれまで匿名だった融資先の社名を公開する通達が行われました。

金融庁からの指導を受け、ソーシャルレンディング各社はこれから、融資先の名前を後悔するのか、それとも、これまで通りに匿名のまま案件を組成するのか、選択を迫られることになります。

投資家たちはソーシャルレンディング各社の情報開示方針を見て、投資家に対して誠実な対応を取る会社を選ぶことになるでしょう。同時に、融資先で資金が適切に投下されているのか、融資先で展開される会社の事業が妥当なのか、監視体制の強化も望まれます。

似ているサービス:不動産投資型クラウドファンディング

ソーシャルレンディングと類似する投資商品として、不動産投資型クラウドファンディングがあります。現在、有名なところとしては、ソーシャルレンディングも手がけており上場企業のロードスターキャピタルが運営しているオーナーズブック、そして、この11月からサービスを開始したクリアルなどがあります。

不動産投資型クラウドファンディングは、投資後、自動的に分配金が振り込まれるという、ソーシャルレンディングと類似した特徴があります。しかし、不動産特定共同事業法に則って運営されているため、融資先の会社や物件、担保物件などの詳細が明らかにされるといった違いや、運用終了時にキャピタルゲインが上乗せされる可能性があること、逆に運用終了時に損失が発生した場合には一部を事業者が負担する優先劣後スキームを採用しているサービスが多いなどの違いがあります。

情報公開の面や投資家保全の面においては、ソーシャルレンディングをはるかに上回るものがあり、投資家は開示された情報をチェックしながら、自分で安全性や妥当性を判断して投資できるようになっています。

ソーシャルレンディング業界がさらなる成長を遂げていくためには、不動産投資型クラウドファンディングに劣る点を補うとともに、勝る点を見つけて、信頼を築いていかなくてはいけないでしょう。

まとめ

2019年にソーシャルレンディング業界で伸びていく会社は、投資家からの信頼性と安全性を確保できた会社になることが予測されます。

リスクを積極的に開示し、問題が起きたときも素早く対処できる、損失に対してリカバリー力のある会社、スピーディーに対応して投資家の損失を最低限に抑える努力をする会社などが、2019年に大きく数字を伸ばしていくでしょう。

投資家軽視の姿勢が明らかで自社の利益ばかりを優先するようなソーシャルレンディング会社は、多くの投資家から信用を損ない、自然と淘汰されていくことでしょう。

 

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