いまさら聞けない!住民税はどうやって計算されるの?FPが分かりやすく解説

d住民税は県民税と市町村民税に分かれており、住んでいる県・市区町村に対して納税する地方税の一つです。毎年6月になると、住民税の納税通知書が手元に届くころかと思います。会社にお勤めの人であれば、毎月の給与から天引きされる住民税の額の決定通知が同様に来ます。

住民税は、所得税と計算の流れが似ているため、計算の流れをイメージしやすいものですが、住民税は「所得割」や「均等割」といった所得税にはない仕組みがあり、それが住民税の計算の流れを複雑にしているところもあります。

今回は、住民税の計算の流れを解説したうえで、住民税と所得税の計算の流れの違いと住民税の特徴について、わかりやすく解説していきます。

1.住民税の計算の流れ

住民税の計算の流れは、所得税の計算の流れに似ているところが多いが、所得税とは全く別物の計算の流れで納税額の計算が行われます。そのため、所得税の計算の流れを簡単に説明したうえで、住民税の計算の流れを説明した方がイメージしやすいと考えられます。

 

【所得税の計算の流れ】

(ア)所得金額の集計

所得を10種類の区分に分けて集計し、さらにその集計した所得金額を7種類に分けて合計所得金額を計算します。

(イ)所得控除の金額の計算

7種類の物的控除と7種類の人的控除の合計14種類の所得控除を計算し、所得控除の金額が集計されます。

(ウ)課税所得金額の算定

合計所得金額から所得控除額を控除した金額を、課税所得金額として計算します。

(エ)納付税額の算定

課税所得金額に税率を乗じて計算した金額から、税額控除の金額を控除した金額が納付(還付)税額となります。

 

 

【住民税の計算の流れ】

(ア)所得金額の集計

各種所得を所得税の時と同様に集計を行います。

(イ)所得控除の金額の計算

所得控除の内容は所得税の場合と同じですが、控除額が所得税と異なるものがあります。

ウ)課税所得金額の算定

合計所得金額から所得控除額を控除して課税所得金額を算定します。

(エ)調整控除額の算定

算定された課税所得金額を基準に、一定の調整が行われます。これは、所得税の計算上控除される所得控除額と住民税の計算上控除される所得控除の金額に差があるため、その差を解消することを目的として行われる調整額です。

(オ)住民税の納税額の算定

住民税は、都道府県民税と市区町村民税の2つから構成されており、それぞれの税に対する税率を課税所得金額(調整控除後の金額)に乗じて算定します。(所得割といわれる部分)

さらに、所得割とは別に、所得の大小にかかわらず課税される均等割(納付先の自治体ごとに税率が異なります。)を合わせたものが住民税の納付税額とされます。

2.所得税と異なる点

所得税と住民税とでは、大きく異なる点がいくつかあります。具体的には、所得税の計算で算出された課税所得金額に住民税独自の調整額による調整が行われることにより、住民税の字額が算出されます。また、所得税と違い、所得控除の金額が異なっていたり、税率が住んでいる地域によって異なるといった違いもあります。

(1)所得控除の金額の違い

所得税と住民税の大きな違いの一つに、所得控除の金額が異なる点があげられます。具体的には、人的控除の金額に大きな違いがありますので、その点も含めて詳しく説明していきます。

<物的控除>

(ア)雑損控除

以下の金額のうち、いずれか多い金額が雑損控除の金額となります。

  • (損害金額ー保険金等による補填額)ー(合計所得金額×1/10)
  • 事後処理費用(自己負担額分のみ)-5万円

(イ)医療費控除

以下の金額のうち、いずれか少ない金額 ➡ 控除額の上限が200万円まで(住民税のみ) 

  • (支払った医療費総額ー保険等で補てんされて金額)-(合計所得金額×5%)
  • 10万円

(ウ)社会保険料控除

所得税の時と同様に、支払った金額が全額所得控除として算入されます。

(エ)小規模事業共済等掛金控除

所得税の時と同様に、支払った金額が全額所得控除として算入されます。

(オ)生命保険料控除

支払った保険料の総額 生命保険料控除の金額
15,000円以下 全額
15000円超40,000円以下 支払った保険料×1/2+7,500円
40,000円超70,000円以下 支払った保険料×1/4+17,500円
70,000円超 35,000円

(カ)地震保険料控除

支払った保険料の総額 地震保険料控除の金額
55,000円以下 支払った保険料×1/2
55,000円超 25,000円

<人的控除>

(ア)配偶者控除

  • 一般の控除対象配偶者である場合:33万円(所得税の場合は38万円)
  • 70歳以上の控除対象配偶者である場合:38万円(所得税の場合は48万円)

(イ)配偶者特別控除

配偶者の合計所得金額 配偶者特別控除の金額
380,000円超 445,000円未満 330,000円
445,000円以上 500,000円未満 311,000円
500,000円以上 555,000円未満 260,000円
555,000円以上 600,000円未満 211,000円
600,000円以上 655,000円未満 160,000円
655,000円以上 700,000円未満 111,000円
700,000円以上 755,000円未満 60,000円
755,000円以上 760,000円未満 30,000円
760,000円以上 0

(ウ)障害者控除

障害者控除は、所得税の障害者控除と要件を同じくする者であれば適用を受けることが出来ます。金額は以下の通りです。

  • 障碍者控除:26万円(所得税の場合は27万円)
  • 特別障害者控除:30万円(所得税の場合は40万円)(注)

(注)所得税では、同居している特別障害者控除の対象親族がいる場合(同居特別障害者)は75万円となりますが、住民税の場合はこの特例はなく、30万円となります。

(エ)寡婦控除

寡婦控除は、所得税の場合と同様に一般の寡婦と特別な寡婦のいずれかによって控除額が変わってきます。

【参考】特別な寡婦とは (国税庁タックスアンサーNo1170「寡婦控除」より)

一般の寡婦に該当する人が次の要件の全てを満たすときは、特別の寡婦に該当します。

  1. 夫と死別し又は夫と離婚した後婚姻をしていない人や夫の生死が明らかでない一定の人
  2. 扶養親族である子がいる人
  3. 合計所得金額が500万円以下であること。
  • 一般の寡婦の場合:26万円(所得税の場合は27万円)
  • 特別な寡婦の場合:30万円(所得税の場合は35万円)

(オ)寡夫控除

寡夫控除は、所得税の場合と同様に以下の要件を満たした場合に限り26万円(所得税の場合は27万円)の所得控除がおこなわれます。(特別な寡婦と同じ要件を満たす夫である必要があります)

  1. 妻と死別し又は妻と離婚した後婚姻をしていない人や妻の生死が明らかでない一定の人
  2. 扶養親族である子がいる人
  3. 合計所得金額が500万円以下であること

(カ)勤労学生控除

勤労学生控除は所得税の場合と同じ要件を満たしていれば、26万円(所得税の場合は27万円)が所得控除されます。

(キ)扶養控除

扶養控除の対象となる範囲は所得税と同じですが、控除額が少し異なります。

扶養親族の年齢 扶養控除の金額
一般の控除対象扶養親族
16歳以上19歳未満および23歳以上70歳未満
330,000円
(所得税の場合:380,000円)
特定扶養親族
19歳以上23歳未満
455,000円
(所得税の場合:630,000円)
老人扶養親族
70歳以上
380,000円
(所得税の場合:480,000円)
同居老親等
同居している老人扶養親族
455,000円
(所得税の場合:580,000円)

(ク)基礎控除

納税者全員に33万円(所得税は38万円)の所得控除が行われます。

(2)調整控除額

調整控除額とは、所得税における所得控除額と住民税における所得控除額との間で生じている差額分による影響を解消する目的で平成19年度より新たに誕生した制度です。

これは、所得税と住民税とでは、所得控除が異なるため、所得金額が同じであっても差額の分だけ住民税の方が課税所得金額が多くなる(一般的な世帯であれば、約15~20万円ほど住民税の方が課税所得金額が高くなると考えられます。)ため、所得税の税率を仮に5%引き下げたとしても、住民税との所得控除の差額分の5%相当額はそのまま残るため、所得税を5%下げたとしても、税負担が減少するとは限らないという問題が生じる恐れがあります。

つまり、「所得税の課税所得金額×5%相当額 ≧ 所得税との所得控除額の差額分×5%相当額」とならなければ、所得税の税率を引き下げたとしても、その効果は薄いということになります。

調整控除額は、こうした所得税と住民税との間に生じている所得控除額の乖離部分を解消させることを目的とした制度として、住民税の課税所得金額から控除することで調整を行うものとなっています。

【調整控除額の計算方法】

・課税所得金額が200万円以下である場合

次の1と2の金額のうち、いずれか少ない金額の5%(都道府県民税2%・市区町村民税3%)

  1. 人的控除額の差額の合計額
  2. 課税所得金額

・課税所得金額が200万円超の場合

{人的控除額の合計額 ー (課税所得金額ー200万円)}×5%(都道府県民税2%・市区町村民税3%)

ただし、この金額が2,500円未満の場合は2,500円となります。

(3)寄付金控除(ふるさと納税)の取り扱い

近年になりさかんになってきたふるさと納税ですが、所得税と住民税とでは、その金額の計算方法や取り扱いが異なります。

・所得税におけるふるさと納税の納税額

「(ふるさと納税額ー2,000円)×税率」が税額控除の対象となりますが、総所得金額の40%までと上限が決まっています。

・住民税におけるふるさと納税の納税額

「基本部分の額+特例部分の額」を、ふるさと納税を行った年度の翌年度の住民税の額から税額控除されます。つまり、×1年にふるさと納税を行った場合、×2年の住民税の税額から納付税額が税額控除されるということになります。

(基本部分):(ふるさと納税額ー2,000円)×10%

(特例部分):以下のうちいずれか少ない額

  • (ふるさと納税額-2,000円)×(100%-10%(基本分)-所得税の税率)
  • 住民税の所得割額×20%

3.○○割とは?

住民税は納付税額を計算する際に、5種類の区分に分けて計算されます。そして、それぞれの区分で計算された税額の合計額が住民税として課税されるという流れとなります。

住民税の納付税額を構成する5つの区分

住民税は、所得割・均等割・利子割・配当割・株式等譲渡所得割の5種類の区分から納付すべき税額は構成されており、所得税でいう納付税額に当たる部分は所得割といわれる部分を指しています。

(ア)所得割

所得割とは、その者の収入に対して課税されるものですが、対象となる収入が前年度の収入に対して課税が行われるという点が所得税の場合とは大きく違います。

具体的には、所得税の課税年度が×2年度であったとした場合、住民税の課税対象期間は×1年度の収入が課税対象となる(つまり、税額の計算基準となる課税対象期間に1年のずれが生じているということ)ということになります。

所得税の課税対象年度における所得が少ないにもかかわらず、住民税が異常なほどに高くなっているといったことがあるのもそのためです。

なお、所得割の金額は、「(課税所得金額ー所得控除額)×10%(市区町村民税6%・都道府県民税4%)ー税額控除額」で算出されます。所得税とは異なり、累進課税制度による課税方式ではなく、所得金額の大小にかかわらず、同一の税率を適用して計算されます。

(イ)均等割

均等割とは、住民に対して固定的に負担をしてもらう税額となります。均等割の金額は、「市区町村民税は(令和4年度まで)3,500円、都道府県民税は(令和4年度まで)1,500円」とされています。

(ウ)利子割

利子割は都道府県民税として、利子等の支払いの際、他の所得と区分して5%の税率による一律分離課税を行います。これは、利子等を受け取った場合に所得税が1515.315%と一緒に都道府県民税として5%の併せて20%を申告分離課税方式によって徴収されているためです。

(エ)配当割

配当割は、配当等を受けた場合に都道府県民税として、5%の税率により課税されます。(上場株式等の配当については3%)配当割についても、所得税が15.315%と併せて徴収されるものですので、その配当等について、申告不要を選択している場合には、配当割については課税されません。

なお、所得税において総合課税を選択した場合は、配当控除として納付税額から税額控除が行われますが、住民税においても同様に配当割控除という税額控除額として、所得割から控除することができ、控除しきれなかった場合には、税金が還付されます。

(オ)株式等譲渡所得割

株式等譲渡所得割とは、特定口座での上場株式等の譲渡益の所得税について源泉徴収を選択した場合に、住民税として特別徴収されるものを言います。

上場株式等の配当や株式の売却益などの収入について、証券会社や銀行に開設している特定口座で源泉徴収をすると選択している場合は、確定申告が不要となるため、株式等譲渡所得割は発生しませんが、源泉徴収をしないと選択した場合については、5%(市区町村民税3%・都道府県民税2%)が株式等譲渡所得割として課税されます。

なお、株式等譲渡所得割についても、配当割と同様に、所得割の税額から直絶控除する税額控除で、所得割から控除しきれなかった金額の部分については、還付されます。

住民税が非課税となる場合

一定の要件を満たした人については、住民税の所得割や均等割について、非課税となるケースがあります。

所得割・均等割が非課税となる場合

次の1~3のいずれかの要件に該当する者は、住民税の所得割と均等割が非課税となります

  1. 生活保護による生活扶助を受けている場合
  2. 障害者、未成年者、寡婦または寡夫で、前年の合計所得金額が125万円以下である場合
  3. 所得割が課税されない人のうち、前年の合計所得金額が一定額以下の人

所得割が非課税となる場合

前年の合計所得金額(総所得金額+退職所得金額(前年に所得課税された退職所得は除く。)などの分離課税の所得金額)≦(本人・控除対象配偶者・扶養親族の合計人数)×最高35万円+最高32万円(控除対象配偶者又は扶養親族がいる場合に限る)

4.まとめ

所得税の計算の流れは、基本的には所得税の計算の流れに似ているところが多いですが、細かい部分において所得税と異なる部分も多く、非常に複雑な計算の仕組みとなっているところも多いです。

住民税は都道府県民税と市区町村民税の2つを合わせた地方税です。そのため、住んでいる地域ごとに、税率が異なったり、課税金額が異なるなど、所得税の場合とは異なる部分も多いため、ご自身が住んでいる地域の課税制度(所得割や均等割)を確認することも必要になります。

また、所得税の制度と連動している部分も多くあるため、住民税だけで考えるのではなく、所得税との兼ね合いについても把握して上で、節税対策を考えていくことが重要となります。

コメントを残す