アコムから過払い金を取り返すことができるのか

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消費者金融から借金をする人のかなりの割合がアコムから借入をしています。

テレビやラジオなどの広告で有名な「過払い金」は、消費者金融大手であるアコムに対して請求することができるのでしょうか。

2007年6月18日以前に借入があった場合には可能性があるので、専門家に相談してみると良いでしょう。

このページではアコムへの過払い金請求についてお伝えします。

アコムとは

アコムとはどのような会社でしょうか。

アコム株式会社は三菱UFJフィナンシャル・グループに属する消費者金融です。

昭和11年に神戸で開業された「丸糸呉服店」が開始した貸金業を、昭和53年に譲り受けて立ち上げたのがアコム株式会社です。

「むじんくん」という無人契約機を普及させてCMなどで認定をはかったことから一般の知名度も高い貸金業者で、DCキャッシュワンなど複数の会社を子会社としています。

消費者金融としての事業を営んでいるのは周知の事実ですが、アコムはマスターカードの発行もしているので、貸金と同時に立替金の債務も同時に持っているというのが現状です。

過払い金とは

投資信託,積立1

アコムに対する過払い金について知る前に、そもそも「過払い金」がどのようなものなのかを知っておきましょう。

過払い金とは、貸金業者の返済が払い過ぎであるという評価ができる場合に、返してもらえるお金のことをいいます。

借金を完済した人はもちろん、現在借金の借入を長期でしている方も場合によっては借金自体がなくなり、さらに返済をしてもらえるものになります。

過払い金が発生するメカニズム

では、このような過払い金がどうして発生するのでしょうか。

貸金業者は、お金の貸付をするにあたって、返済する金額に利息をつけて返済してもらうことで利益を得ています。

この利息が高すぎると、借金をした人が利息の支払いのために苦労し、生活ができなくなるおそれがあります。

そのため利息のパーセンテージには上限がかけられています。

具体的には次の2つの法律の条文を見てみましょう。

 

参考:

利息制限法1条

(利息の制限)

第一条 金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。

一 元本の額が十万円未満の場合 年二割

二 元本の額が十万円以上百万円未満の場合 年一割八分

三 元本の額が百万円以上の場合 年一割五分

出資法5条2項

前項の規定にかかわらず、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年二十パーセントを超える割合による利息の契約をしたときは、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。その貸付けに関し、当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。

 

この2つの法律ですが、利息制限法については民事上の効果についてだけ規定しており、出資法については刑罰を規定しているものなので2つの法律があることになります。

そして、出資法については2010年6月18日に改正された出資法が施行されて今の形になっており、それ以前は29.2%以上の利率以上の貸付についてのみ刑事罰を問うていました。

そのため、利息制限法以上の利率で出資法未満の利率(グレーゾーン金利という言い方をします)で貸付をするのが消費者金融の通常業務でした。

しかし、その行為について最高裁判所は次のような一連の判例を出しています。

 

参考:最高裁判例

昭和39年11月18日判決抜粋(本文はこちらから:裁判所ホームページ

債務者が利息制限法所定の制限をこえる金銭消費貸借上の利息、損害金を任意に支払つたときは、右制限をこえる部分は、民法第四九一条により、残存元本に充当されるものと解すべきである。

昭和44年11月25日判決抜粋(本文はこちらから:裁判所ホームページ

債務者が利息制限法所定の制限をこえた利息・損害金を元本とともに任意に支払つた場合においては、その支払にあたり充当に関して特段の意思表示がないかぎり、右制限に従つた元利合計額をこえる支払額は、債務者において、不当利得として、その返還を請求することができると解すべきである。

 

少し表現が難しいのですが、言いたいことは

  1. グレーゾーン金利の受け取りは無効
  2. 無効な利息を受け取った分は残高が残っている場合には、残っている残高と差し引き計算をしなさい。
  3. 払いすぎた利息の方が多い場合には返してもらえます

という内容になります。

この「返してもらえる」お金こそが過払い金請求ということになります。

過払い金がある場合に何が請求できるか

過払い金が発生している場合にはどのような事を主張できるのでしょうか。

まず単純に無効なお金は返してくださいという主張ができるのですが、法律上の根拠は「不当利得返還請求権」という条文になります。

 

(不当利得の返還義務)

第七百三条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

 

わざわざ条文を示したのは、返還請求が民法上の債権であるということを知ってほしかったからで、民法上の債権に関しては契約などの定めがない限りは、法定利息が発生します。

 

(法定利率)

第四百四条 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分とする。

 

つまり、過払い金が発生していたとされる日からの年5%の利息を付した金額を支払ってくださいといえるのが過払い金請求の法律上の請求内容になります。

過払い金回収は弁護士・司法書士に依頼をして行う

過払い金回収をどうやって行うかですが、債務整理が得意な弁護士・司法書士に依頼をして回収を行ってもらうのが基本です。

債権の回収というと法律上取得できる金額を裁判をして強制執行をして回収するというイメージがある方も多いかもしれませんが、実際は任意での交渉、裁判中に和解をして任意に支払うのがほとんどです。

たとえば、100万円の過払い金が発生しているからといって、ぴったり100万円をいますぐに払ってくれることはまずないのです。

そして過払い金請求に対しては貸金業者は任意での交渉ではどの程度の金額を何ヶ月後に支払うか、裁判を起こすとどうなるか、ということをほとんど決めています。

個人で請求を行うと、その基準が正しいのかどうかわかりませんし、個人相手に交渉する際には低く伝えられることが多いようですし、納得いかないからといって裁判をして強制執行を行おうとおもっても、どこに執行をかければよいかわからない状態で過払い金の回収は事実上困難です。

国家資格をもっている専門家に依頼するならば弁護士か司法書士という事になります。

過払い金の請求は弁護士法72条に規定する「法律事務」にあたるため、弁護士と司法書士しか報酬をもらって取り扱うことができないとされています。

 

参考:

弁護士法72条

(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)

第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

司法書士法

3条6号イ

(業務)

第三条 司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。

六 簡易裁判所における次に掲げる手続について代理すること。ただし、上訴の提起(自ら代理人として手続に関与している事件の判決、決定又は命令に係るものを除く。)、再審及び強制執行に関する事項(ホに掲げる手続を除く。)については、代理することができない。

イ 民事訴訟法(平成八年法律第百九号)の規定による手続(ロに規定する手続及び訴えの提起前における証拠保全手続を除く。)であつて、訴訟の目的の価額が裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)第三十三条第一項第一号に定める額を超えないもの

裁判所法33条1項

第三十三条(裁判権) 簡易裁判所は、次の事項について第一審の裁判権を有する。

一 訴訟の目的の価額が百四十万円を超えない請求(行政事件訴訟に係る請求を除く。)

 

弁護士は間違いなく引き受けることができるのですが、司法書士は140万円以下の請求しかできないことになっているので注意が必要です。

弁護士・司法書士といっても得意・不得意な分野があり、過払い金請求は債務整理のメニューの一つとして個人法務という分野に属しています。

個人法務分野が得意な弁護士は最近ではきちんと法律による助けが必要な人に広告が届くようにしてありますので、あなたが「債務整理」をしている弁護士として認識できる状況にあるのであれば、債務整理の専門性を持っている弁護士・司法書士であるといえます。

アコムの過払い金についての実務

それではアコムについては過払い金請求をすることができるのでしょうか。

アコムについても過払い金請求をすることは可能

アコムは消費者金融の中では最大手で、三菱UFJフィナンシャルグループの一員ということで、過払い金などないと勘違いしている方もいらっしゃるのですが、アコムもグレーゾーン金利で貸していたことがあるので、過払い金請求自体は請求可能な業者です。

ただし、アコムは消費者金融の中ではもっともはやく、2007年の6月18日から利息制限法以内の借入に利息を下げての運用をしていました。

そのため、2007年6月18日以降の借入についてはグレーゾーン金利での貸付行為が存在しないため、2007年以前の借入をしていた方が対象になります。

アコムの過払い金の返金情報

この記事を執筆している時点では、次のような返還状況になっているとされています。

  • 裁判を利用しない任意での交渉による場合:80%の返還で、和解日から2か月後
  • 裁判を利用した場合:100%+法廷利息の返還で、和解日から4ヶ月後

となっています。

ただし、一部金額が大きいものについては任意での和解には応じていないケースがあるので、80%でもよいので早くして欲しいという希望があっても、裁判手続きを利用しないと難しい場合があることを知っておいてください。

だいたいのスケジュール感ですが、

任意での交渉で早く終わらせる場合には

  • 1月:アコムへの過払い金返還を弁護士・司法書士に依頼
  • 2月:アコムから取引の履歴が送付されるので弁護士・司法書士が過払い金の額を調査
  • 2月:アコムとの交渉の方針を確定し、アコムと過払い金についての和解交渉締結
  • 4月:アコムからの入金が弁護士・司法書士の事務所にされるので、報酬を差し引き計算をして返金される

裁判を利用してじっくり交渉して回収する場合には

  • 1月:アコムへの過払い金返還を弁護士・司法書士に依頼
  • 2月:アコムから取引の履歴が送付されるので弁護士・司法書士が過払い金の額を調査
  • 2月:アコムとの交渉の方針を確定し、アコムと過払い金についての和解交渉開始
  • 3月:アコムからの譲歩の最大限を確認して、譲歩できる内容のものでなければ裁判提起
  • 4月:アコム相手の過払い金返還請求の第一回口頭弁論が開始(弁護士・司法書士が出廷します)
  • 4月:訴訟を起こした前提での過払い金返還交渉が開始
  • 5月:アコム相手の過払い金返還請求の第二回口頭弁論が開始
  • 6月:アコム相手のカバラ金返還請求の第三回口頭弁論が開始
  • 6月:和解締結
  • 10月:アコムから弁護士・司法書士の口座への入金を確認して報酬を差し引いて依頼者に返す

という流れになります。

アコム相手に過払い金請求をする場合の注意点

アコム相手に過払い金請求をする場合にはどのような点に注意が必要なのでしょうか。

アコムを今後利用できない

まず、アコム相手に今後取引ができなくなります

これについては「ブラックリスト」と勘違いする方もいらっしゃいます。

ブラックリストとは、債務整理や延滞をするなどして、信用情報に事故情報として登録されている状況で(リストになっているわけではありません)、過払い金請求をした場合にはブラックリストではなくなっています。

この場合には過払い金を請求したアコムに対してのみ取引ができなくなるということを知っておきましょう。

現在アコムにマスターカードの取引があるような場合にはマスターカードが使えなくなるということになります。

2007年6月18日には通常の金利に下げている

アコムは消費者金融としてはかなり早い2007年6月18日段階で利息制限法に定める利息への取引に移行しています。

つまり、これ以降の借入についてはグレーゾーン金利は一切発生していません。

このことを知らずに、2010年6月18日に出資法の改正されるまでは過払い金の可能性が高いです、と言われて契約をむすんでみたけれど、過払い金が発生していかった、ということもあります。

残額がある状態で過払い金請求をしようと思って請求をしたけれども、実際には過払い金がなかった場合には、残債務についての任意整理交渉にうつることになります。

この場合上記の信用情報の事故情報に登録される結果となるので注意が必要です。

争点がある場合には金額が下がることも

アコムは多数の契約者を抱えていた関係で、過払い金の請求を受けていた側としての経験も高い業者になります。

そのため、過払い金の請求内容について争点があるような場合には、過去の経験の蓄積を元に争ってくることが多いといえます。

たとえば、取引の期間に間がある場合に、取引を2つとしてみるか、すべて一連の取引として見るかによって請求できる金額が変わる場合があります。

たとえば、一連で計算すれば過払い金は100万円であっても、取引がなかった期間が長期間あり、その分断期間で2つの取引と評価される結果、一つ目の取引は完済してから10年が経過しており、1つ目の取引分については事項が成立している、というケースもあります。

このような場合には、任意での請求ではまずアコムが折れてくることはなく、裁判の行方次第で有利な裁判が展開できているかどうかによって和解できる内容が変わってくることがあるので注意しましょう。

まとめ

このページではアコムへの過払い金請求について、過払い金とはどのようなものかと併せてお伝えしてきました。

アコムは経営母体がしっかりしているのと、早期に利率を引き下げていていたため、過払い金返還に応じる体力が残っている会社の一つです。

過払い金は弁護士・司法書士に依頼するのが一番なので、自分に過払い金が生じているかどうかを知りたい場合には弁護士・司法書士に相談するのがよいでしょう。

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